トイレットペーパー事件




リュウが生後2〜3ヶ月の頃であった。 人間の歳にすると大体幼稚園生ぐらいである。
まさに”イタズラざかり”というところであろうか。 イタズラと言えばこんな出来事があった。

その当時私は一人暮らしをしていたわけであるから、当たり前のごとく毎日会社に行く生活を送っていた。 当然、昼間の我が家はリュウひとりの(一匹?)の天下となる。 これがまた、大変な事をやらかしてくれるのである。

いつだったか、仕事を終えて我が家につくと、なぜか知らないがトイレのドアが少し開いていた。
その当時の私と言えばまだまだ若く、収入も少なかったのであまり条件の良いアパートなどには、とても高くて住むことなどできなかった。 したがって、当然安アパートのあまり日も当たらないような1階部分に住んでいた。 1階というのは結構くせ者が入りやすい場所である。  「誰もいないはずなのになんでトイレのドアがあいてるんだろうぉ・・・?」と、多少の不安を感じたものの、あまり深く考えると怖くなるので気にしないで扉をしめた。 知らぬが仏とはまさにこの時の私のようなものであった。

人間誰しも生きている間は何千回、いや何万回とトイレに行く。 生きているモノとしては当たり前の行動である。 ご多分にもれず、私もトイレに行きたくなった。 そして、トイレの扉を開けたとたん「うひょーっ?!」と、いう状態を目の中たりにしたのである。 さしずめアメリカ人ならば「おーまぃごっと!」と叫んでいることであろう。 私は日本人だったので、そうは言わなかった。

トイレの中はトイレットペーパーであふれかえっていた。 この小さなトイレの中で「トイレットペーパーを誰が一番早くほどくことができるか大会!」でもやったのではあるまいか?と、思えるような状態である。 そしてトイレットペーパーは完全にはほどけなかったらしく、本体は少し残っているようだった。その残った部分には、無数の噛み跡と爪の跡が残っていた。
一体全体、誰が何の目的でこのような悪さを・・・?
考えずとも答えはハッキリしている。 これはまぎれもなくリュウの仕業である事は明白であった。
そして犯行の動機は”面白かったから”であろう。

トイレに入るという目的すらも忘れ、私は呆気にとられて立ちつくしていた。
そこに涼しい顔をしてリュウが私のところに、のこのことやって来たのである。 犯人は必ず犯行現場に舞戻ってくるというのは本当らしい。 野次馬のごとく(ねこではあるが馬である)一緒になってトイレの中をなにくわぬ顔でのぞき込んでいる。 

「お前なぁ....。」というため息ともつかぬ思いで私はリュウの顔を見つめていた。お互い見つめ合うこと数秒...。 いきなりリュウは脱兎のごとく逃げ出したのである。逃げ足は早い。 自分が悪いことをしたと感じた時、決まってこの猫は一目散に逃げる。 リュウはそういう猫である。 そして14年経った今でもこの性格は変わらない。 一生懸命カーテンの後ろに隠れたつもりで本人はいるらしいが、長いしっぽが見えていた。”頭隠して尻隠さず”とはまさにこのことである。

この後、リュウは”こっぴどく”私に叱られたことは言うまでもない。




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