破壊指令A


昼なのに、
少しづつ秋を
感じさせる
肌寒い日だ。
雨はまだ
しとしとと降って
いる。

憂鬱な日だ。
田原は昨日のことを
思い出す。
松村の指示どおり
奴の病院関係者の
ひとりである加藤を
夫婦喧嘩に
見せかけ殺したのだ。
仕事はスムーズに
終わった。

壁に加藤と
その妻を何度も
ぶつけた音を
聞いた隣の住人が
警察に不審を
通報したのだ。

田原が加藤の
マンションを出た
すぐ後に通報を
受けた警察官二人が
マンションの管理人に
合鍵をもらい、
ふみこんだのだ。
寝室で無残な
死に様をしている
妻とアルコールを
静脈注射され
あたかも暴れ
狂った後のように
気絶している
加藤がいた。
それを見た警察官は
犯人を加藤と
決め込んだのも
無理はない。

田原は仕事とは
いえ、やるせなさを
感じる。

浴槽に、43度に
設定して風呂の
自動ボタンを
おした。風呂が
炊けるまでに
台所へ行き、
トマトを食う。
塩はつけない。
むしゃぶり食う。
美味かった。

新聞には昨日の
田原の殺しは
乗っていなかったが、
テレビでは、
トップニュースが
一段落ついた後、
数十秒だけ、
医師が妻を絞殺
したという内容が
流れた。

加藤は容疑を
認めず意味不明な
発言を繰り返し
ている。加藤の
頬には妻が殺される
前につけたと思われる
引っかき傷が
無数にあること、
部屋に二人以外の
侵入の形跡が
ないことから、
加藤が妻を
殺したのでは
ないかと伝えて
いた。

口の端で少し
笑いかける。

風呂が炊けたと
いう知らせの
音が鳴る。

新聞を持って、
風呂につかる。

5分もしないうちに
汗が顔中から
吹き出てくる。

そのまま10分ほど、
風呂にサウナ感覚で
つかった。

浴槽から出る。
爽快だ。

体を洗うこと
専用のヘチマみたいな
スポンジに
シーブリーズを
つける。
体を首のほうから
順に下へ下へと
洗っていく。
どす黒く、いたるところに
コブがある男根周辺は
入念に洗った。
大量の小便も
同時に済ます。

その後、
マイルドシャンプーで
頭を洗う。

石鹸で顔を
洗って、浴室を
出た。

ドライアーで
髪をナチュラルに
仕上げる。

電話の鳴る音が
した。それと
バイヴレーターが
硬いものに当たって
振動する
音も聞こえる。

田原は急いで
電話を
とった。

「トヨタの
MR−Sはポルシェ
ボクスターの
パクリかも
しれないです。」

とバリトンの
声がした。

「自分もそう思うが、
ホンダのフィットは
トヨタのヴィッツの
パクリなのですか?」

田原は合言葉を
言った。

「エアコンの設定は
23度ぐらいが
体に一番
いいらしい。」

「わかりました。」

電話を切った。


トップへ戻る