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僕は実家には車で帰ります。
大学からはかなり離れているため、長時間の運転となります。
そのため、少しでも時間を短くするために、
夜から早朝にかけて運転するようにしています。
体のタイムサイクルに反しているので、かなりキツイですが・・・
しかし、その苦労も実家に、庭に車が入ってきた瞬間に
一斉に吠える我が家の犬達の歓迎、
そして、それに起こされて縁側に出てくる家族・・・
これがあるからこそがんばっているのかもしれません。
そしてこの度もそれを思い浮かべて実家に帰ります。
家に着いたら、まず前庭と中庭(犬の庭)とを分けるフェンスを開け、
歓喜の声をあげる犬達(檻に入ってます)に向かって走っていき、
手前から、るり、くろ、まり、ゆき、さちの順に「ただいま」と・・・
そう思いながら最後の交差点を右折し、
住宅地のやや狭い道を進んで我が家の庭に入ります。
・・・・・
静まりかえった我が家の庭。
空はどんよりと青紫色をしています。
不思議に思いながら車を下り、
いつもより強くドアを閉めます。
しかし、それでも犬のなき声は聞こえません。
期待を裏切られ、ちょっとガックリきたまなさんは、
静かに家に入ります。犬が吠えなかったので
もちろん我が家の人間達は起きてきません。
もういいうや、そう思い、用意されていた布団に入り寝ます。
運転で疲れているので、すぐに深い眠りに入りました。
そして朝、姉に起こされます。「いつ帰ってきたのか?」と聞かれたので、
それに答えていると母もやってきました。
母は、「おい、まな。」と、真剣な顔で僕を呼びます。
何かまずいことをしたっけなぁ?
と、起きたばかりで働く気のない頭で考えようとしたのですが、
母の次の言葉で何もかもが真っ白になりました。
「さちが死んだぞ。」
この日の朝食ほど不味いものはなかったです。
我が家では、朝食時、盛んに家族の情報交換が行われます。
そう、その日の朝の話題はさちの死と、死にいたるまでの行動。
そして、その後の犬社会の変化など。
さちが死んだのは1月16日です。
死因はヒラリヤによる心臓発作だそうです。
12日に急に心臓発作をおこし、体調を崩したらしいです。
獣医さんのところに行ったところ、重度のヒラリヤだったそうです。
とりあえず薬で応急措置ができるということでしたが、
「この状態では・・・」という体に強い刺激があるものらしく、
我が家の家族はこれを拒否しました。
もう、短い・・・家で静かに眠ってもらいたい・・・
この選択をしました。もう、素人目にも
さちが助からないというのは明らかだったそうです。
しかし、ここからが見ていられなかったそうです。
死までが4日間で、ある意味ではよかったと母は言っていました。
さちは他のテキストで書いているように、
非常に飼い主である僕らに忠実なのですが、
その反面、気位が非常に高いという面ももっています。
犬にも人にも、譲るところ譲らないところを必ず引いていました。
その中でも「弱味」に関してはかなり厳しいものでした。
他の犬のことなのですが、
前足の肉球にバラのトゲが刺さっていたことがありました。
そのとき、この犬はその足を引きずり、
その場にいた父に助けを求めてきたそうです。
さちにも同じことがありました。いや、あったようです。
ある日、姉がさちを寝転ばせ、肉球を見ていました。
すると、前足の肉球の形が一部おかしいものがあったのです。
よく見てみると、何かが刺さって抉れたようになっており、
さらに、指(?)を開いてみると、上のほうまで傷がついていました。
かなり深い傷だったようです。
それにもかかわらず、このときまで我々に気づかせないようにしていたようです。
自分は群れのリーダーである。他の犬には弱味を見せられない。
また、さちは極力人間に迷惑をかけないようにしていました。
自分でできることは、できそうなことは
とにかく工夫をして、自分でやるようにしています。
そう、犬にも人にも「弱味」を見せない犬なのです。
そのため、今回も弱味を見せまいとしていたようです。
人が様子を見にくると、弱った体を起こし、
歩いて近寄ろうとしてきたそうです。
立つことすらままならない・・・そんな状態でも、
1秒に1歩(1つの足を前に移す)しか歩けない状態でも
弱味を隠し、平然を装おうとする。
しかし、今回のものは隠せません。
そこで、母は起き上がってくるさちを抱き上げ、
何度も寝させようとしたらしいのですが、
頑なに寝ることを嫌がり、必ず立ち上がったそうです。
人が家に入るまで地に伏せることはなかったのです。
また、我が家の家族は、この状態のさちを、中庭と後ろ庭の間にある、
家の勝手口のあるガラス戸で出入り口を遮られた
小さな小屋のようなことろで安静にさせていたそうですが、
3日目になると、さちがしきりに後ろ庭に行きたがったそうです。
このことを振り返り、姉は言いました。
「死んだ姿を人にさらしたくなかったんだろうね。」
そして4日目、1月16日・・・さちは死にました。
即席で用意された、ダンボール箱に毛布をいれた寝床ではなく、
後ろ庭に面したガラス戸の前の冷たいコンクリートの上で・・・
ここで、このテキストの最初のところに少し戻ります。
僕が帰ってきたとき、犬が吠えませんでしたね。
これは、さちが死んだことが原因なのです。
さちは我が家のセンサーであり、
どんな異常事態でもさちが一番初めに気がつきます。
そして、他の犬がそれに反応する・・・という図式になっていました。
そう、さちが、気がつく者がいないために他の犬は吠えなかったのです。
おそらくぐっすりと眠っていたのでしょう(笑)
このように、昔のシステムをいまだに引きずっている犬達なのですが、
全てを引きずっている訳ではありませんでした。
いや、昔のシステム、つまりさちの政権時代の理はほとんど崩れていました。
何というか・・・無政府状態とでもいいましょうか・・・
とりあえず、恒例の個人個人の状態を紹介していく方法でいきます。
●まり
さすがはお局様。変わりはありません。
多くの離別を経験しているためでしょうか・・・?
しかし、明らかに一人でいる時間が増えました。
●ゆき
この無政府状態の根源・・・とでもいうような存在となっていました。
姉に聞いたことろ、さちが死んで、間もなく・・・ということでした。
あたかも絶対の権力者のように振舞っているのです。
くろとるりに対しては、前々からそういうことろがあったように見えますが、
まりに対する態度が豹変していました。
いままでは、狭い通路をまりがよたよた歩いていると
まりが通るまで自分は通ろうとせず、待っていたのですが、
今ではまりを押しのけて無理にでも通るようになっていました。
これに関しては実際に見て、かなりショックを受けました。
自分の母であるということから敬っていた・・・そう思い、
過去のテキストでもそう記述したのですが・・・
さちという巨大な権力に従っていただけなのでしょうか・・・?
●くろ
唯一、さちの政権を守ろうとする存在でした。
姉に聞いたところ、さちが死んで4、5日は元気もなく、
また、さちを探してか、何度も庭をうろつき、
何かを探すような素振りをしていたそうです。
さて、現在の状況ですが、前述したように
さちの政権を守っています。「和」を築こうと必死でした。
今まであまり干渉しなかったるりとの間に和を持とうとしています。
最初、るりのあほさ加減(加減の知らなさ)を知らないくろは、
るりと遊ぼうとして大失敗したそうです。
喜びで興奮したるりの滅茶苦茶なルールのないじゃれつきに
びっくりして、最後は逃げてしまったそうです。
その後すぐのくろの表情はかなり笑えたそうです(笑)
・・・とにかく、さすがはさちのお気に入りです。
●るり
頭が弱いせいか、何も変わりません。
ただ、一番好きな犬がさちからくろにかわっていました。
このように、政権の崩壊は乱世をつくることになりました。
我々の意見としては、くろがこの世の覇権を握ってほしいなぁ・・・
ということですが、先代と比べると・・・ちょっと・・・
とにかく、今回の件は僕を含め、家族を大きく考えさせるものでした。
詳しいことは省略します。とりあえず、結論・・・というか、
全員一致した意見だけを最後に挙げます。
ちょっとオチとしては0点ですが・・・
・今後は犬を飼わない
・今いる犬には、最後まで幸せな人(犬)生を送ってもらう
以上。
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