即席セイザーX小説。戻る

縁側生活24時


「はいはい、これで完了」
 パンパンとケインは手を叩いて、おーわったといってる。人を荒縄(物置に放置してウン年は経過している、つかこれが家にある経緯もまったく分からない。工具ならいざ知らず、あきらかにこれは農具に思える)でスマキにしておいて、平気な顔しているあたり、この笑顔でゆるい面の奥になんか、妙なものが住み着いているんではないかって勘ぐってしまいたくなる。
「透明バリアで、この庭からは出られないからね、わかってる? ブロック」
「だーかーら、ブレアードだっていってんだろっっ」
 ゴザなのか、ムシロなのか区別がつかなそうな敷物までケインはせっせと、敷いている。つうかこれも明らかに農具。ああ思い出した。じーちゃんの趣味に盆栽があった。それで使ってるのか。……まて、こんな変なヤツを庭に放し飼い(いや一応くくってはいる)して、じーちゃんのそこそこに大切にしているであろう、盆栽をガッチャリやっちまった日には、このトゲトゲ野郎の明日は……たぶんこない。
 いくら戦艦に放り込んでいたら、うるさいしヘタをして手土産に戦艦でも盗まれたら笑い話にもならないのは、よく分かるがなんで我が家の庭なんだろうか。つーかセイザーXってそれなりの組織なんだろうから、それナリな施設ってねぇのかよ……っ……あ。『今』にはねぇーか……。
「なんつー酷い扱いだ! 鬼か悪魔かおまえら!!」
「宇宙海賊やっているお前にいわれたくもない」
 吐き捨てるかのようにアド。
「こんな寒々しいところにいたら、風邪引いちまうだろうが、どーしてくれんだっ」
 バリアの境界線スレスレに顔近づけて、
「なんだったら、イーグルライフルの弾頭に放り込んで、そのまま太陽に向かって打ってやろうか。さぞかしあっちは暖かいぞ」
「なんだとー、火将軍のオレだって、生きて帰れねーじゃゅねーかっ、殺す気かーー」
「まぁ、お前らがいなければ、こんな戦争は起こらなかったのだからそれでもいいかもな。名案だな」
 目がマジだ。そもそもアドは冗談をいわない。知っていたとしても絶対つかわない。というかギャグ自体を知っているのかが疑問だ。
「だめだって。シャーク隊長にいわれてるでしょ」
「分かっている。いってみただけだ」
 目がマジだ。最近アドはなにかとトゲトゲしている、なにかしそうで怖い。
 あまりよい提案ではないが、やっぱりココで預かるのが一番いいのかもしれないと、拓人は思った。



 翌日早朝。ブレアードは夜露と朝露に悩まされて、あまり寝られなかったと、本人談。さすがの未来製バリアってやつも天候まではどーこーしてくれないようだ。

 

 

 朝早くから、母・春子は朝食やら洗濯やらで動いている。そいつをじーっと庭から見ているしかないブレアードがつぶやいた。単純に忙しそうだなぁ、と。
 拓人本人は、生まれて以来のずーっと繰り返してきたことなので気にもしないが、このトゲトゲ野郎には、なにかが新鮮に映ったようだ。

 

 

 そういや自分たちの戦艦はいっつもサイクリードが指示するギグファイターがセッセと掃除していたっけ。アイツは気が細いから汚れているとかに一々煩いやつだった。アクアルは、なーんもしない。作戦を考えるっていって自分の部屋いってるか、さもなくばやっぱり、部屋にいる。炊事洗濯まるでダメ。つぅーかやらねぇ。しねぇ。
「なんでアタシがしなきゃいけないのよ」
って、ペーペーのときですら、平気でサイクリードに押し付けた。アノ頃からなぁーんも変わっていねぇ。
 一度だけアクアルに、洗濯ぐらい自分でしろっていってやったら、ブチ切れて、部屋の天井がつくぐらいの水を力いっぱいぶっかけられて、10日間寝込んだことがあった(反対属性のオレにとって、くたばれといってやっているのと同じだ、なぁーに考えてんだアイツはまったく……)そいつを目の前でみちまったサイクリード。ビビってそれ以降絶対に、そういう雑用をアクアルに持っていかなくなった。マジで殺られかねない。
「アクアルが怒ると戦艦が水浸しになって困るからなぁ、勘弁してよ……」
 いつかアイツは禿ると、ブレアードは勝手に思っている。
 朝から陽気に家事をする拓人の母をみて、同じ女でもだいぶ違うんだな。とブレアードはそう思った。

 

 朝飯。露骨に残り物をぶち込んだメシだった。
さすがにキレた。しかも拓人たちはそんなオレを完全無視してメシ食っていやがる。すましたもんだ。完全縁側のポチ扱い。いんや違う。地球では犬専用のエサがある、残り物なんて食わせないはずだ。
 なんつー扱いだ。ああ、クソっぉバリアが憎い。

 

 することがないので……二度寝。そうしたらだ「春子さん」がだ……洗濯物を乾せといってきた。娘(拓人の妹)と一緒にいう始末。
 ……どーも、女は苦手だ。あのアクアルの日ごろのピーキーなサマぁを見ていると、ショージキおとろしい。ムカつくことがあると平気で足を踏みつけ(さらに機嫌が悪いとあの三日月の杖の先っちょでグリグリかましてくる)身近な女が、アクアルとあのグローザしかいない分、どーも印象が最悪だ。どーせワガママで、ブチきれると怒鳴ってきたり、最悪水をかけられる。
 条件反射でピーンと背骨が伸びきっちまう自分が嫌いだぜ、ったく。女が怖いみたいに思われちまうだろーが、違うぞ決ぇーして、断じて違う。拓人たちに混ざってる女にも同じ反応したって思ってるヤツ、それは何かの見間違いだ。
 グローザは違った意味でおとろしい。目を離したすきに剣を自分の喉下に突きつけていきやがる。油断もスキもあったもんじゃぁねぇ。なぁーにが、偉大なる祖先だよ。大嘘つきもいーところだぜ。まぁーったく。
 まぁ、なんだ。 春子さんは、いい人だ。
 拓人の妹はオレのことを完全に変態扱いしているが。初見でキャーはねぇーだろ普通。「始めまして」とか「こんにちわ」じゃねーのかよ。違うのかよ。オレ様に失礼ってもんだ。傷つくっちゅーに。オレはゴキブリかっての。なにアレってないよな、あんまりだ。酷すぎる。
 その「春子さん」からなんか、背中が痒くなるようなことをいわれた。
 悪い気分はしねぇ。ただ気恥ずかしいだけだ。
 まぁなんだ。「春子さん」のことは春子さんと呼ぼう。そう決めた。

 

 三度寝していたら、今度はアドってヤツが急に絡んできやがった。
 なぁにやってんだ、コイツは。人がせっかく気分よく寝てるっていうのに、タマタマいた拓人(ちくしょー不本意にもほどがあらぁぁぁ)に止められて怪我しねーですんだのはイイとしてだ。なぁにいってんだ、アイツは。
「宇宙に帰れ、お前が帰れば歴史は変わる」
 まぁた歴史かよ、いい加減にアキアキだぜ、ったく。
 つーかだ。よく聞け。オレ様たちにゃ船がねぇ。帰ってほしかったらとりあえず、拓人と勝負してだ、勝ってだ、ついでに船よこしてくれるっていうんだったら、ちっょとは考えてやってもいいぞ。帰るにしたってアシがねぇ。ムリってもんだ。
 で、こいつビオード星のヤツらしい。
 ったく宿命の天敵がなぁにほざいているってんだ。大体だ、おめぇーらの先祖とやらがガツガツしてコスモカプセル欲しがらなきゃ、いまのこたぁーねぇわけだ。言うだけいってやったら、あいつ出ていきやがった。
 なんだシッョクなのか。つーか宇宙にいるヤツラならみーんな知ってるぜ、その話。
 どーいう生活していたんだ、アイツ。
 

 

 とりあえず洗濯物を乾すことにした。下っ端船員生活以来のことだ。昔は結構得意だった。まぁ、昔取ったなんとやらだ。腕は落ちていない。
 とりあえず、メシをほったらかしにするのはアレだ。とりあえず食おう。
 悪くはなかった。
 つうか、初めて食うものなのにうまかった。
 

 

 四度寝していたら後ろのほうで、あいつらが大騒ぎしていた。なんでもあのビオード星のヤツが帰ってこないと。家出か? しょーもないやつだ。
「家出? アホか」
といったら、拓人の妹が、うるさいと、鼓膜がビリビリするぐらいの大声で怒鳴ってきやがった。アホにアホっていってなにが悪い。あーうるせぇ。
 とりあえず、きちっとだ、きちっと!!!(宇宙海賊ってのはタテ社会なんだぞ、覚えとけ)洗濯物をたたんでやった。
「ブレンダル……ありがとうね」
 春子さんがそういった。
「たぁーーーだからブレアードだっていってんだろっっ」
 誰もオレの名前を覚える気ねぇーのか。そんなにオレの名前は覚えにくいのか。画数が悪いのか、字数が多いのか?? 
「なんか、今日みんな遅いみたいだから、ブレンダル先に食べちゃってていいわよ」
 やっぱり、間違っていやがる。
 春子さんはトレーを差し出した。前よりも品数が多い。飲み物も付いている。
「……なんだ、この匂い」
 正直、嗅いだことのない不思議な匂いだった。100倍ぐらい薄めたらあのゴミ処理場の匂いと似ているかもしれない。つーか食い物か、明らかに違うだろう。宇宙にゃ食用ナメクジとかいるが、糸引いてるツブツブは見たことねぇぇぇーぞ。なんだこれは。
 一個摘むと、ついーっと糸がふわふわ宙を泳いでいる。顔についた。なかなかとれない。ベタベタしやがる。いよいよヘンだ。やっぱ喰いモン違う。
 ハッ。これは新たな拷問……!!! オレ様は今、捕虜だったんだ。
 ついこの間、レミーとかって女から貰った「太巻き」ってのは、オレを油断させる単なる餌付け??
 固まってるオレの前にジジイがやってきた。拓人のジジイらしい。
「なにやってんだ、お前」
「なんなんだ、これは!!! 気色悪いっっオレに何しやがるつもりだ」
 なにいってんだ、といわんばかりにジジイ。バリアに手を突っ込んでその豆の入った鉢を手にしてついでに、箸(聞けよ……『今日から故郷に帰る、地球人入門 by宇宙海賊公式ブック(買え!)』にのってるんだぜ、箸の使い方。つか、元々もなにもご先祖はこの星の住人らしいし、将来この星に住むことも多少ー考えていたらしい、オレの船長……機械だったけどよぉ)を手にして、オレの前によっこらしょと座り込んだ。
「これはなぁ、納豆っていう食べ物だ」
「なっと?」
「ナットじゃない、納豆だ。身体にいいんだぞ」
「身体にいいってよぉジーさん。明らかにそりゃ、ダメだろう」
 宇宙人から見てもだ、ジーさん。それ腐ってるだろ。
 ハっ……。春子さん。実はいい人を装ってて……身体にいいとかいって、腐ったものをジジイに食わせていてるんじゃ……。やっぱオンナはおとろしい……。
「そーいう食べ物なんだ。白い米にかけるとうまいぞ」
 白い米といってニコリと笑った。でだ。問答無用でそのネバネバをだ、ぶっかけやがった。しかも、かけるときにご丁寧に、これでもかっていうほど混ぜてだ。あーあ、なんか糸がパワーアップしているぞおい、ますます見た目が危険になってるじゃねぇか。
 ジジイ、やべぇよ。絶対、だまされてるぜ。腐ってるもん。それよぉ。世に言うイジメとかってヤツじゃねぇのか。オレ様心配するぞオイ。
「ほら、納豆ごはんだ。うまいぞ」
「……拷問だろっ、捕虜虐待ってしってっかジーさん!!」
「宇宙人ってのは皆かわいくねぇ奴ばっかりなんだな。シャークといい、お前といい」
「シャーク……ってシャークってアイツか?」
 グローザから詳しく聞いている(半分どーでもいい話で寝てたが。大体だウソくせー未来の話なんて、マジで信じるヤツがおかしいーんだよ、まったく)海賊裏切って、拓人たちの隊長をやっている、いわばコッチ側の船長みたいなヤツらしい。
「ああ、シャークは俺の友達だ」
「友達? ジーさん。宇宙人が友達なのか、アンタ変わってんなぁ」
「そうかもな」
 拓人のジジイは、宇宙人と友達らしい。よーく考えると拓人の周りは全員が宇宙人だ。茶の間でヘラヘラしているが、全宇宙最強のヤツラのひとつであるのにゃ、ちがいねぇ。テレビみて茶飲んで菓子食ってるサマからは、想像もできねーが。少なくても恐獣は倒せるパワーはありやがる。
 宇宙一融通が効かないビオード星やら、辺境(ド田舎)山岳民族のラディ星やらそんなヤツラばーっかりだ。こーいう変なジジイが育てると、宇宙人っていうテーコーリョクが勝手につくのかもしれねぇな。
 第一このジーさん。ベラベラ勝手に喋りまくる拓人の話じゃ、メシ食わせてそのシャークとかってヤツを仲間に引入れたって話……だったとかそーでなかったとか。……忘れちまったが。
 このジーさん、ガンコっぽいが拓人が尊敬できるヤツっていっていたなぁ。そーいや。 つまり、このジジイはエライわけだ。あの拓人が認めているっていうんだから、間違いねぇ。オレ様は、拓人の永遠のライバルってんだから、んなゴーモン食い物に負けちゃなんねぇな。つーか、誰が好き嫌いあるっていったよオイ!
 なめんな、オレ様は誇り高き宇宙海賊だ。火将軍様だ。誰が拷問程度に負けてたまるかってんだよ。


「……うまっ」
「どーだ美味いか?」
「なんだこりゃ、メチャクチャうめぇ、こんな美味いもの食ったことねぇ。やべぇぜジーさん」
「やばいってなんだ」
「拓人が、いってたぞ。なにかってーとヤベェとさぁ」
 するとジーさん、むっと口と眉間にしわ寄せて立ち上がって消えた。足音がなんか怖ぇ。気のせいかもしれねーが。
 なんだ、なんなんだ。想像以上に美味いじゃねーか。納豆。
 分かったぞ。これはオレ様が元々地球にいたってことの証なんじゃねーのか
 そうか、この中途半端にぬるい大気も、妙なジメジメ感も、そう思うとなんか懐かしいじゃねーか。メカだったけどよぉ、船長のいっていたことは間違いはねぇ。オレ様の根っこは地球人だ。この納豆ってのが証明しているぞ、絶対そうだ。そうに決まっている。

 


「春子さん、納豆ゴハンうまかった……」
「あら、うれしい」
 縁側を通りがかった春子さんと、拓人の妹に向かっていった。宇宙海賊は弱肉強食だけど基本的には縦社会。ついでに礼儀も正しくなきゃいけねぇ。つーか人としてダメだろうやっぱ。
「納豆がうめぇってことは、やっぱりオレ様が大昔地球にいたって証なのかもしれねぇ」
「ポチのいってる昔っていつよ」
「えーっと400万年前だったか……」
「納豆ないし……その時代」
 



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