山登りする人が良い人とは限らない
本当は「山登りする人がすべて良い人とはかぎらない」としようとしました。しかし「すべて」と付け加えると、あたりまえじゃないの、と簡単に答えが返ってきそうです。
普通、山登りをしていて誰しも、山の途中で出会う人に対してあまり警戒感はもっていないと思います。辛くて苦しい坂道をあえぎ登る人に悪い人なんかいない、と思いたくもなります。だから気軽に挨拶もしたくなるし、同行を乞われれば、同意したくもなります。しかしあまり安易な歩み寄りも気をつけねばならないと思ったりします。単独にしろパーティにしろ、ある程度自分のポリシーとかを持って行動するのに越したことはないと考えます。気が合って、途中から自分のコースを曲げて相手と一緒に同行すると言うのもちょっと主体性もないし、万一なにかあった場合、相手がどういう行動をとるかもわからずちょっと不安です。まあ、そう言うことを念頭に置いて、なお、それでも行って見よう、というなら何も言うことはありませんが。
写真を撮り合って、住所を聞いて、写真交換から友人になるというのが遠回りだけれど順当なプロセスだと思ったりします。
以前、岩登りの本番トレーニングで三ツ峠と言う場所に行ったことがありました。当時は僕は金も暇もなくて、おまけに平日休日の仕事だったので誰も平日に行けるメンバーがいなくてまさに踏んだり蹴ったりな状態でした。それでも自分なりに平地トレーニングとか鷹取山のゲレンデなどに行ったりして自分なりにずいぶん練習していました。
そろそろそう言った単独登攀トレーニングも形になってきたので準本番の予定で三ツ峠に行く計画を立てました。仕事柄、休日を2日とると言うのは結構たいへんなことで、無理を言って休暇をもらい、少ない小遣いのなかから山行費用を出しました。もちろん小屋泊まりなどと言う贅沢もできない状態。ツェルトなど宿泊用具、登攀用具、ザイル二本など、もう随分ザックも重くなりました。
食い物もそれなりに切り詰めて購入しました。
出発はストックにすがって出発したような気がします。
新宿から最終鈍行に乗って大月まで行き、駅の待合室で寝袋に入って、その1日目は終わり。明けて二日目は富士急の三ツ峠駅まで電車で行き、そこから歩きはじめました。
普通だと裏三ツ峠から行くと2時間弱で着いてしまいますが、交通機関が得られないため、表側の登山道を登るしかないです。岩場まで約四時間以上掛かってしまいます。
のんびり歩いたので、昼過ぎに岩場の一旦に着きました。
一般ルートの下の広場に着いたとき周囲には誰もいなかった。しかし登攀の支度をしていると、一般ルートからザイルをダブルにして練習している人が見えた。近寄って挨拶をしたが、相手の挨拶はなんとなく曖昧だった。格好を見ると、頭に鉢巻をして、装備も充分ではないような。そして練習といっても、トップロープでシュリンゲを使っての上り下りの練習をしているようだった。
挨拶も曖昧なので、今日始めて会った人だけれど、あまり会話ははずまないだろうな、と思った。それで、登攀の準備を済ませザイル等をザックにしまい、その他の宿泊道具、炊事道具、食料などを袋にまとめ、木の陰に置いて登攀の練習に出発した。前回は草溝ルートと一般ルート、中央カンテなどを登った。今日はV字ロックと鶴亀ルートで単独登攀する予定でいた。しかし雲行きが良くない。
V字ロックを何とか登り終えた頃、雨が少し降り出した。それで鶴ルートを諦め、二本のザイルにて懸垂下降して登山道に降り立った。登攀用具をまとめて、一般ルートの下の広場にもどり、ツェルトを張ろうと荷物袋を明けてみた。
するとなんとなく荷物の状態が変なのに気がついた。調べてみると食料が足りない感じだ。詳しくチェックしてみると残っているのは食パンと紅茶と砂糖と非常用のビスケットのみだった。あとの6Pチーズ、ハム、缶詰などが無い。一瞬どうしたんだ、という感情かが沸き立った。こんなことは今までの山登り経験で一度もなかった。
良く考えてみると、昼に出会った登攀者がいない。こんな平日の天気の悪い日に登山者の人影も見えなかったし。
そうなるとあの登攀者しか考えられない。
ハイカーとか登山者などの人の場合、食料等について深刻な状態に陥る可能性はあまりないかもしれない。しかし冬山とか登攀などの場合、僅かな食料で最大限に行動することがある。そういったことは登攀者の場合良く知っている筈なのに、あの時点での食料の盗難はショックだった。
その日は食パンと紅茶での食事だった。まあ高カロリー、高タンパクの食料を盗み、それらの穀物系だけは可哀想だから残してやろうということだろう。こうい残し方は山登りの内容を良く知っているからこそ出来ることであって尚更情けなく思った。
逆に言えば、そういった登攀者を100パーセント信じた僕が悪かったのだけれど。それまで一度も山登り中に物を盗まれたことがなかったから信じきっていたのだけれど。
翌日は雨となり、なおさら気持もよどむ。普通なら雨でも一般ルートの一本も登るのであるけども。今回はするに気もならない。侘しい食事もソコソコに下山した。
それ以後は岩登りトレーニングに行く場合は、貴重品はちゃんと所持している。また食料等などは持って行きようがないので、盗まれてもしかたがない、と始めから思ったりしている。
実際のところ、テント生活などでは、食料などは隠しようがないので、その気ならいくらでも盗んでしまえる。その点は悲しいというか、登山者の理性の問題になるんだろうけど、と言うよりは良心の問題か。だから、良く考えてみれば、涸沢とか、剣沢とかの大きなテント場でも、そういうことが起こりうる、ということになる。
または高地の奥又白池とか剣の三の窓などでの食料の問題は相当に深刻だろう。過去において山小屋にデポしていた食料が盗まれたりした事件が雑誌などで問題にされていた。これなども大迷惑な問題だった。しかしテント内での食料等の盗難というのはそれと同等くらいの問題だろう。年々山でのモラルとか良心などは低下しているんだろうか。
過去に某山地の某山付近で、女性の失踪事件が起こったことがある。捜査の結果、その某山地の某山小屋の係員の一人がその女性に乱暴し、かつ死亡させて、埋めてしまったということだった。
この問題などと被害者は可哀想としか言いようがない。山において悪い人はいない、と誰しも思ったりする。しかし普通の登山者ではなく、一番頼りになる山小屋の係員にそういった目に遭わされたというのは悲劇的だ。
また数年前に一ノ倉に行った際、登山センターにビラがあった。そこには最近サギまがい行為わする登山者が一ノ倉出合に出没するので注意するように、と書いてあった。一見すると相当山をやっているように見えるらしい。アドバイスなんかもするんだろうか。知識のない人からみると頼り甲斐のありそうな人に見えるからサギに掛かってしまうのかもしれない。
よく山に登る人に悪い人はいない、と通例的に信じられている。または暗黙の了解で信じられているかもしれない。
僕も漠然と信じていた。しかし過去の事件のこととか、僕が身をもって被害を受けてみると、悲しいけれど、見ず知らずの人にたいしてある種の警戒は必要なのではないかと考えてしまう。
以前は山で出会った人にたいしては全面的に信用してしまっていた時期があった。しかし最近では、信用はするけれど、やはり一歩さがった対応をした方がお互いに良いのではないか、と思ったりする。
要するに、テントでの食料などはこれ見よがしにテントの入口においたら、全然その気がなくてもつい手が出てしまう場合がある。装備などもテント付近に乱雑に置かれていたら、一つくらいなくなってもイイジャンみたいな人もいるかもしれない。
その場合はやはりテント内を整理整頓し、食料等は奥の方にしっかり置いておくなど、ある種の緊張感があれば、悪い考えを起こさない可能性がたかい。
また女性に関しても。あまり派手な格好で、誰にでも愛想良く行動するのは考えものかな、などと思ってしまう。
なんにおいても隙を見せるという事は、なんのわだかまりを持っていない無い人でもつい出来心という場合もある。
そういったことで、山登りにおいても現実の世界とほとんど変わらないと言うことを改めて自覚しておいた方が良いのではないかと考えます。
●テントの内部は整理整頓しておく。入口はキッチリ閉めてだらしなくしない。
●テントで荷物を外に出すか、デポしておく場合もキッチリ揃えて置いておく。フライの陰に隠すのがベターかも。
ゲレンデでのデポとか、ピストンで登頂のさいのデポなどもザックはキッチリ整理する。場合によっては高いところに吊るすかするのも良いだろう。
●女性の場合は多人数のパーティの場合を除き、あまり派手な服装は人を引き寄せるので良く考えて選ぶ。
●女性の場合は携帯電話は男性以上に必須装備でしょう。また警戒音の出る器具も相手がひるむので持っていて悪くないでしょう。
●要するに、山においても下界とほぼ同じと考えるべきでしょう。
その為には出来心などを起こさせないような配慮というか、
気配りが必要だと考えます。