恋の旅路はC


香芝を罠に
はめた後、田原は
一度東京に戻った。

マンションの地下
駐車場にクーペ
フィアットを滑り
込ませる。

身震いするような
寒さが田原の肌に
サブイボを
つくった。

靴の踵が静まり
帰った夜に反響音を
残す。

地上32階、地下
5階の超高層
マンションの
29階部分に
田原の自宅が
あった。

無論、この
マンション以外にも
隠れ家兼連れ込み
ホテルのような
家を4軒持っている。

田原は地上に
上がるための
エレベーターに
向かう。

手榴弾にもなる
ライターでタバコに
火をつける。

一息目は肺中に
煙がいきわたるように
深く吸う。急激に
ニコチンが田原の
体に回った。

ライターをポケットに
しまった。
そのとき、低いが
鋭い唸りを上げて
襲ってくる物音が
した。

田原は襲ってくる
物体に視線を
むけた。

普通の人間なら
聞き取れないような
低い音だ。

次の瞬間、
田原の心臓めがけて
黒く短い針のような
ものが吸い込まれた。

かすかな金属音
をたてて、
心臓の上に刺さる。

田原から15メートル
ほど離れたところに
一台のハイエースが
とまっていた。
運転席と
助手席に目深に
帽子をかぶった
男が二人いた。

助手席側の
窓があいている。
その窓から、
筒状の武器が
出され、田原の
方へ向けられていた。

田原は咄嗟に
駐車場に
とまっている、車と
車の間に飛び込んだ。

2発目の針が
田原の横をかすめる。

ハイエースからは
死角になる。
田原は足首に
縛り付けていた、
ワルサーPPKを
抜き出し、
スライドをひく。
ダブルアクションの
PPKは引き金を
強く引けば、一回の
動作で射出できるが
こうしておけば、
非常に軽い
力で引き金を
引くことができる。
命中精度も
少しはあがる。

しかし、田原が
応戦する構えを
見せたのと同時に
ハイエースは
タイヤをスピンさせ、
焦げ臭い摩擦煙を
残し、スタートした。


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