即席セイザー小説。ちょっと長めの読みきり文書。 戻る

番外 東亜大学内 堀口研究所

 研究所内のホワイトボードの書き込みに対して、未加は大型犬のように唸っていた。

『焼き鳥のミックス50本以上(美味しいものを。スーパー品不可)by仁
追伸。冷凍でもOK、ってことで枝豆もよろしく
‥‥なるべくなら「だだ茶豆」が食べたいなぁ』

 肩を上げてフーフー唸っている姉を見て剣が二メートル先で片付け物をしながら
「まただね、おねぇちゃん」
「‥‥そうね」

 


1
 最初はこんな一言から始まった。
 庶民の生活基準がよく分かっていないお医者な伝通院洸が珍しくぼやいた。
「中元と歳暮で部屋が一つ潰されそうだ」
 基本的に病院に「お礼の品(現金も含めて)」を患者が持ち込むのを禁止している京南病院。ただ、医者個人の住所がわれて勝手に運び入れられるその手の「みつぎ物」の類は防御の仕様がない。夜勤や急患があったりしたら2〜3日は、自宅に戻れない、その間にマンションの管理人が、うんざり顔で山ほどの箱ものを渡すのだ。
「だったら、おれらで食っちゃおうか」
 本気丸出しの天馬の言葉に「そういう手段があったな」とあっさりと返事をしてしまった伝通院。
 相変わらずソファーの肘スペースに腰かけて、未加愛読のファッション雑誌を開きながら仁は、一人雑誌の内容にダメダシをしつつ、
「いんじゃない、ウチも酷いから、片付けて欲しいね」
「よっしゃー、タダ酒だぁー」
「甘いねぇ、小市民。誰がタダっていったよ」
「どゆことだよ、それ」
 つか、小市民ってなんだよと、仁に向かって堀口の捨てた紙を丸めて仁に投げた。
「来たモノの箱出しと、ジャンルごと分類してくれたら、あげてもいい。あ、ついでにお礼状書きもやってくれたら‥‥今ならビッグチャンスでお歳暮の0.5%を貴方にプレゼント」
「セコイのか、大盤振る舞いなのか分からないね。それ」
 ゴミは投げないでね天馬さんと剣は、紙くずを拾う。
「で、どっちから片付ける、オレ? それとも洸?」
 なんだったら、二人でジャンケンでもするぅ〜と、ジャンケンに勝つと信じられているおまじないしつつ、洸の顔をみた。
 ドアがやたらと静かに開いた。入ってきた人物を見て一応に全員が驚いた顔をした。
「直人ぉ」
「‥‥迷惑か?」
 いつでも帰りますといわんばかりに、ドアを開けただけで室内には片足も突っ込んでいない。
「ぜんぜん」
「‥‥そうか」
 相変わらず、会話と会話の間に時差がある。片足でドアをロックして、直人は背中を向けてかがんだ。
「‥‥迷惑か?」
 そういって、室内にドンと10個近いの箱を運び入れた。ファンやら企画会社やらから送られてきた貢物だった。
「‥‥」
 直人は気まずそうな顔をして、
「‥‥トレーニングから戻ったら、あった。多分食べ物だろうとは思うが」
「すっかり忘れてたね。プレゼント・キングは直人さんだったってこと」
 松坂直人への貢物は年中無休である。
 うぉーなに入ってるんだぁーと、天馬は箱に飛びついた。未加が「はしたないわよ、天馬。直人にアリガトウぐらいいいなさいよ」と怒っていた。いった本人も嬉々として包装用紙を破いている。それを見つつ弟は、息を吐いた。
「ゴメンネ直人さん。驚かせて」
「‥‥いや」
「さっきの話、聞いていたんなら話は早いんだけどね」
「‥‥ああ、混ぜて欲しい」
「いうと思った。つか直人へのプレゼントってなにが多いの。やっぱ下着ぃ、きゃー」
 よく分からないリアクションしていってる仁。
「‥‥多い」
 会話がとまってしまった。いくらお喋り大好きで、日ごろから春のひばりのごとくピーチク語っている仁は、露骨に「あーあ」とか直人に吐いてしまう。
「きゃー、千疋屋のフルーツゼリー。これって一個いくらなのかしら」
「お、おねぇちゃん」
 恥ずかしいなぁと、剣が真っ赤になって壁に顔を向けた。
「‥‥食べきれない」
 ハムがいくつか、デザート系いくつか、後はアルコール類の詰め合わせ。一般的貢物の類だが、日ごろの彼の生活を目の当たりにしている研究所内では誰もが「こりゃ消費するのは無理そうだ」と思ってしまう。トレーニングという名前の山篭り。食料は現地採集、下界の食事がしたければ豪の交番か、堀口研究所にふらりとやってくる。ついでにアルコールなんざ口にしない。増える一方で全然減らないのは確かだ。
「うーん、いつ食べても人からもらった物は美味いねぇ」
 冷えてはいないが、無造作に未加の脇から手を伸ばし飲みかけのコーヒーカップに刺さっているスプーンで仁はゼリーを一口ぱくり。
「だったら、自分で減らせば」
 それ、私が狙ってたのに。と未加がブーイングしている。
「ほんじゃ、気の変わらないうちに、三人でジャンケンしましょ、じゃんけん。最初はグー。洸ぁ、最初はグーなの。それ世間の常識。一回小児科で修行して来い」
 なにげに、ジャンケンが強かったのは洸だった。

 


2
 言葉どおり、洸の自宅マンションは大変なことになっていた。多少分類わけはされているが部屋の半分は未開封の箱で埋め尽くされていた。手伝いに来た天馬、剣、未加。それに蘭がその光景に呆然としていた。仁と直人は「ここも、ここなりにヒドイな」みたいなことをぼやいている。
「ねぇ、洸。聞いていいかな」
「なんだ未加」
「生きてるカニとかエビとかっていないわよねぇ」
「確認済みだ」
「ホント?」
「私は嘘はついていない」
「今日きた分にあったわよ、おがくずのなかに毛蟹」
 ワシャワシャ動くそれを手で掴んで、先生。未加はコレはなんですかぁと、印籠のごとく突き出した。
「はーい、みんな。生物兵器混入の疑いもあるから気をつけてねー」
 仁がパンパン手を叩いた。剣は持参してきたノートパソコンとプリンターをテーブルの上で立ち上げ、宅配についてきた伝表を打ち込む。他の面々はカッター片手に箱を開け始めた。
「なんか、段々倉庫でバイトしていた頃を思い出してきた」
 辛かったなぁと、天馬は昔やってた倉庫系のバイトを思い出す。
「そんなことも、やってたんだ」
「短期で。倉庫って熱いか寒いかしかないし。一回だけ冷蔵庫系の倉庫もあったなぁ、古強者なんか、冷凍庫のなかでコンビニの冷やし中華とか食ってるし。横に冷凍の新巻鮭とかあんのにさぁ」
「ふーん」
 剣が相槌をうつ。
「ダンボールなんか、カッター使わず蹴りで壊すんたぜ、こう四スミに蹴りいれて」
 さすがに蹴らないがあっさりと、包装箱がペタンコになる。
「バイト・スキルも侮れないね。‥‥水羊羹出てきたけど、どこに置けばいい?」
「テーブルの上〜。天馬さん、手当たり次第に箱は壊さないでねぇ」
「なんで邪魔じゃん」
「運べないよ、ある程度箱を残さないとぉ」
「あ、そうか」
 剣がノートパソコンを使って送ってきた相手の住所を打ち込み、その場でお礼状をプリントしている。
「来た品物も記入してるんだけど。常連の品物ってあんまりないね。タオル、海苔、お茶、油、石鹸、洗剤とか」
 さすが高いものしかないや、と剣が「お医者さんはお金持ちだなぁ」と独り言。
「‥‥タオルと下着とバンダナだったら、トレードするぞ」
「タオル以外の二品いらねー」
「タオルと石鹸は欲しいな」
「‥‥いいよなぁ。こういう貢物がくるやつらは」
 三人のやり取りを聞いていて天馬が「ムカつく」と投げる。
「どーでもいいけど、なんで贈り物系の高いお酒って、こうも凶器な形になるのかなぁ」 ゴツゴツとした洋酒の入っているビンを手にして、どーいうセンスよ、コレってと未加はいう。
「中身が消えても、置き場とゴミの分別に悩むよね、そういうの」
「そーだね」
 送った人間がなにを考えているかは不明だが、中身はともかくとして外見が悪趣味な洋酒のビン類は、扱いに困った。船だの胸像だの不思議な入れ物を端から並べていると、ヤクザの事務所のようになってしまう。一個や二個程度だったら笑い話だが、数は両手を越えて足の指まで使わないと追いつかない。
「わー海苔発見っ、洸さん貰っていい?」
「かまわない」
「ありがとう洸さん」
 蘭はマジックで箱に名前を書いた。日ごろから弁当を作るのだから必須アイテムだ。
「何気に金券があるのが、怖いんですけど。伝通院先生ぃ」
 しかもプレゼントのメッセージカードが入っている封筒に入っているのを見つけて、仁が「複雑だねぇ。どうしたもんよ先生」といってみる。洸は「扱いに困る」と返した。
「ぜ、全国共通お米券。洸ぁ〜頼む。オレにくれー」
「寒いこというな。露骨に貧乏丸出しスギ。ナンだったら『銭金』に投稿してあげようか」
「そこまで楽しくビンボー生活してないし」
「つーか、オマエは彼女に金使いすぎっ」
「え、天馬って彼女いたのぉ」
 未加が食いつく。
「ちゃうちゃうって。天馬のコレだよ、コレ」
 バイクの運転をするようなジェスチャーをする仁。ああ、コレねと返す未加。
「バイク改造の前に、オマエの生活を改善しろよ」
「まったくだ。栄養失調と栄養過多の極しかない。まずは食生活をどうにかしろ、馬鹿者が」
「そーだよねぇ。ラーメンおかずにご飯はないでしょう天馬さん」
「剣ちゃん、天馬さんってそういう人だったの?」
「そーらしいよ。だからすぐにキレちゃうんだよ。きっと。カルシウム不足で」
「そーね。そーよね。あげ玉で作った具のない天丼とか聞かされたときには、私だって涙が出たわよ」
 いわれたい放題である。反撃をするチャンスを狙っていたが、その隙すらない。
 地球を守るスーパーヒーローといえば聞こえはいいが、いかんせ時間が不規則だ。宇宙からの余計な訪問者たちが、定時にやってくるわけでもない。時間が自由になるバイトとはいえ、休めば直接的に生活に響く。歩合制のバイク便仕事だから余計に痛い。社内きってのスピードを誇る天馬で多少は優遇されている立場だが、最近事務所の人たちの視線がなにかと痛い。
 仕分けの9割が終わり、洸はいくつかの箱を引きずり、上箱に生真面目な書体で『弓道天馬行き』と書き込んだ。


 

3
 伝通院洸の自宅マンションは、無意味に広く。家具、電化製品を丸ごと『無印』でそろえました感じで殺風景だった。部屋を使っている印象も薄く、無駄に機能があるキッチンも湯沸し程度にしか使っていないのが丸見えな自宅だった。
 一方、それ以上にでかい松坂直人の自宅は、まるで引越し前後のように、全てがダンボールに入ったままだった。壁際に横たわっている寝袋が妙にこなれている。寝室も使わずここで寝ている気配がする。ついでにいうと家具もなけりゃ冷蔵庫もない。部屋というよりは倉庫のようだ。
「なあ、直人。ここに来てどんくらい?」
「‥‥1年」
「‥‥」
 全員がどんよりした。生活臭のしない人間だとは思っていたがまさか、ここまで破綻していると誰が予測しただろう。
「直人。早く彼女か奥さん作れ。それに放浪癖、アレやめろ」
「‥‥トレーニングだ」
 直人は不機嫌そうに仁を見た。
 ここも伝通院洸邸程度な貢物だった。ただ選別も全くされていないので難航が予想される。
「かぁーーーっ絶対やばいもの入ってそう、なんか感じる」
「生物兵器とかありそうな感じしない?」
「アリだね」
 剣は包装紙を破りながら、なんとなく怖いよね、という。
 蘭が、すごーい、と大きな声をあげた。
「直人さん、みてみて凄いよぉ。アルマーニのスーツがあったのー」
「いるんだねぇ、熱狂的信者が。アルマーニねぇ、直人が。ふーん」
 なにか言いたげにジロジロと仁が直人の身体をみて、未開封のスーツをみて。
「コレ着てチャイナタウンあたり歩けば、新しいマフィアの幹部だと思われるぞ、気をつけろよ」
「仁、全然フォローになってないから」
 未加が、気持ちは分かるけどいわないのと、付け足す。
「ギャーーーーーーーーーー」
 剣が悲鳴を上げた。なんだと洸も走った。
 箱から出てきたのは、山ほどのお守りと、便箋にびっちりと書き連ねた『好き』という言葉。
「‥‥ああ、たまにある。扱いに困る」
 直人は空気と水を吸っているみたいに、ぼそりと一言。
「この文字羅列には、得体の知れない恐怖を感じるな」
「洸、冷静に見なくても分かるって、そういうこと」

 


4
 事務所の玄関を入ってすぐの階段付近に、山積みになっているギフトセット。
「非常口をふさぐな。何かあったら死ぬぞ、仁」
「やばくなったら、セイザーパワーで、ちょちょいのパっと逃げるって」
「グランセイザーの力は、そう軽々しいものではない」
「べっつにぃ、オレ洸みたいに使命感ないもんね」
「あーあーあーやめてくださいよ、仁さん洸さん」
 剣が割ってはいる。姉も間に入って、
「仁も、そうやって洸をからかわないの。洸は真面目なんだから」
「だから、やってんの。たのしぃーじゃん」
 ヘラヘラと仁は笑う。
 土曜日だからだろうか。スタッフが誰もいない。仁の事務所の場合、修羅と暇しかないが。毎回こんな感じで責任者がプワプワしているによく、ここの会社は回っている。このとぼけたセリフと表情になるのは、仲間内だけの姿かもしれない‥‥確立は低いが。
 剣がパソコンを立ちあげLANケーブルを刺そうとしたとき、仁が「まった」をかけた。
「挨拶状のイラストつくったから、これを印刷してね。いま、メールでアップしたイラストをURLを送るから」
「あんまり大きいと遅いし、共有経由はだめですか?」
「うーんありがたくないなぁ。一応事務所の機密保持ってのがあるし、ああ。大丈夫そんなに重たくないから。ごめんな剣。オレのモバイル使って」
 事務所の机に閉まってあったPHS系のモバイルモデムを受け取り代わりに指した。
「ねえ、仁さん。さっきの洸さんと直人さんの贈り物の主の情報、ほしい?」
「え、さっき全部渡したんじゃないの、直人は別として‥‥」
「いえいえ、ちゃんとコピーしてあります」
「やるなぁ越後屋」
「いえいえ、お代官様こそ」
 急に暗くなった。二人が振り返ると、オーバーオールを着た未加が腕を組んで仁王立ちしている。
「なにしてんの、あんた達」
「お、お姉ちゃん。冗談だってば」
「情報漏えいなんて、正義のヒーローはそんなことしないよぉ、未加」
「どーだかね。‥‥ってホントにコピーしてるじゃないっ剣っ」
「うわっやばっ」
「アンタのパソコン系の冗談は、冗談にすまされないトコロがあるのよ」
 現役の学生。パソコンのスキルは「普通に使える程度」の未加。剣の場合は少し状況が異なる。なにげに「秋葉原の路地裏の店にも平気でお買い物が出来そうなレベル」だったりする。実際、剣の部屋には年中外装をつけず剥きのままのパソコンが、年中ギーギーいっていたりする。姉がなんで、こんな状態でパソコン使ってるの? と質問をすると、
「ついつい、色々いじりたくなるからケースをつけるのが、疲れるんだ」
と、将来が頼もしいのか、不安なのか考えてしまう返事が返ってくる。実際、東亜大学内の堀口研究所付近の研究室で、パソコン系で手詰まりな状況に陥ると、獅堂剣にお呼びがかかる。単に「文系なので、パソコンが苦手な人が集まったから」という理由だけではないらしい。
「でりーと」
「ぎゃー」
「ついでにゴミ箱の中も消してあげる」
「なんてことすんだよ、お姉ちゃん」
「アンタが悪いの。アタシに文句を言うのは私に勝ってからいいなさい」
「喧嘩じゃむりだよー。ひどいよ、すぐ暴力だ。天馬さん、お姉ちゃんに何とかいってよ」
「こっちに話題を持ち込むな。俺はまだ死にたくない」
「はいはい。ここでトライブしない。手伝ってくれるんじゃなかったのぉ」
 仁がパンパン手を叩く。
「そもそも仁がお調子にのったから、よくないのよ」
「うわ、ブラコンパワー炸裂」
「なんだったら、ホントに炸裂するわよ」
 仁に拳をロックオンしている。
「あわわわ」
「おら、そこのアンポンタンども。なにじゃれてるんだよ、ったく」
 天馬が、をら、手伝えといっている。
「はいはい」
 この人だけには、言われたくないよなって顔で三人が顔をあわせる。
「やっぱり、三人とも贈り物って色々違うんですね」
 蘭はいつもの通りマイペースに手を動かしている。
「飲み物関係はの4割は研究所に寄付。おれは、一割でいいから他、持ってってもいいよ」
「太っ腹ぁ」
「食べ物関係は、あんまりないよね」
「うん、スタッフのコたちに配ったから。またなんか来たら持ってくよ研究所のほうに。邪魔だから、もうジャンジャン持っててもいいよ。ただし金券はダメだからね」
「なんか、プレゼントいっぱいだから、クリスマスみたいね、剣ちゃん」
 蘭はうふっと笑ってさっき直人のもらい物から「覚醒・松坂直人」とか書いてあるオフシャル・タオルを自分の首にかけた。微笑む彼女が、ハードコアな松坂ファンに一瞬見えた。

 

5
 タダでさえ手狭な堀口研究所が、よりいっそう狭くなった。三人がそれぞれ持ち込んだ口に入る系貢物が箱ごと積まれている。週末というか、18時からというか、あまり日にちを選ぶことなく、
「消費のための飲み会」
が、続いた。
「天馬」
「あぁ?」
 仁の持ち込んだ笹かまぼこを噛み千切りながら、名前を呼んだ洸のほうを見た。
「通風には、気をつけろ。そこまで私は面倒を見切れない」
「だって洸、医者じゃん」
「医者だったら、なんでもいいのか私は。外科医なんだぞ」
「そなの、オレ医者のジャンルってわかんねーし。内科ってアレだろ聴診器当てるほうで、外科って切るほうだよな。違うのか?」
「‥‥」
 伝通院は、窓を見た。
「天馬さん、サイテー」
 ジュースを啜りながら愛は膨れた。
「おい、未加。この枝豆悪くなってるぞ、色が黒い」
「違うぞ、誠。これはこういう品種のマメなんだよ」
 プチっと枝豆を手のひらで受けた誠が、首をかしげた。なんとなく茶色い。どうみてもあのアマガエルのような緑ではない。
「仁さんの指定が、だだ茶豆だったからびっくりしちゃった」
と蘭。
「うん、高いよね。でも何でコレが高いの?」
と未加。
「そりゃ、米でいうところの『魚沼産コシヒカリ』カバンでいうところの『びとん』って感じのブランド品だし」
と辰平。初めてオレ食ったけど。と続けた。
「うわっ直人。よくハム食いながら、オレンジジュース飲めるなぁ」
 豪の顔のパーツが引きつった。
「‥‥腹に入れば一緒だ」
「後味が‥‥どうかと思うぞ」
 真顔で突っ込む神谷豪。
「あ、洸。この間のカニどうしたの。あの、おがくずに入っていた生きたカニ」
 未加が、カニポーズをする。
「最近多いわね、そういう贈り物。あれって少し迷惑よね」
 涼子は低く語りながら、楊枝で生ハムを捕まえていた。
「‥‥しまった」




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