即席セイザー小説。かなり短い読みきり文書。 戻る

番外 ××は沈黙しろ


 見てはいけないものを見たのかもしれない。
 だれもいないことをいいことに冗談半分、堀口研究所のノートPCになにげに引っ付いていた外付けのハードディスクを開いてみた。んなやばいものがあるんだったら、パスワードぐらいしとけよ。と仁は思った。というか‥‥保護者はこの事実を知っているのかねぇと、腕を組んでうーんと唸る。


 ちょいと前に、電車に乗っているときの暇つぶしに買ったスポーツ新聞にだ、こんな記事が掲載されていた。とある米国の映画サイトがハッキングされ、だれもが知っている映画のロゴが、黄色いアヒルに変わっていた。多少お笑いの分かる映画監督は「面白いけど一ヶ月以内に直してね」と正式コメント。一週間を待たずして元に戻った。「JURASS** PAR*が、JURASS** LAKEに、モードチェンジしていた事件だ。ついつい気になった仁は知り合いに頼んで画面のロゴだけを貰うことに成功。しばらくの間自分のパソコンの壁紙になっていた。
 これは、かなり大昔なことだ。こんなコンピューターウィルスが発見された。ある時間か日にちがくると「不二子ちゃーん」と声が上がり、あのフランスの大泥棒の三世が出てくる、それだけなウィルスがあった。


 で、なんでそんなものが、ココにあるんだ。
 データをばらして見る。閲覧が出来てかつ自分の分かる知識でも、おいおいと思うようなものがあっちこっちから、ゴロゴロ出てくる。べつにエロ画像じゃない。どちらかというと知的所有権がどうのて話になる。
 研究所に出入りしている人間はいっぱいいる。最低のメンバーでも10人では効かない。が、ここに「完全に生息している人間」は、極極限られている。主の堀口博士、助手の獅堂未加、その弟の剣。で妥協してバイク便ライダー弓道天馬。
 ‥‥どう考えても、こういうことが出来そうなのは、あの高校生しか考えられない。
 学生は知識があって、かつ暇なのだ。ないものといったら、金ぐらい。
「あ」
 ノックもなしに入ってきた。視線が仁の手のひらの隣の箱に、で仁の顔をみつつ「ふーん」といった。
 なんだ、このリアクションは。
「もしかして、見ちゃった?」
 自信たっぷりの笑顔で笑っている獅堂の弟。
「だって、あるから‥‥なにかなぁって。つい」
「つい、ねー」
 ふーんと鼻で息をしながら仁つかつか寄り画面を見てまた、ふーんと鳴いた。
「その顔からすると、中身なんだか分かったんだ。凄いね仁さん」
 意外にPC強いじゃん、とかいっている。何かが琴線にさわりムッとしたものが胃を駆け上ってきた。
「お前、オレのことバカにしてるだろ」
「ぜんぜん」
 うそつきの顔だろうと仁が思っているのを見透かしてか、やだなぁ、とかいっている剣の笑顔。
「ボクね、そういう面白いネタを集めるの大好きなんだ」
 無邪気に笑顔な剣に暗黒面を見た仁。面白いっちゃそーだけど、限りなく犯罪だぞと心の中で突っ込む。
「それにね、そのバイキンマン。一部はボクのペット」
「ペットぉー?」
「そだよ、一定の時間が来るとCDドライブのフタが勝手に起動したり、指定のURLにとんだり、まあ色々だけど。ねっ面白いでしょ」
「他人のパソコンで、そーいうことするかねぇ、普通」
「しないね。ま、お遊びだし」
 外付けのハードディスクを片付ける剣。
「でも、勝手に見ちゃうのはよくないよ、仁さん」
 下手なパソコンスキーは、コレだから怖い。親友の真司が学生のころ、いろいろやっていたし今では職業でそういうこをしているので、剣のやっている行為がどーいうものか察しがつくあたり、ちょっと嫌なものがふつふつと沸く。

 

 数日後。

 堀口博士、未加。それに博士から頼まれたジャケットを届けに現れた仁。
「そうだ、仁。新しい発見をしたんだ、まあ見てくれ」
 分かるネタだったらいーんですけどね、と立ち上がるパソコンの前に立った。
「超古代の研究が進んだから、博士ゴキゲンなのよ」
 と未加。
「?」
 仁は、立ち上がるときのアラーム音が違うに気がついた。
「なんじゃこりゃ、未加。大変だ知らんうちに私のパソコンがマッキントッシュになっているぞ」
 どーんと出るリンゴのマーク。
「え、ホントだ。でもなんで??」
 未加がガチャガチャしている間に、いつものデスクトップに戻ったというか切り替わった。
「わ、なにこれ。ウィルス入っちゃったのかなぁ。ソフト入れているのに‥‥後で剣に見てもらいます」
「そうしてくれ、怖くてたまらん」
 違うんだよ未加。あれは単に起動画面をすり替えただけだから。ついでに元凶はアイツだ。
 弟を溺愛している姉と信頼を寄せている博士に、言いたくても真実をいえない仁だった。



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