街へ向かう道の途中で、一人でパン屋を営んでいるベン。
毎朝早く元気な男の子がパンを買いに来ることがいつしか楽しみになっていました。
名前はナナと言いました。
とても優しいナナと接していくうちに、次第にナナを好きになっていくベン。
しかし、ベンはこれが運命的な出会いだとはまだ知りませんでした。






ワシの朝はとっても早い。

パンを焼くのがワシの仕事じゃ。

街の途中に店があるもんじゃから

街へ向かう人・街から帰る人と

お客はふらっと立ち寄ってくれるんじゃ。

「ふむふむ、今日も綺麗に焼けたのぉ〜」

朝の味見がワシの楽しみでもある。

もうひとつ楽しみがあるんじゃが・・

「くださーい!」

開店前じゃと言うのに元気な声がワシを呼んどる。

「おぉ、今日も早いのぉ〜。ほれ今焼けたとこじゃ」

「ありがとうお爺ちゃん!」

そう言って街へ戻って行ったのは

毎日朝早くにパンを買いに来る小太りの男の子じゃ。

ワシはあの子の元気な声を聞くのが楽しみで・・
いや、あの子に「会える」のが楽しみになっとるのじゃと思う。

・・そういえばあの子の名前さえ知らんのだなぁ。


毎月ワシはパンの試食会を開いておる。

試食会の日はたくさん人が集まってとっても賑やかになるんじゃ。

みんなワシの作ったパンをおいしいと言ってくれるから、とても励みになっておるんじゃ。

ワシはふとあの小太りの男の子を思い出した。

「あの子も来てくれてるのかのぉ・・」

辺りを見回すがいなかった。

がその時じゃった、後ろから"あの子"の声がした。

「わぁ、大勢人がいるなぁ」

ワシはドキドキしながら「き、今日はパンの試食会を開いておるんじゃよ」

そう声を掛ける。

「僕ももらっていいの?」

「ああ、もちろんじゃよ。今ジュースを持ってこような」

ワシはパンをおいしそうにほおばっているその男の子に声を掛ける。

「君はよく朝早くからパンを買いに来てくれるね」

すると男の子は

「僕の事覚えててくれたの?」

と喜んでワシの顔を見つめる。

ワシは何だか恥ずかしくなって顔が真っ赤になる。

「僕、ナナって言うの。街の教会の近くに住んでるんだよ」

「ほぉ、教会っていったらここから結構遠いのぉ」

「パン屋のお爺ちゃんも、今度僕んち遊びに来てね!・・あ、そろそろ僕行かないと!またねお爺ちゃん!」

「そうかそうか、気をつけて帰るんじゃよ」

ワシはナナ君を見送ってからもまだ顔が真っ赤じゃった。


ある雨の降った日のことじゃった。

ドアを叩く音が聞こえたのでそっと近づく。

こんな雨の日にワシを訪ねる者がおるのかのぉ・・

そんなことを思いながらドアを開ける。

ドアを開けるが目の前には誰もおらん・・

「お、おじいちゃん・・」

下を見ると"あの子"が泣いて立っているではないか。

「ど、どうしたんじゃこんな雨の中」

転んだんじゃろぅ、よく見ると服や体が泥だらけじゃった。

「パンを買いにきたんだけど、雨が降ってきちゃって・・・」

「そうかそうか、まぁ入りなさい風邪をひいてしまうぞ」

一人で怖かったんじゃろぅ、外では雷が鳴っておった。

「ほれ、タオルを使いなさい。スープも温まるから飲みなさ・・・い!?」

ワシは危うく心臓が止まるかと思うた。

ナナ君がワシに抱きついてきとるじゃないか!

「おじいちゃん優しいんだね」

「う、うむ・・ほ、ほれス、スープが冷めてし、しまうぞ」

「うん、ありがとう!」

ワシは少し呼吸を整えて

「あ、雨が止んだら街まで送っていこうかのぉ」

「うん・・あ!おじいちゃんって名前なんていうの?」

「ワシか?ワシは"ベン"って言うんじゃよ」

ようやく自己紹介ができた☆

残念ながら雨はそれから30分くらいで止んでしもうた。

さぁナナ君を街まで送りに行こうかの。


ナナ君を送っていったあの日、今度遊びに来て欲しいと

ナナ君のママさんが夕飯に招待してくれたんじゃ。

たくさんパンを持って今から街へ行くところじゃ。

「すみませんなぁ、ごちそうになって」

「いいんですよぉ、ナナがこの間お世話になったんですもの」

気さくなママさんでよかったよかった。

ナナ君はワシを見てはニコニコと笑顔で、ワシは恥ずかしくてたまらんかった。

食事も一段落して、そろそろ帰ろうとしていたところじゃった。

「お風呂沸かしてあるんで、入って来て下さいな」

ママさんがこう言うのでワシは遠慮させてもらおうかとおもうたが

「ほら、ナナも一緒に入らせてもらっちゃいなさい」

と、ママさんは"とんでもないこと"を言う。

「わーい!お爺ちゃんとお風呂だぁ〜」

ナナ君はワシの腕に抱きつく。

「え!?わ、ワシはその・・」

「お爺ちゃん!お風呂こっちだよぉ〜」

ワシはナナ君に連れられお風呂に入る。

ささっと体を洗い湯に浸かっているとナナ君が前も隠さずに入って来る。

「いつも一人で入ってるから今日は楽しいなぁ」

「そうか、そうか・・っとナナ君!?」

ナナ君はワシの抱きついてホッとしておった。

「・・お爺ちゃん、パパみたい・・」

ワシはその言葉にハっとする。

この子の父親はどうしたんじゃろぅ?

ナナ君はワシのお腹の上で寝てしまった様で

寝息が聞こえておった。


今日はパンに使う野菜の収穫日日で店はお休みじゃ・・・

が最近、布団の中からサッと起きれんでのぉ。

頭の中はナナ君のことでいっぱいじゃ。

「き、気晴らしに川にでも散歩に行くとしようかの」

ワシの家の近くには小さな川がある。いつも木の陰で本を読むのだが

すでに先客がいる様じゃった。

「おや?あのバッグは見覚えがあるのぉ・・!?ナナ君?」

「あ!お爺ちゃん!」

ナナ君はそれほど驚いた様子ではなかった。

「こんな時間にどうしたんじゃ?学校はどうしたんじゃ?」

「うん、あのね・・・僕、学校に行かないで仕事してるの」

詳しく聞くと父親が出稼ぎに出ているらしく、母親だけに苦労は掛けられない・・
ということじゃった。

「新聞配ったり、掃除をしたり・・みんな優しいから大変じゃないんだ」

ワシの家で・・と言いたいところじゃったがワシも貸したり人を雇うほどお金はなく・・

「今日は休みなのかの?」

そう聞くとナナ君はモジモジしながら

「うん・・・ここお爺ちゃんの家の近くでしょ?・・だから、逢えるかも知れないって思って・・」
と答えた。

「そ、そんな遠慮なんかするでないよ、いつでも遊びに来ていいいんじゃよ」

そう言うとナナ君は笑顔見せてくれた。

優しく温かい風が吹いており、ワシとナナ君は昼寝をした。

ワシはこの子と一緒にいることぐらいしか役に立てず、不甲斐無い自分が情けなかった。


いつも買いに来る時間帯に、今日はナナ君が来なかった。

ワシは夜になってから、パンを届けに街までやって来た。

「あら、ベンさん!わざわざ届けに来て下さったのね。」

ナナ君のママさんは少し落ち込んでいる様に見えた。

「今日はナナ君が来なかったものですから・・」

「実は・・・事故にあってしまって。今部屋で寝ているところです」

「ナンですと!?」

ナナ君は包帯を頭に巻いてベッドで寝ていた。

「幸い大したことはなかったんです・・私がもっと働けばこの子にも苦労をかけずに済んだのに」

落ち込んでいるママさんにナナ君の思いを伝えると

少し落ちついた様子じゃった。

「温かい紅茶を入れてきますね」

・・しばらくナナ君と二人きりじゃ。

座って辺りを見渡すと、写真が飾られていたので何気なく手に取ってみる。

「んっ!?・・こ、ここに写っているのは・・」

写真に写っていたのは紛れもなくワシの息子「エド」じゃった。

「やっぱり・・」

後ろでママさんの声がした。

「やっぱり、エドのお父様だったのですね・・初めてお会いしたときから感じていました。」

なんということじゃろぅ。10年前家を出た息子が、家庭を持って・・そしてこんなにも近くにいたなんて。

こんなに嬉しいことはない。

ワシは静かに眠っているナナ君を見つめながら、何か心に温かいものを感じていた。


今日もナナの様子を見に街に来ておる。

家に着く前に空き家を見つけたので少し見せてもらうことにした。

ここもパン屋を営んでいたのか、ワシの店より一回り大きな作りになっておった。

「ほぉ、ここなら今まで通り店を続けていけるのぉ」

ワシはとりあえず空き家を出て、ナナの家まで向かう。

「あ!お爺ちゃん!」

家に着くとナナが元気良く出迎えてくれた。

「おぉ〜もうよくなったのかぁ」

「おかげさまで」

ママさんも笑顔で答えてくれていた。

「お父さ・・あ、ベンさん今日は夕飯を食べていって下さいな」

「そ、そうですか・・ではお言葉に甘えますかな」

ママさんはまだナナに話していない様じゃった。

「こちらのベッド使って下さいな」

ワシはお酒勧められて酔ってしまっておった。

「しゅ、しゅみませんなぁ・・嬉しくてつい飲みすぎてしもうて」

「いいんですよ・・これでエドが帰ってくてくれれば」

とママさんが言った時じゃった、ナナが

「僕お爺ちゃんと寝るー!」

「ナナったら!ダメ、ご迷惑でしょ」

「一緒に寝ちゃダメ?」

「わ、ワシは別にかまわんよ」

ワシは急にドキドキしてきおった。

しばらくして、布団の中でナナが抱き着いてきてワシの股間をさすってきた。

「こ、これこれ触ったらいかんよ」

「僕のも・・触っていいよ」

「ほ?」

ナナはワシの手をそっと自分の股間に持っていく。

とても小さく柔らかい感触・・

「ほ、ほれもうおしまいじゃ!な?」

「うん、わかった。んふふ」

無邪気に笑うナナを見て一層股間が大きくなるのがわかった。


朝早くからワシは、街の「店」でパン作りの準備をしていた。

「おー、爺さんここでパン屋やんのかぁ?」

よくパンを買いに来てくれていたお客がワシに笑顔で問いかけてくれた。

「ほっほ、そうなんじゃよ。また買いにきておくれ」

そう、ワシは街でパン屋を営むことに決めたんじゃ。

試しにパンを焼いているとたくさんの人が集まってきた。

「お爺ちゃん!」
そこへナナが嬉しそうにやってきた。

「ここでなぁ、パン屋をすることにしたんじゃ」

「ホントにー!?やったぁー!」

その日の夜、ママさんが開店記念と家に招いてくれていた。

食事も一段落して、ゆったりとした時間を過ごしているとナナが大きな声で言った。

「あ!パパー!!」

「エ、エド!!?」

ワシが振り向くと玄関には紛れもなくワシの「息子」が立っておった。

「え、お・・親父?」

ワシは笑顔でうなずくしかなかったが、息子も少し照れながら

「親父・・・・ゴメン」

と言って目に涙を浮かべていた。


次の日・・・


今日からパン作りで忙しくなりそうじゃった。

でも、今度からはナナと一緒。

息子も帰ってきて、天涯孤独かと思っていたワシにも再び「家族」ができた。

こんな運命的な出会いがあるじゃろうか?

明るい日々と優しい笑顔に包まれてワシは今日もパンを作っておる。



開店日の夜に起きた出来事を見てみる。

いいえ、私はほのぼのした二人の様子で十分です。