ザーン−
    ザーン−


まだ日が昇る前の静かな時。
波も穏やかに波打っていてまだ人々が夢の中にいる頃・・・
とある部屋からそれは始まろうとしていた。


----Sea1:幕開け



「――起きろってば。おい、悟浄!」
「う〜ん・・・」

なんとか小声で目の前の真紅の髪の男を起こそうとするが寝返りをうつだけでなかなか起きてくれない。
窓の外はまだ暗く、朝方というか真夜中と言ってもおかしくはない時間帯だが、
起きてもらわないと困る。ものすごーく困る。

(このままじゃ、アイツに見つかっちゃうって!)

起きない悟浄を目の前に悟空は本気で焦った。
何としても暗いうちにここから出ていきたかった。
アイツに見つかったら絶対行くなと泣きつかれてそれはもう大変な事になる事が目に見えているから。

――考えるだけでも怖ろしい。

「あーも、ちくしょー」
なるべく穏便に事を運びたかったがこの際仕方がない。
悟空は堅く拳を握り軽く息を吐いた後、寝ている男の頭におもいっきし拳骨を落とした。



ゴツン!!



世は大海賊時代。
海賊と呼ばれる集団が町や人々を襲うのが日常茶飯事となっている時代である。
その海賊を取り締まる為の機関が世界政府直属の機関、海軍。
そして支部からエリートが集まった海軍の本拠地である海軍本部に悟空と悟浄は所属していた。
悟浄は最近少佐に昇格したばっかりで、
悟空は闘神太子の候補として指導を受けていた。





「ってーまだヒリヒリしやがる・・・もう少しマシな起こし方しろっての!!」
拳骨を落とされた辺りに心なしか小さな山が出来ているようのは気のせいだろうか。
痛む頭を片手でさすって着替えた悟浄がブチブチ文句をたれていた。
着替えたとっても下は海軍指定の黒のズボンにブーツ、上は黒のタンクトップだったりする。

「悟浄が起きないのがいけないんだろ!俺散々呼んだんだぞ!」
数歩先を歩いている悟空が振り返って意志の強そうな金色の瞳で悟浄を睨んだ。
その拍子に腰の位置まで伸びている大地色の髪がしっぽの様に揺れる。
それと首にはトレードマークの赤いバンダナが巻かれている。

「んで、何なワケ?こんな朝早くにこの俺様起こして」
ふぁ。とあくびをしながら前を歩く悟空に聞いてみた。
こんな朝早くに起こされるなんて何かあるに決まってる。


悟浄の予想はこの後見事に的中する事になる。


「ん〜まぁ任務みたいなもんかな?」
「はぁ?任務ならお前一人で十分なんじゃねぇの?なんで俺まで行かなきゃなんねぇっつーの」
「むーっ。とにかく裏口まで急いで!話はソコでしてくれるから!」
「一体何なんだ?」



***



(・・・・ホント一体何なワケ?)
せかす悟空の後ろをついて行き裏口に到着して悟浄が見たものは少々頭を抱えたくなる様な光景だった。

海軍始まって以来のキレ者と噂される天蓬元帥。
そこら辺の闘神太子候補と互角の力を持つと言われる捲簾大将。
そして悟空の保護者兼教官の金蝉。
その見事に見知った顔ぶれ3人が裏口に立っていたのだ。

「悟浄連れて来たよっ!」
悟空がタックルする勢いで金蝉に抱きつく。
それは本部にいる誰もが一度は見たことのある光景だった。
腰に抱きつかれる形となった金蝉は悟空の頭を軽く頭をポンと叩きしばらくしてからその体を離し、
自分の足下に用意してあったショルダーを悟空に手渡すと、チラと天蓬に視線を送った。
それを受けた天蓬は悟浄に向かい話をきりだした。

「さて、悟浄。よーく聞いてくださいね。大事な話ですから」


間。



「――――と言うわけなんです。悟空をよろしく頼みますよ」
「は?!」
悟浄は我が耳を疑った。
寝耳に水とはまさにこのことだろうか。



「この猿の護衛として一緒に旅に着いて行けだぁ?!」




「はい。あなたの荷物もまとめてあるのであとは出発するだけですよ」
にこやかに爆弾発言をかましてくれた天蓬。

「ごじょー!これからよろしくな!」
遠足に行くように楽しそうな悟空。

「悟空に何かあってみろ。命はねぇぞ」
射殺しそうな視線で脅しをかける金蝉。

「少佐となってから初めての任務じゃねぇか。がんばって任務遂行しろよ」
面白そうに言い、悟浄に向かってショルダーを投げる捲簾。

なぜこうも自分はやっかい事ばかりに巻き込まれるのだろうか。
目の前の奴らに出会った事自体がもう運の尽きだったのというのか。
悟浄は改めて自分がやっかい事を巻き込む性格なのだと思い知らされた。
そしてショルダーを思わずキャッチしてしまった悟浄は自分の運命を呪った。







これからはじまる悟空とのあてのない旅。
悟浄は果たして無事に戻ってこれるのだろうか。
それはこれから舞台になるであろう無限に広がる青い海だけが知っている。



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