さよならドロシー



『ドロシー、どうか一緒に旅をさせておくれ』
金色の立派な毛を持った百獣の王は、どこか必死な様子でドロシーに手を伸ばしました。
『あなたは、この旅の終わりに何が欲しいの?』
ドロシーは百獣の王に尋ねました。
『私は勇気が欲しいのです』
金色の獣が弱々しく言いました。

『では、あなたは?』
ドロシーは今度は、ブリキのロボットへ尋ねました。
『俺は、ハートが欲しいよ』


ロボットの言葉に頷きながら、ドロシーは最後に案山子へと顔を向けました。
『では、最後にあなたは?』
案山子は被っていた帽子を恭しく脱いで、ドロシーにゆっくりとお辞儀をしました。
そうして一言。
『ドロシー。僕はこの藁でできた頭の中に、考えることのできる脳味噌が欲しい』















その町は、なんだかとても荒涼とした平野にありました。
大きな森など無く、赤茶けた大地の上で、人々はどうにか暮らしていました。
地面という地面が赤茶けているのは、雨が降らないからです。
それ故、乾燥しきった町は、植物の生育には適さない場所でした。
そうして、そんな町には雨が降らないばかりか、気象条件でもう一つ困ったものを抱えていたのです。

その困ったものとは、竜巻です。
ぐるんぐるんと、大きく渦を巻いて、尻尾を地面にビシビシ叩きつけて、
荒くれもののそれは、その町をいつも襲いました。
大地を根こそぎ削り取る竜巻に怯えながらも、それでもその土地で生まれた人々は居住区を変えることなく、
そこに住みつづけました。

植物の育たないその場所では、農業は無理でした。
もちろん木々も育たないので、林業も。
海や、湖といったものからも程遠く、漁業ももちろん。
そして、これで河などが一本通っていれば、
物資を運ぶことが出来、生産工場の一つでも出来ていたかも知れません。

でも、その町には、これでもかというほど何もありませんでした。
自然の恵み、施しなどなく、ただあるのは自然の脅威。

それでもです。
それでも、町は呼吸していました。
人間が、住んでいたからです。


何もない町にあったのは、人間でした。
幾人かの人。
そうして、そこはやがて「砂漠のオアシス」と囁かれる町に成長しました。
そう呼ばれる所以は、少々哀しいかもしれませんが、人が「自分」を売ることでそう言われ始めたのです。
町は、人知れず小さな「色町」と化していきました。
男女問わず、己の身を売る。
そういう町になっていったのです。
まるで竜巻が人々をその町へと追いやるかのように、その場所に流れ着いた旅人が、
幾晩かの戯れの夜の夢を見て、そうして去っていきました。

旅人達の雑多な空気を溜め込んで、町は太ることも、痩せ細ることもなく・・・。
静かに砂漠の中に咲いていたのです。














「ありがとうございました」
未だ薄暗い夜明けの静寂の中に、旅支度に身を包んだ男へ、
最後の荷物である肩掛けの荷袋を渡す、優しげな穏やかな声が響きました。
「おう」
荷袋を受け取った男は、いかにも旅の途中という風貌でした。
日に焼けた顔、太い頑丈そうな腕。
そのどれもが旅の途中で鍛えられ、作られたものだということを表していました。
「どうぞお気をつけて」
ゆったりとした夜着を身につけ、肩までの髪を揺らして、穏やかな声の持ち主は、
男へと深くお辞儀をしました。
「世話んなったな。ええと・・・イルカとか言ったかな」
イルカと呼ばれた人物は、頭を上げ、ふわりと笑うと、「はい。イルカです」と、
自分の名前をその特徴的な優しい声色で告げました。
「イルカの声はいいな」
男が逞しい腕を上げて、イルカの頭をポンポンと撫でます。
まるで子供にするような接し方に、イルカは子供になったような笑顔で、ニコリと笑い返します。
「お前の体はあったかだったよ。イルカ」
つられるように笑って、男がイルカに言います。
「久々に共寝の温かさを味わった」
思い出す口ぶりは、淫靡な空気などを含んでいるわけでもなく。
ただ、朝の空気の中でも透明な台詞でした。
「そう言っていただけると嬉しいです」
素直にそういう言葉が出るのは、旅人達と「共に寝る」ことを生業とするプロだからこそ。
イルカはやっぱり静かな笑顔をたたえたまま答えます。
「・・・・どうだ?一緒に来ねぇか?」
別れの言葉と同じ重さで、男が低く呟きました。
イルカは一瞬戸惑いの顔を表面へと覗かせましたが、次の瞬間には静かな雰囲気を再び取り戻して、
顔をただただ横へとふりました。
そんなイルカをみた男は、イルカへと頷くと、もう何も言う事はなく、旅人の顔に戻っていきました。
イルカの方も心得たもので、やっぱりもう何も言うことなく、静かにお辞儀をしました。
朝日の昇る時間まではまだ少し。
去っていく男の後姿を、見えなくなるまで見送って、そうしてイルカは扉を閉めました。

イルカはこの町で、他の町の人と同じように、旅人に温かい寝床を提供しています。
旅人がいる間は、ただその一人にかかりきり。
どの位滞在するかはわからないけれど、
とにかくその人がいる間は、ずっとその人だけを見て生活するのです。
短い期間の、恋人同士。
例えその関係は戯れでも、その瞬間はイルカはいつも本気なのです。
それがイルカの仕事に対する情熱であり、そうしてその情熱は誇りでもありました。
自分自身の体で、凍えた心が例え一時でも融ければいい。
それがイルカの心の中にある「仕事」に対する考えです。
そして、今、イルカは「客」を送り出しました。
次の「客」はどんな人だろうか。
そう思いながら、イルカは部屋へと戻ります。
これからゆっくりと部屋を片付けて、次の客を待つのです。

台所で、温かい紅茶と胡桃パンと輪切りオレンジの朝食を取った後、
居間・寝室・台所と、狭い家の中を丁寧にホウキで掃き清めます。
一番重要ともいえる寝室には、香を焚き染め、柔らかく洗ったシーツ。
「よし。完璧」
部屋の様子を見渡して、満足げにイルカが頷きます。
こうして、次の「客」という名の「恋人」を待つのです。


カンカンカンカンカンカンカンカンカン。


家の外から、高らかな鐘の音が響きます。
イルカはその鐘の音を聴き、眉をひそめました。
この鐘の音は町にとっては厄介な、そして生きていくためには大切な物が近づいてくる音です。
「竜巻・・・・」
イルカは呟くと、外の様子が伺えるようになっている窓に飛びつきました。
町の住居は特殊なもので、竜巻の被害を押さえるべく、半地下状態の家になっているのです。
そしてイルカは、その唯一の窓にしっかりと鍵をかけ、雨戸を閉めました。


カーンカーンカーンカーン


「大きさは・・・上!」
鐘の音の打ち鳴らし方で、大きさもわかるのです。
竜巻は町にとってはかなり厄介なものなのです。
しかし、この竜巻を避けるべく、逃げてくる旅人達は、町へと辿り着きます。
そうしてそこで町の人と出会い、幾夜かの夢を見て再び旅へと出向くのです。
竜巻は町にとって厄介なものではありますが、それと同時に無くなってしまっては、
今のこの町の経済基盤の現状を維持することができなくなるものでもあるのです。
もっとも、町は竜巻があるということを受け入れた上でこの仕事を始めました。
「町」が興り、栄えるということは、結局の所、気象条件との戦いなのです。
相手をどう逆手に取るか。
町はそういう意味では、竜巻と戦いながら、竜巻を愛してもいるということです。
旅人を案内する存在でもある竜巻。
「恋人」である客と会わせてくれる、
仲人のようなものだと・・・町の人達は考えているのかも知れません。
そして町は、「避難所」の名目もあるためか「オアシス」と呼ばれるのかも知れません。


ごぉうという音が聞こえてきます。
かなり大きな竜巻のようで、イルカは少しだけ不安になりました。
やっぱり何度味わっても、この竜巻の通り過ぎていく瞬間は嫌いでした。
ガガガーという、地面を削る音。
まだ遠くにあるはずなのに、こんなにも近くで聞こえます。

コンコンコンコンコンコン

地面を擦る竜巻の音に混じって、イルカの玄関の戸が激しく叩かれる音がしました。
ハッとイルカはその音に耳を澄まします。
そうして、慌てて玄関の戸を開けました。
扉を開けた瞬間に、風に攫われるかのような感覚を味わいます。
「うわぁっと!」
本当に風に攫われそうになったイルカの体を、玄関の戸の前に立っていた男がしっかりと抱きとめます。
「凄い風だ・・・。すまない、少しだけ避難させてくれ」
イルカを抱きとめたまま、男がそう言います。
「ええ!もちろん。さぁ、早く」
二人して必死に扉を閉めます。

はぁ〜っと溜息をついて、イルカは改めて男を見ました。
砂漠の砂よけなのでしょうか、鼻までを黒いマスクで覆っていました。
そうして眼帯で隠された左目。
色素の薄い灰色の髪。
そうして荷物はたった一つ。
薄く汚れた羊の皮袋。
腰には重そうな剣。
普通の旅人という風貌には見えず、イルカは心の中で「この人は剣士か何かだな」と思いました。
男の全身をしげしげと見て、男の顔に視線を戻すと、ニコリと片目が細められました。
途端にイルカはカァッッと赤くなりました。
自分の視線は不躾なものであったかも知れない。そう思ったのです。
「助かりました。礼を言います」
イルカよりも幾分高い目線で、男が丁寧に頭を下げました。
「い、いいえ・・・そんな・・・これが仕事ですから」
丁寧な男の態度に、イルカはドキドキと胸を高鳴らせました。
「仕事・・・?」
男が不思議そうな顔でイルカを真っ直ぐと見ています。
「あの・・・ここは・・・オアシス・・・です」
この男は、自分がどこに逃げ込んだのか知らないのだな、そう思って、
イルカはおずおずと男にこの町の名を告げました。
旅人を癒す町、オアシス。
戯れの恋愛の、色町。
イルカの口から出た「オアシス」という名に、男が顕わになった右目を微かに見開きました。
「そうですか・・・。ここがオアシス」
顔の半分を覆っていたマスクを引き下ろし、男がイルカの家の中を見渡します。
「はい・・・」
男が室内に向けている物珍しい好奇の瞳。
その瞳に自分が映らないようにと考えながら、イルカは磨かれた床を見つめて小さく返事をしました。
「ああ・・・その、ここへ来てしまったということは・・・その」
男が言葉を少しだけ曇らせました。
イルカはじっと男の続く台詞を待ちます。
「俺が・・・アナタを・・・買って―――ということですかね?」
どこか言い難そうにその台詞は吐かれました。
それがこの男の優しさなのか、イルカに対する蔑みなのか。
それは俯いて台詞を聞いていたイルカにはわからないことでした。
「はい。買って下さい」
いつもの台詞。
もう何年も言ってきた台詞を、イルカは静かに言いました。
「では顔を上げて下さい」
男がイルカの頬に微かに触れました。
弾かれるようにイルカは顔を上げました。
「名前を―――聞かせて下さいますか?」
イルカを見る、その瞳はとても優しくて。優しくて。
「はい・・・イルカと申します」
震える声音で、イルカは自分の名を告げました。
「俺は、カカシと言います」
この瞬間、カカシとイルカは「恋人」となったのです。
戯れで、いつまで続くのかわからない。「恋人」に。









「で、では、カカシ様。お風呂へどうぞ」
外の竜巻の音が、不思議ともうイルカの耳へは入ってきません。
「埃を落としてスッキリとさせて下さい」
イルカはカカシへと風呂を勧めました。
砂漠を長々と歩いてきただろうカカシへの、イルカらしい心遣いでした。
「はい。ありがたく使わせていただきます」
カカシは荷物と、腰に下げた剣を外しました。
すかさずイルカが剣を受け取ります。
「さぁ、どうぞ」
風呂へと案内される途中、カカシはイルカへ一つお願いをしました。
「あの・・・イルカさん」
「はい?なんでしょうか?カカシ様」
かしずく様子で、イルカがカカシに笑顔を向けます。
「あの・・・、カカシ様っていう呼び方は止めて下さい。なんだか気恥ずかしい」
照れたようにカカシが笑います。
「では、カカシさん」
「はい」
「これでいいですね?」
イルカはクスリと笑いを洩らしました。
カカシは安心したようにイルカの目を見て、明らかにほっとした様子を見せました。
いい人だ。
唐突にイルカはそう思いました。
この人の体を温めてあげる。
それが少しだけ楽しみで、そしてそれから嬉しい気持ちになりました。
イルカはカカシのために着替えを用意しながら、その着替えに頬を寄せました。






















その夜。
カカシはイルカを優しく抱いてくれました。
柔らかくイルカの体を開いて、いたるところにキスをしてくれました。
耳の付け根から始まったカカシの愛撫は、イルカの体にジンとした熱さを植え付けました。
「カカシさん・・・カカシさん・・」
愛撫というものに、もう随分と慣らされている筈のイルカの体は、カカシの優しい手によって、
まるで初めての熱さを感じていました。
イルカはとことん優しくされることに弱いのです。
「イルカさんの体は温かいなぁ」
キュウと抱きしめたイルカの体に、自分の体をずっしりと沈めて、カカシはそぉっと呟きました。
すべらかな肌から染み出す、イルカの微かな汗の匂いが、カカシをうっとりとした気分にさせました。
こんなに満ち足りた気分になるのは久しぶりだと思いました。
トクトクと鳴る胸。
イルカの手が優しくカカシの髪を梳きます。



気が付いた時には、イルカの胸の上で、恋人は眠っていました。
すぅすぅという健やか過ぎる寝息を立てて。
ああ、この人は旅人だから。
指の間を流れていくサラサラの髪の感触を楽しみながら、イルカは旅の過酷さを思いました。
この町にやってくる人達は皆、何かしらの理由を持って旅をしています。
イルカの最初の客であった男は、攫われた母親を迎えに行く途中でした。
次の客は、「王国の鍵」なる秘宝を求めるトレジャーハンター。
何番目かの客は流浪の民の末裔で、祖国を取り戻すため、各地に散った仲間を探す旅。
そして、どの客も必ず最後に、別れる際に望むものがありました。
他ならぬイルカ自身です。
「共に来ないか?」
そういって差し出された手に、何度自分の指を絡めようかと思ったことか。
でも、何故かそれはいけないことのように思えたのです。
この人達の旅に、自分は不必要な存在だ。
イルカにはそう思えてならなかったのです。
ただ一人の人のために生きてゆきたい。
そう思うことは多々あったのですが、本当の意味で自分を必要としてくれる人には、
未だ会えていないような気がするのです。
誰かが、いつか必ず自分を必要としてくれる。
そうして、自分もまたその人を必要とする。
この夢を見たままの生活から、一歩踏み出す「理由」を教えてくれる。
だから、イルカは待っているのです。
いつかくる、この夢の中の生活の結末を。











カカシとイルカの日々は穏やかでした。
抱き合って眠って、静かにご飯を食べて、そうしてまた抱き合って。
退廃した・・・と言っても、けして過言ではない生活でしたが、
それでも二人はお互いに溺れていました。
「カカシさん」
イルカは甘えるように何度も何度もカカシの名前を呼びました。
その度に、カカシの指先がイルカの秘密の部分を触って、イルカの体をやわくしていきました。
淫靡な空気を、二人は間近に引き寄せて、そうしてお話しをするのです。
「カカシさんの旅の理由を聞いても良いですか?」
イルカはカカシの指に悪戯されながら、耳元に唇を寄せて聞きました。
「旅の理由ですか?しょうもないことですよ」
囁くイルカの声に、自分を高めながら、カカシが答えます。
「オズの魔法使いの3人と同じですよ」
「オズの魔法使い?」
何となく聞いたことのある童話。
ライオンと、ロボットと、そうして案山子。
「勇気と、愛と、自分の考え。この3つを求めて、旅に出ました」
「・・・・・・」
なんと現実感のない答えだろう。
イルカは少しだけ驚きました。
「俺は・・・あなたは剣士か何かだろうかと・・・そう思っていました」
「剣士?」
イルカの答えを聞いて、カカシが苦笑を浮かべました。
「あなたは哲学者?」
その問いに、カカシはくくくっと笑いながら、その顔を枕に埋めました。
イルカは唖然とした顔をしていたのを、ちょっぴりの笑顔に代えて、
カカシの裸の背中に頬を寄せました。
この人と旅をしたら、自分は何を見つけるのだろう。
そう思いながら。







翌朝イルカが目覚めると、隣にはカカシの姿がありませんでした。
はっと、慌てて起き上がったイルカの耳に、微かな水音が聞こえます。
それを聞き、ふぅっと息を吐き出します。
消えてしまったのかと思った。
カカシの服を用意しながら、イルカはしんみりとそう思いました。
寝室のドアが開いて、カカシが現れます。
そして一言、
「イルカさん。俺は今日、出発しようかと思います」
と、本当に突然言い出しました。
「えっ・・・・?」
でも、イルカには引き止める言葉などありません。
ただ静かに「はい」と頷くことしかできないのです。



カカシのために、イルカは最後の朝食を作ります。
旅の途中で食べられるように、お弁当も。
何故だかとても泣けてきて、こんな想いを抱える、お別れの日は嫌いでした。
イルカはいつも、いつも、このお別れの日は嫌いでした。
今日は何故だか特別に。
特別に嫌だったのです・・・。







「イルカさん。あなたの肌は温かかった」
扉の前で、二人。
静かに向かい合いながら、言葉少なく。
「そう言っていただけると、嬉しいです」
イルカは縋りつくようにカカシを見つめて、熱く答えました。
カカシはそんなイルカに答えるかのように、薄く笑いました。
温度で距離を感じました。

「・・・・・・」
「お元気で。イルカさん」
カカシが手の甲で、イルカの頬を優しく撫でました。
「カカシ・・・・さん・・・」
ぽやぽやとイルカの目が大きくぼやけます。
連れて行って・・・と。
そう言いたくて、言いたくて。でも言えなくて。
イルカはただただカカシの前で涙を零しました。



別れてしまうのが、どうしてこんなに切ないのでしょうか。
一時の感情の、大きな歪みなのでしょうか。
カカシだったら、自分を必要な存在だと認めてくれると思っていた。
それはイルカの驕りだったのでしょうか。


「・・・迎えにきますね」

「え?」
「まだ連れていけないけれど、あなたを迎えに来るというのは・・・駄目ですか?」
カカシが困ったようにイルカに言いました。
「実は、俺は今、任務中なのです。とある国から頼まれた仕事を抱えています」
訥々と語られるカカシの旅の理由。
「だから・・・それを片付けたら、あなたを迎えにきます」
きっぱりと言い切られた言葉に、イルカは驚いたまま小さく頷きました。
イルカの頷きに、理解したのだということを感じて、カカシが安堵した様子で息を吐き出しました。

「迎えにきたら・・・・次の旅の理由はあれにしましょう」
「旅の理由・・・」
「ええ。理由。・・・・勇気と、愛と、自分の考えを、二人で探す旅」

どうです?と尋ねるカカシに、イルカはコックリと頷いて、小さな声で、
「待っています」と答えました。
カカシはイルカを一度だけ、強く強く抱きしめて、
そうして砂漠へと身を翻して消えて行きました。
イルカはその後姿が見えなくなってもまだずっと、その場に立ち尽くしていました。



























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