久しぶりに奪還の仕事がスムーズにいき、懐の暖かい俺は一人、夕方の日差しをサンサンと受ける公園に足を踏み入れた。
まだ明るいことだし、マドカへ何か買って帰ろうかと考える。
しかし。
……欲しいものなんて聞いたことねぇな…
頭をポリポリと掻く。
ほしいものは知らないが、喜びそうなものを買えばいいと思い直す。
……何買やいいんだ…?
はたと足を止め、考え込んだ。
公園内の人々が不思議そうに見るがそんなものは気にも止めない。
誰かのためにプレゼントを買ったことなんてない。
無限城では、そんなもの誰も必要ではなかった。
四天王であったため、差し入れとして何か貰うことはあってもあげた記憶はない。
もちろん、マドカぐらいの年の女の子がどういうものに興味があるのかも知らない。
困ったな……
表情に困っているようなカンジは出ていない。
だが、本人はかなり困っていた。
とりあえず、適当に歩き出す。
頭の中ではぐるぐると色んな考えが回っていた。
「ん…?」
公園の入り口に差しかかると、あまりお目にかからない姿を見つけた。
……あのウニ頭は……
女子高生2人と喋っているのは間違いない、美堂蛮だ。
銀次の姿は見えない。
同じ奪還屋をしていて、住む場所も近いというのにこうして仕事以外でその姿を捕えるのは初めてだ。
HONKY TONKなら行けば必ずと言っていいほど会うが、外は初めてのことなので驚いた。
しかも、銀次を連れていないとこなど見たこともない。
声を掛けるべきか否か悩む。
普段の自分たちの関係からして、普通は無視するだろうが。
「おい、美堂……何やってんだ?」
なぜか声を掛けてしまった。
自分で少し驚きつつも、無視されたらそれでいいと思った。
普段の美堂には銀次がくっついていて、なかなか確信をつくまでの話は出来ない。
もし美堂が許すのなら、話してみたい。
自分のこのわだかまりを。
「…猿まわし……」
案の定、美堂はこちらを見てイヤそうな顔をした。
露骨にイヤな顔しやがって……
心中で毒づきながら、胸がツキンと痛んだ。
やかり、そこまで心は許していないのか。
その時。
まるでスイッチが入ったかのように美堂の表情が変わる。
銀次と居る時ですら見たことのない満面の笑み。
……えっ?
「おっせぇよ!いつまで待たせんだよ、士度!」
がばっ!!
「!!?」
思考回路が一気に吹っ飛ぶ。
な…何が起こってんだ…?
わかっているのは自分の胸に掛かる心地いい重みと、しがみつかれているような…そんな感覚。
しかも今、「士度」と確かに聞こえた。
「てなわけだから、じゃあな」
美堂の声は自分のすぐ傍から聞こえてくる。
「さいってぇ!!」
「バッカじゃないの!…行こう?」
勝手に納得して、女子高生の2人は踵を返し去っていく。
俺は改めて、今の状況を確認した。
あの美堂が自分に抱き付いている……
「なっ…なっ…」
冷静になるどころか、ますます混乱する。
自分の心臓がまるで別の生き物のようにドキドキ言う。
美堂にもそれは聞こえてしまったかもしれない。
こういった場合、美堂の背中に自分の腕を回すべきなのだろう。
しかし、それをするのは躊躇われてやり場のない手を意味もなく動かした。
「ふぅ……」
美堂は息を一つ吐くと、すんなりと俺から離れた。
離れていく体温に寂しさを感じる。
「悪かったな……あいつら引き離すのに利用させてもらって」
大してすまなそうにせず、美堂がいつもの顔で言う。
その表情から見て、俺のこの胸の高鳴りは気付いていないのか?
まだ動揺を隠し切れない俺は、それがバレないよう抑えた声を出す。
「何なんだよ、一体…?」
「新手のカツアゲってやつだよ」
こちらの動揺はたぶんバレているはずだ。
証拠に、素知らぬ顔で煙草を銜える美堂の目は笑っている。
「オマエ……そこまで金が欲しいのかよ?」
「あぁ?勘違いしてんじゃねぇよ!あっちだよ、あっち!!」
美堂は今はもう居ないが女子高生たちが出て行った方を指差す。
「ホントかよ……」
「世知辛い世の中だからな……けど、そんなんじゃかっこうの餌にされんぞ?やっぱり猿に人間社会は理解できねーっつうの?」
人をからかってワザと怒らせようとしてるのは見え見えだ。
せっかくの話す機会だ。
挑発には乗らずに、話題を変えようと試みる。
「銀次はどーした?」
「仕事だよ。たまに依頼が来たかと思えば被ってやがんの。今日は一日別行動でな……まぁ、俺様はもう片付けたけどな」
「奇遇だな……俺も奪還の帰りだ」
俺の言葉に、美堂はケッとはき捨てるように言う。
「元はと言えば、てめぇが奪還屋始めて俺たちの仕事減らしてんだぞ?」
そんなつもりはさらさらなかったんだが……
奪還屋を始めたのは、ほんの些細な理由だった。
「そもそも、なんで奪還屋始めたんだよ?猿にはサーカスとかのがお似合いだぜ?」
まるで心を読まれたかのように美堂はさらりと言った。
俺を横目に見るその目はとても綺麗で、惹きつけられる。
紫水晶の瞳をサングラスで隠すのは勿体無いと、初めてその目を見た時に思った。
あの時は一方的に殺気だっていたから、そんなことは言えなかったけれど。
「……なんで、サングラスいつも掛けてんだ?」
美堂はきょとんとした。
その顔がどこか幼くて、少し驚いた。
今日は美堂の見たことのない顔を、もっともっと見たいと思った。
「何だよ、いきなり。こっちの質問はどうしたんだよ?」
質問したのに、逆に全く無関係の質問を返されて美堂が呆れたように見る。
しかし、すぐにその顔はいつもの余裕は表情に変わる。
「俺がサングラスしてたら、何かてめぇに迷惑かかんのかぁ?」
相変わらずの、人を食ったような話し方。
「……せっかく綺麗なのに、隠すの勿体無ぇだろ…」
絶対にいつもの俺なら言わない言葉。
皮肉を含まない、純粋なほめ言葉。
皮肉だろうとこしらを向いた美堂は、俺の顔を見るなりぎょっとして目を見開いた。
その目は「本気かよ」と語っていた。
どうして美堂がぎょっとしたのか分からないが、皮肉ではないことは伝わったようだ。
「だから、何で隠すんだ?お前だったら間違えて邪眼かけるようなヘマはしねーだろ?」
美堂は、クスっと笑うと黙って俺の傍に来た。
目の前で止まり、サングラスを外すと俺の目をじぃーっと見上げてくる。
けっこう身長差あんだな……
邪眼をかけられるかもしれないというのに、俺は変に冷静だ。
態度がデカイから、もっと身長もあると思い込んでいた。
そんなことを考えながら、美堂の目を見下ろす。
「おめぇが、奪還屋始めた理由言ったら教えてやる」
紫水晶が夕日の赤を反射していて、妖しい光を放っている。
薄く形のよい唇がゆっくり笑みを作る。
俺が始めた理由なんてお見通しってやつか……
それならば下手に小細工する必要もない。
「当ててみな」
す…っと顔を近付ける。
「おめぇが言わなきゃ意味ねぇだ……」
全て言い終わる前に唇を重ねる。
美堂は抵抗せず、魅力的な瞳を閉じた。
いくら人通りが少ないとはいえ、まだ夕方の公園だ。
俺は触れただけの唇を離すと、美堂の手を取った。
「付いて来い」
美堂は文句も言わず、手を払うこともせずに俺と一緒に歩き出した。
ラブホテルは引けたため、駅前のビジネスホテルに入る。
ここならあまり怪しまれることはない。
空いてる部屋を聞き、チェックインして部屋に向かった。
さすがに手はもう繋いでいないが、美堂は俺の後に従っていた。
ガチャッとドアを開けて中に入る。
その瞬間、俺は美堂の腕を掴んで引き寄せると薄く開いた唇に口付けた。
「んっ……」
これには美堂も驚いたようで、声が上がった。
先程とは違い、口腔内に舌を差し入れる。
「ふ、ぅ……」
整った歯列をなぞると、美堂の身体はぴくんと反応した。
それに気を良くして、俺は滑らかな美堂の舌を絡め取る。
美堂の身体を壁に寄り掛からせ、その舌を頬張る。
「は……ぁっ……」
その気になったのか、美堂の腕が俺の背中に回り抱き着いてくる。
身体を密着させ、自分から舌を絡めてきた。
ぴちゃ…っと濡れた音が響く。
美堂の目が軽く潤み、伏せられた睫が微かに震えている。
俺はそんなものにも感じて、自分のモノが熱くなるのが分かった。
深く口付けながら、美堂の腰を抱き、誇示するように俺のモノを押し付けた。
「っ……ん、ふっ……」
美堂も俺の昂りに気付いたらしく、切なげに眉を寄せた。
俺は名残惜しいが、味わっていた唇を解放した。
「は、ぁ……がっつくなよ」
熱っぽい溜息を吐きつつ、見上げてくるその表情にもクル。
「俺は獣なんでな」
そう言いながら、美味そうな首筋に噛み付く。
「んっ……発情期かよ?俺は産めねーぞ?子孫繁栄なら他でやれ」
あくまでもからかい口調の美堂の鎖骨に赤く痕を残す。
「孕ませてやるよ、美堂」
「笑えない冗談だな」
とか言って、笑ってんじゃねーか……
美堂はくすくす笑っている。
「やってみな。本能でヤってみろよ」
美堂はするりと抜け出ると、俺の手を引き、ベットへ上がった。
俺は美堂の上に乗り、シャツやタンクトップを脱がせる。
その間、美堂も俺の服を脱がせていく。
「邪眼かけんじゃねぇぞ?」
「もったいなくて使えるかよ。邪眼なんかよりイイ夢見せてやるよ」
耳に噛み付く。
華奢だが、綺麗に筋肉が付き引き締まった身体を撫で回した。
「はぁ……」
美堂のモノも反応して勃ち上がっていた。
それに、少なからず喜びを覚える。
舌を胸まで移動し、突起を舐める。
「あっ……んん……」
手で美堂のモノを扱いてやると、美堂の口から甘い声が漏れる。
俺は、胸の突起に時々歯をたてながら、優しく丁寧に美堂のモノに刺激を与えた。
「やっ……あ、ん……猿ま、わし……」
ぞくぞくっとクルような声で「猿まわし」と呼ばれ、思わず笑ってしまう。
「ムードもあったもんじゃねぇなー……士度って呼べよ」
すっかり感じてる顔なのに、美堂はべぇっと舌を出してみせた。
それが征服意欲を駆り立てる。
「泣かすぞ、こら」
止めていた手を再び動かす。
先走りの蜜を溢れさせた美堂のモノは、手で扱くと、くちゅくちゅといやらしい音を響かせた。
「あ、ぁっ……んぅ……」
気持ちいいのか、身体を震わせている。
俺は美堂の表情を見ながら、先走りの蜜で濡れた指を後孔へ忍ばせると、そこへ塗り付けるように指で撫でた。
「んっ……」
少し不安そうに見つめてくる。
その顔が普段よりも全然幼くて、俺は優しく微笑んでやった。
「ちゃんと慣らすから、心配すんな」
「心配なんかしてねぇ」
意地を張ってみせる、それすらも愛しく思えて。
重症だな……
と美堂への思いを改めて考えてしまう。
たっぷり後孔に精液を塗りつけたのを確認すると、慎重に指を一本差し入れた。
「あ……」
あまり抵抗なく入る。
その指をゆっくり奥へ入れていき、内壁を擦る。
「ふ……ぁん……」
少しずつ慣れてきて、指をもう一本増やす。
指を動かしてやると、美堂は甘い声で鳴いた。
「ん、んっ……」
美堂のモノはもう限界が近そうだ。
三本に増やした指で、前立腺を押す。
「ひぁっ!」
すると、美堂は面白いほど身体を跳ねさせた。
とりあえず、1回イかせてやろうと何度も前立腺を押した。
「ひっ……や、ぁっ……だ、め!」
シーツを掴み、必死に射精を耐えている美堂の姿はとてもエキゾチックで、俺のモノを直撃した。
理性がぶっ飛びそうになるのを堪え、美堂のモノを扱きながらナカの指をぐりぐりっと動かす。
「ひぃっ……あ、やぁあっ!!」
美堂はぶるるっと身体を震わし、白濁した液を俺の手と自分の腹にぶちまけた。
ナカの指を抜くと、美堂は鼻にかかった声を上げた。
「ん……」
俺の指を失った後孔は、物欲しげにひくひくしていて、別の生き物のように思える。
美堂は頬を上気させ、熱い視線で俺を見つめてくる。
その顔には「欲しい」と書いてあるようだ。
俺は美堂に顔を近付けて、唇をちゅっと啄んでから自分のモノを美堂の後孔に宛がった。
「あっ……や、ぁあっ……」
美堂のナカに自分のモノを埋め込んでいく。
「くっ……」
すっげぇ締めてきやがる……
美堂は身体を緊張させ、シーツをぎゅっと掴んでいる。
俺は痛いほどの締め付けに耐え、根元まで押し込んだ。
「ひっ……あ、ぅん……」
美堂が楽なように足を肩に掛け、負担をかけないようにする。
きゅうきゅう締め付けてくる美堂のナカは最高で、思考が飛びそうだ。
美堂を見れば、紫水晶が淡く光っていてとてつもなく……
「綺麗だ……」
美堂の頬を撫で、目元をそっと指でなぞってやる。
恥ずかしそうな顔を一瞬してから嬉しそうに笑った美堂は、手を伸ばし俺に抱き着いてきた。
自然、身体は深く繋がる。
「ん、はぁ……動けよ」
息を乱しながら耳元で囁かれる。
俺は頬にキスをすることで応えると、腰をゆっくりと動かす。
「あ、んっ……やぁ……」
段々と内壁を擦り上げるスピードを増していくと、美堂は俺にしがみ付いて背中に爪を立ててきた。
「やぁあっ……ん、ぅ……あ、あっ……」
猫みてーだな……
まともに思考が働いたのはそこまでで、先にイかないように耐えることに集中する。
俺のモノで前立腺を何度も突き上げる。
もっと堪能したいが、限界が近い。
「ひぁあっ……く、ぅん……やっ……」
美堂も限界が近いようだ。
俺の腹と自分の腹で擦られているモノは今にも爆発しそうなほど勃っていた。
遠慮ない俺の動きに、美堂の後孔はぐちゅぐちゅっと音を響かせている。
「あぅっ……んぁあっ……も、だめっ……士度!!」
急に名前を呼ばれ、俺のモノはぐんっと勢いを増した。
きつく美堂を抱き締め、奥まで穿つ。
「やぁっ……イ、くぅ……あぁあっ!!」
美堂は身体を大きく震わせてイった。
「っ……美堂!」
俺もきつい締め付けに耐えられず、美堂の奥に熱をぶちまけた。
きちんと後始末が終わってからも、美堂は動かずにベットの上に居た。
俺はなんだか気恥ずかしくて、冷蔵庫からビールを出して飲む。
美堂の分も持ってベットへ戻る。
「ほら」
「サンキュ」
美堂は素直に受け取り、飲み始めた。
「これでもまだ、俺が奪還屋始めた理由聞きてぇか?」
「いや……薄々気付いてたからな。おめぇ、俺のことよく見てただろ?」
セックスの時とは全く違ういつもの余裕の表情だ。
「初めは銀次と仲いいお前にムカツいてただけだったんだがな……いつの間にか、お前ばっかり見てた…」
遠まわしな告白。
それでも美堂は分かってくれたようで、ちょっと呆れたような笑顔を浮かべた。
「バカだな……」
突き放した言い方ではなく、どこか優しい言葉。
「そうだな。こんな蛇ヤローにイカレちまうなんてな……」
「……おめぇ、俺の目綺麗だって言ったよな?なんで隠すんだ、って」
「あぁ」
未だサングラスをしていない美堂の綺麗な目を見つめる。
「目の色、とやかく言われんのがイヤだってーのもあんだが……この目はな、男を虜にしちまうんだぜ?」
お得意の冗談を吐きつつ、顔を近付けてくる。
そっと唇が重なった。
「……俺もその一人ってことか?ムカツくヤローだな」
「ちょっと抱き着いただけで、心臓バクバク言わせてた奴が」
美堂の口元が笑う。
やっぱり気付いてたのか……
「だったら……なんでてめぇは俺と寝たんだよ?」
「そんくらい自分で考えな」
じぃっと美堂を見つめる。
美堂はくくく……と笑いを堪えていた。
「そうだな……俺を本気にさせてみな?そしたら、てめぇの質問全部答えてやるよ」
そう言うと、美堂はしなやかな動きで服を着ていく。
「泊まっていかねーのか?」
「んー……銀次が待ってるだろーしな…」
俺は銀次の名前に思わず、ムッとする。
すると、美堂は俺の顔を見るなり、ぷっと吹き出した。
「あはは!!んだよ、そのツラ。不満だって顔に書いてあるぜ?」
「不満なんだから仕方ねぇだろ……」
もう隠す必要もない。
美堂は、また例のちょっと呆れた笑顔を一瞬見せると、すぐににぃっと笑った。
「腹減ったしな……奢れよな?」
「何でもいいぜ?金も入ったしな」
「ヤダね〜これだから商売敵は」
その頭をポカリと叩いてやる。
「俺にその気はねぇっつってんだろ?それより、覚悟しとけよ?ぜってぇ本気にさせてやるからな」
頭を叩かれてムッとしている美堂にそう宣言する。
「言ってろよ」
美堂は誰よりも綺麗に笑ってみせた。
その後、見事に豪華中華料理を奢った俺は、暖かったはずの懐も冷え、初めてマドカの屋敷に帰らずに夜を明かした。
そして翌朝、プレゼントのことを思い出した俺はマドカではなく、美堂に送ろうと考えた。
本気にさせるためのプレゼント攻撃だ。
寝起きの美堂に尋ねる。
「今、欲しい物あんのか?」
「金」
きっぱりと答える美堂に、こいつには生半可な攻撃は効かないなとこっそり溜息を付いた。
終わり。