花と狼の帝國 〜子犬が鳴く〜




「ねぇ、イルカ先生。イルカ先生?」

カカシ先生に名前を呼ばれたので、イルカ先生は小さく「くぅ」っと鳴きました。

背中にかかる、カカシ先生の身体の重みが、イルカ先生の全てを握っているようでした。

「きつい?」

ゆっくりとイルカ先生の身体から、己を抜き差ししながら、カカシ先生がそう言いました。

イルカ先生は、答えるように、また「くぅ」とだけ鳴きました。

「俺はね。とても気持ちが良いです」

露骨な風に、カカシ先生はイルカ先生の身体を抱きしめながら、うっとりと囁きました。

「イルカ先生の中。とても暖かい」















夏がそぞろな様子で夜を歩いています。

昼間降った雨が、空気に少しだけ混じっていて、イルカ先生の肌をしっとりと柔らかくしました。

天然の柔らかさを滲ませたその肌に、カカシ先生は唇を寄せたくて、寄せたくて。

気付いた時には、お風呂上りのイルカ先生を布団の上に押し倒していました。

そうして、イルカ先生の腕の生えた辺り。

柔らかな二の腕に噛み付いていました。

まるで自分のものだというように、微かな紅い噛み痕を、その部分へと刻んでいきました。

イルカ先生は、カカシ先生に腕を食べられながら、「くぅ」と鳴きました。

まるで子犬のように。

その声を聞いて、カカシ先生はイルカ先生の顔をじっと見つめました。

濡れた瞳が、子犬の真っ黒な目のようで。

自分の飼っている忍犬の、子犬だった頃を思い出しました。

「イルカ先生」

名前を呼んであげました。

イルカ先生は、名前を呼ばれることが好きなようで、カカシ先生が名前を呼んであげると、

それはもう、幸せそうに笑うのです。

「イルカ先生」

でも、今夜は、名前を呼んでもいつものような笑みは返ってきませんでした。

その代わり、「すんっ」という鼻をすする音をさせながら、イルカ先生が顔を赤くして、

カカシ先生をただ、じっと見つめていました。

黒い瞳が、ゆらゆらゆらゆら。

水の膜の中で揺れています。







「カカシ先生」

イルカ先生が、カカシ先生の首に手をまわします。

赤い顔をして。

そうして、カカシ先生の耳元で何事か囁きました。

イルカ先生の言葉を聞いたカカシ先生は、嬉々として、イルカ先生の首筋に顔を埋めました。

そうして、今度はカカシ先生が犬になったように、ペロペロとイルカ先生の身体を舐めていきました。

イルカ先生はそうされる内に、また小さく「くぅ」と鳴きました。











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