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業間  卒業させてよ、お願い!!

 

 永世中立ワァク星域、通称、宇宙ハローワーク。
 この民族の国というか、そこの声域に住むすべてのワァク星人の精神の根幹が、どういうわけだか「世界のすべての人たちに、仕事を与える」なのである。
 ワケありの札付き犯罪者から正義の旗をかざすレジスタンスにいたるまで、仕事や、職業訓練(軍事系職業訓練で使用される武器は、ワァク星のオーバーテクノロジーでわからないが、どんなことをしても半殺し程度ですむ、姿形は市販品と変わらないが中身不明な武器。ちなみに大量殺戮兵器の訓練は、ワァク星の法律上行えない)、健康保険、労災、年金の手続きいろいろを取り扱っている。裏で莫大な掛け金とコネクション、保障と信頼を有するこの星域にチョッカイを出そうものなら、全く関係ない別勢力からの圧力を食らうことになる。


 

「申し訳ありません、わざわざ遠いところから、ありがとうございます」
 出迎えたワァク星人、役職は職業訓練学校の校長が宇宙港の玄関先で出迎えていた。 武装解除が大前提。テロや隠し武器の持込なんかしようものなら、使用銀行停止、年金、労災、健康保険、果てはその行為を知られたあかつきには、賃貸住宅だと確実に追い出される。結婚にも支障をきたすなどモロモロのオプションをにこやかに「業務ですから」と引っ付けてくる。それがワァク星人なのだ。仕事にかかわる職務に命をかけている種族なので、よっぽど馬鹿な行為さえしなければ、善良な民族である。
 愛用の剣を取り上げられて代わりにタグを渡された。正直寂しい気分になった。
「将軍職にいる方で今現在スケジュールが空いているのは、貴方だけだったので」
 今現在、前線部隊が進軍中で、本隊は準備だけで、手が空いているといえばそうなのだが。
「で?」
「新しい職業の学科を増やそうと思いまして、将軍にその臨時講師をしていただきたいのです」
 講師とは聞いていたが、新設される学科とは聞いていなかった。
「学科とは?」
「海賊科です」
 絶句。
 ワァク星の職業訓練の学科には、隠密科やらテロリスト科やら軍事学校さながらの学科まである(しかし学費無料なので、ハードルは軍事国家にある士官学校のトップクラス並に高い)が、それで何故に海賊科なのだ、と聞いてみた。
「企業側からの人材の要望がありましたので」
 そういう人材が欲しいのだといえば、人材だけならなんでも用意してしまうのがワァク星人なのである。
「生徒の数は?」
「いまのところ三人だけです。こちら側で人材を選別しておきました。ああ、ちゃんと本人たちもその進路を望んでいますよ」
 つまりは、職業訓練校も生徒も乗り気なのだ。やる気があるなら、こちらもやりがいがあるというものだ。
「……校長。私は、海賊などしたことがないのだが……」
「知ってますよ」
「ならなぜ、私に依頼する?」
「部下の教育に熱心だと有名ですから、ゼネラル・バッカス」
 ……。
 熱心にならざるおえない状況にいる。が、正直、自分には今現在の軍の内情の団結が固いとは決していえない。いえるわけがない。技術のみで人選してしまったのを今、とても後悔している。それが本心だ。
『遊撃しろ』といったら本気で、自分勝手やってくれる。無駄に強いので愚痴はいえるが文句は言えない。責任者が、その現状で満足しているので、いよいよ口出しもできない。
 ゼネラル・バッカスは小さくため息をついた。

 


「こーちょー、それが新しいセンコーかっ」
「今日は真面目に登校してくれてて嬉しいよ、ブレアード君」
 この赤いトゲトゲの生徒はちゃんと登校していないらしい。
「ハデス軍のゼネラル・バッカスが講師、すごいじゃないかっ」
 帽子にヒゲで年齢不詳の男がそういうと、となりのトゲトゲが、
「は〜ぁ?? 誰だそりゃぁ」
といってきた。
「アンタ馬鹿じゃないの、いまあちこちの星域を侵略しているカイザーハデス軍の将軍よ」
 いかにも有能そうな声の女が、トゲトゲを小突いた。
「んだー……。マジ知らない。なにそれ」
「「新聞ぐらい読め!!」」
 一体どういう選択で、この人材を選んだのかワァク星人が信用できなくなってきた。
 根っから無表情気味なので、呼びつけたワァク星人にこちらの思いが通じたのか分からないが、資料が手渡された。とりあえずコミュニケートのために二者面接をしろという。「あ、ゼネラル・バッカス。その順番どおり面談してくださいね。ブレアード君、飽きると帰ってしまいますから」
「そういう人材はいらん」
「その飽きっぽさを除けば優秀な生徒さんです、海賊科を専行する前は、士官科の上位クラスにいました」
 なんでも成績ではないだろうと思うが、と言い出しそうになったが、ぐっとこらえた。

 

 名前ブレアード。元ワァク星職業訓練校、士官科の成績優秀者。ただし欠席が多い。
 備考。火による攻撃が得意。極度の面倒くさがり屋。
 目の前にいる、その赤いトゲトゲの生徒は、士官学校時代(新設された海賊科には、制服はまだ支給されていない)の制服を改造して身につけていた。裾は長く踝ぐらいまで長い。どっかりと腰掛けたときに、ちらりと見えた制服の裏地に三叉の首をもつ金色の怪獣の刺繍が入っていた。どうやら筋金入りの問題児のようだ。ある意味、この成績の優秀さは天がくれた才能なのかもしれない。ワァク星の学校の試験がすべてマークシートでないことを祈るばかりだ。
「で、ブレアード。お前はなぜ海賊科を志望した?」
「めんどくせぇ〜んだよ、センコー。海賊ったら、オメー。漢のロマンだろうがっ、だから選択した。上下考えて生きていくなんて、んなめんどくせぇ〜ことして生きたくねぇーんだよ」
「だがなブレアード。海賊といっても、皆が船長になれるわけではないんだぞ」
「そりゃ、アレだ。オレ様をグッとさせるような、熱い船長だったら、オレはついていくぜ、それがロマンだ!!」
 ゼネラル・バッカスのメモ「ロマンが熱いらしい」


 名前アクアル。元ワァク星職業訓練校、作戦指揮科の主席。ならびに、飼育委員部長。 備考。水による攻撃が得意。女子からは大変慕われている。
 物腰は、おしとやかと高飛車のちょうど中間。彼女から発せられる気配からして出来る女であることは間違いなさそうだ。廊下で待っていた彼女を呼んだとき、外にいたほかの学科の女子生徒が「アクアルお姉さま」と彼女にむかって手を振っていた。それぐらい人気。
「アクアル。なぜ海賊科を志望した」
「まだ手付かずの星を見てみたいからです」
「それだったら、未開発惑星開発科を志望しろ」
「見てみたというのは、誤りですね。自分のものにしたい、自分で育ててみたい。それだけよ、それに女海賊ってカッコいいじゃないですか、ゼネラル・バッカス」
 意思は固そうだ。
 ゼネラル・バッカスのメモ「女海賊はカッコいい」



 名前サイクリード。元ワァク星職業訓練校、未開発惑星開発科及び、経済科。
 備考、慎重派。たまにパニックになる。
 どうも、萎縮してしまっているらしく、制服や被っている帽子が気になるらしく、あちこち触っている。本当に神経質そうだ。ついでに緊張のあまり汗までかいている。
「ブレアード。なぜ志望した?」
「ご、強引な手段だが、こういうのも一つの商売の方法かとおもいまして」
「海賊もビジネスだというのか」
「手っ取り早く、三角貿易ができます。その新しい可能性に自分もかけてみたいのです、それには、まず海賊になる方法を知らなくてはと思い志望しました」
「……すまない。私は海賊ではない。軍人だ」
「話し違うじゃねーか」
 いきなり立ち上がって、部屋中をウロウロして、なんかわめいていた。ある意味ブレアードよりも騒々しいタイプのようだ。
「しらん、訓練学校側にいえ。話はそれからだ」
「いっいえ、やっぱり、海賊は魅力的なので、志望は変わりません」
 ゼネラル・バッカスのメモ「たまに激昂する」



 さて、どうしたものかと、考えた。基本的な軍事訓練は一通り終わっていて、得意技も自主開発している段階まで来ている。軍人である自分が教えることは少ない。
 なら、どうしたものか。いろいろ悩んでいながらも、久しぶりの教育現場に燃えている自分もいた。
 だが、そこに一通の知らせが入った。ゾラが死んだのだ。
 早く前線に戻らなくてはいけない。だが話を中に投げるわけにも行かない。


 ……いい考えがあった。

 


 ワァク星も多少関わっている(資金援助および人材派遣)ギグリス星。都市は、星の産業を守るために都市機能はすべて、ギグリス星の複数存在する衛星でまかなっていてる。都市衛星は大変豊かである、惑星は宇宙エレベーターを除き手付かずを越えた不快指数の高い高温多湿の大陸のほとんどが湿地帯の惑星である。
 星の政情はとある理由で決して安定はしていない。
 不定形宇宙生物・ギギググリという奇妙な生き物が主な産業である。
 それを元に改良した汎用兵士ギグファイターの一大生産地が、このギグリス星である。 最初にこの奇妙な生き物が、ギグファイターになることを発見したのは、科学技術国家であるアケロン人。
 そして、このギギググリの安定した採取方法、及び養殖、基礎訓練の特許をもっているのが、軍事国家インパクター星。
 つまりは、宇宙連合組織ウオフマナフの管轄ともいえなくはないのだが、利権やらテナント料、各ユーザーにあわせたカスタマイズ代やらで、潤っているのでギグリス星政府は、アケロン星人および、インパクター星人、プラス、ギグファイターを利用してくれているユーザーに対してかなり放任的なものがある。つまり儲かればいいというのが、この政府の方針だ。星の指導者は資源を有する土地を持つ大地主なのだ。
 ここの方針。インパクター星人が管轄する養殖場に侵入さえしなければ、一定額の金額をギグリス星政府、および野生のギギググリをギグファイターに加工する料金をアケロン星所有のプラントに支払えば、だれでも野生のギギググリが捕獲できるのだ。むろん、加工されたギグファイターの飼育については、個々にする。それがゴールドラッシュならぬギギググリ・ラッシュに沸くギグリス星である。
 気合と技術があるものは自らギギググリからギグファイターを作るツワモノもいるらしい。



 ギグリス星に向かうワァク星所属のシャトルの中、ゼネラル・バッカスは説明を始めた。
「予定が早まった、さっそく実践及び卒業課題だ。惑星ギグリスでギギググリを捕まえて来い」
「んだよ、そのめんどくせぇ〜話はよぉぉぉぉ。つかギギググリってなんだ? 舌噛んだじゃねーか」
「ギグファイターの元よ、ホントそれでよく成績良かったわねアンタ」
「しっ支給ではないのか、ギグファイターは??」」
「将来、海賊の長になるのかもしれないやつが、部下がいないとは何事だ。自分でどうにかしろ」
 向上心を持てとサイクリードにバッカスはいった。
「ゼネラル・バッカス質問です。野生ギギググリが絶滅する恐れはないのですか?」
 生き物が好きらしいアクアルが手を上げた。
「ギグリス星政府、および、アケロン、インパクター両政府の見解によると、ギギググリはギグファイターに加工しない限りは、再生能力と、繁殖力は強いといってきた」
「繁殖力が強いつーことは、ウヨウヨいるってわけじゃねーか、楽勝だな」
「アンタ、ギギググリがどういう生き物か見たことあるの?」
「しらねー、興味ねー」
「だっダメじゃないか、知らないと卒業できないじゃないか、それでもいいのかブレアード!!」
「めんどくせぇ〜なぁ、いけば捕まんだろ、気合と根性で捜し出せばいい」
「なんか矛盾に満ち満ちているわね」
 ゼネラル・バッカスは部下に指示してカバンをそれぞれに手渡した。
「中に捕獲に必要な道具が入っている。期限は3日。それまでに各々5匹のギギググリを採集するように。それが出来たら卒業証書を出す。出来なければ即刻……だ」
「……短い期間で資格がもらえるのだから、仕方がない話ね」
「めんどくせぇ〜なぁ。んだったら手っ取り早くインパクターの養殖場でも襲うか?」
「馬鹿じゃないの?武装解除させられてて、重火器から巨大ロボットまで製作する軍事大国のインパクター星人にかなうわけないでしょう、このものぐさ!」
「オレは臭くない」
「いくら、おれたちみたいな、特種能力もったのでも丸腰はいくらなんでも、やばいだろう」
「この臆病者!」
「う、うるさいコノ脳軽トゲトゲめっ」
「黙りなさいっ」
 三人が内輪もめしている最中、ゼネラル・バッカスは静かに真後ろのレバーを下ろした。三人の乗っていた座席がストンと外れ、そのまま降下していく。1秒も経たないうちに座席の周囲が風船状なもので覆われ、ギグリス星の大気圏に突入していった。
 ワァク星の職業訓練学校は人選を考えたほうがいいと、バッカスは思った。

 


 アクアルにどつかれて起こされて、ブレアードが目を覚ました。
「帽子、帽子……」
 ヒザまでつかる湿地の泥の中をサイクリードが手を突っ込んで愛用の帽子を探して、あああった。と安心な言葉を発していた。
「いつまでねてんのブレアード」
「昨日は徹夜だったんだよ」
「理由にならない」
 アクアルが一撃で終わらせた。
「早速、装備の確認をしよう……???」
 バッカスから渡されたカバンを開けてサイクリードは首をかしげた。
「昆虫採集の網に、フタ付きバケツ、メモ……。食料も水も入っていないじゃないかっっ」
「んだとぉぉぉーーー、おやつもバナナも入ってないのかっっ納得いかねーぞっ」
「サバイバル訓練も兼ねていることなのね」
 アクアルは冷静だった。
「……なになにギギググリは、図1にあるような、不定形宇宙生物である」
「古代型アメーバーに似ているわね」
「注意事項 1.採集の際には崩れやすいので気をつける」
 読み上げるサイクリードの脇で、こんな網で捕まえて大丈夫なのかよとブレアードが悪態をついた。
「注意事項 2.宇宙国際問題になるので、決してインパクター星人の施設には立ち入ってはならない」
「ったく、これから海賊をやろうってのに、海賊しねーでどーすんだよ。あーあ。めんどくせぇ〜」
「注意事項 3.……」
 なにかの気配を察してサイクリードの言葉が止まった。
「どうかしたの?」
「どっどーいうことだ????」
「んだー???」
 どんよりとした視界のなかから、ギィギィと聞き覚えのある声がする。しかもどんどん近寄ってくる。
「にっ、逃げるぞアクアル、ブレアード!!!」
「はぁ? オマエなにいってんだ?」
 メモ書きを横から見たアクアルは、ブレアードの首をつかんで走り始めた。その後をサイクリードがカバンを持って慌てて追いかける。
「注意事項 3.不法投棄された野良ギクファイターに注意すべし……ってあんなにいるのかよぉぉぉ」
 各種ニーズに合わせてカスタマイズされるギグファイター。基本的には、遺伝子操作によってつくられたものなので従順だが、ごくまれに売った先と折り合いが付かなくなったギグファイターが存在する。どうやらギグリス星政府は、そのような注文間違いやら、在庫やらを不法投棄しているらしい。ついでに、通称・ギグハンター(個人でギギググリを採集し、ギグファイターにし、カスタマイズして販売している人たちの総称)が、育て方を間違えて放置したものやら。
 ヘタに戦って戦って戦ってもまれて生き残っているギグファイターは、そこいらのペーペー怪獣よりもタチが悪い。それに数が半端ではない。
 ギグファイターのセールスポイントは「戦闘経験をつむことによって、技量・知能が向上する」なのだから。
 弱腰なのに足だけは速いサイクリードがアクアルとブレアードをゴボウ抜きに抜きさった。だが、そのスピードを見て一匹のギグファイターがサイクリードめがけて猛ダッシュしてきた。胸にゼッケンをつけている。どうやら辺境宇宙で行われているギグレース用ギグファイターのようだ。
「ひー、はっ早いっっ」
 風の属性があるとはいっても、遺伝子操作によって走ることに特化しているギグファイターだ、速さは並ではない。
 仕方がないと、アクアルは両手をヌカルミに突っ込んで、気合を入れた。
 自分のなかにある、水を操る能力を引き出し、邪魔をしてくるギグファイターに手当たり次第に泥の塊りをお見舞いした。
「いまのうちに、態勢を立て直してとっととギギググリを探すわよ」
「命令すんなアクアル!」
「今日の指揮官は決まってないわよ、アンタこそさっさと走る!」
 開始1日目は走り通しだった。次から次へと野良ギグファイターが襲ってくる。野生ギギググリを探している暇すら与えてもらえない。辺境宇宙のギグレスラーやらギグスモウ用のギグファイターは、軽々とサイクリードを吹っ飛ばした(丸腰では仕方がない話だ、そもそもサイクリードはあまりパワーはない、ついでに軽い)、かまうなといっているのにも関わらず、攻撃されたら熱血パンチで仕返しするブレアードのせいで、ますますギグファイターにかこまれ、アクアルは、霧を発生させたり、ギグファイターの足元に底なし沼を作ったりと、能力フル回転でヘトヘトだ。水は自分の能力でどうにかなったが、食料は、パシリのサイクリードの捕まえた謎の宇宙八つ目肺魚をサイクリードが丸焼きにしたもの。味もなくただ、泥臭いばかりで疲労はたまるばかりだ。どうにか、雨風がしのげそうな場所をみつけ、とりあえず休むことはできた。

 


 二日目早朝。湖に爆弾を落としたような水の音で目が覚めた。
「ギィィィィィィィ」
 太陽が隠れるぐらいの陰を落とす、謎のドロだらけの巨大なじゅうたんに姿が似ている、ちっょとした怪獣並みだ。それが鎌首あげて奇怪な声をあげている。
「うっしゃー、ギギググリ発見!!!」
 図で見たギギググリに似ているが。どうみても渡されたフタ付きバケツには入らない。
「でっ、でかっっ、なんじゃありゃっ」
「なにビビってやがんだっ、これで卒業課題はクリアだぁぁぁ」
 指をポキポキならすブレアードにアクアルは思いっきりドロップキック入れる。
「どー考えても違うでしょう!!!」
「うりゃーっ!!!」
 ブレアードの放った炎の拳がギギググリの裾をじゅっと焼いた。なんか香ばしい匂いがする。
「ギィィィィィィィィィィィ」
「おっ怒っているぞ」
「ちょっと、なにやってんのよっ、逃げるわよっ」
 やっとブレアードにも状況が分かったらしく三人で走った。が、巨大ギギググリの一歩? は普通の距離ではなかった。三回ぐらい波打ったと思ったら、衝撃とともに、周囲が真っ暗になっていた。
 ギギググリの下敷きにされた。
 このでかい細胞のゆるゆるしている生き物の下、サイクリードは風の壁を作り、アクアルがどう考えても消化液とおもわれる体液を中和し続け、ブレアードがせっせとドロを掘って進んで、巨大ギギググリから出たころには、とっくに日が落ちていた。

 


 三日目。疲労はピークに達した。疲れて動けなくなったサイクリードは食料を調達することも出来なくなっている。ブレアードは、腹がすいたとわめいている。今日こそギギググリを捕まえないと、海賊科を卒業することができなくなってしまう。
「きめた……」
 ブレアードがいった。
「インパクターの養殖場を襲うぞ」
「ちっょと待て、ブレアード。戦力差があまりにもありすぎる」
「めんどくせぇ〜」
 空腹とイライラでかなり、キている。
「サイクリード。うるさいから黙らせて」
そういうアクアルも、水すら満足に作れなくなっている。度重なる野良ギグファイターの襲撃、巨大ギギググリ。湿気にドロ。ついでに暑苦しい熱気が体中から噴出しているブレアード。ピークに達している。
「ん?」
 サイクリードが両手で泥水をすくいあげた。
「ギギググリだっ!!!」
 慌ててバケツに放り込んだ。ドロに汚れたメモと見比べる。まちがいなかった。
「昨日のアレはやっぱり突然変異なのね」
「いーや、ヌシかもしれないぞ」
「さぁ、探すのよっ」
 三人は三様に探し始めた。
 手当たり次第に泥を堀り、1匹は捕まえたものの、2匹目捕獲……というところで網が折れ「借りるぞ」といってサイクリードの帽子で採集を始めるブレアード。
 帽子と、叫んでいたが採ったギギググリが持っていかれないことにほっとしつつ、次のギギググリを探し出した、サイクリード。
 アクアルは、植物の間にギギググリが群生していることを理解し、あっというまに5匹捕まえることが出来た。
「こっちは揃ったわ、どぉー?」
「オレ様4匹ゲット!!」
「「そろってないじゃん!!」」
 サイクリードはそろえたようだ。
「4匹じゃだめなのかよ」
「ダメに決まっているでしょう、課題は5匹なんだから」
「めんどくせぇ〜」
「面倒くさがっている場合か、ブレアード。お前卒業できないんだぞ」
「だぁぁぁーーー」
「とにかく探すわよ」
「なんで、コイツいいじゃないか、放置だ放置」
「知らないわよ、根にもたれても。それに私イヤなの、グループ組んで一人だけ落第っていうの、なんか自分まで落っこちたみたいで」
「えーー」
「さ・が・す・の!!! 知らないわよ、ブレアードがテロリストになってアンタ襲いに来ても」
「ひぃぃぃーー」
 それだけは勘弁してくれと、サイクリード。想像してみだだけでブレアードが「めんどくせぇ〜」を連呼して砲撃でもしかけてきたら……たぶん良くても半殺し。
 日が傾きかけた頃、ブレアードがなんか叫んだ。
「みろギギググリがウヨウヨいやがる」
 呼ばれていってみたら、パイプから出る排水にまじってギギググリが、1匹、2匹とサイクリードの帽子に落ちてきた。
「このパイプって……」
 三人はフェンスに囲まれた建物に目をやった。
 間違えようもなく、インパクターのエンブレムが刻印された施設。
 ギギググリ採集に夢中になって、気がつかなかったがインパクターの施設に近づいていた。
「でもそれって……」
 廃棄されたギギググリじゃないのかしらとアクアルは思ったが、ブレアードは平気な顔して、
「んなもん、めんどくせぇが、育てりゃいいことだろ」
と意外なこといってきた。果たしてちゃんと面倒を見ることが出来るのかはわからない。

 

 

 やっとこさっとこ時間ギリギリで、宇宙エレベーターを使い衛星都市にまで上がり、タクシー捕まえて、ゼネラル・バッカスが滞在する宿舎まで飛ばした。
 タクシーの運転手は泥臭いギグハンターがそうとう恐ろしく思ったらしく、タダで送ってくれた。助手席にブレアードを乗せた作戦が功を奏したのだ。
「遅かったな」
 時計をみつつ、ギリギリだとバッカス。
「ゼネラル・バッカス。捕まえました」
「知っている、その容器には一定量のギギググリが入るとこちらに知らせが飛ぶようになっている」
「んだそりゃ」
「つまり遭難した場合の対処がこのバケツにあったわけね」
 バッカスはなにも言わなかったがアクアルの読みは正しかったようだ。
 早速、アケロン星人の施設にいって採ってきたギギググリを預けた。
 バケツの中身を機械に放り込んで数秒のうちに、あのカプセルになって戻ってきた。
「これから、お前たちが育てるんだ。最初の部下をな」
「じゃあ……」
「職業訓練校にもどって免状を貰え、就職先はワァク星に頼むか、自分たちでどうにかしろ」
「おっしゃーっ!!!」
 じっとバッカスは、ブレアードのことをみて、
「おい、お前たち」
「んだ、センコー」
「貴様、ズルをしただろう!!!」
「しまった!!!」
 バッカスの後ろのアケロン人が困った顔をしていた。
 どうやら遺伝子レベルの検査の時に、原産がインパクターからの養殖場だとばれてしまったのだ。
「……最近は野生のギギググリは大変数が少なくなっているのが事実で、というものの、野生とインパクターで養殖したものと大して違いはないんですよ、違いといったら……」(アケロン人の職員が写真を見せてきた)ほら、ここにちっょとした違いがあるだけで、初期状態のギグファイターの性能に差はないです。皆さんの持ち込まれたギギググリ、全部インパクターの養殖場から流れてきて野生化したものでした」
 そういう時代ですからとアケロン人。
「っていうことは……私たちどーなるのよっ」
「いっ遺伝子レベルなんて、見て分かるかぁぁぁぁ」
 バッカスは小さく鼻を鳴らして、
「学校側は卒業を認めるが、私は認めんっっ」
 アクアルとサイクリードの悲鳴の最中、ぽかんとしたブレアードが、
「べつにいいじゃねーか、めんどくせぇ〜」と呟いた。



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