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それが私の偉大なる上司様 反乱組織セイザーXが沸いて出て、いままで数百年続いている宇宙海賊時代がほんの少しきな臭くなってきた。そんなある日、私グローザのところに一通の辞令が降りてきた。 こんな季節になぜ人事異動。昇進かなと思って開けてみたら、ある意味両極端なもので内容に生まれて初めての眩暈という身体的症状が現れた。
「歴史改変任務を命ず」
なにかやったのかしら私。 上司は殴っていない。部下にも暴力ふるっていない。粉飾してない。横領してない。 ほら模範的なネオデスカルの海賊じゃない。珍しいわよ。いないわよそんな良い子ちゃん、なんでまた。 数年前、いまや反乱組織のリーダーにおさまっているシャーク(本名・ガイ・バスター)が研究、実用化させたワームホール。過去にいけるが現在には決して戻ってこれない。シャークが行った反則行為「コスモカプセル使用」をのぞいては。 重要任務で私に期待が寄せられているのは理解できるが、あまりいい気分ではない。 あのシャークの部下(かなりガキらしい。特質なスキルは装着能力しかない。過去に持ち込んだ戦艦3隻だってネオデスカルの大型艦が入れば一撃よ)が過去に入ってから少し経つが、上層部の一部知識層が懸念していた現在へのなんらかの、時間の歪みによる被害はまったく起こっていない。 ネオデスカル内でも、過去に行ってもやはりなにも起きない。そういう空気が立ち込めている最中、この任務だ。 いまさら……人員裂かなくてもとそんな空気もある。 私がいままで行っていた任務、辺境宇宙の安定任務どうするの、といってやりたかった。 自称・宇宙の保安官こと(それもかなり昔のキャッチフレーズなんだけど)、俺様ナンバーワンで、かつて宇宙の覇者だったビオード星の軍隊。
正直なにを考えているのか全く見当がつかないがやたらと資本だけはある、それすべて技術特許だから恐ろしい。技術と商売の星、ルーエとの金融戦争。片や堅物脳金、片や謎のゼニゲバ相手に毎日に戦って、戦って、戦いまくって……自分でいうのもなんだけど、ネオデスカル内でもきっと五本の指に入るキャリアウーマンなのに。いまさらそのキャリアもがれて過去にいけと。なぜよ。 辞令書には、もうひとつ、聞き覚えのある名前が書いてあった。
ガレイド……と。
この人。有名人なのだ。なんというか……古典的な海賊の生き残りというか、なんというか。大昔、私たちの祖先の一人火将軍ブレアードがこういう人物だったらしい。 一言でいえば残忍冷血非道。二言でいえば、わがままでハチャメチャめちゃくちゃ。 ネオデスカル(首領)のように典型的表面猫かぶりではない。表面上、我らがボスは静かなものだ。声を荒立てるようなこともなく、淡々と「海賊行為」をするタイプ。 ガレイド氏の場合は異なる。 仮に、落とし穴にはまったとしよう。ボス・ネオデスカルの場合は、まぁ表面上しか分からないが、はまったら……いやはまることもないだろうが。落ちましたってなったら静かに出て、ま……最終的には、星ごと消すだろうが。出て、部下……きっと横にいるあの女だろうけど、それに一言いって、3分以内に星は、たぶんチリとガスになって新しい惑星誕生の肥やしになるだろう。 で、いま話題のガレイド氏の場合。落とし穴にはまった。逆キレ。手始めに自分の周りの地面の高さを落とし穴の深さに合わせるがごとく、きれいさっぱり吹っ飛ばす。次に星の端から端まで聞こえるようなでかい声で、グチをわめく。……余談だけど、ガレイド氏の乗った艦が沈んで回収されたブラックボックスを解析していたデスメードがガレイド氏のでかい声聞いて繊細だったらしい聴覚機能が再起不能になったのは有名な話よ。 グチの内容は面白いけど、いろいろ破壊的なの。すごいでしょ。まぁとにかく黙っていないし、落ち着いてもいない、そういうタイプだから騒ぎを聞きつけてやってきた、民間人第一号から……順繰りおしまいはなにになるのかな、ま、知ったことではないけれど束ねて爆発ね。あーあ大変。火気の無駄。で食事の後。まぁ覚えていたら星はなくなってるわね、彼の大好きなホニャララ大砲とかでどかーんと。きっと星でまだ作業している自分の部下忘れて、大砲撃つのにはしゃいでしまうタイプだし。 ……そもそも標的の星が合っているのかすら、危ういし。……聞いた話、最新鋭のロケットランチャーを上下逆さに撃って、セールスにきた宇宙商人を粉みじんにしたのは、有名ね。ついでにいうとガレイド氏の特殊スキル、三つに分裂が、たまに一般生活でも反映されるから、要注意。パーティで同席していると、勝手に手にしているフォークとナイフが三つ……ちがうわね、3×両手だから6本。に分かれて両脇のゲストの食事を勝手に食べてしまうことがあるから、ガレイド氏と同席、もしくは彼の手の届く範囲の人は要注意よ。 私たち宇宙海賊が読む『海賊日報』の一面はボス・ネオデスカル。三面記事はガレイド氏が、お決まりのパターン。経理部と補給部隊からは、いい顔はでないが宇宙海賊では間違いなく彼はアイドルだ。そう、私にしてみれば、かなーり微妙な人なんだけど宇宙海賊内では、正直『ガレイド様バンザイ』な人はかなり大勢いる。なぜかは、全く分からない。だって、私まるで接点ないもの。それで「バンザイ」になる?
そんなものでしょう?
当日はやってきた。天気予報はあいにくとガス。……ガスなのよ。この惑星の天気予報には、砂嵐だ、磁気嵐があるのよ。今日の天気は、ガスときどき酸性雨。 なんか知らないけど、宇宙海賊も組織。慣らし期間はほんの少しだけどあったりする。「貴様か、グローザってのは」 「はい、ガレイド様」 あのツルツルの部分はスッピンなのかヘルメットなのかは、分からないが人間系ではない人類特有の籠った声。目の前にいるのが、宇宙海賊最高のアイドル、ガレイド様だ。……アイドル?
どこがよ。これが仕事でなければ、またいで通るわね顔好みじゃないし。 「で今日の予定は?」 「メールしましたが一週間前に」 「はぁ? 知らんぞっ」 う。今日の予定も入ってないの?
昨日秘書かなんかいってないの? 引継ぎないの? 私メールしたし。うつむいた目の先に、妙なものが入った。見覚えのある宇宙海賊公認の通信機が、ものの見事にガレイド様の踵の下にある。見事に直角になって煙を吹いている。 「ガレイド様……」 「あぁ?
ピーピーうるさいから、踏んでやったわ」 踏むなよ、おっさん。そう突っ込みそうになった。両手をうしろで組んで握り締めた。「本日の予定は、この地域の反抗勢力の殲滅です」 「はぁ?
まだ片付いていなかったのか」 「金融面は抑えましたから、あとは民衆をおさえるだけです。これ以上この星の住民を削除すると、軍事工場転用が不可能に……」 人が説明している脇からマントの後ろをもそもそっとやったと思ったら、爆風が私の髪の毛を逆立てた。……なんか危険なものぶっ放した。バタバタとコートが突風にあおられゴーグルをつけていなかったことに後悔するような閃光が一瞬にして、天気予報の「ガスときどき酸性雨」が瞬きするあいだに「プラズマ閃光のちにカルシウムの砂嵐」になった。 「なぁにタラタラやってんだ……あぁーと……」 「グローザです」 名前すら覚えていないらしい。 「ったくネオデスカル様は、予定とか作戦が好きだぜまったく、消すか闇で侵食すれば早いものの」 「……そうなのですが、ガレイド様。我々の物資が生産しないといずれ底をつきます」 「どっかから奪えはいいではないか」 果たしてそれまで、奪う相手が残っていればいいのだが。生かさず殺さず絞るだけ絞る。文句言うやつは、片っ端からぶん殴る。それが占領した側のお約束というものだ。 宇宙の端から端までとはいわないが、かなりの面積を闇で侵食し闇で開拓して宇宙海賊という人類が住みやすいようにリフォームを続けてうん百年。 私のような、人型といわれるタイプの血を引き、他のヒューマンタイプの人類と見た目が大差変わらない宇宙海賊も、全体の三割と結構な率になってきた。 見た目はともかく中身はそーとー違うけど。口から凍り吐き出したり、鼻息が炎だったりとちっょとしたビックリショーめいた能力があったりする。まあ念力でものを動かせたり、肉体があってないような人類もいるから「私はネオデスカルの一味です」とでもいわなきゃ分からないのが実状。御旗はあるが制服はない。 セイザーXたちのほうがよっぽど分かりやすい見た目をもっている。もーすこし私たちも考えたほうがいいかもと、たまに進言はしている。制服着てみたいじゃない。 あーあ。わたしが金融面でキリキリのキューにさせたこのプラント国家も、この無茶苦茶ガレイドのおかげで、さら地になってしまった。せっかく搾り取ったお金がなんでここに投資しなきゃならないのよ。 今のガレイド様の無謀な攻撃で、うんざりするぐらいの無駄な出費が出たのはいうまでもない。……こんなのと運命共同体しなきゃいけないのかと思うと、正直わたしのくじ運のなさを呪うしかない。 端末手帳を見た。自分で作ったのだけど施設をカメラに撮っただけで、その建物の価値が大体出るようになっているそーいうシステム。手帳についてるカメラのファインダーを覗いた。数値がマイナスだ。 こらえろ私っ、このトンチキブリキ頭は、こーみぇても大幹部で私の上司なのっ。ここでコイツにヤキいれたら……わかってる、わかってる……でもっっっ。 上のほうから垂直降下でおりてくるワゴンタイプの作業ポット数十隻。たしかに今のここは絶好のハゲタカ襲来地だ。ガラクタ集めに来た宇宙を放浪するスクラップ回収民族でもきたのかと思った。おのおのドカヘルとスコップ、なかには鍬を手にした……見た目横でマント越しにお尻をボリボリ掻いているガレイドとなんとなく、似通った外見のツルツル顔の連中がわらわらと降りてきて、ぺこりとこっちに向かって頭を下げてきた。 「お前ら、整地終わったぞー」 ガレイドがいった。整地というよりかは、なんというか。吹っ飛ばしたにすぎない。 「整地?」 「ははは、相変わらず無茶苦茶だ、棟梁様でっけー建物だけ、どーんとやってくれりゃいいのにー」 「オラたちにもたまには、発破作業させてけれー」 「棟梁???」 なんの話なのかしら、それ。 ガレイドの親戚みたいな連中は、持ってきた手動の土木機材やら、重機やらで、瞬く間に転用可能な土地に仕上げていった。 一人が私に近づいてきた。 「アンタ新しい、ガレイド様の部下かなんかかい?」 「ええ、そうだけど」 「棟梁様をよろしくなー。ああ無茶ばーっかやるけど、結構いい人だぁ」 「なんなの、その棟梁って?」 「ガレイド様は、宇宙海賊の中でももっとも優秀な土建屋の社長だよ」 「土建屋さん?」 「そう、こーやって……まぁ無茶苦茶なんだけど、さらっとさら地にして、俺たちに仕事くれるだ」 「そのまま任務どおりに占領すれば、建物とかそのまま使えるじゃない」 「甘いなぁ〜お嬢さん」 ガレイド様の親戚みたいなのが、目の前で人差し指を左右にふってチッチッチと鳴いた。 「あんな欠陥プラント。宇宙海賊の乱暴な技術屋が使ったら、三日ともたねぇ。偉大なるガレイド様は、無茶無謀だけど目利きは最高だぁ」 「だってオラたちがココの自動ドアつかったら、動かなくなっただよ。建物が宇宙海賊に優しくなくて、困るだ」 「そら、班長の体重がヤバイんだべー」 後ろで一輪車転がしている、ガレイド様の親戚っぽい人Bがゲラゲラ笑った。 「あ、お嬢さん。いいこと教えてあげよう」 「なに」 「うちの棟梁、メカに弱いから。たまにカーっときてモノ壊したりするのしょっちゅうだから、あんま怒らないでやってくれなぁ」 ああ、そうなのか。単に……まぁ、無茶苦茶なんだけど、このガレイド様は不器用な人なんだと。 横で甲斐甲斐しく世話するデスメードが持ってきた飲み物のボトルのふたも満足にあけられない。見ているそばから切断しちっゃているし。ああ、破片がボトルに入ってしまった。 「どうぞ、偉大なるガレイド様」 ちゃんと封を切った飲み物を渡すと、ああとだけ返事をしてガレイドは受け取った。
なんとなく、こーいう不器用な珍獣とつるむのも悪くはないな。そうこのマントの後姿をみて、そう思った。 |