即席セイザー小説。かなり短い読みきり文書。 戻る

番外 東亜大学内 堀口研究所 机

 

 獅堂未加大学生21歳。得意なことは片づけ。趣味読書。好きな色は赤系。好きな食べ物大好きな人となら何でも美味しい。
 なんだけどねー。フツーの女の子(自称)が急に「おめでとう、あなたは超古代の遺伝子を受け継いだ戦士グランセイザーです(ファンファーレ、くす玉、鳩の三連コンボ)賞品として11人の仲間と巨大ロボ、ナックルライザーをプレゼントっ」
ていう話になった。
『宇宙人があらわれたっ』
 ……あの、課題もださなきゃいけないのに。
『インパクター・ロギアが暴れているっ』
 ……国に帰ってよ、ロギア。
『見たことない宇宙人がきたっ』
 ……ああ、レポートよ。れぽーと。どうしよう。
 おーい、おい。聞いてるかー、未加。もしもし。
 このアンポンタンがっ寝るな。
 おねぇちゃんってば。


 がばっと飛び起きた。どうやら研究所の机にうっぷして眠っていたようだ。
 茶色に染まった室内に男が三人。いつものメンバーだ。
 風邪を引いちゃうよ、と弟が。
 それは、私の机だ。寝られたらワシの寝るところがない、と堀口博士。
 おい、よだれでてるぞ。うそうそ、とバカ天馬。とりあえず一発殴る。
「いてーなちくしょう、この暴力女っ」
「なによー、そういう恥ずかしいこといわないでよ。ほんとデリカシーとかないの、アンタっ」
「起きがけに、殴るおねーちゃんにも問題あると思うけどなぁ」
「ちょっとぉ剣。よりにもよってバカ天馬のカタもつのっ」
「おい、バカはよけーだろ」
「生絞り百パーセント濃縮還元バカっ」
「そんな、あんまりだよーおねぇちゃん」
 相変わらず騒々しいこのお子さま三人組に、堀口博士は後頭部をぽりぽり掻いて、
「すまんがな、未加」
と、きりだす。
「なんですか、博士」
「ちょっと国防省まで、お使いに行ってくれないか。これをだな沖田君に渡して欲しいのだ」
 銀色の小型アタッシュケースを手渡す。
「わかりました」
 クルマ運転しながらレポートのネタでも考えよう。最悪の場合は、剣に口述筆記で手伝ってもらおう。
「休憩時間終わり。さあ、おれはバイトに戻ろうっと」
「何しに来たのよアンタ」
「お茶」
 グーを振り上げる姉の腕を弟は両手でつかんだ。
「いまだ天馬さん行ってっ」
「おっおうっ」
 じゃな、といって天馬は、スタコラ走って逃げていった。ここの男どもはなんだかんだいっても他人に優しすぎる。すぐ連携とるし。いつもなんか、私ってハブにされてるのかなぁって思うことがある。どー考えても「仲間(男子系)」って認識されているような気がする。

 

 国防省はいくつものセクションがあって建物もいろんな場所に点在している。街中のビルだったり、山奥だったり。その時の用件に応じて出向くことが多々ある。今回は運が悪いのだろうか、山奥のほうだった。一人だけのドライブはいつぶりだろう。ラジオから流れる曲にのって歌でも歌って、それはそれで楽しい。と思いたい。曲の合間なんかの一瞬の間がなんとも怖く感じてしまう。騒々しい状態が普通なものだから一方的でハイテンションのFMラジオ放送はノレない。なんかテンション下がる。
 ほどなくして、相変わらずM16ファミリーなんかを物騒にぶら下げた国防省門番。がちゃがちゃ鉄の音をひっさげて窓に近づいてきた。発行されている身分証を見せると、小さく会釈されて通された。施設内にある駐車場めざし走らせていると訓練で走り込みをしている職員たち数人とすれ違う。ふと思う、こんなに人材がいるんだったら、自分がお使いしなくてもいいのではないかと。御園木さんも、もう少し考えて欲しいと思った。駐車場にクルマを預け、銀のトランクを片手に建物の中に入ろうとした。いやに混んでいる、ついでに騒がしい。何なんだろとおもい、人垣の隙間でジャンプする。全然わからない。
 一つだけ言えるとしたら、なんとなく「新鮮」の香り漂う騒がしさ。玄関先を埋め尽くした比較的若い男女たちは、希望感と緊張感にあふれた気配を漂わせている。なんかのイベントだろうか。人をかき分け進み、とりあえず列に並んでみた。選挙会場の最初みたいな長机に国防省の職員がついていた。
「あの〜」
 未加が、アタッシュケースを胸に持ち職員に寄った。
「35番」
 なんか封筒を手渡される。
「ちっょと、なに。違うってば」
 沖田さんに用事が……と言いかけていたら職員がさっさと動けとシッシされた。感じ悪い。むくれ加減に封筒の中身を見た。
『志願者へのしおり』
 ……。
 どういうことだろ。未加はこの人混みで困惑した。

 


 長々と、まるで戦争映画の冒頭15分の光景のようなきつい性格の教官らしい人が背中に手を回し高圧的に喋っている。
 自分はどうやら国防省のどっかのセクトの入隊テストに混ざってしまったらしい。銀のケースを握りどうしたものだろうと考えた。この場で手を上げて「すみません、私違うんです」と名乗り出ようか、このまま成り行きに身を任せるか。どうしたもんだろう。ここで声を上げたらこの場の雰囲気ぶち壊れそうだし。ちょっとだけ未加は国防省に興味があった。少しこの臨時のイベントに参加してみよう。もしもやばくなったら素直に名乗り出よう。民間人だって。その機会があることを祈りつつ。

 

 早速にあったのはペーパーテストだった。渡されたテスト用紙をじっとみて微笑む。現役(ちゃんと勉強している)大学生を舐めてもらっては困る、と。間髪入れず黙々と鉛筆を走らせた。常識問題やらのチャンポンテストなんざお呼びでないのよ私。開始10分にして全て埋め終わりぴっちり埋められた空欄に向かって片方の口角を上げた。
 テスト終了後5分間の休憩を挟んで身体測定。「少し小さい」と言われたが文句なしに素通り。小さいと言われた以外はどうでもよかった。つか、久方ぶりに体重計に乗ったのがなんとも恥ずかしかった。
 道すがらにジャージが手渡され、案内図に沿ってやってきたらそこは板張りの体育館。どうやら格闘系のテスト会場だった。男女とも平等に乱取りをしている。未加の背中に熱いものが走った。今までのいろんなうっぷんを晴らすには最適なロケーションだ。組み合わせの相手は男ときている。
 相手のパンチを半身でかわし、振り向きざまに腎臓めがけ蹴りを一発あびせ、ステップインして相手の後頭部にヒジ打ちを繰りだそうとしたところで審査員に待ったが入った。ふーん志願兵ってのも弱っちいんだと正直な感想が湧いてきた。こんな乱取りだったら涼子としていたほうがよっぽど刺激的だ。そう未加は胸の中で感想文を書いた。
 道なりに進むと今度は、戦闘服が手渡され着替えろと指示される。玄関先の門兵と同じM16系の重火器が手渡された。予想を反してかなりの重さだ。もっと軽いと想像していた未加は正直目を丸くした。沖田さんたち国防省な人たちはコレを持ってダッシュしていた。それってもの凄いコトなんだと、初めて触る鉄の重さにうなってしまう。
 で、これを持ってどーするのと未加は小首を傾げる。前列の人たちがまるで映画のセットのような場所に特攻して銃をぶっ放した。鮮やかなピンク色の液体が敵と想定された看板にヒットする。
 これが以前に誠がいっていた『ペイント弾』っていうヤツなんだと未加は認識して自分の出番が回ると指揮官らしい人にトランクを無理矢理預け、映画セットに飛び込んで照準をのぞいた。サイト・アライトメントにぴたりと合う。以前こういう講釈をたれていた反町誠と神谷豪に感謝した。トリガーを引いた。初めて握る銃口。正直ね内蔵の後ろの方が冷えた。ペイント弾とはいえ本物に近いだろう反動が鎖骨に響く。肩に針を刺したような冷たい衝撃が全身を振るわせて靴に覆われた足の小指まで振動が伝達され神経が高揚感の波に震える。このぞくぞく感が、昔薬師丸ひろこの映画から生まれた言葉の意味することだったんだと、セットのなかを駆ける未加は思った。


 
「すごいですね、35番。ペーパーでの成績はほぼ満点。格闘戦も凄い」
 黒いジャンパーに身を包んだ国防省の職員が随時寄せられるメモを読み上げて感嘆の声をあげる。
「女性で若干身長と射撃の腕に難がありますが、ルーキーとしては申し分のない成績だと思います」
「我々『月光』も場を選ばずに行動ができるようにしたい。そのような有能な新人は欲しいな」
「民間の人間らしいです」
「ますます結構だ。潜入の際にはなにかと助かる」
 男は手渡されたコーヒーを口に含みいった。
「我々は異星人相手に戦闘しているんだ、即戦力は嬉しいものだ」
「沖田隊長」
 ああやっと隊に補充ができると、部下が喜んだ。
「我々にはユウヒがある。だが、宇宙からの侵入者に対して全てに万能な訳ではない。強い火器を持っているだけが『月光』の立場ではない」
 張り付いている部下は深く頷いた。
「……見たいな」
「実際ご覧になった方が選別しやすいですよね」
 ライブ映像を回してモニターを見た沖田総一郎は、げふっと咳き込み加減にブラックコーヒーを吐き散らした。
「獅堂……未加?」
「ご存じでしたか。どこかの部隊の人間でしょうか?」
と、他の月光部隊の隊員がいう。
「……彼女はグランセイザーだ」
「え、でもなんでこの選抜にいるんですか」
「わからない。すまんが回線を回してくれ」
 通信担当者が、マイクを渡した。
「沖田だ。今の演習を即刻停止せよ。……命令だ」
 停止の合図があがりきょとんとした、未加の姿がモニター全部に映し出された。

 


「あー。沖田さんっ」
「なにやっているんですか、獅堂未加さん」
「博士からお使いを頼まれて国防省に入ったら……紛れちっゃて。あはは」
 力無く笑う未加の姿に、沖田を追ってきた月光の隊員が唸った。
「すみません、遅れました。これを堀口博士から預かって来ました」
 トランクを手渡した。
「わざわざ、ありがとうございます。それに色々ご迷惑をかけました」
「こちらこそ。テストの邪魔をしてご免なさい」
 お互いに頭を下げ合っている様子をみて隊員は絶句した。
 沖田は儀礼を重んじるタイプで、国防省の幹部でも比較的腰の低いタイプの人間ではあるが、そこまで頭を下げるようなことをすることは滅多にない。
 じゃ、と手を上げて走り去るゼッケン35番相手に手を振り、博士によろしくといっている沖田の姿に少なからず国防省の職員は困惑した。
「隊長……」
「どうした」
「いい、人材ですね」
「ああ」
「その、グランセイザーでなかったらね彼女のことをどうしています、隊長」
「即スカウトだ。もしも彼女にこちらに来る気があれば、いつでも大歓迎だ」
「おしい、ですね」
 沖田はその言葉に強く頷いた。

 

「未加へ国防省がスカウト??」
 なんじゃそりゃと、堀口博士の言葉に対して天馬はソファーに座りセンベイの欠片を宙に飛ばした。
「沖田君からそーいう電話が入った。本気らしい」
と堀口。
「ふーん。お姉ちゃんが国防省……制服似合うだろぅなぁ」
「似合いすぎて、怖いっちゆーに」
 ぎゃははと笑う天馬。
「つか、ユウヒよりも怖いって」
「て、天馬さん……う、後ろぉ」
「んぁ……げっ!」
「だぁーれぇーがぁー、巨大ロボットよりも怖いのよぉぉぉぉ」
「ふぁ、いっいたの、みっ未加っっ」
 拳を振り上げる未加。
 逃げまどう天馬と追いかける未加に大混乱の研究所。いつもの騒音が帰ってきた。

 

 

 沖田様へ

 私は、お誘いをしていただきありがとうございます。
 けど
 今の仲間たちと離れる気はありません。
 試験を混乱させてご免なさい。
 私の能力を認めてくれて、嬉しかったです。色々参考になりました。
 今後も、いろいろお世話になります。


  獅堂 未加




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