チロ日記 34

わたしが感動したお話です。実は主人がテレビのある番組を見てその印象を語ったものです。物語は「日本最初の盲導犬の話」です。一人の青年が肺結核にかかり勤めも出来ない体で失意のどん底に陥っていた時、欧米の盲導犬の話をふと耳にしたというのです。そこで自分でも犬を何とか訓練して日本にも盲導犬を育てようと意を決したのです。それ以来来る日も来る日も朝から晩まで自分を目隠しして特訓しました。ある時は道路で転びまたある時はどぶ川に落ちてずぶぬれになりながら訓練を重ね、ついに犬をしつける事に成功したのです。このニュースが新聞の記事に乗りました。この人は名前をSさんといいます。これを見たある青年が「自分も大学生活半ばである日突然眼が見えなくなりました。自分にはチャッピーという犬がいますが、是非盲導犬に育ててほしい」と手紙を出したのです。これを見てSさんは早速チャッピーを預かり猛特訓を開始したのです。しかしながら人の言う事を聞かないどころか反抗心も強くなり、ある時など訓練中に、自分よりはるかに大きな犬の足にがぶりと噛み付いて大怪我をさせてしまったのです。Sさんは完全に壁にぶち当たりました。そしてこんなに訓練を重ねても上達しないのは、自分に欠陥があるのではないかと思い始めました。訓練して少しでも上達した時自分は心から犬を褒めていただろうか。早く上手になる事だけを考え、本当の自分の気持ちがチャッピーに伝わっていないのではないか。

それからというものは、ほんの少しでもうまく出来ると気持ちを込めて褒めました。夜は家に入れて一緒に寝てあげました。そうこうするうちに犬にはっきりとした変化が見え始めました。自分からSさんの方ににじり寄ってきたのです。そしてついに訓練をマスターしたのです。最後の仕上げはチャッピーと青年の二人だけの実地訓練です。Sさんの家から二キロほど離れた郵便局に切手を買いにいって無事に帰ってくる実験をしたのです。道の途中には階段あり、車道の横断ありで大変危険なかけでした。でもSさんの願いがかない見事にこの実験に成功しました。二人は手を取り合って感動の涙を流しました。ここに日本初の盲導犬が誕生したのです。時は昭和32年、今から45年前の事です。チャッピーはその後青年の手足となって昭和42年迄生き続けました。そのお墓標にはこう刻まれています。「ありがとう」 盲導犬は現在日本に850頭ほどいるそうです。Sさんの功績は絶大なるものがあります。この話は、人間が心から犬をほめたたえ犬も人間の気持ちに同化して一つの芸を完成させた例といっても良いでしょう。

この話を聞いてわたしは思いました。主人はいつも早朝散歩に連れていってくれるのですがあまりわたしの気持ちをわかってくれていません。たまにみんなの前で二本足で長く立つ芸をしても心からほめてくれません。でも主人はさきのテレビの話に非常に感動したといっていましたので心変わりを辛抱強く待つ事にします。わたしの方もあまり一方的に動き回らず主人と歩調を合わせてあるいていきたいと思います。

今回は最近のわたしを見て下さい。