だろうさよなら幸せG
桜井と鈴木のペア、田原と中川のペアが
柳沢の別荘敷地内にいる30人近くの
ヤクザ達を処理し終わったのは、桜井達が
敷地内に入って1時間ほどたってからで
あった。
霧が薄れ、秋の虫のスダク声が再び
激しさを増している。
フクロウが鳴く声を真似ながら、二組の
戦士達は合流した。声をひそめてこれから
のことをしばらく話し合った。
4人の中で一番走るのと逃げるのが得意
な田原が庭の中にある電柱の下に行った。
背中のデイパックとライフルを地面に置き
電柱をサルのような敏捷さで昇っていく。
電柱の天辺まで来ると、電話線の一部を
ロープで結んでおき、ニッパーを使って
電話線を切断する。
切断された電話線はロープに結ばれて
いるから落下するようなことはなかった。
田原はすばやく電柱をおり、さっきまで
背中に背負っていたものをつけていく。
フクロウの泣き声を真似て合図を送り
ながら、他の3人達の後を追った。
桜井達も田原にコノハズクの泣き声を
送り場所を教えた。数分後、田原は
桜井達と合流できた。
「放置プレイかと思ったぜ。」
田原は一言言った。
しかし、他のメンバーは黙殺した。
4人が母屋の近くに停まっている十数台
の高級車やスポーツカーやステーション
ワゴンから30メーターほど離れた林の
なかに集まったのは、それから10分ほど
たってからであった。
その車のほとんどは鍵を指しっぱなしに
しており、無施錠であることを桜井達は
知っていた。
そして、今母屋のサロンで何が行われて
いるのかも知っていた。
別荘の母屋のサロンでは、大テーブルを
囲んだ男達が、メインディッシュのキジの
ローストを食っている。
柳沢の愛妾である小酒井若菜が男達に
ワインを注ぎまわっていた。鳥肉なので
ボーヌの白だ。若菜の匂いと巨乳を
まじかに感じるため、男達は普段より
よく飲んだ。
サロンの両側の隅で、向かい合うよう
にしてジェラルミントランクとアタックザッ
クを守る山誠会と青龍組のヤクザ達は
マツタケの詰め物がしてあるキジの丸焼
きが放つ香ばしい匂いに耐え兼ねて
腹をグーッ、グーッ鳴らしていた。
サロンの左右にある部屋では、バースト
リテイリングと樺山の発展協会の経理
部員が、サンドイッチと紅茶などで
わびしい夕食を済ませ、トランプなどをして
時間を潰していた。
桜井達は、柳沢の別荘の母屋の裏口に
忍び寄った。
鈴木がズボンのバックルの裏側に隠して
いた二本の針金を抜いた。二本とも先端が
潰された上に鍵型に曲げられ、焼きを入れ
てから焼き鈍し、程よい硬度にしてあった。
裏口のドアのシリンダー錠の鍵穴にその
二本の針金を突っ込み、それらの先端で
二個のピン・タンブラーをさぐって押した。
錠のロックは外れた。
ピストルを右手に持ち、左手でそのノブを
回す。
そこは広いキッチンであった。うまそうな
料理の匂いが漂っている。ガスレンジには
パーコレーターのコーヒーが沸騰し、テー
ブルの上には、デザートがすでに用意され
ていた。
キッチンには人影がみえなかった。いた
ところで殺すだけだが・・・。
4人は物音をできるだけ立てずに部屋へ
はいった。そして、廊下を音もなく歩いて
いく。4人は、クッションクレープソールの
靴底のブーツをはいているから殆ど音を
立てなかった。
4人はそれぞれが愛用の静かな武器を
手にし、サロンの左側の部屋の前に立った。
ドアを大きく開ける。すると、さっきまで
トランプをやっていた柳沢のバーストの
経理部員達が恐怖で眼を大きくしながら
4人を見た。
桜井は、ニヤっと笑う。