カカシ先生は思いました。 何かイルカ先生にプレゼントをしたいと。 この結婚を何か形のあるものに託して、そうして残したいなと思ったのです。 何がいいかなと、カカシ先生は考えました。 火影さまの所から、二人で肩を並べて帰る間中、ずうっと、ずうっと考え込んでいました。 確か、イルカ先生は、お鍋の新しいのが欲しいと言っていたなと思い出しました。 そういえば、こたつ布団も新調したいと言っていました。 写真立てに、写真を飾りたいとも言っていました。 そうして色々考えて、何だか違うなぁとカカシ先生は思いました。 イルカ先生が欲しいと言う物は、何でもプレゼントしてあげたいのですけれど、 この「結婚」を託す品物ではないような気がしたのです。 そこで、カカシ先生はいろんな人の意見を聞いてみることにしました。 まずは親友のアスマ先生です。 アスマ先生は、カカシ先生の暗部時代からの友人で、大きな熊のような人です。 でも、とっても優しくて、カカシ先生はイルカ先生とはまた違う、親愛の情を寄せていました。 「ねぇ。アスマ、何をプレゼントしたらいい?」 カカシ先生がアスマ先生に尋ねます。 「おお?そうだなぁ」 アスマ先生が大きな、太い腕を腕組みして、背中を丸めて、小さくなって、 そうしてカカシ先生のために、う〜ん、う〜んと考えてくれました。 「そうだな!美味しい酒なんてどうだ!?」 にこにこと、これしかないという表情で、アスマ先生が言います。 「お酒?」 カカシ先生は、少し違うような気がするけどと思いましたが、せっかく一生懸命、 アスマ先生が考えてくれたプレゼントの案だと思って、そっと心の中に仕舞いました。 カカシ先生は、次にライバルでもあるガイ先生に尋ねてみました。 「ねぇ、ガイは何をプレゼントしたら良いと思う?」 ガイ先生は、ナイスな立ち姿で親指を突き出し、一言言いました。 「カカシ〜!音楽なんてどうだー!?」 「音楽?」 カカシ先生はガイ先生にどういうものかを聞いてみます。 返ってきた答えはこうでした。 「音楽に自分の想いを込めて、歌うんだー!!」 なるほどと、カカシ先生は思いましたが、形のあるものにしたいという気持ちが、 やっぱり強かったので、ガイ先生の案も取り合えず、心に仕舞っておきました。 そうして、カカシ先生は次に紅先生に尋ねてみました。 すると、探していた、欲しかった答えにようやく出会えました。 ああ。そうか。これにしようと、カカシ先生は思いました。 *** 引越しの荷物を新居へと運び込み、どうにかこうにか形になってきた室内。 台所と、居間と、お風呂と、寝室とトイレ。 必要最小限といった感じの狭いながらの新居は、 キレイ好きのイルカ先生が、ピカピカに磨き上げてくれました。 もともと、カカシ先生もイルカ先生も忍びでしたから、 荷物は全くと言ってよい程ありませんでした。 身の回りの品を集めてみて、これだけなんだなぁと改めて思って、 少し寂しくなったのだと、イルカ先生がこっそりと言っていました。 「イルカ先生、一休みしませんか?」 台所を片付けていたイルカ先生を、カカシ先生が縁側から呼びます。 居間に作られた縁側は、そのまま庭に降りられるようになっていて、 まるで川に面した橋桁のようでありました。 そこに腰掛けて、カカシ先生が足をぷらぷらさせながら、イルカ先生を呼びます。 「は〜い。待って下さいね。お茶入れますからっ」 お茶なんていいのに、と思いながらも、カカシ先生は自分のズボンのポケットを、 布地の上からそっと触って、そこにそれがあるかな?と確かめました。 大丈夫です。 ちゃんと、そこに、それはありました。 イルカ先生へのプレゼントです。 「はい、カカシ先生、お茶です」 にっこり笑って、イルカ先生がコトリと縁側に熱そうなお茶を置いてくれました。 「ありがとうございます」 つられるように笑って、カカシ先生は縁側をペシペシ叩くと、 イルカ先生に自分の横に座るようにとその場所を指し示しました。 「ん?何ですか?」 春の風が、イルカ先生の髪をかきあげて何処かへ流れていきます。 カカシ先生は、そんなイルカ先生の横顔に少しドキドキしながら、 ポケットへと手を差し入れ、それをしっかりと握りました。 「実はですね」 「はい」 「イルカ先生にプレゼントがあるんです」 「え?」 イルカ先生が驚いたように目を大きく開きます。 「あの、先生、左手を出してくれますか・・・?」 カカシ先生は震えてしまう自分が、なんてかっこ悪いんだろうとちょっぴり笑えました。 「何ですか?」 手の平をみせる形で差し出された、イルカ先生の手を取って、 カカシ先生はその手を静かに裏返しました。 そうして、自分が握り締めていた細い、細い、銀色のそれをイルカ先生の薬指に通してあげました。 「?」 イルカ先生が不思議そうにその光景を見ています。 「俺と結婚してくれて、ありがとうございます」 カカシ先生はそう言うと、その指輪をはめたイルカ先生の左手に、 そぉっと優しいキスを落としました。 「あっ・・・・・」 キスをしたイルカ先生の手が、震えていました。 「イルカ先生」 瞳を起こして伺いみたイルカ先生は、潤んだ、とけそうな瞳をしていました。 「あ、ありがとうございます。カカシ先生・・・」 指輪を、結婚の証にと、そう教えてくれたのは紅先生でした。 カカシ先生は、小さな銀色の指輪に、変わらぬ愛を誓って、 そうしていろんな感謝の気持ちを込めて、指輪をプレゼントしました。 結婚してくれて、ありがとう。 好きです。愛してます。 「カカシせんせぇ〜・・・・」 うりゅっと潤んだ瞳を、カカシ先生へと向けて、イルカ先生が震えています。 「ああ、俺、あなたを困らせるつもりはないんですっ」 カカシ先生は泣き出したイルカ先生の頬に、そぉっと触れました。 すると、ピクリと身体を震わせて、イルカ先生がカカシ先生の腕に頬を寄せて、 震える両手を広げてきました。 優しく、優しく抱きしめてあげながら、カカシ先生はその耳元で歌うように囁きました。 「ありがとう。結婚してくれて。本当にありがとう」 index 新世界 6