新世界 5





カカシ先生は思いました。

何かイルカ先生にプレゼントをしたいと。
この結婚を何か形のあるものに託して、そうして残したいなと思ったのです。
何がいいかなと、カカシ先生は考えました。


火影さまの所から、二人で肩を並べて帰る間中、ずうっと、ずうっと考え込んでいました。
確か、イルカ先生は、お鍋の新しいのが欲しいと言っていたなと思い出しました。
そういえば、こたつ布団も新調したいと言っていました。
写真立てに、写真を飾りたいとも言っていました。

そうして色々考えて、何だか違うなぁとカカシ先生は思いました。

イルカ先生が欲しいと言う物は、何でもプレゼントしてあげたいのですけれど、
この「結婚」を託す品物ではないような気がしたのです。




そこで、カカシ先生はいろんな人の意見を聞いてみることにしました。



まずは親友のアスマ先生です。
アスマ先生は、カカシ先生の暗部時代からの友人で、大きな熊のような人です。
でも、とっても優しくて、カカシ先生はイルカ先生とはまた違う、親愛の情を寄せていました。

「ねぇ。アスマ、何をプレゼントしたらいい?」

カカシ先生がアスマ先生に尋ねます。

「おお?そうだなぁ」

アスマ先生が大きな、太い腕を腕組みして、背中を丸めて、小さくなって、
そうしてカカシ先生のために、う〜ん、う〜んと考えてくれました。

「そうだな!美味しい酒なんてどうだ!?」

にこにこと、これしかないという表情で、アスマ先生が言います。

「お酒?」

カカシ先生は、少し違うような気がするけどと思いましたが、せっかく一生懸命、
アスマ先生が考えてくれたプレゼントの案だと思って、そっと心の中に仕舞いました。






カカシ先生は、次にライバルでもあるガイ先生に尋ねてみました。
「ねぇ、ガイは何をプレゼントしたら良いと思う?」

ガイ先生は、ナイスな立ち姿で親指を突き出し、一言言いました。
「カカシ〜!音楽なんてどうだー!?」


「音楽?」


カカシ先生はガイ先生にどういうものかを聞いてみます。

返ってきた答えはこうでした。

「音楽に自分の想いを込めて、歌うんだー!!」

なるほどと、カカシ先生は思いましたが、形のあるものにしたいという気持ちが、
やっぱり強かったので、ガイ先生の案も取り合えず、心に仕舞っておきました。




そうして、カカシ先生は次に紅先生に尋ねてみました。
すると、探していた、欲しかった答えにようやく出会えました。

ああ。そうか。これにしようと、カカシ先生は思いました。








***





引越しの荷物を新居へと運び込み、どうにかこうにか形になってきた室内。

台所と、居間と、お風呂と、寝室とトイレ。
必要最小限といった感じの狭いながらの新居は、
キレイ好きのイルカ先生が、ピカピカに磨き上げてくれました。

もともと、カカシ先生もイルカ先生も忍びでしたから、
荷物は全くと言ってよい程ありませんでした。

身の回りの品を集めてみて、これだけなんだなぁと改めて思って、
少し寂しくなったのだと、イルカ先生がこっそりと言っていました。



「イルカ先生、一休みしませんか?」

台所を片付けていたイルカ先生を、カカシ先生が縁側から呼びます。
居間に作られた縁側は、そのまま庭に降りられるようになっていて、
まるで川に面した橋桁のようでありました。

そこに腰掛けて、カカシ先生が足をぷらぷらさせながら、イルカ先生を呼びます。


「は〜い。待って下さいね。お茶入れますからっ」

お茶なんていいのに、と思いながらも、カカシ先生は自分のズボンのポケットを、
布地の上からそっと触って、そこにそれがあるかな?と確かめました。

大丈夫です。
ちゃんと、そこに、それはありました。
イルカ先生へのプレゼントです。




「はい、カカシ先生、お茶です」

にっこり笑って、イルカ先生がコトリと縁側に熱そうなお茶を置いてくれました。

「ありがとうございます」

つられるように笑って、カカシ先生は縁側をペシペシ叩くと、
イルカ先生に自分の横に座るようにとその場所を指し示しました。

「ん?何ですか?」

春の風が、イルカ先生の髪をかきあげて何処かへ流れていきます。
カカシ先生は、そんなイルカ先生の横顔に少しドキドキしながら、
ポケットへと手を差し入れ、それをしっかりと握りました。


「実はですね」

「はい」

「イルカ先生にプレゼントがあるんです」

「え?」


イルカ先生が驚いたように目を大きく開きます。

「あの、先生、左手を出してくれますか・・・?」


カカシ先生は震えてしまう自分が、なんてかっこ悪いんだろうとちょっぴり笑えました。

「何ですか?」

手の平をみせる形で差し出された、イルカ先生の手を取って、
カカシ先生はその手を静かに裏返しました。

そうして、自分が握り締めていた細い、細い、銀色のそれをイルカ先生の薬指に通してあげました。



「?」



イルカ先生が不思議そうにその光景を見ています。


「俺と結婚してくれて、ありがとうございます」


カカシ先生はそう言うと、その指輪をはめたイルカ先生の左手に、
そぉっと優しいキスを落としました。

「あっ・・・・・」

キスをしたイルカ先生の手が、震えていました。

「イルカ先生」

瞳を起こして伺いみたイルカ先生は、潤んだ、とけそうな瞳をしていました。


「あ、ありがとうございます。カカシ先生・・・」





指輪を、結婚の証にと、そう教えてくれたのは紅先生でした。
カカシ先生は、小さな銀色の指輪に、変わらぬ愛を誓って、
そうしていろんな感謝の気持ちを込めて、指輪をプレゼントしました。



結婚してくれて、ありがとう。
好きです。愛してます。






「カカシせんせぇ〜・・・・」

うりゅっと潤んだ瞳を、カカシ先生へと向けて、イルカ先生が震えています。

「ああ、俺、あなたを困らせるつもりはないんですっ」

カカシ先生は泣き出したイルカ先生の頬に、そぉっと触れました。
すると、ピクリと身体を震わせて、イルカ先生がカカシ先生の腕に頬を寄せて、
震える両手を広げてきました。


優しく、優しく抱きしめてあげながら、カカシ先生はその耳元で歌うように囁きました。

「ありがとう。結婚してくれて。本当にありがとう」











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