「怖いですか?」 カカシ先生が、ベッドに腰掛けたイルカ先生に声をかけます。 脱衣所で交わした、初めてのキスは、 イルカ先生の意識をどこか遠くへ押しやってしまったようで、 当のイルカ先生はどこかをぼんやりと旅している顔でおりました。 「イルカ先生?」 カカシ先生がイルカ先生の頬を、その両の手で包み込んで、そぉっと瞳を覗き込みます。 「イルカ先生・・・・」 深い、深い、深淵なる瞳。 引き込まれるように、カカシ先生はイルカ先生の唇へと、自分の吐息を重ねました。 ゆっくりと。 ちゅっと、軽く啄ばむように触れてみると、その唇は驚くほどの弾力で、 カカシ先生をそぉっと引き離します。 ここからが、イルカ先生という人の領域であって、自分はやっぱり他人であって、 イルカ先生という人間と、自分という人間との違いを感じて、カカシ先生は少しだけ悲しくなりました。 そうして、その事実が悔しくて、悔しくて。 諦めずにもう一度、イルカ先生の唇に口付けました。 静かに重ねた唇に、イルカ先生の意識が戻ります。 戸惑ったイルカ先生の、赤い頬。 そうして、微かに開かれた瞳。 唇を重ねたまま、カカシ先生はイルカ先生の瞳を見つめました。 あんまりにも近いその距離は、何だか不思議な気分を誘って、 まるでもう、イルカ先生と一つになったような気にさえなりました。 「はぁっ」 角度を変えてカカシ先生が口付けをするごとに、次第にイルカ先生の唇から吐息が洩れ始めます。 温かく、湿ったそれは、カカシ先生の頭の芯をジンッと痺れさせました。 幾度目かに角度を変えて唇を触れ合わせた時、自然な呼吸のタイミング。 カカシ先生は、そぉっと、イルカ先生の口腔に舌の先を差し込んでいました。 *** 遠慮がちに差し込まれてきた舌の感触に、イルカ先生はゾワリと背筋を震わせました。 初めて触れる、他人の舌の感触。 熱い、熱い、まるで生き物のような。 歯列をなぞられ、突付かれるように舌先を愛撫されます。 座り、身を沈めていたベッドが、キシリと小さく音を立てました。 その音に、心臓が大きく飛び跳ねます。 潤んでいく視界が、不安で、不安で。 気付いたら、イルカ先生はカカシ先生の服の裾をぎゅうっと握っていました。 「あ、あ・・・カカシせんせぃ・・・」 声さえも震えます。 身体が、まるで自由を失ったように、硬直し、どうにも動けません。 「カカシせんせぃ、せんせぃ・・・」 まるで助けを求めるかのように、イルカ先生が何度も何度も、カカシ先生の名前を呼びました。 腿の辺りが、どうにも言う事を聞かない様子で、ふるふると震えてしまうのを、 イルカ先生はどうしたらいいのかわからずに、大変戸惑っていました。 腰の浮くような感覚に、服を握った手に力を込めて、 カカシ先生には今のこの状況を知られたくないと思いました。 なぜなら、それは、とても馴染みの感覚であったからです。 男の人の体の、とても馴染みの感覚。 まぎれもなく、性的な興奮で、イルカ先生はそれを思うだけで、顔を泣きそうに歪めて、 更に、更に顔を赤くしていきました。 *** まだ、カカシ先生に「結婚しよう」と言われる前のこと。 イルカ先生の夢の中に、一度だけ、カカシ先生が現れたことがありました。 夢の中のカカシ先生は、徐にイルカ先生の下着を脱がせました。 そうして、イルカ先生の大事な所に何度も何度もキスをしてくれたのです。 目が覚めて、イルカ先生はすごくすごく後悔しました。 酷い自己嫌悪感に襲われました。 カカシ先生にすまないという気持ちで一杯で、それからしばらくは カカシ先生と目を合わせることが出来ずにいたことがあったのです。 その時の、性的興奮と同じでした。 張り詰めていく下肢が、カカシ先生にばれやしないかと、 イルカ先生は必死で自分の腕に力を込めます。 汗ばんで、自分の爪の跡のついた手の平を必死で開いて、カカシ先生の身体から離れようともがきます。 カカシ先生は、自分の腕の中でイルカ先生がもがいているということに気付き、 そっと腕の中の様子を覗き込みました。 苦しそうに、恥ずかしそうに、イルカ先生がカカシ先生を見ています。 気のせいか、足を細かく震わせ、腰には力が入っていないようでした。 カカシ先生は、突然。 何かに気付いたという顔をして、その震えるイルカ先生の足の付け根へと手を伸ばしました。 「・・・っ!!」 イルカ先生の背がビクリとはねます。 「苦しいんですか?」 足の付け根の、もっとも奥まった所に手を忍ばせて、カカシ先生が囁きます。 その口調が、これ以上なく心配気で、それでいて優しくて。 イルカ先生は自分だけが、こんな淫らな気持ちでいるような気がしました。 撫でられるように触られながら、イルカ先生は、ポロポロと涙を零しました。 「やぁ・・・・・いや・・・もう、もう」 やめてください、と首を振ります。 「もう、もう・・・・・ひっぅ・・・ひっく・・・・」 ポロポロ、ぽろぽろ。 涙が流れていきます。 あんまりイルカ先生が泣くので、カカシ先生はイルカ先生の熱く張り詰めた、 足の付け根から手を引き抜くと、そぉっと壊れ物を抱きしめる仕草で、イルカ先生を抱きしめました。 「うっく・・・・うぅ・・・・・、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、カカシせんせぇ」 快感以上の、羞恥に負けてしまったイルカ先生を、 カカシ先生はその夜、ずぅっと優しく抱きしめてあげました。 頭を何度も、何度も撫でながら。 index 新世界 8