新世界 4




住む家を決めた二人は、帰り道。
火影さまに結婚の了承を得なければいけないことに気付きました。

落ちていく夕日の、大きさと、昇る月に瞳を眇めて。




「火影さま、びっくりなさるかな」

イルカ先生が、少し心配そうに顔を曇らせました。


「後悔してます?」
イルカ先生の心配そうな様子に心を痛めて、カカシ先生は恐る恐る、
黒く美しい、イルカ先生の髪に指を絡めました。

艶やかな黒い髪からは、柔らかい匂いがしました。

そこに、ほんの少しの性的な匂いも感じ取って、
カカシ先生はイルカ先生を抱きしめたいような急激な思いに、胸が痛くなりました。



「後悔なんて。そんな」

自分の髪を梳いてくれていたカカシ先生の大きな手を取り、
イルカ先生がおぼろな瞳を潤めます。



イルカ先生は戸惑っていました。
二人で暮らしていくんだという、何とも現実的な思いに。



「俺は、イルカ先生を幸せにしたいし、それに・・・」

息を吸って、カカシ先生が続けます。

「イルカ先生といて、俺も幸せになりたいんです」

欲張りなことに。
そうなんですよ。イルカ先生。



配給の忍服の胸の奥で、カカシ先生はイルカ先生に語りかけます。


「カカシ先生」


イルカ先生が、真っ直ぐにカカシ先生を見詰めて、ほぅっと呟きます。





「もっと。もっと。欲張りな感情で、俺を縛って下さいね」

「それだけが、俺を確かな感情へと、方向へと導いてくれる」


イルカ先生が、そう言って、ようやっと笑いました。

敵わないな。
カカシ先生はこっそりとそう思い、イルカ先生の背を見つめました。





***




「ほお」

木の葉の里長は、咥えたパイプからゆっくりと煙を吐き出しながら、
カカシ先生とイルカ先生を交互に見比べました。

「火影さま、いいですよね?俺達の結婚」

火影さまのどこまでもゆったりした仕草に、痺れを切らしたというように、
カカシ先生が言葉を言い募ります。

「ほお。結婚のぉ」

しかし、カカシ先生のそんな態度を逆撫でするように、火影さまは殊更ゆっくり
煙を吐き出し、ぽわぽわと丸い輪なぞを作っていました。

イルカ先生はというと、火影さまの顔が真っ直ぐ見られず、
カカシ先生よりも半歩下がった位置で、下を向いて、赤くなっていました。


「イルカもそれで良いのか?」

息子のように思っていたイルカ先生の結婚話を、
火影さまは、火影さまなりに心配されたようです。

「のぉ、イルカ。お前、本当にカカシと所帯を持ちたいのか?」

「ほ、火影さまっ・・・」


イルカ先生は、そこでようやく顔を上げました。


「カカシはお前より早く死ぬやも知れんぞ?」

「子を望めんお前の身体に、カカシが飽きる日がくるやも知れんぞ?」

「それでもよいのか?」




考えさせられるそれらの未来を暗示させ、火影さまがイルカ先生の心を突付きます。



そっとカカシ先生の顔を見て、それから火影さまの顔を見て。
イルカ先生は、口を開きます。




「例え、どんな未来が待っていたとしても、今、ここにいるカカシ先生を信じます。」



イルカ先生は、きっぱりと強い口調でそう、火影さまに言いました。

どんな未来をも打ち砕く、強さを滲ませたその口調に、
火影さまは咥えていたパイプを手へと持ち替え、にっこりと笑われました。



「では、二人の結婚を許そうかのぉ」










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