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 チーちゃんの叫びは日ごとにひどくなり、全くまっすぐに歩けなくなってしまった。
 家族の疲れもピークに達しつつあった。もう1度獣医を訪れて症状を説明する。どうやらチーちゃんには脳腫瘍があり、それが少しずつ大きくなっているためにいろんな症状が出てきているらしかった。予想していたこととはいえやはりショックで、獣医からの帰り道の車の中は重苦しい空気が漂った。
 獣医さんの話では、「このまま腫瘍は大きくなりつづけるだろうし、そうなるとチーちゃんは生きていくことはできないだろう」ということだった。更に、疲れきった家族の様子を見て、「人間が倒れるほど無理をしなくては飼えないような動物の面倒を見るというのは本末転倒、人間に余裕があってこそ動物は家族として幸せに過ごせるのだ」とも言われた。
 現実の問題としてこれ以上チーちゃんの面倒を見るのは無理だった。疲れは限界まできていたし、このまま具合の悪くなっていくチーちゃんを見守りつづける精神的な余裕もすでになくなっていた。無邪気に遊んだり、眠ったりするチーちゃんを見ていると、もう少しがんばれないだろうか、と希望を抱いたりもしたが、数日の間にもチーちゃんのさまざまな症状は進行を見せた。つらい決断をしなくてはならなかった。チーちゃんをこれ以上苦しませないで、見送ってあげよう。
 そう決めても、本当にそれでいいのかと何度も何度も考え直したが、やはり結論は変わらなかった。「チーちゃんはね、もう生きられないんだよ」ペペにそう話しながら、涙があふれてとまらない。ペペはそんな私たちの様子をじっと見ていて気配を察したのか、そばに寄ってきて眠るチーちゃんを優しくなめてやっていた。
 獣医に連れて行く前に、チーちゃんがいつもほしがっていたペペのごはんをお腹いっぱい食べさせてやった。あっという間に平らげて満足そうだった。

 獣医さんは、「どうするの?」と分かりきったことをわざわざ聞いた。私たちも「お願いします」とだけ言った。それ以上のことは何も言えなかった。チーちゃんは最初何をされるのかとおどおどしていたが、安定剤を打たれると眠そうにして横たわった。「これでもう不安はないからね」と言いながら、最後の薬を注射した。チーちゃんは眠るようにして旅立っていった。

 もう苦しくないんだね。

 ペペはまた一人っ子になってしまった。チーちゃんがいなくなったのが分かるのか、沈んでいる私たちのそばにいつも寄り添っていた。
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