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 ある日、ねむちゃんのお母さんがうちに遊びに来たときのこと。ひとしきり話し込んで1度帰ったはずのこの人、すぐに引き返してきて何を言うかと思ったら、「お宅の前に子猫がいるのよー」。どうしてうちの近所にはよく猫が落ちているのだろうか? 「えっ、・・・・・・」と思いつつも、結局うまいこと言われてその子猫を保護することになった。
 子猫は茶とら白の生後6ヶ月くらいにはなっている女の子だった。特にかわいい顔をしているわけではなく、どこにでもいるようなありふれた猫だったが、何にでも興味を示し、よく遊び、よく食べた。ペペもいつものように最初は嫌がって逃げ回っていたが、なつこく寄ってくるこの子猫にやがて気を許すようになった。
 クロや愛ちゃんの苦い思い出から、里親は自分で見つけて自分で届けると決めていたので、まずは写真を撮って、より可愛く映っているものを選んで猫雑誌の里親募集欄に投稿した。けれどもどんなに急いでも雑誌に載せてもらえるまでには早くて1ヶ月、下手すると3ヶ月くらいかかってしまう。現実はいつも厳しい・・・・・・。最初は里親さんが決まるまで預かるというくらいのつもりでいたのだが、月日が過ぎていくとだんだん情が移ってしまい、どんな由来だったか忘れてしまったがいつの間にかチーちゃんと呼ぶようになっていた。そして、もしも里親が見つからなかったらうちで飼ってもいいかとさえ思うようになっていた。 チーちゃんはすくすくと育ち元気に過ごしていたが、うちにきて1ヶ月も過ぎたころ異変に気付いた。どうやら音が聞こえないようなのだ。猫は普通、ドライヤーや掃除機など大きな音のでるものが極端に嫌いで、近づくと怖がって逃げる。けれども、チーちゃんは掃除機で吸われても全然平気だった。猫にもいろいろ性格があるし、ものすごく警戒心のない子なのかも・・・・・と最初のうちは思っていたのだが、他のさまざまな音にも反応がないことがだんだん気になり始めていた。早速獣医さんに見せたところ、やはり耳は聞こえていないようだった。けれどもこのときはまだ原因がわからず、それが生まれつきなのか何らかの病気が原因なのかの区別がつかなかった。

 耳が不自由だとわかった時点で、里親探しはほぼ絶望的となった。それならうちで面倒見ようじゃないかと覚悟を決める。チーちゃんは元気いっぱいに遊び、ペペとも仲良くじゃれていた。ある日、チーちゃんに首輪を買ってやった。3色のその首輪はチーちゃんには少しゆるめだったが、そのうち大きくなってちょうどよくなるだろうと、ぶかぶかのまま一番内側の穴でとめた。なかなかよく似合っていた。
 ある朝、まだ家の皆が寝静まっていたとき、シャーシャーと奇妙な音が聞こえた。最初はなんだか分からなかったが、どうやらテーブルの下にいるチーちゃんに何かあったようだ。寝ぼけ眼でよくみると、チーちゃんのぶかぶかの首輪が猿ぐつわになって外れなくなリ、パニック状態で、怒ってみたり暴れてみたりしていた。。どうも首のあたりがむずむずすると思って首輪を抜こうとしたら運悪く口にはまってしまったのだろう。結局首輪は当分の間つけないことになった。

 耳が聞こえないこと以外には異常なく、日常生活には何不自由することなく順調に育っているように見えた。特に食欲は旺盛で、好物は生の豚肉。それとペペの特別食「カワハギの煮付け」をいつも狙っていて、もたもたと食べるのが遅いペペを押しのけてちゃっかり食べているときもあった。坊ちゃんペペはそれをただボーっと見ているだけで、怒ることすらなかったのだ。
 それに、チーちゃんはなぜか水が流れる様子に興味と執着心があって、トイレを流すところ、風呂の湯を抜くところ、台所での炊事を見るのが大好きでいつまでも飽きずに見ていた。

 こうやってチーちゃんはだんだん「うちの子」になっていった。
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