即席セイザーX小説。戻る

そうだ、ガテンしよう


 シャーク隊長やじーちゃんが心配している、2004年問題ってのが今更ながらにわかった。この隊長をいれて8名は今後未来へ帰れない。その気持ちを言葉に表せってことはたぶん無理だろう。
 この時間で今後生きていかなくてはいけなくなってしまう、未来からやってきた異性人たち。大人二人のいう「今後の社会生活へのリハビリ」ってことの意味をようやく分かりかけてきた拓人であった。

 こいつは大変だ……。徹夜明けで真昼間の直射日光じかに浴びたときのような眩暈で目の前がくらくらした。

 そもそも、働くって概念がないやつがいる。
 アドだ。ついでにこいつは、お金が何なのかもいまひとつ分かっていない。
 ケインは、労働と報酬を分かっているが『親切にされる、もしくは親切にする』っていうのは、ラディ星人的には金品より勝る大変な美徳らしい。ま……観光していたのが良かったのか、ちゃんと給料袋(しかもかなり分厚い。能力給はやっぱりデカい)をもらって帰ってきた。
 一番分かっているのは、レミー。ケインからの話では、彼女のルーエ星は地球と似通った部分が多いらしい。学校のシステムも社会的な事柄もまーま似ている。多少なにかがずれていることさえ目を瞑れば、バイトを生まれて始めてやることにした、いいところのお嬢様(ちと乱暴)で通るだろうし。
 拓人は、自分のバイトをおいといてこの三人の面倒を見なくてはいけないこととなった。妹・由衣の視線が少し痛いが(いや……状況は由衣にはよーくわかっているんだろうと思うんだけどさ……レシートはりつけたノートをニギニギしながらコッチみんなって)、。不本意ながらに、アドが載った(最初から表紙。あっありえねぇ)雑誌をくれてやると、貸しのことは、とりあえず先延ばしにしてくれることになった。まあちゃんとバイト一ヶ月やってだ、無駄な出費がなければだ、すーぐに返せる……金額だったはず。いや、そーあってほしいんだけどよ。
 一週間前に、レミーがシャーク隊長の命令であの手袋で操るパソコン……のようなもので、何をどーしたのか絶対にありもしない(我が家でのんきにちゃぶ台囲んで、ゴハンもりもり食ってるけど、忘れてはいけない。ああ見えてエイリアンだ。……これいうと、ケインあたりが「もー、やめてよ。たっくん」といって凹む。……宇宙系ホラー映画なんて一緒に見たときには、マジ顔で「たっくん、これがどーして怖いのか、ちゃんと説明してよ」とまでいわれた……。宇宙には、リプリーさん並に困った人はいないらしい)
 経歴書だの戸籍だのを作っていた。恐ろしい、MIBもびっくりだ。フォックス・モルダー捜査官なら喜んで飛びつきそうだ。モウダー君よ彼らに迫っても妹さんのヒントは持ってなさそうだが。
 ……よくわかるけどさぁ。それって力いっぱい犯罪行為じゃん、諸文書偽造。つかレミー、隊長からいわれりゃなんでもやるのか、お前。……やるんだろうなぁ。最強の呪文は隊長命令。きっとパルプンテよりもとんでもない効力がありそうだ。
 三人は、見ちゃだめだといっていた履歴書。いったい何が書いてあるんだか。少なくてもバイトできている以上、書類上の不備がないんだろう。恐ろしいや情報操作。
 ケインはじーちゃんのツテでどっかの研究所に、レミーは母ちゃんの見つけてきた駅前のバーガーショップ。でアドは何の因果かあのモデル事務所でモデル。


ケイン「ところで、モデルさんってなにする人なの」
拓人「写真にとられる仕事」
レミー「こうやって、エンターテイメントを提供するらしいわ(得意満面に雑誌を広げた)」
拓人「それ、フォーカスっっっ」
アド「写真の被写体になるのか、簡単だ。そもそもそういうのが仕事になるのが少々理解に苦しむ」
ケイン「仕事に簡単っていうのはないんだよ、アド」
アド「これは任務だ、オレは気を抜かない。任務遂行は絶対だ」
 なんだか知らないが、アドのやつは、やる気満々だった。こっそりとケインが教えてくれたこと「ビオード星の人は容姿ほめられるの好き」らしい。なんだかなぁ、仕事云々よりもそっちかよっ。

 で、どーしてオレが、マネージャーなんてやってんだよ。
 思わずバイト先の担当者に噛み付いたら、後ろで仁王立ちしているアドのやつが、鼻でわらって、
「当然だ」
と、言い切りやがった。
「なにが当然なんだよ!」
「全てだ」
 今度は、職員まで加わりやがった。
 たしかにちょーっとでかい、んでもって足だって……ねぇ。だからなんだよ。あー。あの未来から通信してきている前置きの長いヤツが、愚痴っていた気持ちってのがよーくわかる……気がする。つーか、トビーとかって人がだ。いまテニスボールもってなんかノリノリでポーズきめている、この高慢ちきで毒舌直球デットボールなオトモダチをみたらどー思うか。タイムカプセルでも作ってやろうか。見たらきっと宇宙艦隊セイザーXの黒歴史つーか、根底からなにかをぶっ壊す、破壊力ゆんゆんな出来事になるだろう。
「おらっそこの小僧、ちゃんと働け!!」
「誰が小僧だ、前にも言ったろうぉ、俺の名前は安藤拓人だ」
「んなことは、どーだっていい、王子様にタオルとお茶をお持ちしろ」
「誰が王子だよ、どーこーがぁぁ」
「なぁーんかいったかぁぁ、まねーじゃぁぁ」
 例のカメラマンが、これでもかと頬っぺたをぎゅうぎゅうと引っ張ってくる。なに、なんなの。この天と地ほどの待遇の差。
「はいはい」
「きびきび動け、貴様ー影ができるだろうが、そこ立つなーーー」
「はーーぃぃ」
 なに、なんなの。この貫徹よりもつらい、精神的負担は。モデルADOのマネージャー。時給880円。まだまだ、始まったばかりだ。


 未来からやってきた組は、やったこともない体験で疲れたと思いきや妙に生き生きしていて、それらに付き合う自分は、気苦労でどんどんやつれていく。なぜ、なんでなんだよ。
 へとへとになって、縁側の廊下に転がっていたら、あの縁側のポチことブレアードが寝ている俺の顔にだ、洗濯ばさみ攻撃してきやがった。
「なぁーにだれてんだよ、お前」
「人の顔になにすんだよっ」
「ゴロゴロすんな、邪魔だ。オレ様は、残り五分で洗濯物を畳むんだ」
「んなもん、いつでも畳めるだろう」
 ていっと、よにりもよって寝ている俺を思いっきり弾き飛ばして転がして、空いたスペースでいそいそと、洗濯物の処理をし始めた。なにをそんなにセカセカしてんだ、こいつは。
「……よし、終わったー。次いくぞっ」
 バンザイして縁側の端っこに置かれていた、緑色の帆布で作られてるエプロンに袖を通すと、一目散にガレージに向かってブレアードは走っていった。
「ちっょと、まて、お前ーーー」
 アド、ケイン、レミーとは違い、見た目っからして、怪しい外見のコテコテの宇宙人……いや古代原生地球人の進化形態なんだっていい。あんなトゲトゲぎざぎざ野郎が世間にでたら、いろいろまずいだろうっっっ。
 履物も履かず、ブレアードの後を追った。


「ブレちゃん、コーヒー二つねー」
「はいはい。いま行きますー」
 昼下がりのガレージの喫茶コーナーは、近所のお茶飲みに来るおばさんやら、犬の散歩途中の人、もしくはじーちゃん目当てのマニアまで(じーちゃんは、相手にもしないが……)地味に混んでいる。
 その下町喫茶にだ……、変なヤツがセッセと給仕に励んでいる。
「今日のお勧めは、春子さん特性ナポリタンだ、今だったらセットでクッキーがつくぞ」
「んじゃそれ、あとエスプレッソ」
 遅い昼食を食べにきたと思われるサラリーマンがさらりと注文した。
「ブレちゃん、今日も来たわよー」
「山田さん、元気ー。おおーポチ、ポチ元気か。オレ様もポチだぞー」
 ……なに、なんなのこの人外魔境な空間は。いつから俺の家は怪しいコスプレ喫茶になったんだ。
「よう拓人。馴染んでんだろー俺」
 誇らしげに緑のエプロン姿でくるりと一回転した。(あーどっかで見たことあるって思ったら、かーちゃんのとオソロかよ、そのエプロン。どこまで懐いているんだ、このトゲトゲ野郎は)
「馴染んでねぇよ、違和感バリバリじゃねーか」
「オレ様は忙しい時間、春子さんのお手伝いをしているんだ」
「まてよ、それでいいのかよ、かーちゃん」
「いいのよぉ、ブレちゃんちゃんと働いてくれるから、もう大助かり」
「そーじゃねぇだろ、いろいろあるだろ、イロイロ!!!」
 そろそろーっとブレアードは近づいてきて、耳元でいった。
「あー、オレ様な、宗二郎さんが作った給仕ロボって設定になっている」
 はぁ??? んなものじーちゃんつくったら、またブッシュさんから呼び出し食らうぞ。いやまて、その前にテレビにでるぞ。
「誰も疑問におもわねぇのかよ」
「ばかだなぁ、拓人。お前のじーさん、宗二郎さんだぞ」
 ……たしかに、こーいう変なものを生み出しても、スゴイというだけで大して疑問にも思われない偉人が祖父だったことを、すっかり忘れていた。
 小走りで祖父に近づいて、
「いーのかよ、ああいわせといて、後で大変なことになってもしらねぇぞ。じーちゃん」
「子供には大人気だぞ」
「そーいう問題違うだろ」
 うっすらとした疑問が脳裏をよぎった。
「なぁ、かーちゃん。もしや……」
「お風呂どうでした? アインさん、ツバインさん」
「「今日も最高でした」」
「「毎日お風呂いただいているお礼です。お手伝い、がんばります」」
 あの同じ緑のエプロンさげた、ツインセイザーが出てきた。
 拓人は、安藤家の未来はどーなっちゃうんだと……深く心配するのであった。


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