星穴岳

なんとか星穴岳に登ることができた。

林道から見た星穴岳の頂と尾根。


 以前、本屋で「山の本」を立ち読みしていた。そうしたら星穴岳の登山の記録が出ていた。ふと、星穴岳はたしか登山禁止ではなかっただろうか、と思った。読み進むと、どうも登山禁止とは登攀技術が必要なので、技術的にあぶないから登山禁止、ということらしい。
 前から、岩峰登りをあちこちでやっていて、最近では「西上州」に時々行っている。その中に妙義も入るのだが。その中に、星穴岳と金鶏山は登山禁止となっている。
 山の本の内容を読むと、その山が非常に興味深く感じられた。
 写真も載っていて丁度、鬼が金棒をもったような状態で、顔の部分には山腹に開いた二つの穴が鬼の目のようだった。これを見たら、鬼ガ面山、とか鬼面山とか鬼が城とかの名前がぴったりだ。
 しかしあの山に星穴岳と名前をつけた地元の人々の感性はすごいなと思った。
星穴岳には山腹に二つの穴が空いていて、星の形をしているのだろうか。それとも山腹に星が衝突して穴が開いたという伝説でもあるんだろうか。ロマンは掻き立てられる。

 それで友人とともに行ってみることになった。
 しかし一回目は完璧に敗退してしまった。友人との合流とか場所の設定などで時間を食い、星穴橋出発ば9時過ぎたこと。何の資料ももたずに入ったので、何度も道を失い大幅に時間を食ってしまった。
 結果的にP2と呼ばれる岩峰のコップ状岩壁のトラバースをしたあと時間切れで、そこから下山することになった。

2002/4/6 晴れ
パート1 バリエーション楽しい
 前回は情報不足で敗退してしまった。そんなに甘い山ではなかった。自分の甘さを改めて知った。
 それで本屋にて「山の本」を購入して詳しく読んだ。内容を検討し今回は星穴岳を登り、帰りは西岳には行かず、同下降か星穴沢を下降する予定にした。

 装備も登攀具では
ザイル9ミリ45m1本、8ミリ30m1本、10m1本、8m1本。
ハーケン二人で10本、ジャンピング、ボルト6個、シュリンゲ各13本ずつ、ナッツ各種、
と本格的な登攀態勢で気合充分な内容になった。これなら何所でも行くし帰れると言うものだ。


 朝2時半、3時に東京を出発。出発時間からして、かなりな気合だ。関越を飛ばし、仲間と合流して星穴橋に5時50分に到着。


登山禁止の立て札。もっと左には遭難慰霊碑がある。

橋のそばには昭和45年2月に遭難死した2名の慰霊碑があり、登山禁止の立て札もある。気が引き締まる。
 支度して出発。橋からの道は崩壊しているので、少し行った土石フェンスから登る。藪が茂っているが踏み跡はしっかり続いている。
 女坂の道標から右に入り、登りとなって尾根に出る。裏妙義の山々は良く見えるようになってくる。尾根の右側は崩壊してえぐれたような個所があり、尾根上もいつか崩れそうだ。
 急な登りとなり、ピークらしき所にでる。踏み跡は左と右についている。道は右で緩やかな登り下りを繰り返すと尾根を右から巻くような感じとるなる。前方に鉄の杭が見え始める。ここをトラバースするのだが、直下はスラブで滑ったらかなり下まで落ちるだろう。ここは安全を考えザイルを出す方がよい。僕等はザイル無しでトラバースしたが濡れていると悪そうだ。


一回目のトラバース。
下は深い谷なので慎重に行く

枝尾根にあった熊の爪跡。つい最近みたい

P1の付近。切れた鎖をシュリンゲで繋いでいる。慎重を期してトラバース。

トラバースからザレた沢のツメに至り、ツメ登りからザレた斜面を斜上し枝尾根にでる。
木の幹に熊の最近の爪跡があって怖くなる。そう言えばさっき沢の下の方で音がしてたけど。
 枝尾根を辿ると小ピークとP1の鞍部にでる。ここは展望もいいし、休憩するには良い場所だ。ここで休憩を兼ねた登攀の支度をする。西岳方面から太陽が出てきた。日が出ると急に暑くなってくる。
 支度して出発。前方の岩峰はP1だ。近づくと星穴岳→、と黄色いペンキで書かれている。岩峰の右を巻いていくとすぐに鎖場となる。
 ここは古い鎖が切れ切れに残っていて、切れた鎖をハーケンで結ばれたシュリンゲで繋いでいる個所がある。かなり古いシュリンゲでいつ切れてもおかしくない。右斜上していくのだがその個所では力をかけずにバランスをとるためソッとつかむ。
 上のハーケンにランニングを掛けて一安心。斜上を続け、次の鎖に移り、潅木にランニングを取り、そのまま直上。土の積もったザレた個所をだましつつ登り、上の鎖を掴む。この鎖とて古くて過信は禁物だろう。潅木にランニングを取り、力まかせに鎖を3mほど登ると傾斜が落ち、鎖場の終点にてピッチを切る。コールしてB氏に登ってもらう。
 その上はまた普通の尾根の状態に戻り、登り続ける。P2の岩峰が見え始め、赤いテープの個所から左に巻くように進む。テープにはP3は登れそう、と書かれているが、あれはP2だろう。また前回あと4mまで登った限りでは登れる可能性大だ。しかし下降はどうなっているか疑問が残る。


                コップ状岩壁
←トラバースの中間点。潅木にてピッチを切り、上を目指す。
しかし悪すぎる。↑ルート変更し潅木から左へトラバースして左の小尾根を目指す。そこから上は簡単だ。

対岸から下がっている固定ロープ。相当古い。赤テープは対岸からこちらの尾根にも付いていた。相当危険なトラバースみたい。

 巻いていくと、小尾根に至り、そこから所謂、コップ状岩壁が現れる。前回同様トラバース開始。B氏が先行。中間地点でスラブの下となる。「今日は乾いているから登れそうだ」とコール。無理すんなよ、と返事をしたが。とにかく登ってみると言って登り始めるが2m程で「やっぱり悪い」と言って一旦降た。潅木のビレー点からまた左にトラバースを開始し、対岸の小尾根にてビレー。
 僕がトラバース開始。2mほどずり降りると古い鎖があり、それをホールドに進む。途中の鎖にも古いシュリンゲで繋がれた部分がある。鎖の尽きるところからが悪い。
 細い潅木にシュリンゲが巻かれてランニングとなっている。それを回収し、その潅木にバランス程度に握ってジリジリと2mほど行くとスタンスがしっかりする。そこから脆いスラブを5mほどトラバース。スタンスの岩が薄く割れるので神経を使う。
 ちょうど中間点の潅木のランニングのシュリンゲを回収。上を見ると色の褪せたトラロープがルンゼを横断している。あんなところの横断は怖すぎる。
 潅木からなおも左にトラバースし、曲がった木をまたぎ、土の浅いスタンスを崩さずに進んで小尾根に着いた。
 このトラバースにしても途中の二箇所の潅木がなかったらボルトを使用するしかないだろう。あの潅木達が今後も元気に成長することを祈る。
 終了後小尾根を登っていくときに先ほどのルンゼを覗くと対岸に木からフックスされたロープが見えた。かなり古いもので色も褪せている。その木に赤いテープが巻かれていた。僕等の立っている小尾根の下を見ると、これまた木にかなり古びたロープが巻かれていて、その色はどす黒いもので、つかむ気にもならない、
 そこにも赤テープが巻かれていて、赤テープ氏は対岸の木の固定ロープを下り、ルンゼを横断し、あの古いロープに命を賭けて登ったようだ。
 安全性から言うと、先ほどのトラバースの方が格段に良いし理に叶っているように思えるのだが。また、退却の際もあのトラバースで帰れる。
 尾根から鎖で斜面を降り、踏み跡を辿るとP2の鞍部に出た。小休止しP2の写真などを撮る。
 次の登りは左に巻き気味に行くと、急な登りとなる。上のB氏が頭大の岩を落としたドドドという音とともに僕の左を落ちていった。まああの程度の落石なら楽にかわせる。上でB氏がしきりに謝る。よくあることだから大丈夫とコール。
 小岩峰を巻いて尾根に出る。ここからまた鎖場となり登って行くと古くて小さな道標の板切れが落ちていた。妙義湖と星穴岳と微かに書かれている。ここあたりからの星穴岳方面の眺めは凄い。
  下に鎖が続いている。ここは懸垂下降することにする。途中からトラバースとなるらしくて一旦途中で懸垂を切る。僕が降りていくと途中から左にトラバース気味となる。ここは鉄の杭を足場に鎖につかまってB氏のいるところまで行く。


長い鎖のトラバース。鎖もあまり信用せ
ずにバランスで進む

頂から見た星穴尾根。

懸垂下降場所からの星穴

 ザイルを回収しここでビレーすることにしB氏が進む。
 B氏が「凄い眺めだ」を連発しつつ進んでいく。コールのあと僕が進む。鎖が長く続き、途中から下がスッパリと切れ、上を見れば星穴岳方面の眺め、壮絶な眺めだ。トラバースは左斜上していく。鎖がなかったら登ることは不可能な場所だ。スタンスはあるがホールドも少ないし壁が急だし。
 B氏の所に行くと、ここはかなり高い所になっている。いまトラバースしていたのは尖峰の基部ようだ。
 部分的に鎖の残る痩せた尾根道を進む。本峰の左を巻き気味に登り、途中から急な登りとなる。下は展望があり過ぎて見るのも怖くなる。上の鎖の部分では足場の下が一気に切れ落ちているので、鎖にセルフビレーをして乗り切る。

 鎖から少しの登りで狭い鞍部に到着。古い道標が朽ちて倒れている。ここはコルのようだ。登りから右が本峰のようだ。左は岩峰で登れそうでない。右を潅木たよりに登ると5分もかからずに本峰に着いた。



 なんとも厳しい景色なことか、周囲には沸き立つように尖峰がつらなり、下の景色は段々にでなく垂直にかけ離れ、距離感が凄まじい。西岳は近いけど、険悪な道のりを感じてしまう。
 僕は頂からすぐに降りてコルで休憩したかったが、B氏はここで昼飯にしましょうと言う。「こんなヤバイところでかヨ」と驚くが、それもいいかも。それで潅木やら残置ハーケンやらに自己ビレーを取り、昼飯を食う。空中に浮きつつ休憩しているみたいで、なんとなく休めない。しかし食い物はおいしく食べているからイイカ。
 まあ今日は晴天に恵まれよかった。これが雲行きが悪かったら、相当に不安になるだろう。
 昼飯後、星穴を見に懸垂する。山のドテッ腹に穴がある、と言うのはとんでもないことだ。
 シゲシゲと眺めるが、本当に奇怪でありファンタスティックな眺めだ。下には熊の足跡などあり、年に数回の人の訪れ意外は熊さんのネグラなのかもしれない。

帰り道の相談をする。



星穴から中之岳神社方面に下りれば、下に林道に着けそうだ。反対側の星穴沢方面に下りれば、星穴橋まで降りられそうだ。資料によると星穴から山腹をトラバースしていくとコルに出られるらしい。しかし詳細はわからない。


パート2 下山路を探す
一般的には星穴から中之岳神社方面の沢を降りると、それほど困難なところはなく林道に降りられるらしい。まあ懸垂下降は必須だろうけれど
 星穴沢は星穴から山腹をトラバースしてP3の鞍部に至り、そこから懸垂を交えて下降出来るようだ。
 しかし今回は自分達で下降路を探そう、ということにした。星穴直下にもルンゼがせり上がって来ている。これを下れるか検討する。万一悪い場合は左にトラバースして支尾根に逃げ、稜線に帰ればいいし、ハーケンもボルトも豊富にある。いざとなったら何処でも降りるぞという気合一杯で、この沢を降りることに決定。
 それで先ほど懸垂したザイルを回収しようとしたらザイルがビクとも動かない。万一を考えて登り返しの為に回収せずにしておいた。毎回懸垂の際に一人が降りたらザイルを引いて回収出来るか確認していた。もし動かない場合は残った人間がザイルの位置を代えて回収できるように対処していた。
 しかしこの時は、登り返し出来る処置をしていたため、回収可能の確認はしておかなかった。
 ザイルは何度引っ張っても動かない。サンザンやって最後にB氏がユマールとシュリンゲで自己脱出方式で登り返すことにした。結局回収したが、1時間近く時間が掛かった。トホホ。

気を取り直して下降開始。地図から行くと北側の沢下りだ。
 ルンゼをいきなり下降するのも怖いので、左の緩い斜面を懸垂下降にて慎重に降りはじめる。立木を使って左斜めに下降。20mを4回下降してから緩やかになったルンゼに降り立った。
 B氏が下に降り、その先を見に行った。それで「この先は下が見えないくらい高くて、降りられないかもしれない」とコールしてくる。ここまで来ると簡単には諦められない。滝の落口まで行き、下を見ると途中がハングしていてとなるほど直下が見渡せない。ただ遠近感からいくとそれほど高くない、と感じられた。下に向かって右斜め下に大きめの立木がある。あそこまで降りてピッチを切れば、下までザイルが届くだろう。それで右にある潅木に8mm×5mのシュリンゲを掛け、支点としそこにザイルを通した。
 最初に僕が行く。ハングを下降すると、下が見え思いのほか近いくてザイルは届いていた。そのまま一気に下まで下降した。涸滝の高さは20mくらいだった。まず第一難関突破。次の5mのスラブ滝はシリセードみたいにして滑り降りる。ケツが痛かったが、他にうまい降りかたはなさそうだ。
 次にまたでかい涸滝に遭遇。ここは下が見える。ザイルを垂らすと下にザイルは届いた。B氏が選考下降。この滝は途中でハングを越えると水がタラタラ流れていてツルツルの場所となる。不安定なので空中懸垂で下降する方が楽だ。


ハーケンはガッチリ利いてます

最後の涸滝の下降。やっと緊張から解放された。

 数個の小滝を降りる。また大きな滝が現れた。ここも涸滝に近い。涸滝の下からは急な斜面は見えない。下を見ると今までと同じくらいの高さだ。しかし周囲にしっかりした潅木はない。木の根はあるが、B氏が不安だから使用したくないとのこと。それで落口付近のある岩にハーケンを打つ。まだ不安だ、と言うのでもう1本打ち込む。気持ち良いキンキンという金属音とともにしっかり岩にハーケンが食い込んだ。シュリンゲを二本使いザイルを通して下降開始。この滝は岩のしっかりしていて登るのが楽しそうだ。
 涸滝を降りたあと、緩やかな沢を下ると左から涸沢が入る。これが星穴沢のようだ。上を見るとP3の岩姿が見える。これで下りの核心部は終わった。気持的にホットした。慎重を期したため3時間ほどかかってしまった。
 それからは楽な下りとなる。周囲の景色は開けてきて良い眺めだ。だんだん緩やかになり下に向かって右の斜面がなだらかになってきたのでそちらの尾根に移り降りる。
 小さい涸沢を横切りりトラバースを続けると水の流れる沢が見え始める。これは金洞山からの沢だろう。するとテープのある木が所々に見え始め。女坂の道にたどり着いた。
 部分的に崩れた場所などもあったが軽快に通過。星穴沢を渡ると朝みた「女坂」の道標に到着。あとはのんびりと下り午後5時に星穴橋のに到着した。






パート3 終わりに


タイム



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