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 暗い話が相次いだ後、近所にいた茶とら猫がきっかけで猫を飼っている人と知り合った。

 実はこの人、そとネコとして飼われているこの茶とら猫の飼い主でもあったのだが、家ネコとしてペルシャ猫も飼っていた。このペルシャ猫のねむちゃんは美しい毛並みで、庶民的なうちのペペとは違って血統のよさを感じさせる猫だった。
 けれども、ねむちゃんは、大きな障害を抱えて生まれてきた子だったのである。なんでも、ブリーダーが無理な繁殖をしたために母猫の調子が悪く、目の見えない子が3匹生まれてしまったのだそうだ。そのうちの1匹を引き取って面倒見ているということだった。
 そしていろいろ話をしているうちに、仕事で家を開けるときだけねむちゃんの面倒を見にきてほしいと頼まれた。自宅はかなり離れたところにあるのだが、時々仕事のために上京し、そのたび息子さんのアパートへ猫といっしょに転がり込んでいるのだが、息子さんも仕事が不規則な上に、猫の面倒をみるのは頼んでおいてもあてにならないということらしかった。歩いて1分の距離だし、うちも暇ではなかったが留守番しているねむちゃんがおなかをすかせているのはかわいそうなので、快く引き受けた。
 ねむちゃんは生まれつき目が見えないので、日常生活で自分の寝るところを探す、ごはんを食べる、家の中を歩く、トイレに行くといったことには全く不自由していなかった。壁伝いに歩き、家の中にある障害物はだいたい分かっているようで、器用によけて歩いていた。
 ねむちゃんの食事は茹でたササミをほぐしたもの、そしてなぜか「プチダノン」をスプーンでもらうのが好きだった。ペルシャ猫などの長毛種は見掛けはそこそこの大きさに見えるが、実はかなり小さい。体重などペペの半分あるかないかといったところだろう。抱き上げるとふわっと浮かぶようだった。それに小食なこと、、、、、、、うちの大食漢とは大違いだった。小さな口で食べるのもゆっくり。あまりにもお上品なお嬢ちゃまのことを家に帰ってペペに話して聞かせた。ねむちゃんの匂いをかぎながら聞いている振りをしていたが、「それがどうした」と言わんばかりに、ガツガツと煮魚を食べた。

 ところで、ねむちゃんが居候していたアパートはもちろんペットの飼育禁止である。けれどもふたを開けてみれば全室に猫がいるという猫屋敷だった。近所には捨て猫が多く、アパートは猫にとっては世話になりやすい造りなので、餌をもらったりしているうちに寒い日に中に入れてもらいそのまま居候というパターンが多いようだった。
 ねむちゃんの部屋は1階だったが、その真上に住んでいる若いお兄ちゃんは、黒白のオス猫の面倒をみていて、時々ドアの外でお兄ちゃんの帰りを待っている姿を見かけた。そして時には、雨戸をたたいて餌を催促しているのも見た。なんだかほのぼのとしていて、心温まる光景だったのだが、五郎と名をつけたこの猫がやがてうちの居候になるとはこのとき思いも寄らなかったのだった。

 ともあれ、ねむちゃんのペットシッターはしばらくの間続き、やがて息子さんが結婚してアパートを出ることになったので、お付き合いはそれっきりになってしまった。
 ところで、ページの最初に出てきた茶とら猫の話に戻るのだが、この子はうちに最初にやってきたキーちゃんと同じく、腹まで全部茶とらのわりときれいな猫だった。
 この頃映画「子猫物語」が大ヒットしていて、茶とら柄はなかなかの人気があったのだが、この子はなぜかねむちゃんのうちのお兄さんが仕事場の近くで河原に落ちているのを拾ってきた(と言うよりつれてきちゃった?)というご苦労な猫だった。安直にチャトランという名前がついていて、来たときはまだ子猫だった。
 しかしである、この猫は大きくなってから一体どれだけの子を産んで育てたことか、、、、、うちの近所はその後しばらくの間チャトラン王国になってしまうのだった。その話はまたのちほど、、、、、
小柄だったチャトラン
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