住む家を決めた二人は、帰り道。 火影さまに結婚の了承を得なければいけないことに気付きました。 落ちていく夕日の、大きさと、昇る月に瞳を眇めて。 「火影さま、びっくりなさるかな」 イルカ先生が、少し心配そうに顔を曇らせました。 「後悔してます?」 イルカ先生の心配そうな様子に心を痛めて、カカシ先生は恐る恐る、 黒く美しい、イルカ先生の髪に指を絡めました。 艶やかな黒い髪からは、柔らかい匂いがしました。 そこに、ほんの少しの性的な匂いも感じ取って、 カカシ先生はイルカ先生を抱きしめたいような急激な思いに、胸が痛くなりました。 「後悔なんて。そんな」 自分の髪を梳いてくれていたカカシ先生の大きな手を取り、 イルカ先生がおぼろな瞳を潤めます。 イルカ先生は戸惑っていました。 二人で暮らしていくんだという、何とも現実的な思いに。 「俺は、イルカ先生を幸せにしたいし、それに・・・」 息を吸って、カカシ先生が続けます。 「イルカ先生といて、俺も幸せになりたいんです」 欲張りなことに。 そうなんですよ。イルカ先生。 配給の忍服の胸の奥で、カカシ先生はイルカ先生に語りかけます。 「カカシ先生」 イルカ先生が、真っ直ぐにカカシ先生を見詰めて、ほぅっと呟きます。 「もっと。もっと。欲張りな感情で、俺を縛って下さいね」 「それだけが、俺を確かな感情へと、方向へと導いてくれる」 イルカ先生が、そう言って、ようやっと笑いました。 敵わないな。 カカシ先生はこっそりとそう思い、イルカ先生の背を見つめました。 *** 「ほお」 木の葉の里長は、咥えたパイプからゆっくりと煙を吐き出しながら、 カカシ先生とイルカ先生を交互に見比べました。 「火影さま、いいですよね?俺達の結婚」 火影さまのどこまでもゆったりした仕草に、痺れを切らしたというように、 カカシ先生が言葉を言い募ります。 「ほお。結婚のぉ」 しかし、カカシ先生のそんな態度を逆撫でするように、火影さまは殊更ゆっくり 煙を吐き出し、ぽわぽわと丸い輪なぞを作っていました。 イルカ先生はというと、火影さまの顔が真っ直ぐ見られず、 カカシ先生よりも半歩下がった位置で、下を向いて、赤くなっていました。 「イルカもそれで良いのか?」 息子のように思っていたイルカ先生の結婚話を、 火影さまは、火影さまなりに心配されたようです。 「のぉ、イルカ。お前、本当にカカシと所帯を持ちたいのか?」 「ほ、火影さまっ・・・」 イルカ先生は、そこでようやく顔を上げました。 「カカシはお前より早く死ぬやも知れんぞ?」 「子を望めんお前の身体に、カカシが飽きる日がくるやも知れんぞ?」 「それでもよいのか?」 考えさせられるそれらの未来を暗示させ、火影さまがイルカ先生の心を突付きます。 そっとカカシ先生の顔を見て、それから火影さまの顔を見て。 イルカ先生は、口を開きます。 「例え、どんな未来が待っていたとしても、今、ここにいるカカシ先生を信じます。」 イルカ先生は、きっぱりと強い口調でそう、火影さまに言いました。 どんな未来をも打ち砕く、強さを滲ませたその口調に、 火影さまは咥えていたパイプを手へと持ち替え、にっこりと笑われました。 「では、二人の結婚を許そうかのぉ」 index 新世界 5