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事の起こりはその日の夕方。
任務も無事に終わり、ナルトが家に帰ろうとした時にサスケが声をかけてきたのだ。
理由は簡単。明日は元旦だから、二人で年越ししないかという事だった。
つまりサスケの家に泊まりに来ないかという事。
普段あまり人の家に泊めてもらった事のないナルトは勿論喜んでOKした。
その事をカカシに報告すると、
「ん〜・・・なるほどねぇ〜」
「へへへ、俺ってばさぁ 人と一緒に年越すの初めてなんだってばよ!」
嬉しそうに笑うナルトを見て、カカシはにやりと笑いかける。
いたずら心が疼いて、ちょっと二人をからかってやろうと考えた。
「そうか〜・・・でもなぁ、ナルト。な〜んでサスケはお前を家に呼んだと思う?」
「へ?そりゃあ・・・二人で一緒に年越したいって言って―――・・・」
「甘い!!甘いぞ〜ナルト!!!」
カカシがビッシィ!!と指先をナルトに向けた。
「サスケがそんな事でお前を呼ぶと思うか?いいか、これはこの里の掟なんだけどな・・・
一緒に年越ししたカップルはその日にHしなくちゃいけないんだぞv」
「ええええええええ――――――???!!!!!!」
予想だにしなかった事を言われて、ナルトは思わず絶叫した。
「な、何で!?そんな掟聞いた事ないってばよ!」
「そりゃそうだろ。ナルト、お前今までに恋人いたか?」
「・・・いや・・・ないけど・・・」
「だろ〜?」
上手くナルトを丸め込んで、カカシは満足そうに大きく頷く。
「ま、サスケも健康な男だしな〜v先生もその気持ちはよ〜く分かる!
ってわけで、逃げずに頑張ってこいよv」
「ちょ、ちょっと待ってよセンセー! 俺ってばどうすればいいの!?」
困惑したナルトに、カカシはにっこりと笑いかける。
「お前の好きなように、だな。ま、本気で嫌がったらサスケも触れてこないだろ。
まぁ・・・そのかわり、す〜〜〜〜っごく傷つくかもだけどv」
思いっきりこちらの気分を低下させるような事を言い放ち、カカシはそそくさと行ってしまう。
ナルトは何も言えず、ただ呆然と立ち尽くす。
(え、H・・・? 俺と、サスケが・・・?)
予想していなかったわけではない。
世の中で俗に言う“恋人同士”が行う行為も少しではあるが知っているし、理解している。
自分はサスケと一緒にいるだけで幸せだし、楽しいけれど
きっとサスケはもう少し違う事を望んでるのだろうなという事も分かっていた。
それでもサスケが何も言ってこなかったのに、ナルトは疑問を感じていた。
・・・まあ実際は、鈍いナルトがサスケの意思表示に気付いていなかっただけなのであるが。
しかしカカシの言葉を鵜呑みにすれば、とうとうサスケが行動を起こそうとしている事になる。
今までにサスケとは、一応 キスした事はある。
でもそれ以上の行為なんて考えた事もなかった。
サスケも強制はしてこなかったし、そのままズルズルときてしまったわけだが・・・。
(ど、ど、ど、どーしよ? 俺・・・サスケの事は好きだけど
男同士でどうやってやるのか分かんねーし・・・そ、それに心の準備が・・・)
「おい、ナルト」
「はぃいっ!?」
当の本人に声をかけられ、ナルトは思わず飛び上がった。
「・・・何素っ頓狂な声上げてやがる」
「え!?べ、別にぃ?何でもないってばよ!」
ナルトが慌てて弁解するが、サスケはじろりとナルトを睨む。
「また何か変な事考えてるんじゃないだろうな」
「へ、変な事ってなんだよ!それならサスケのほうがよっぽど・・・」
言いかけてナルトは口を押さえる。
「俺が?何だよ」
サスケが疑問符を投げかけてくるが・・・
『サスケってさ、今日俺とHしたいと思ってるの?』
なんて。
そんな事をきけるはずもなく。
「え〜っと・・・まぁ、その、さ。・・・何でもいいじゃん!
とにかく早くサスケんち行こうってばよ!」
しどろもどろながらに言った言い訳も、何とか納得してくれたらしい。
ナルトの後に続いてサスケもすたすたと歩いてくる。
その様子にナルトは更に不安を募らせた。
(な、何か今日のサスケやけに素直・・・?やっぱりHの事考えてるからなのかな・・・
ああ〜どうしよ!?俺ってば全然そういうの分かんねーし!
こんなんだったら保健の授業もっと真面目に聞いとけば――――)
「おいナルト!」
「はいぃ!?」
ぐいっとサスケに腕を掴まれて、ナルトは思わず背筋を伸ばした。
「どこまで行くんだよ。ここだろ家は」
「え?も、もうついちゃったの?」
わたわたと慌てるナルトにサスケは顔をしかめた。
「お前今日本当に変だぞ。何かあったのか?」
「え、や、マ、マジなんもないってばよ!」
言っているナルトの動作は挙動不審で、説得力のかけらもない。
サスケはふと思い出した事を言ってみた。
「・・・そういやお前、俺に会う前にカカシのヤローと話してなかったか?
何か変な事吹き込まれたんじゃねぇだろうな」
ぎっくーん!とナルトの心臓が飛び跳ねる。
まさしく図星だったのだが、流石に
『サスケがHしようと考えてるかもよv』
なんて吹き込まれたとは言えなくて。
そんな事を言えば、次の日どんな制裁がカカシに待ち受けているか分からない。
「ほ、本当になんもないんだってば。サスケが心配性すぎるんだってばよ」
ナルトがにこっと笑って上目遣いにサスケを見る。
サスケはこの笑顔に弱い。この笑顔をされると大抵の事には目を瞑ってしまう。
・・・惚れた者の哀しき宿命である。
「ならいいけどな。さっさと中に入れ。風邪引くぞ」
「は、は〜い・・・」
ナルトは促されて おずおずとうちは亭に入った。
いつ来てもこの家は広い。流石木の葉で有数の名家だと、来るたびに思う。
「もう夕飯食うか?」
サスケが用意していたらしいおかずを冷蔵庫から出していく。
「あ、うん。お腹すいたってばよ」
ナルトも慣れた手つきで食器を出していく。
「じゃあ先に風呂入ってこいよ」
ガシャアアアン!!!
ナルトは手に持っていた皿を全て床にぶちまけていた。
「っな・・・何やってんだこのドベ!!」
「あわわわ!ご、ゴメンってばよぅ!!」
ナルトは慌てて割れた食器を拾っていく。 と
「あ、った・・・!」
「どうした、切ったのか?」
「う、うん」
ナルトの指先から赤い雫がつうっと伝っていく。
そんなに痛くはないのだが、見ていて気持ちいいものでもない。
「うわ、気持ち悪・・・」
「かせ」
「へ?」
何も言えないままにサスケに手を取られ、次の瞬間にはサスケに指を舐められていた。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!????」
かあああっと頬が紅潮し、心臓がばくばくと鳴り出す。
サスケに舐められている部分が、火傷しそうなほど熱い。
「お、俺っ!風呂入ってくるってばよ―――――――!!!!!!」
ナルトは自分の手を掴んでいるサスケの手を振り解き、
思いっきりのスタートダッシュでうちは亭風呂場へ駆け込んでいった。
「・・・何なんだ、一体・・・」
後には一人呆然として佇んでいる うちは家当主が残っていた。
どくんどくんどくん。
心臓が早鐘のように鳴り響く。
(び、び、び、びっくりしたぁ・・・)
ナルトは耳まで湯につかり、先程から鳴り止まない心臓の音に困惑していた。
(いきなり指とか な、舐めてくるんだもんな・・・
これって・・・サスケが無意識のうちに誘ってるって事なのかな?)
とナルトは思っているが、サスケはいつもと変わらない。
明らかに自分の考えすぎだという事に 今のナルトは気付かない。
(よ、よーし!俺も男だってばよ!木の葉の掟もあるし、サスケとHしてやるってば!!)
間違った方向への決意を固め、ナルトは勢いよく立ち上がった。
「サスケ、お先・・・」
「ああ、上がったのか。サイズ大丈夫か?」
サスケが食事の準備の手を休め、ナルトを見る。
任務が終わって直接サスケの家へ来たので、ナルトはサスケにパジャマを貸してもらっていた。
少し余っている袖を見て、サスケが小さく笑う。
「やっぱり少し大きいな」
「うっせえなぁ、平気だってばよ!」
ナルトがぷぅっと膨れると、サスケはまた笑った。
(どうせ脱ぐんだから、脱ぎやすい方がいいじゃんか!)
心の中で文句を言うが、サスケがそんな事に気付くはずもなく。
「じゃあ俺も入ってくるから、腹減ってるなら先に食べてていいぞ」
「食べねー!待ってる!」
少しムキになったようにナルトが言うと、サスケは苦笑した。
こんな所も可愛いんだよな、と 心の中でのろけながら。
サスケが風呂へ入った後二人で年越しそばを食べて
任務の事や修行の事 カカシやサクラ、イルカの事など他愛無い話を繰り返した。
しかしその間もナルトは落ち着かず、絶えずそわそわしっぱなしで
サスケがどうかしたのかと聞いても一向に答えようとはしなかった。(まあ当然)
そしてついに―――――――
「おい、ナルト。お前本当にどうかしたのか?気分でも悪いんなら早く寝た方がいいぞ」
サスケが流石に心配になって声をかけるとナルトは慌てて首を横に振る。
「ちが・・・!気分が悪いとかじゃなくて、その〜・・・」
ナルトが言いかけたとき
・・・ゴ〜ン・・・
「!!!」
ナルトはびくりと体を引きつらせた。
「除夜の鐘だな」
「サ、サスケ!!」
「ん?」
サスケは急に真剣な声を発したナルトに向き直る。
「お、俺っ!その〜〜初めてだからよく分からないんだけどっ!
よ、よろしくお願いしますってば!!」
ナルトが真っ赤な顔で深々と頭を下げる。
しかしサスケには何の事だかさっぱり分からない。
「一体何の事だ?」
「だから、その・・・この里の掟で〜 一緒に年越ししたカップルは
その日に え、H しなくちゃいけないんだろ?だから、俺・・・」
ナルトが顔を上げてサスケを見ると、彼はものの見事に・・・
・・・ずっこけていた。
「サ、サスケ!?大丈夫かってばよ!」
ナルトが慌てて倒れたサスケを覗き込む。
「ナ、ナルト・・・それ誰から聞いた?」
サスケが頭痛のする頭を抑えながら起き上がる。
「え、カカシセンセー・・・って、あ!」
しまったといったようにナルトが口を押さえるが、
サスケの背後には既に怒りオーラが立ち昇っていた。
(あの変態ド助平野郎・・・!!!)
例の呪印が発動したかのような殺気をみなぎらせ、サスケがギリ・・・と奥歯を噛む。
そしてしゅんとしてうな垂れているナルトに向かって溜息をついた。
「ナルト、んな事は嘘だ。アイツが俺達をからかっただけだろ」
「へ!?そ、そーなの!?」
じゃあ今まで自分が気力を削ってきた苦労は・・・?
ナルトは再びがっくりと肩を落とした。
サスケはそんなナルトの顎を掴んで上を向かせる。
「え?サスケ・・・?」
「・・・でも俺は・・・お前を抱きたい」
どくん、と胸が高鳴る。
「あ・・・俺・・・」
「嫌か?」
サスケの真っ直ぐな瞳が自分を射抜く。
(サスケってば・・・ズルイ・・・)
“嫌だ”なんて言えない。
この瞳の前では・・・
「嫌・・・じゃない」
真っ赤になって 消え入るような声でナルトが呟く。
サスケは優しく笑うと、ナルトの唇にキスを―――――・・・
と。
「?・・・サスケ?」
急に動きを止めたサスケを不思議に思ってナルトが声を出す。
「てめえ・・・人の家で何やってやがる・・・」
「へ?」
サスケの怒りに満ちた表情を見て、ナルトは思わず声を失う。
「そこだろ!!」
サスケがどこに隠し持っていたのかクナイを投げる。
そのクナイは壁に突き刺さる直前に 突然現れた人物によって止められた。
その人物とは・・・まあ、言うまでも無く――――――
「カカシ先生ぇ!?」
「や、二人共 あけおめ〜v」
にこにこといつもと全く変わらぬ様子で近づいてくる。
「カカシ・・・てめえ、何しに来た」
サスケが鬼のような形相でカカシを睨むが、カカシは全〜然動じない。
「冷たいねえ、せっかくお正月の挨拶しに来たのに〜」
「ンなもんいらねーよ!!」
サスケの叫びをカカシは完全に無視する。
「そりゃ俺だってね〜イルカ先生の隣で年越したかったけどvv
イルカ先生ってば意外と恥ずかしがり屋さんでさぁv追い出されちゃったんだよねぇ〜」
「それ・・・多分本気で嫌だったんだってばよ・・・」
ナルトの突っ込みもカカシは完全にすり抜ける。
「んで?お前達は何やろうとしてたのかな〜?」
カカシがに〜っこりと笑いかけてくる。
ナルトは耳まで真っ赤になり、サスケはナルトを庇うようにカカシとの間に立った。
「アンタがナルトに馬鹿な事吹き込んだんだってな」
「あ、そゆ事言う〜?このチャンス作ってあげたの俺なのにねぇ〜」
カカシが心外だとでもいうように大げさに肩をすくめる。
「てめぇで邪魔してりゃせわねえだろ!!」
「俺なんか気にせず続けてくれてよかったのにv」
「んな事出来るかこの変態野郎!!!」
サスケの叫びが新年の朝に響き渡る。
木の葉の新年は、とりあえず無事(?)に明けていくのであった・・・
―――――――――――――――――――FIN―――――――――――
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