ティッシュペーパー事件




洗濯機事件がおきて少したった頃。 あの事件以後、リュウは少しは懲りておとなしくなったかと思われた。・・・が、人間が思っているほど甘くはないのである。 リュウは相変わらずの元気ハツラツで落ち着きのない猫であった。 本人は洗濯機事件など、とうの昔に忘れたらしい。 彼女は何回も”忘却の川”を渡っているらしいのである。 日夜新しいイタズラを求めて、家中をかけずり回り、部屋中のありとあらゆる物を片っ端からけっ飛ばし めちゃくちゃにしていった。 まるで竜巻のごとくである。従って、毎日会社から帰ると部屋の中は大変な状態であった。 このエネルギーをどーしたものか?と、私は頭を抱えていた。
これは、そんなある日の出来事である。

このころ、毎日家に帰ってくると「ややっ?」と、思うような不思議な事があった。 よくみなさんも使われていると思うが、あのティッシュペーパーである。 誰も昼間はいないはずなのに、なんだか知らないけどティッシュペーパーが部屋中に散乱していた。 確かに会社に行くときは部屋の中は綺麗に片づけて行ったハズである。 「なんで・・・?」とは思ったものの、やはりあまり考えると怖くなるので、このときもそのままにしておいた。

そんなこんなで数日が過ぎて、ある休日のこと。 リュウはいつものように元気に狭い部屋の中を走り回っていた。 なにしろイタズラ盛りである。 おまけにエネルギーも有り余っている。 部屋の端から端まで「ダダダッー!」と走り、突然私の横に置いてあったティッシュの箱の前で止まった。 で、何をするのかと思ったら、次の瞬間「うひょーっ!?」と、いうような光景を目の当たりにしたのである。

リュウはティッシュの箱の取り出し部分に自分の手をつっこみ、ティッシュを一生懸命気が狂った様に、次から次へと引っ張り出していくのである! 私はこの光景をしばらく呆然と眺めていた。 ストップをかけるまでこの猫はティッシュを箱から出し続ける。 その早さと言ったらすごいものである。 「一体この子は、いつどこでこんな事を覚えたんだろう?」などと呑気なことを考えていた。 しかし、リュウはなおも一心不乱にティッシュを箱から出す作業を繰り返している。
この時のリュウの表情はと言えば、目はらんらんと輝き瞳孔は大きく開かれており、かなりの興奮状態である。 どーにもこーにも手が着けられない状態であった。

しばらくしてリュウはふと我に帰り、私がいた事に気が付いたらしい。 私の顔を「ジーッ」と、見つめる。 「お前は何をやっているんだ?」と、私は目でリュウに話しかける。 すると、またもや一目散に逃げ出した! 前回と同じである。 隠れる場所も同じくカーテンの後ろであった。 しかし、やっぱり長いしっぽが見えていた。 こいつは隠れる場所までは学習できないらしい...。

猫は小さな穴や隙間が好きである。 丁度猫の手が入るぐらいの大きさの穴や隙間がとても好きなようなのだ。 リュウも例外ではなく、とても好きらしい。 今回その小さな穴に選ばれたのが、ティッシュの箱であった。 おまけに中に紙が入っていて、それが面白いように出てくるので、リュウはそれを楽しんだのだ。 出した後はそれを追いかけて遊んでいたらしい。 彼女の新しい遊び道具である。
しかし、私としては大変なことであった。 この膨大に出されてしまったティッシュペーパーを今後どのように使って行くかが、最大の課題になったのは言うまでもない。

そして、このリュウの「ティッシュペーパー出し遊び」はしばらくの間続いたのであった。




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