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子供は遊びの天才である。
猫用のおもちゃを買い与えたがほとんどのものには興味を示さず、ほうっておけば自分でもっと楽しい遊びを見つけた。
特に高いところへあがるのが好きで、小さかった頃は人の肩を借りて家具の上へあがっては降りられなくなって、こんどは「鶴の一声」で人を呼んでおろしてもらっていた。
カーテンにバリバリ爪を立てて上まで上るとそこはカーテンレール。怖がることもなく器用に歩く。でもやっぱり降りられなくて助けを求めた。
この遊びのためにカーテンばあっという間に糸のボロボロ出た哀れな姿に・・・
高いところに上がってあたりを見回し、自分の身の安全を確かめるのはネコの習性である。家の中ではなるべく高いところに上がりやすいようにしてやり、また二重窓の間に「お立ち台」をこしらえゆっくり外をながめられるようにした。
日当たりのいいお立ち台はお気に入りの場所
狭いスペースだったので、こうやってスリスリしているとバランスを崩して落ちることもありました。
ネコなのでもちろん上手に着地できましたが・・・
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猫は本当に高いところが好きだ。
ある日、天気がよかったので窓を開けて網戸にして風を通していた。掃除機をかけ終わってふと気が付くと和室にいたはずのペペがいない。よく見ると網戸がほんの10センチほど開けられていた。ベランダ伝いに廊下に出てしまったようだった。「しまった!」と思うが早いか、母は脱兎のごとく家を飛び出してペペを探す。マンションには3ヶ所の非常階段があり、2つは外階段でもうひとつが内階段になっていた。内階段に入るにはかなり重い扉を押さなければならないので子猫には到底無理と思い、外階段を使って上から下までくまなく探すがどこにもいない。すでにはるか遠くまで行ってしまったのだろうか? 掃除のおばちゃんにも子猫を見かけなかったかと聞いてみる。ずっと下のほうから掃除してきたけどいなかったと言う。途方に暮れて、母はペペが生まれた家を紹介してくれた友人に電話をかけた。この家にはシェパードが2匹いてかなり動物好きなので、何かいい案がないかと相談したのだ。けれど、やはりイヌとネコは違う。名案が浮かばないまま電話を切り、再び外に出て探す。どこからかネコの声が聞こえるような気がするが、空耳のようにも思える。でもやっぱり・・・と内階段の中に入ってみるとその声はややはっきり聞こえるようだった。しかし、8階からずっと下の方へと探してみても姿はない。しかも、ネコの声は聞こえなくなってしまった。やっぱり空耳か・・・とあきらめかけていたときひらめいた。下に行ったとばかり思っていたが、上にいるんじゃないか? 当たりだった。ペペは最上階である10階よりも更に上、屋上に出る扉の前にいたのだ。屋上の扉は普通鍵が閉まっていて使えないようにしてあるので、そんなところを通る人はいない。小さな体でどんどん上に上っていったところが行き止まりになってしまい、ペペもかなり途方に暮れていたらしい。顔いっぱいに口を開けて声をからして助けを呼んでいたと言う。母の姿が見えたとたん「ニャニャニャニャ-ン」と走り寄ってきて肩に飛び乗りしっかりしがみついて離れなかった。
こうしてペペの大冒険は3時間で幕となったのだが、家に帰ってからも肩の上にしがみつたまま2時間くらい離れず、そのまま肩の上で眠ってしまった。

このとき、人間の常識で「猫は下へ逃げた」と考えてしまったのだが、今思うとこれは大きな間違いである。下に行けば楽しいことがたくさんあることをすでに知っているネコならとにかく、初めて外に出てみた子猫である。自分の背丈ほどもある階段の段をどんどん降りていくとはちょっと考えにくい。大人になってからでも自分で上ったところから降りられなくなって人の手を借りるネコも中にいるほど、のぼりは得意でも降りるのはあまり得意ではない。子猫にとって、階段は簡単に登れても降りるのはかなり恐怖感が伴うと思う。その習性を考えれば、子猫は上に行ったと簡単に気付いたはずなのだ。よく思い出してみると内階段に入る重い扉も、数日前からなぜか8階だけ壊れていて子猫が通れるくらいの隙間はあったらしい。ほんの2センチほどの網戸の隙間に足やら頭やら突っ込んで抜け出した忍者ならそんな隙間も朝飯前だっただろう。

今だったらきっとあんなに時間をかけずに迎えに行ってやれたのだが、お互いに新米で大いに冷や汗をかいた。けれどこの1件があったからこそ、ペペがかけがえのない家族だということを思い知らされたのである。
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