イルカ先生は、家庭菜園をするのが夢でした。 そうして。 カカシ先生は、忍犬を巻物から出して、お庭で飼ってあげたいと、 こっそりそう思っていました。 イルカ先生は動物はお好きかな? カカシ先生はほんの少しだけ不安でした。 「イルカ先生」 カカシ先生がきゅっと握った手を引いて、イルカ先生を呼びました。 「はい。何ですか?」 イルカ先生がクリンとカカシ先生の方を向きます。 「犬はお好きですか?」 「?」 何ですか?突然。 そんな顔をして、イルカ先生が笑います。 そうして、はっと気付いたように、 「忍犬ですか?」 と笑いました。 「好きです」 カカシ先生の、普段巻物を仕舞っている懐に目をやって。 「カカシ先生の忍犬の、お家もいりますね」 「カカシ先生とわんちゃん達。一気に家族が増えてとても嬉しいです」 夕方の透明な空気の中で、イルカ先生が好きだと言ってくれた。 良かった。 そう思って、カカシ先生はふぅっと息を吐き出しました。 *** 四季の移ろいを、ゆるゆると感じ、一見平凡な街である木の葉。 しかし、其の実。 木の葉の里は、堅固な要塞都市でもありました。 複雑に入り組んだ剥き出しなまでの建築物は、それだけでもう一つの砦でした。 雑多な街中は、どこか異色で、切り取られた喧騒ばかりが張り付いています。 しかし、そんな街中から一歩出てしまえば、自然に見事に囲まれた場所が広がります。 二人はそんな場所に家を探しました。 テクテクと歩いて、いくつもの家を見てまわります。 木の葉の里には、いくつもの無人の家というものが存在します。 その家は、任務で帰ってくることのなかった人間のものであったり、 里が忍び達へと無償で建てたものだったりするのです。 気に入った物件は、火影様の了承さえあれば住んでもよいのです。 「あ。ここ、良いかも」 そう言って、カカシ先生が一軒の家の前で立ち止まりました。 そこは、家よりも先に、庭にある大きな木へと目の行く家でした。 「うわぁ。大きな木」 イルカ先生は、空へと伸びる木を見上げて、思わずそう声を出してしまいました。 「本当に大きいですね」 カカシ先生も一緒に見上げます。 お空には、もう星がいくつか出ていて、何だかとっても幻想的な雰囲気が広がります。 木に寄り添うようにちんまりと建つ家は、小さかったけれど、広々とした庭に浮かぶ、 一つの小さな孤島のようでした。 びっしりと、緑に覆われた庭は、そこかしこで虫の動きを感じます。 肝心の家は、壁面に蔦を這わせてはいますが、手入れをすれば十分に住める感じです。 「誰かの家だということはないですよね?」 カカシ先生にイルカ先生が尋ねます。 静かに目を伏せて、カカシ先生が周囲の気を探ります。 「ええ。ここに人が住んでいたのはもう3、4年前のようですね」 「そうですか」 ほぉっと頬を緩めて、イルカ先生が「じゃあ」と言いました。 「ここにしますか?」 一目でこの家を気に入ってしまったカカシ先生は、イルカ先生の様子を伺います。 「カカシ先生、この家が気に入ったんでしょ?」 イルカ先生が悪戯っぽく尋ね返します。 イルカ先生の口調に、カカシ先生は目線を外して、「実は」と言いました。 そのカカシ先生の言葉を聞いて。 「俺も気に入りました」 えっへんという仕草で、イルカ先生がどこか得意気に言いました。 その姿があんまり幼くて、カカシ先生は思わず吹き出します。 「ぷっ」 驚いたようにイルカ先生が、カカシ先生を振り返ります。 どうして笑うの? という顔で。 「イルカ先生は本当に可愛い」 カカシ先生は、思わずそんな言葉を言ってしまいました。 普段、そんな台詞を言うと、イルカ先生は酷く怒ってしまうので、 言わないように気をつけていたのに。つい。 「・・・・!!」 「あっ!ご、ごめんなさいっ」 笑ってしまって、慌てて謝ったカカシ先生を、イルカ先生が大きな目で睨みます。 そうして。 その大きな目に射すくめられて、カカシ先生は悪い事をしたと目を閉じました。 イルカ先生に嫌われたくないなぁとただ、ただ、思いました。 クスッ。 イルカ先生の笑う声。 「カカシ先生も可愛いですよ」 イルカ先生が笑っていました。 index 新世界 4