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◎番外 ××と仲間たちと。
「‥‥んか、嫌な予感プンプンだねぇ。さばの塩焼きぃ、オレ鯖ブルー苦手」
ろくでもない連中が揃ったものだと堀口は、頭ッから秋刀魚を齧りながら言う。堀口博士がだ、昼飯でも食わんか? と誘ってくれたまではいい。ひょこひょこついていったら「前金制の定食屋」だった。
まあ博士が「おごる」って話だしあまり文句は言えない。
万年昼食屋っぽい室内には客がちらほら。昼を食べる時間はとうに過ぎているからしかたがない。
一度青魚にあたって悶絶した過去があるという仁は、魚が売りの定食屋で鶏のから揚げ定食を頼み、未加からバカ呼ばわりされている。ついでにそいつにマヨネーズをかけて食べようとしたら今度は、涼子にしかられた。愛は「美味しいんですよね、から揚げにマヨネーズ」と仁とホンの一瞬だけ同調してくれた。
直人はあいもかわらず行方不明。豪は交番勤務。辰平はイルカショー、剣は学校。で蘭は珍しく用事。安く済んだと堀口博士はサイフを叩いた。
タダメシ、ご飯食べ放題、味噌汁飲み放題、フリカケ使い放題、ついでに生卵Sサイズもいくらでもどうぞなお店ルールに嬉々とした天馬のドンブリ飯は、極彩色の惨事となっていて、じっとみている人たちのほうが食欲を失いそうな色をふりまいている。洸はご飯にごま塩をかけていた。さっきから言葉らしい言葉を聴いていない。夜勤明けかなんかだろう、かたっぽで愛が元気がいいところを見るとシフトが違うのかもしれない。誠はアジフライにしょう油をかけるかソースにするかで考え中。
未加は、大好きな生卵ごはんをぐっとガマンした。本人なりにいろいろ気になることがあるらしい。涼子は鯖の味噌煮を丁寧に解体している。きっとみかんの皮もツルツルにまで剥かないと気がすなまそうなタイプ。愛はホッケを頼んでいた、成人式を迎えた後が心配になった。
「どうした、洸。疲れたのか、眠いのか」
額に手を当ててコメカミをマッサージしている洸に天馬が声をかけた。
「山の中を歩かされた‥‥」
「はぁ?」
愛以外の皆が疑問詞の声を上げる。
「あれ、ですよね先生」
頷く洸。
「どいうことかな、それ」
仁はモシャモシャとレタスをかじる。
「もしかして、検死かなんかか?」
山に医者といったら、そんぐらいしか想像できないがと誠。
「そうなんです。変死体‥‥白骨死体なんですけど、見つかっちゃって広い山のなかを警察なひとたちと、うちの病院の人達が総出で。あれってクジビキでしたっけ人選」
「あたった」
愛の言葉に洸はひとことで返す。
「なんか‥‥大変そうだなぁ」
医者ってんなことまですんの? と天馬。
「発見場所が山の中。麓の村は今、ラーメンで村おこしを狙おうとしていているんだ」
「‥‥はぁ」
「足自慢の研修医が持ってくる骨はほとんど、野犬がもってきたラーメン屋から出た骨ばかりで‥‥仕方ないので私も山に入ることになった」
「想像しただけで疲れそうね、それ」
お茶を啜った涼子がいった。
「最近多いんですよ、そういう困った事件」
気温が高いからでしょうか、と愛。
「困った事件って‥‥なんだよ」
愛がえーっとと言葉に困っていると、洸が話を続けた。
「電車の人身事故のことだろう」
しんとした。涼子だけが黙々と箸を進めていた。
「なるほどな、確かに困った事件だ」
キュウリをポリポリ齧りながら誠。生卵食べなくてよかったと思う未加。頬にものを詰めた状態で固まる天馬。始まったよ無配慮会話、と仁は嫌だねぇと呟く。
「集まったのをもとの形に戻すのだ」
「え、そんなことすんの? あれ」
「そうだ」
「話には聞いていたんですけどね、実際見ると凄いです」
お食事中にお話できるとこではないですと愛。で少し続けた。
「先生は凄いです。発見されたパーツを全てつないで元通りにしますし。私なんか何を見ても一緒に見えるのに、先生の指示は『上から三番目、右から四番目だ』とか凄いです」 この娘も「その道の人」らしく段々羞恥心?
がなくなりかけているのかもしれないと涼子は愛の言葉でそう思った。
「先生は他の先生たちと違ってもの凄いです」
愛は強調させた。
「死体さん、立てますからね。脊椎と骨盤と頭が揃っていればですけど」
‥‥きっとこの場に辰平がいたら、話のネタと愛の口からそんな話が出たってことでひっくり返るかもしれない。と誠は思い、彼がいないことにほっとした。ついでにこの話を自主的に語る気もない。
「ところで、死体を起立させるのって、そんなに重要なのかしら」
アンタたちいい加減にしなさいよと、涼子。
「外科医としてのポリシーだ」
洸はきっぱりと。壊れたものは治すと言いきった。
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