ラグナロック 〜神々の黄昏〜
プロローグ
ZAC 2199年12月 暗黒大陸ニクス・・・
すべては、強大な二ヶ国間の【主義】【思想】の相違から始まった。
民主共和政治を旨とする【へリック共和国】・・・片や専制政治を掲げる【ガイロス帝国】
どちらにも正当性を主張する権利はあったのだが、ナショナリズムに見られる民族統一を図った側面を否定する事も出来なかった。
どちらにせよ、善と悪、光と闇などに属する類(たぐい)で片付ける事が叶うなら、
後世の歴史家達の悩みの種が1つ片付く事は言うまでも無い。
そう・・・答えなど初めから存在しないのかも知れない、人類の歴史とはすなわち戦いの歴史そのものなのだから・・・
もし、真に答えを知り得ている者が居るとしたら、それは造物主以外の何者でもないのかも知れない・・・・・・
日没後4時間程は経過していただろう、共和国軍司令本部に一通の凶報がもたらされた。
「我が軍劣勢! このままでは全滅は必至・・・救援を請う!」
局地的な勝利を重ね、帝国軍を本土に帰参せしめた共和国軍は、帝国本土に上陸し最終決戦を挑んだのだ。
しかし、戦況は共和国軍上層部を裏切ってなお有り余る程の散々たる結果であった。
帝国が新たに投入してきた荷電粒子砲を備えた小型汎用機により、予想外の大苦戦を強いられたのである。
さらに敵陣深く行軍していた為、補給線は限界に達し、細く延びた戦列が災いして敵中に孤立する部隊までもが現れ始めた。
このままでは全滅以外に、共和国軍の辿るべき道は無い様に思えたのだ。
共和国軍上層部は苦渋の選択を迫られていた。
そして・・・最後の賭けに出た。
「雷光師団を投入する!」
雷光師団に課せられた任務はただ1つ、遊撃隊として敵指令本部を強襲した後(のち)それを占拠する事である。
男の名は【エリック=ミンツ】若干19歳にして少佐の地位にある共和国軍特殊高速部隊【雷光師団】(ライトニング・フォース)のエースである。
雷光師団は、エリックの搭乗するライガーゼロを筆頭に、シャドーフォックス コマンドウルフAC 延べ30機で構成されていた。
本来ならば、荒涼とした闇夜の大地に一陣の風を巻き起こしている筈なのだが、現実はそうでは無かった。
そう・・・予想外の戦いに身を置いていたのだ。
相手は帝国軍最新鋭戦闘機械獣【ライガーゼロ イクス】率いる闇獣師団(ダークネス・フォース)であった。
闇獣師団は、イクスとライトニングサイクス9機 延べ10機の小数部隊である。
数でこそ雷光師団のそれに劣ってはいる物の、劣勢なのは数だけであった。
戦闘力においては雷光師団のそれを完全に凌駕していたのだ!
サイクスはそのスピードを武器に、イクスは最新鋭の兵器でエリックの僚機を次々に駆逐していった。
気が付けば、エリックが味方と呼べる者は、ただ1機たりとも存在していなかった。
エリックは言葉を失っていた。
そう・・・彼は見たのだ。
血塗られた戦場(ぶたい)でのみ許される歌劇(オペラ)の最終章を・・・
いや、最終章であってほしい、そう思える程の残虐性に純粋な快楽を求める悪魔の宴を・・・・・・
気が付けば、漆黒のライガーがエリックの鼻先にまで迫っていた。
しかし、エリックには不思議と恐怖感は無かった。
それ所か、エリックの口元は微かに笑っているかのようだった。
おそらくは、戦士として死に逝く自分への満足感の為だろう。
「最後まで・・・こんな俺に付き合ってくれて・・・感謝するぜ・・・」
満身創痍になりながらも、自分と共に戦ってくれた愛機に対し、エリックは労いの言葉を掛けたのだ。
そして瞼を閉じると、最後の時を待ったのである・・・
しかしエリックは次の瞬間、聞く筈の無い砲撃音と共に、予想だにせぬ光景を目にしたのだ!
エリックにトドメの一撃を見舞いに来た筈のイクスが、上方より何者かに狙撃され完全に機を逸したのである!

エリックは、すぐさま狙撃元を見据えた。
そこには・・・見慣れぬ白き機獣が、イクスを睨むかのようにその身を誇示していた・・・・・・

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