外を眺め黄昏れるメランさん
急な話・・・
ある金曜日会社帰りに、友人から電話がかかってきた。
「犬飼いたいって言ってなかったっけ?」
そう、確かに飼おうかなと思って少し探したりし始めていた頃。
ビーグルくらい中型犬でぇ、なんて、ついこの間柴飼いの友人に話したばかり。
友人の話は続く。
「ちょっとあんまり聞かない犬種だった。フ何とかカンとか〜って
仔犬を預かってる人が急いでるから明日には返事してね」
・・・・明日!?
その足で本屋へ。犬種本で〔フ〕のランを探す
”カンとか〜”って言ってた感じからしてこれっぽい!『フラットコーテッドレトリバー』
レトリーバー?ってことはでっかいじゃん。。。
”黒いゴールデン!?”って見出し。写真は確かにそんな感じ。
レトリバーなだけあって賢そう。
ふんふん・・・”犬界のピーターパン”だって。”いつまでも若々しく幼犬のような魅力”
いつまでも若々しい!心を捕まれた感じがした。
急な話だけど、きっと縁だ!
真夜中の訪問者・・・
翌々日の日曜日、まだ乗り気でない両親を置いて姉(私)弟と友人3人で仔犬に会いに行く
大きなサークルのなかでウロウロする黒い仔犬・・・こいぬぅ〜!?
軽く柴犬じゃん!3ヶ月半になる仔犬(?)は中型犬に差し掛かっている・・・
大きいし大丈夫だろうか?両親の言う通り、大型犬は大変かも。
「ねえ」振り返ると、どっかのCMみたいに仔犬を凝視して動かない男が・・・(--;)
「かわいいねぇ」運命の子に会った感激で目がウルウルしちゃってる。。。ま、いいか。
いったん戻り、カラーとリード、ご飯食器を買って、後で迎えに来ることに。
先方の都合で、その日の夜12時にお迎えに行った。
小脇に抱えられて出てきた仔犬は不安そう・・・。
私が抱えあげようとしても前足を突っ張って動かない。私も初めての犬でどう触っていいか分からない。
結局付いて来てくれた友人が抱いて我が家へ向かった。
家に着くと真夜中の1時。相変わらず不安そうな仔犬。
取りあえずカラーを着けてみる。ブカブカじゃん!頭をするりと抜けて外れてしまう。
すると父が何も言わず、カラーにマイ工具でベルト穴を開けてくれた。
反対っぽかったけど、大丈夫そう。良かった。
友人が帰り、両親も眠ってから、弟に釘を刺す
「約束したんだから、ちゃんと面倒見なさいね」すると・・
「一緒に居始めたら可愛くて絶対母さん達が手を出してくるって!」
なに〜、最初からそんな計算があったのか!・・・悪魔。
でも私は知らなかった、本当の悪魔は今日一日に疲れて毛布の上で眠ってしまった黒い奴だったのである。
かものはし!? いえいえ、メランです(^▽^)
陣地なき戦い
玄関と続きの廊下、廊下突き当たって右のバスルームがメランの居留区域に決定した。
廊下突き当たり左は魅惑のキッチン、続き部屋があって、誘惑のリビングに繋がっている。。。
無理でしょ・・(--;)
心を鬼にして「ここまで!」とか「ダメ!!」とか敷居を示し、踏み越える度にメランに言ってみる。
メランはすぐに理解したらしく、キッチンには入らず、
廊下の突き当たりの、キッチンと続き部屋、その先のリビングが見渡せる位置に座った。
半日もしないうちに立ち入り禁止区域が分かるなんてやっぱりレトリバーって賢いわ!
ん、ん?お座りから伏せしたメランの前足がほんの少し、
PAWの半分くらい境界線の敷居を越えてキッチンにかかっている。
「こら」と言ったものの、
『いいでしょ、ちょっびっとだけ・・』みたいな慎ましい感じがイジラシイ。
『いいよね?』みたいな上目遣いもイジラシイ。
前足ちょっと出しはOKという事になった。
しかし後々敵はこの僅かばかりの砦を足がかりに、後退なき戦いを挑んでくるのだった。
それからは家の中に居る時は廊下の突き当たりがメランの定位置になった。
キッチンでする私達の会話を聞いている。
「今日メランがねぇ・・・」なんて聞こえたら、ダダッと『ハイッ、呼んだ?』って出てくる。
コップを倒して『あ゛〜!』と叫べば、『どしたの?どしたの?』と駆けつけてくれる。
・・・・あの〜;・・・・
「こら!駄目でしょ!」と叱ると、『あっ!出ちゃってる!』みたいな感じ。
『そうでした、そうでした』と戻っていく。
けどすぐ『ハイハ〜イ♪』とやって来る、叱る、の繰り返し。
粘り勝ち?呆れ負け?キッチンは3日で陥落した。
次の境界線はキッチンと続き部屋だった。黒将軍、やっぱりここも“前足ちょっと出し作戦”を敢行。
メラ家が背中を向けてTVに夢中になってる隙に匍匐前進で前線突破!振り返ると奴がいる。
「駄目!」敵に背中を見せてはいけない。。。。
“前足ちょっと出し伏せ”でいい子にしてるように見せかけ、
振り返ると部屋の中央まで進んでたり、振り返ると匍匐中だったりする。(-_-;)
続き部屋もたった2日で陥落。
往生際の悪いメラ家、最後の攻防戦に続き部屋とリビングの境界線を死守することにした。
すぐ後ろにいるだけに守りは楽である。このころには「あの前足は曲者だ!」ということにもやっと気付く。
あの位置に足があれば、ちょこっと立ち上がっただけで敵地へ攻込める。
この攻防戦は熾烈を極めた。コーヒーを持って入る母について入ってみたり、
誰かが大声を上げれば駆けつけてみたり。その度に「こら」が飛び交う。
しかし黒将軍は敵を見ていた。
ある夜、弟が一人でリビングにいると、メランが境界線のところに立っている。
じーっと見つめて尻尾をフリフリ。「どしたん?」また見つめてフリフリ。
長く続く攻防戦、叱られ続けるメラン。元々境界線に反対だった門番は敵に寝返った。
門番、黙って手招きする。大喜びでメランが入って来る。
・・・・こうして5日に及ぶ戦いの末、あっけなく最後の砦も陥落した。
黒将軍の見事な作戦と飽くなき挑戦の前にメラ家は完敗を喫したのだった。