僕は勘違いをしていました








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親はいつも忙しそうにしていた
週末に顔を合わすか あわさないか それぐらいの確立で 理由さえなければ12時を越えて帰ってくる親を待つようなまねはしなかった。そして いつのまにか親より姉を家族でいちばん大切な人だと思うようになっていた
家に帰れば幾つも歳の離れた姉は 僕を待っていてくれて おかえりなさい、とにこにこして言ったものだった 僕は幸福にも似た感覚を覚えた




そしてときおりあのひとは 僕を がんばったね、と言って誉めてくれたのだった
そしてぼくは がんばれば あのひとは喜んでくれるから がんばれば あのひとはいつだってぼくを誉めてくれるんだと 思っていた  そしてそれはいつの日にか崩れた日常と化す






「ただいま、」

玄関の灯りが点いていた 姉さんがいるんだ
ぼくは心躍らせながら 家の扉を開ける  ぼくにはそれだけで十分だった

「おかえりなさい、ジェームズ」

そして にこにことわらって 嬉しそうに姉さんは言うんだった
ぼくまで嬉しくなって つい、わらってしまう  ああ、幸せだよ


「今日 理科のテスト 100点取ったんだ、」

ごそごそ と鞄を探って すこしよれよれになったテストを出した
お姉さんは 嬉しそうににこにこ笑ってる

「うわぁ、すごい。がんばったね、」

ぼくの頭を撫でる手はぼくと変わらないくらいの大きさだった
姉さんは小柄な人だった

「いいこいいこ、」

えへへ、とわらいながらぼくの頭をなでるその手は 親の言葉より 数倍嬉しいものだった
がんばれば 誉めてくれるんだ


「ジェームズは努力家だもんねー、」


そしてそのテストを ぼく用のファイルに閉じてくれる 1つ1つの仕草が とても奇麗だと思った
ぼくが帰るころにはテーブルの上にはぼくと姉さんの分の夕ご飯がある

姉さんは料理のうまい人だった  いつもあったかいご飯はぼくを何より喜ばせたし買ってきて確かな味の惣菜よりもおいしく感じるのはきっと錯覚なんかじゃなかったはず。






ある日、姉さんが消えた












ぼ く を お い て い か な い で
ぼ く は だ め だ よ    あ な た が い な い と
い き て い け な い よ
















「…数学のテスト 満点だったよ」

届かない声は あなたのところまで聞こえているだろうか
ぼくは知ったんだ 満点を取っても ぼくは満点がうれしかったわけじゃなくて
ほめてくれる あのひとが居ることが うれしかっただけなんだ

いまさらに気付くぼくは おろかか否か




ああ おねがいだ おねがいだからまたぼくにいって
がんばったね、とやさしくいってくれさえすればぼくはなんでもできるきがするよ




ぼ く は そ ん な に も た か の ぞ み し て る で し ょ う か
た だ あ な た が こ こ に い て く れ れ ば い い と い う だ け な ん で すが 、 そ れ す ら も だ め な こ と で し た か   ね ぇ か み さ ま






母の買った惣菜は決してまずかったわけじゃなかった 売り物なだけあってそれ相当においしかったし味付けは濃い気がしたけど気になる程ではなかった
でも、ぼくは おいしいと味の保証のついた料理よりも ときどき味が極端に薄かったりする姉さんの料理の方が100倍も何千倍も、 何万倍もおいしく感じたんだ。
ぼくはわがままかもしれない 案外自分には願望だとか欲なんてものは無いに等しいと思っていた
でもそれは大きな間違いだったのかもしれない


あなたがいなくなって初めて、あなたの大切さにきづくぼくは相当おろかものだとおもいます










「すごいなまた主席か!」

シリウスはそう言いながらぼくの背中を叩いた(痛い…)
そしてぶちぶちと どんな勉強してんだよ、なんて言っていた


ぼくはまだ、



まだ あなたがぼくをほめてくれるひをまっている
一位をとれば あなたはきっといってくれる




がんばったね     と。







どこまでもあなたの声をわすれたくないんです どうか過去のものになんてならずに全てのものが色褪せていってもあなたの存在だけはいろあせずにぼくのなかに存在してくれますように、 願わない夜はないです あなたのちいさな手はきっともうぼくよりちいさいものとなっていることでしょう それはきっとぼくが成長した証ですね それでも心はあのころのままで、なにひとつ変わっちゃいないんです

あなたが玄関のライトをつけて夕飯を作りながら ぼくを待っていてくれますように













最後にほんのり隠し文字有   20030211 Psycho