じょるじゅ・るちあーの

 『お? オイ、ソコ歩く海軍のアンタ。 アンタこの街の人間かい?』


人懐っこい笑顔を浮かべて、一人のやや細身の男が前を歩く割腹のいい、海軍の制服を着た男に声を掛ける。
立ち止まり、いぶかしげに振り返りながら海軍服の男は、口にくわえた葉巻を手に持つこともせずに平然と口を開く。

『おれもこの街に来てまで間がないんでな。 何の用だ?』

白髪である。
しかし年齢は若い。

「若いな。まだ20を超えてはいまい。一見華奢だと思ったが、服から覗く筋肉は相当に鍛えあげたモノだな・・・」

『ありゃ、そりゃ残念だな・・・
この街で長いなら、旨い飯屋でも知らねェかと思ったんだがな・・・ 他当たるよ。立ち止まらせて悪かったな。』

そう笑って細身の男は軽く頭を下げてその場を立ち去る・・・

「コイツ、おれの睨みをまともに受け止めて、怯むどころかさらに笑い返しながった。」

『待て、飯ならいつも行く店がある。おれもこれから行くところだが、一緒にくるか?』

細身の男はピタリと足を止めて早足で戻ってくると、全開の笑顔でバシバシと海兵の背中を叩きながら、

『かぁ〜ッ、アンタやっぱりイイ漢だなっ!!
おれが見込んだ通りだったぜ。
さあ行こう今行こうスグ行こうっ。』

細身の男は、海兵の腕を掴むと何処へでもなくズルズルと引きずるように歩いて消えた。




『ガツガツガツガツガツガツ・・・ジュルルルルル・・・モギュモギュモギュモギュ・・・バクバクバクバクバウウゥツ!?
ドンドンドンド・・・
ブハァ!!  はぁはぁはぁはぁ・・・
うおおぉっ、なんて旨いんだよコリャ。
ウチのコックにも喰わせて学ばせたいな。』

テーブルの上に所狭しと積み上げられた以上な食器の数が店内の注目を惹く・・・

『そう言えば、自己紹介がまだだったな。  おれの名前はエース。
ポートガス・D・エースだ。
良ければアンタの名前も聞いていいかな?』

腹もいっぱいになり、食後の酒を飲みながらエースと名乗った細身の男は海兵をじっと見つめる・・・

『おれの名前はスモーカーだ。
先日ローグタウンに赴任して来たばかりの海兵本部の大佐だ。
飯、気に入って貰えて良かったぜ。』

食事中でも葉巻を放さない。エースはそんな奴もいるさ。位にしか考えてはいないのだろう。

『エース、お前はこの街で何を?
観光旅行って雰囲気じゃないようだが?』

スモーカーはそうエースにたずねながらも答えは出ていた。


「間違いなくコイツは海賊だな。しかし何故わざわざおれに接触してきたかが謎だ」


そう考えているところにさらりとエースが言い放つ。

『おれは海賊だよ。 白髭海賊団にいる。 物資の補給にこの街に来たんだ。  あの処刑台も見てみたかったんだがね。 いい街だな。  ココは。
アンタみたいな男に守られていれば安心だな。』

隠しもせずにエースは海賊である事実をスモーカーに告げる。
数秒の沈黙・・・

『ははははははっ、正直な奴だな。
ポートガス・D・エースか。 正直、まだ聞いたことのない名前だが、お前は直ぐに頭角を現す予感がするぜ。
少し場所を変えようか。  此処じゃ狭いだろ?』

ニヤリと笑いながらスモーカーが席を立つ。

『おや、大佐。今日は友達と一緒かい? また来とくれよっ』

まるまるとした女将らしき女性にスモーカーは料金を払い席に店を出、エースが後ろを歩いて来ているコトを疑う素振りもみせずに、一度も振り向かずに歩を進める・・・

『さぁ・・・エースよ。
おれはお前が海賊だと知ってしまったからには、職務を遂行せねばならん。 
一つだけ聞いていいか?
こうなることを予測出来なかったわけではあるまい。 
何故おれに接触した? 
何故おれに素性をバラした? 
嘘をつくことだって簡単だっただろう?』

そう言って振り向いた先には、エースが立っていた。

『アンタに飯屋を聞いたのは、ただ旨い飯屋が知りたかっただけだ。
何故嘘をつかなかったか・・・
おれが白髭の一員であることを誇りに思っているからだ。
アンタが海兵であることに誇りを持つと同じくらいにな。』

涼しげな笑顔でエースは答えた。

『それだけだ。』

エースとスモーカーが同時に構える・・・


『おれは強いぜ?』


二人の声が重なる。
小高い丘で、二人の能力者が本気でぶつかりあう・・・


数秒後・・・

『アンタもやっぱり能力者だったのか。』

二人とも立つことすら出来ない程に疲弊している。
引き分けと言ったところか。

『こっちのセリフだ・・・エース・・・飯代払え・・・』

ゆっくりと起き上がりながら、エースが金を渡す。

『旨かった。 女将さんにそう伝えてくれ。 三年後・・・
この街に今のおれより、もっと強いバカが来るだろう。
そうつを待っててやってくれるか? そいつの名前は・・・
モンキー・D・ルフィ
おれの弟だ。 あいつは必ず此処に来る・・・
そして海賊の高み≠ノ進む男だ。』

そう言いながら、エースは指先でスモーカーの新しい葉巻に火をつける。

フーーーーーッ・・・

大きく吐き出した煙を見つめながらスモーカーが口を開く。

『今度はおれが勝つ。 三年後・・・ お前の弟やらもおれが捕まえる。 
そして、エース。  お前もな。』

『それはできねぇ相談だな。 おれは一足先に高み≠ナアイツを待ってなきゃなんねぇんでな。 コイツに誓って・・・』

そういうと、エースはスモーカーに背中を向ける。
そこには背中一面に白髭海賊団のトレードマークの刺青があった。


『エース、最後の質問だ。 腕の刺青はどうしたんだ?』

エースはバツが悪そうに鼻の頭を指で掻く。

『・・・綴り間違えた。』

小さな声でボソリと呟く。 そして、スモーカーの爆笑・・・

『こんなバカ見たことねぇ。 もう顔を覚えるのも面倒だ。  とっとと消えちまえ。』

言い放つスモーカーにニヤリと笑い、

『今度はおれが飯屋紹介するわ。 じゃ・・・またな。』

エースは立ち上がると、ゆっくりと歩きながら振り向かずに大きく右手を振る。

スモーカーはエースの後ろ姿を静かに見送りながら、ローグタウンという街を好きになりはじめていた。


+ + END + +
TOP<<