山での足の骨折
は致命的な遭難になりうる


 



 先日知人が山で転落して足の骨を折り、入院したとの連絡が入った。
ある沢を遡行中に核心部を抜け、上部にて転落したとのことだ。

ふつう、新聞などに遭難記事が数行載ることがある。それを読んだだけでは、ほとんど事故の内容など判らない。それ以上に興味本位のみで、「また素人がヘマやって事故ったか」、くらいしか思わないだろう。そして記憶の彼方にそれは消えてしまう。それは何の教訓にもなっていない。
僕にしてからが、普通の遭難事故だとそんな程度の思いだろう。

 しかし身近な人が事故にあった場合、ショックは大きいものだ。そういう時だからこそしっかりと事故について考えないと、真剣に考えることなどない。
 そういった身近な事故だからこそちゃんと考え、事故についての説明に真剣に取りくめる。周りの人も真面目に聞いてくれるというものだ。

A氏の遭難事故は起こってしまった。その問題は今後本人が説明し、処理してばよいことだ。
それよりも、何故そういう事故が起こったか、という原因の説明の方が大事だろう。そしてその貴重な事柄を踏まえて、その対策にあてるのが最良の方法だ。

原因はホールドの抜け落ちにより転落だ。
これから見ると本人の不注意といえるかもしれない。
本人の注意散漫だからいけないんだ、と判断してしまいがちだ。しかしそれが唯一の原因だとは言えない。注意不足というのは浅い考えだ。 山行中、入山から下山まで注意しつづけるのなど完璧に不可能だ。そういう人にお目にかかりたい。人間の場合、注意および集中力というのは長時間持続不可能だ。

まず根本的な原因となるのは
仕事が忙しくて山になかなか行かれず、久しぶりの山行だった。ということだろう。久しぶりといっても長い期間ではない。
 この件はだれにでもあてはまる。僕にしても相当あてはまることだ。
 とくにトレーニングしていなくても山のベテランともなれば、困難箇所の通過とか処理はほとんど問題なく出来てしまう。
 これは過去の行動の処理データを上手に応用して、最小限度のエネルギーで処理できるからだ。

問題は危険箇所以外での行動についてだ。
@意識と行動のズレ
 過去において毎週のように山に行っている場合、とくに意識しなくても身のこなしで、危なげない行動が取れる。
しかし山行回数が減っていき、数ヶ月に1回の割りの山行となってくると、明らかに身のこなしとか、無意識の動作に遅れが生ずる。
これが怖いのだ。
 自分はちゃんとやっているつもりでも、意識と行動に数十から数百分の1秒のズレが生じると考える。その差がどの程度か数字では出せない。
 よく、子どもの運動会にお父さん達が徒競走に出ることがある。その競争中、走っているお父さん達がバタバタと倒れるのを良くみる。ニュースなどで放映されて微笑ましい場面と映る。
 このバタバタ倒れるのが意識と行動のズレから生ずるものだ。意識は先を行っているのだが、肉体とか筋肉はその意識に追いつかない。右足を上げたつもりが、足はそれに追いつかづ、その次の命令の左足を意識が上げようとしてもつれて倒れてしまう。要するに身のこなしが思うように出来ない。
 これが意識と行動のズレだ。山登りでも毎週山に行っているときは意識と肉体はほぼピッタリと共にシンクロしていた。しかし数ケ月に一回となってくると微妙なズレが生じてくる。普通の尾根歩きなどわりとシンプルな歩きなどではそれほど表立って現れないかもしれない。それが沢とか岩、雪山となってくると、そのごく僅かのズレが数センチの世界に思いきり現れくる。
 それは無意識下での身のこなしにまで至るので、問題だ。

 過去に岩の登攀中、ピッチの最後にテラスの手前のスラブで友人が登攀していたことがある。テラスに手がかかったときにホールドが崩壊して友人は滑落した。その時のビレーポイントはかなり不安定な場所で、かつ濡れいてた。友人にはピレーポイントが不安定なので慎重に行け、と言っておいた。その友人が上で滑落したのだ。しかし友人はジタバタせず、冷静に両手両足をスラブにピタリとくっ付けたまま最初の滑落を始めた。その両手両足の制動のお陰で、スラブの途中で滑落が止まったのだ。あれには驚いた。氷の上を四つんばいになって滑るみたいにスラブを数m滑って、ブレーキをかけたように止まった。まさに身のこなしの最たるものだろう。
 あの時、常に注意をこめて登っていたからああいう行為ができたのだが。いずれにせよ身のこなしは運動することで培われるといえる。

A集中力、注意力のコントロール
 注意力というのは長い間持続は不可能だ。だから注意したあとはそれを緩めて、注意力散漫にならないようにしなければならいない。
 何ケ月かの山登りの場合、注意力のコントロールは慣れてくるまで難しい。尾根ならともかく、沢とか岩、雪山などでは出だしから無意識に緊張して、危なかろうが、そうでなかろうが緊張が持続してしまうだろう。それに核心部の通過もしたのならなおのことだ。
 その緊張も過度になると、散漫になり眠たいような気持になってくる。神経がどうでもイイヤ、みたいな状態になる。
 今度は緊張しようとしても、精神的にダルくて緊張したくなくなってくる。そういうときは、いろいろな面で注意力散漫になるのだ。

このような、意識と行動のズレとか注意力が散漫にならないためにはどうしたらよいだろうか。
 基本的には沢とか岩の場合は岩のトレーニングが一番良い。尾根歩き主体であれば歩くこと。
もし山に行かれないのなら、筋力トレーニングを少しでもやることだろう。意識的に多く歩くとか、腕力トレーニングをするとか。要するにトレーニングをする以外最良の策はないと言える。
 意識して少しずつやることは、全然やらないよりは相当良い。僕なども山に行かないときは自分なりに毎日少しでもトレーニングしている。
一番簡単な方法は

◎身体的な訓練
 転倒する機会を減らせば、危険度が確率的に減る 
 膝の屈伸などをおこなって下半身の安定を図る。この訓練としてはスクワットを日に数十回やる方法がある。最近では年齢に応じたトレーニング方法も確立されつつある。また深筋力を強化して身体のバランスを良くすること。
 訓練方法として
 1スクワット
 2電話帳を下に置いて、その片足での登り下りを繰り返す。 過去のテレビ放映の健康番組でのトレーニング法
 3椅子に座り、そこから立ち上がり、また座るを1回に20回くらい。週に2回くらい。ためしてガッテンでの脚力強化法
 など。
 4バーレーポーズをとることによる、深筋力の強化
 2と3などはバランス感覚も高められるらしい。詳しくはその方面のホームページを参照してみてください。

別のテレビで椅子でキツイなら電話帳を置いて、その上り下りを行うのも良い効果があがるらしい。
そう言ったトレーニング方法はNHKの「ためしてガッテン」とか色々な健康番組でやっている。過去のデータはHPに残っているので調べてみてください。
1日最低7000歩の歩行。
ただこういった決め事はそのうち重荷になってくる場合がある。重荷にならないで楽しく行える方法は自分で考えなくてはならない。

バランス能力を鍛える方法
ためしてガッテン「バランス能力回復術」
筋肉を鍛える方法
ためしてガッテン「簡単筋トレ術」

過去において放映された「スパスパ人間学」のトレーニングとかバランス能力の方法をHPで公開していたが、営利目的に利用されているケースが出たため大幅に削減されてしまった。残念です。
 今後は「スパスパ人間学」の本が出ることを期待したい。


●これが単独で登っている場合どうだっただろうか
単独で登っていて滝で落ち、足を骨折した場合どうだろうか。人の入渓が少ない沢だと絶望的だ。まず独りで歩くことが出来ない。
その対策として、
○携帯電話
過去に挙げた携帯電話の利用だ。
まず冷静になり、一番登りやすく、かつ展望が利きそうな尾根に向かって登ることになるだろう。

○ストックの利用法、または「救急簡易ギブス」利用法
その前に骨折した箇所の処理だ。僕の場合、どのような山行形態でもストックを持ち歩くことにしている。ストックはいろいろな利用方法がある。万一足を捻挫した場合、ストックに頼って捻挫をかばいながら歩くことができる。
また最悪ストックをバラして足の副木にすることも可能だ。シュリンゲとストックを利用して最低限の副木として可能になると考える。あとはツエになりそうな木を探して。(その逆も考えられる木を副木にし、ストックにすがりながら)尾根を目指すことになる。
最近では「応急ギブス君」というビニール製の骨折対応ギブスが販売されている。一度購入してみて使い方を勉強するものいいだろう。

 そして骨折箇所をかばいつつ、尾根まで這いずり登り、携帯電話が通ずる箇所を探したら即刻電話することになる。

最近は山岳救助にはヘリコプターが利用されるケースが多いとのこと。まず110に電話するか119に電話することになる。自宅に電話してもどうすることもできない。家族が救助できる訳でもないし、最短の救助は110か119くらいだろう。
 そして救助を待つことになる。

そういったことで僕の場合
単独行の山行の場合、携帯電話とストック(又は「救急簡易ギブス」)は最重要装備となっている。
注 なお携帯電話での救助は最悪の場合のみにすることが本質だろう
過去における最悪の携帯電話救助の例
○過去において下山中、暗くなりライトを忘れたので救助要請をした
○登れもしない山に行き無謀登山で下りられなくなったので救助要請
便利に掛けられるので安易に救助要請をしてしまう場合がある。これは絶対に避けなくてもならない。


山の遭難はひとごとではなく、常にそこにある危機だ。
特に単独の場合、念には念を入れて装備、計画、行動をしなくてはいけない。

また、万一自分が遭難、特に足にケガを負った場合、どうするかを自分なりに考え、解決しておかなければならない。

と言うことで
怪我による遭難に陥らないための方法として
◎転倒、転落などによる骨折に陥らないためには、まずそうならない為に身体能力を高めること。
○ウォーキング、軽いスクワット、バレーポーズによる深筋力の増進などを意識して行う。
体力不足による意識低下、筋力低下にならないために

◎万一遭難事故に陥った場合
それを想定して自分はどうやって対処するか具体的に列挙してみる。
その為に必要なものはなにか、調べ揃える。
僕の場合は、
○ストック、携帯電話、シュリンゲ等が最低限の携行装備となっている。
(応急簡易ギブス)
○計画書は必ず出して行く
単独行の場合、最低限計画書は出すのが義務だろう。
また万一にそなえ、事故対策装備の携行も義務といえる。

各方面に迷惑をかけたとしても、何が何でも生き抜いていればこそ、後で最大限のお礼が出来るというものだ。
行方不明だけは何としても避けたい。




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