「ねぇ、タカオに恨まれるようなことでもしたの?」





だいすき。








右斜め45度の方向、キョウジュの左隣から強烈な視線が
レイへと送られているのに気づいたマックスが小首を傾げて
心持ち先の尖った耳に尋ねた。


「ものスゴイ顔してレイのこと睨んでるよ?」
「・・・気づいてる。」
「心当たりは?」
「特に何も。」
「あ。」
「どうした、」
「僕まで睨まれた。」




ちらりとタカオの方を見れば、気のせいかさっきよりも険しい
表情をしていた。

ふと、その目と視線がかち合う。
途端にそれまでとは打って変わって、タカオの顔がカアッ
と真っ赤になった。
パッとキョウジュの陰に隠れてしまう。


そんなタカオを見て口許を緩めるレイの横顔に、マックスが
デコピンを食らわせた。









どうしよう、どうしよう、どうしようか。
赤くなった顔を隠そうと、麦茶を取りに行くと言ってタカオは
一人、道場を抜けた。

今日は秋に行われる大型の大会に向けて、メンバーが集合
してのミーティングだというのに、さっぱり話に集中できない。
キョウジュに7回、カイに5回、いつもは何も言わないマックス
にまで注意されてしまった。



そう。マックス。

さっきレイと何かを話していたようだったけれど、あれは何の
話だったのだろう。
どう見てもベイに関係しているようには見えなかった。
あの二人がキョウジュの話の最中に別の話をするだなんて、
あまりないことだ。

どうしたんだろう、と不安になる。
でもマックスは自分とレイのことを知っているし、いつだって
応援してくれているのだから、と余計な考えを振り払う。










ふと、足元に落ちる木の影の濃さを見て陽射しが強くなって
いることを改めて実感する。


今が8月の始めだから、あの日からもう1ヶ月になる。

ひと月前、好きだから、とレイに言われた。

自分はもう、何が何だか分からなくなって、頭に血が上って
しまって、その場から逃げ出すことしかできなかったのに。
それでも次にあったときにも、レイはいつも通り笑ってくれた。



多分その時から、この気持ちは生まれたのだ。




それまではレイのそういった優しさに気が付きもしないで、
レイの顔を平気で見て、意識もせずにレイに触れていた。






タカオの戸惑う気持ちを、レイはちゃんと理解してくれた。
返事はいつになっても良いし、タカオ自身が納得出来る
まで待つから、と。
どんな返事を返されても、態度を変えたりはしないから
安心して良いのだと。
安心して、じっくり考えて欲しいのだと。


だから自分は逃げ出さずに、ゆっくりと気持ちに耳を傾ける
ことができたのだ。




今日はだから、ちゃんと伝えようと思った。


レイの優しさに、いつまでも甘えっぱなしではいけないと
思って。
なのに、今日に限ってなかなかレイが一人きりになっては
くれなくて、タカオはだんだん焦りを感じ始めていた。


今日でなくてはいけない。
きっと心を決めた今日でないと、もう自分にはこんな勇気は
湧いてこない。

がんばらないと。








そう新たに決意を深めて、タカオが道場に戻ろうとすると、
不意に名前を呼ばれた。

「タカオ、」
少し慌てたようなレイと、―――――マックスだった。



胸の奥がくしゃりと鳴った。








「どしたの、タカオ。麦茶取ってくるって行ったっきり戻らない
から、様子見に来たんだよー?
なのに手ぶらだし。僕のど乾いちゃったよ!」

明るく言うマックスが、白々しく見える。
見えてしまう。



「タカ・・・」
「ふたりで、何してたの?」
モヤモヤとしたものが体の奥の方から涌いてきて、止める事
ができない。
今言われたばかりじゃないか。
自分を迎えに来てくれたのに。
その優しさを、信じることが出来ない。

「なにって、だからタカオを――、」
「マックス、先に戻っててくれないか?」
レイの声が、いつもより低かった。

「・・・・・・・分かった。ケド、ちゃんと話つけてよね!
タカオ泣かしたりしたら許さないから!」

そういうとマックスは、タカオの頭を軽くこづいて道場へと
戻っていった。



涙が出そうになる。




自分はどうしてこんなに子供なのだろう。
どうしてみんなこんなに優しいのだろう。


今だってレイは、自分が落ち着いて話が出来るようになるまで
待っていてくれている。






言わなければ。
いつまでも逃げてるばかりじゃいけない。
言わないと。




今じゃなきゃいけない。







「レイ、あのさ、おれ・・・、」
「うん」
「おれ、俺さ、いっぱい考えて・・・・ほら、あのときから、」
「うん」

ゆっくりゆっくり、自分の中の言葉を探しながら話すタカオに、
それでもレイは急かさずに先を促す。
ひとつひとつを見守るように。慈しむように。

そんなレイの瞳に応えるように、タカオがズボンの裾をグッと
汗ばんだ手で握った。






「おれ、だから多分・・・・ていうか絶対、100パーセント!
・・・・・レイのコト、」





「「好きなんだ」」







重なった声に真っ赤になって、タカオが俯く。

その茹で上がったタコのような顔に、レイが満面の笑みで
繰り返す。


「俺もタカオのことが好きだよ。大好きだ。」

自分のそれより細いくせにしっかり筋肉の付いた腕で体を
抱きしめられ、タカオは更に赤くなる。


「好きだよ。好き。大好き。世界で一番好き。」
臆面もなくこんなコトを言われては、恥ずかしくてまともに
レイの顔を見ることが出来ない。
明後日の方向を見ながら、タカオが反論する。




「お、お、おれなんかなぁっ、宇宙で一番だぞっ!!」

「うん、知ってる。でも俺の方がもっとタカオを好きだよ。」

「おれの方がずっと好きだ!!」

「どれくらい?」

「レイの100億万倍!」






嬉しくて。
嬉しくて。

気持ちが伝わることがこんなにも嬉しいことだなんて。





「待たせちゃって、ごめんな。」
「いいよ。待ってるのも楽しかった。」
「・・・嘘だ。」
「一生懸命考えてくれてるの、分かってたからさ。」
「あ、アリ・・・ガト。」
「こちらこそ。」







おなじ気持ちをかみしめながら、夏の陽射しも気にせずに
二人はいつまでも抱きしめ合っていた。

















「ねぇ、やっぱり今日のミーティングってもう中止にしない?」
「・・・同感だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・ですかね。」











‖|反省文。‖|

50番キリリク、ジュンさまへの「ベイ、レイタカラブラブもの」
でした。―――――が。
これはらぶらぶと呼べるものなのでせうか。
甚だ疑問でなりません(汗)
最近アニメを見ていないので、キャラの性格もおかしいようなι
そしてレイタカなのにマックス出張りすぎ!(爆!)
けどカイマにしなかったのは偉いよ!(は)
最近どうにもカイマが好きで、気が付くと入れてしまいそうに
なります。(…)


実際、「すき」に気が付くのは、タカオは自分からではないと
思うのです。
相手に言われて初めて、自分の気持ちを探り出すみたいな。
というか、気づきかけても自分からは認めないような。
そんなところが好きですが。(妄想)


えー、何だか妙な感じになってしまいましたが、宜しければ
お受け取り下さいませι
リクエストありがとうございました!


2002,0801(…) 水丘紗綾。