新世界 13



ああ!かみさま!いるのなら、どうぞ願いを叶えてください。

あの人が、カカシ先生が、どうか無事でいますように!










カカシ先生がAランクの任務だと言って、出て行ってから、もう数ヶ月経ちます。
ほんの数週間の任務だと、そう聞いていたのに。

イルカ先生は、二人のお家の大きな木の下。
握り合わせた手の平を、ぎゅうっと開いたり、握ったりしていました。




カカシ先生の旅立ちの夜。
二人の心は、やっぱりどこか遠くにありました。
イルカ先生の心の中で、カカシ先生の言葉はずっしりと重くなっていたのですけど、
なんだか素直になれないままだったのです。


「結婚して、こんなに早く任務につかなければならないなんてね」

カカシ先生が、苦笑という笑いを浮かべて、静かに言いました。
イルカ先生は頑なな心ではいましたが、やっぱりカカシ先生と離れるのは悲しくて、
お月様を見上げるような、そんな寂しい表情で、カカシ先生を見上げました。


「すぐに帰ってきますね」

カカシ先生の手が、イルカ先生の髪を柔らかく梳いて、
そうして離れていきました。


イルカ先生は、カカシ先生のその手に触れようと、手を伸ばしたのですけど、
カカシ先生はクルリと身体を翻して、そうして出かけて行ったのです。








「カカシ先生」













未来が、もしも待ち構えているのなら。

それがどんなものであっても、いらない。

輝かしくても、濁っていても。

そんな不確定なものはいらない。





「カカシ先生・・・・・!!!!」












カカシ先生。













大きな木の下。
まるで大海原を前にした時の、壮大な寂しさがイルカ先生を包みます。
足元の青い草が、剥き出しの裸足の足を、柔らかく撫でて。

「カカシ先生」

もう何度、口に出してこの名前を呼んだでしょうか。


呼ぶ度に、切なくなって。

「カカシ先生」

早く帰って来て欲しい。
無事でいて欲しい。
会いたい。
早く会いたい。
好き・・・だから。
好きという気持ちで、今、一杯です。
カカシ先生が好きです。
好きなんです。







木は、イルカ先生を見下ろして、そうして枝を揺らしました。




(もうすぐだよ)

(もうすぐだよ)


ずぅっと向こうの、一つの人影を見て。
木は、イルカ先生に囁きました。


















かみさま。

「今」に感謝します。



「ずっと一緒」、「ずっと同じ」、「昔のあなた」。

不確定な未来と、変わらない過去はいらない。



















大海原の向こうに、はにかんだ笑顔を浮かべて、カカシ先生が表れました。

「ごめんね。こんなに遅くなってしまいました」

凛と通る声が、イルカ先生に届きます。
イルカ先生は大海原の寂しさの中に、新世界を見たと思いました。

「カカシ先生・・・!」











イルカ先生を、思った通りの優しさで抱きしめたものは、
「今」そこにある、「新世界」であったという話です。




























終









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蜜月