ああ!かみさま!いるのなら、どうぞ願いを叶えてください。 あの人が、カカシ先生が、どうか無事でいますように! カカシ先生がAランクの任務だと言って、出て行ってから、もう数ヶ月経ちます。 ほんの数週間の任務だと、そう聞いていたのに。 イルカ先生は、二人のお家の大きな木の下。 握り合わせた手の平を、ぎゅうっと開いたり、握ったりしていました。 カカシ先生の旅立ちの夜。 二人の心は、やっぱりどこか遠くにありました。 イルカ先生の心の中で、カカシ先生の言葉はずっしりと重くなっていたのですけど、 なんだか素直になれないままだったのです。 「結婚して、こんなに早く任務につかなければならないなんてね」 カカシ先生が、苦笑という笑いを浮かべて、静かに言いました。 イルカ先生は頑なな心ではいましたが、やっぱりカカシ先生と離れるのは悲しくて、 お月様を見上げるような、そんな寂しい表情で、カカシ先生を見上げました。 「すぐに帰ってきますね」 カカシ先生の手が、イルカ先生の髪を柔らかく梳いて、 そうして離れていきました。 イルカ先生は、カカシ先生のその手に触れようと、手を伸ばしたのですけど、 カカシ先生はクルリと身体を翻して、そうして出かけて行ったのです。 「カカシ先生」 未来が、もしも待ち構えているのなら。 それがどんなものであっても、いらない。 輝かしくても、濁っていても。 そんな不確定なものはいらない。 「カカシ先生・・・・・!!!!」 カカシ先生。 大きな木の下。 まるで大海原を前にした時の、壮大な寂しさがイルカ先生を包みます。 足元の青い草が、剥き出しの裸足の足を、柔らかく撫でて。 「カカシ先生」 もう何度、口に出してこの名前を呼んだでしょうか。 呼ぶ度に、切なくなって。 「カカシ先生」 早く帰って来て欲しい。 無事でいて欲しい。 会いたい。 早く会いたい。 好き・・・だから。 好きという気持ちで、今、一杯です。 カカシ先生が好きです。 好きなんです。 木は、イルカ先生を見下ろして、そうして枝を揺らしました。 (もうすぐだよ) (もうすぐだよ) ずぅっと向こうの、一つの人影を見て。 木は、イルカ先生に囁きました。 かみさま。 「今」に感謝します。 「ずっと一緒」、「ずっと同じ」、「昔のあなた」。 不確定な未来と、変わらない過去はいらない。 大海原の向こうに、はにかんだ笑顔を浮かべて、カカシ先生が表れました。 「ごめんね。こんなに遅くなってしまいました」 凛と通る声が、イルカ先生に届きます。 イルカ先生は大海原の寂しさの中に、新世界を見たと思いました。 「カカシ先生・・・!」 イルカ先生を、思った通りの優しさで抱きしめたものは、 「今」そこにある、「新世界」であったという話です。 終 index 蜜月