新世界 3




イルカ先生は、家庭菜園をするのが夢でした。
そうして。
カカシ先生は、忍犬を巻物から出して、お庭で飼ってあげたいと、
こっそりそう思っていました。


イルカ先生は動物はお好きかな?
カカシ先生はほんの少しだけ不安でした。


「イルカ先生」
カカシ先生がきゅっと握った手を引いて、イルカ先生を呼びました。

「はい。何ですか?」
イルカ先生がクリンとカカシ先生の方を向きます。

「犬はお好きですか?」
「?」

何ですか?突然。

そんな顔をして、イルカ先生が笑います。
そうして、はっと気付いたように、
「忍犬ですか?」
と笑いました。

「好きです」

カカシ先生の、普段巻物を仕舞っている懐に目をやって。


「カカシ先生の忍犬の、お家もいりますね」

「カカシ先生とわんちゃん達。一気に家族が増えてとても嬉しいです」



夕方の透明な空気の中で、イルカ先生が好きだと言ってくれた。
良かった。
そう思って、カカシ先生はふぅっと息を吐き出しました。





***




四季の移ろいを、ゆるゆると感じ、一見平凡な街である木の葉。
しかし、其の実。
木の葉の里は、堅固な要塞都市でもありました。
複雑に入り組んだ剥き出しなまでの建築物は、それだけでもう一つの砦でした。


雑多な街中は、どこか異色で、切り取られた喧騒ばかりが張り付いています。
しかし、そんな街中から一歩出てしまえば、自然に見事に囲まれた場所が広がります。

二人はそんな場所に家を探しました。



テクテクと歩いて、いくつもの家を見てまわります。
木の葉の里には、いくつもの無人の家というものが存在します。

その家は、任務で帰ってくることのなかった人間のものであったり、
里が忍び達へと無償で建てたものだったりするのです。

気に入った物件は、火影様の了承さえあれば住んでもよいのです。




「あ。ここ、良いかも」

そう言って、カカシ先生が一軒の家の前で立ち止まりました。
そこは、家よりも先に、庭にある大きな木へと目の行く家でした。

「うわぁ。大きな木」

イルカ先生は、空へと伸びる木を見上げて、思わずそう声を出してしまいました。

「本当に大きいですね」
カカシ先生も一緒に見上げます。


お空には、もう星がいくつか出ていて、何だかとっても幻想的な雰囲気が広がります。

木に寄り添うようにちんまりと建つ家は、小さかったけれど、広々とした庭に浮かぶ、
一つの小さな孤島のようでした。
びっしりと、緑に覆われた庭は、そこかしこで虫の動きを感じます。

肝心の家は、壁面に蔦を這わせてはいますが、手入れをすれば十分に住める感じです。

「誰かの家だということはないですよね?」
カカシ先生にイルカ先生が尋ねます。

静かに目を伏せて、カカシ先生が周囲の気を探ります。
「ええ。ここに人が住んでいたのはもう3、4年前のようですね」

「そうですか」
ほぉっと頬を緩めて、イルカ先生が「じゃあ」と言いました。

「ここにしますか?」
一目でこの家を気に入ってしまったカカシ先生は、イルカ先生の様子を伺います。

「カカシ先生、この家が気に入ったんでしょ?」
イルカ先生が悪戯っぽく尋ね返します。

イルカ先生の口調に、カカシ先生は目線を外して、「実は」と言いました。



そのカカシ先生の言葉を聞いて。

「俺も気に入りました」

えっへんという仕草で、イルカ先生がどこか得意気に言いました。





その姿があんまり幼くて、カカシ先生は思わず吹き出します。

「ぷっ」

驚いたようにイルカ先生が、カカシ先生を振り返ります。
どうして笑うの?
という顔で。

「イルカ先生は本当に可愛い」

カカシ先生は、思わずそんな言葉を言ってしまいました。
普段、そんな台詞を言うと、イルカ先生は酷く怒ってしまうので、
言わないように気をつけていたのに。つい。

「・・・・!!」



「あっ!ご、ごめんなさいっ」

笑ってしまって、慌てて謝ったカカシ先生を、イルカ先生が大きな目で睨みます。


そうして。
その大きな目に射すくめられて、カカシ先生は悪い事をしたと目を閉じました。
イルカ先生に嫌われたくないなぁとただ、ただ、思いました。



クスッ。



イルカ先生の笑う声。



「カカシ先生も可愛いですよ」



イルカ先生が笑っていました。









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