筆頭岩から金鶏山
![]() 中之岳神社からみた稜線。 筆頭岩がナイフの先のよう。 稜線は見た目以上に複雑だ |
妙義山の地域には登山禁止の山が二つある。一つは星穴岳。もう一つは金鶏山だ。
なんで登山禁止かというと、
●星穴岳は三十年以上前に登山者が遭難して、その危険性が問題になり禁止となってしまった。
そして、その後はまったく手入れされることはない。道とか鎖などは年々朽ち果てつつあり年々登山の困難性とか危険性がアップしている。危険性が問題になり禁止となって以降の方がより危険度がアップし、より一層一般登山者の登山を遠ざけている。
●金鶏山の場合は、書籍で調べてみると以前は全く問題がなかったようだ。しかし近年麓を妙義紅葉ラインが完成した。中之岳神社方面に車が行き交うようになり、筆頭岩から金鶏山に向かう稜線直下に道が出来ているため、落石がダイレクトに道路に直撃してしまうことになる。
道路完成以後、道路に垂直に落ち込む斜面は稜線からの落石をなんの障害もなく、それ以上に加速度をまして落下させる。行き交う登山者の些細な落石が、直下を走る車に障害を与えたようだ。
そう言った障害のために町において登山禁止という措置がとられた、とのことだ。
パート1
アプローチ
中之岳神社から見える筆頭岩とそれにつらなる稜線はなにか魅力的だ。特に桜の里付近から見える筆頭岩の岩峰ななんと魅力的なことか。そんな岩峰に見せられて、筆頭岩から金鶏山の登山を計画することにした。
筆頭岩から金鶏山は危険な個所があるので登山は禁止と書かれている。実のところ筆頭岩周辺から落とされる落石が直下を走る車にダイレクトに当たるため、問題になるので登らないで、と言うことらしい。
なるほど実際に筆頭岩から金鶏山に行く尾根の途中までは直下の道路がすぐそこにあるような近さで、そのあいだが垂直だ。そのため事前計画で、筆頭岩を下りに使うと、落石を起こしやすいので行きに登ってしまうことにした。
2002年4月X日 晴れ 三名
朝六時に東京を出発。
紅葉ラインを走り、尾根の岬の突端のような駐車場に着いた。
アプローチはスイス風
ここが見晴し駐車場のようだ。支度して出発。中之岳神社方向の道路を10分も行くと尾根の木の陰に看板が立っている。登山禁止の看板であり、ここから金鶏山へ登るようだ。帰りはここを下ってくることになる。
![]() 一本杉に向かう道すがら。 スイスの岩場に向かうような感じだ。 |
気温は高くて暑い。蛇行した登り道を歩くが、なかなか一本杉につかない。これは車で一本杉に行ったほうがよかつたな、と悔やまれる。しかしその代わり林道から見える表妙義の景色を十分に堪能できるが。
さくらの里の分岐を左に分けて登り道を行くと一本杉の道が右から入ってくる。そこを5分も登ると高くて立派な杉が生えていて、成るほど一本杉だな、と分かる。ここまで来るのに45分も歩いてしまった。なんだか疲れた。
一本杉から筆頭岩へ
休憩の後出発。筆頭岩への道は木のテーブルから少し戻るとヤブのやや茂った下り道がある。ヤブを分けつつ進む。途中コンクリートが尾根の斜面に吹き付けられた場所では尾根の左を巻くように進み、脆い土の壁をトラバースすると尾根の上に出る。直下は林道が10m下に見える。ここから石を落としたら、車に直撃だ、クワバラクワバラ。
その後も痩せた尾根を登っていくのだが、石を落とさないようにすごく気を使う。ここを逆に下った場合、落石を起こす可能性が高い。やはりここは登りに使うのが良さそうだ。
尾根を登っていくと、岩場となり、そこを右に巻くように歩く。丁度岩稜を巻く感じだ。どんどん進んで行くと、垂壁に赤丸のついた場所となる。反対方向は尾根は樹林帯でなだらかになり、金鶏山方面に続いている。
この垂壁には所々にボルトやハーケンが打たれ、人工登攀のルートのようだ。ここは登れないので、元来た道を戻る。
山腹の巻き道から明白なリッジが右手に現れる。
リッジの登りは所々三点支持などしつつ登ることになる。岩は大まかであるが以外とシッカリしていて登りやすい。
筆頭岩頂上へ
![]() 筆頭岩全景。ナイフの頭部のよう。 さながらナイフの刃を登っていく感じだ。 |
周囲が開けてくると見晴らしのよい大テラスに到着した。ここは景色は非常によい。しかしセルフビレーはしておいた方がよい。直下は垂直に切れ落ちているから。景色は林道を走る車が手にとるように見えるし、表妙義の異様な姿が迫力をもって眼前に展開している。筆頭岩に眼を転じれば、リッジラインを左右にくねらせて遥か高くに聳えている。なんだか感動的な雰囲気。
ここで登攀具を付ける。
1P目
まずA氏がトップ。初っ端のトップは緊張する感じだ。最初のピークにてピッチを切る。
で出しは大まかではあるがフリクションのバッチリ利く痩せたリッジを登る。要所要所にビレーピンがあり危険ではない。なんとなく剣のチンネを彷彿とさせる所だ。部分的に切り立った所もあるが、青空を背負っての楽しい登攀だ。登りつつ上部の写真をとり、かつ下の写真も撮った。
1ピッチのビレーポイントは狭いピークの上で三人がやっと座れる場所だ。ここから見える下のB氏の風景がバックの田園風景と重なって妙な緊張感を感じるだ。
![]() 大テラスからの1P目。後ろに頂が見える。 小ピークへの急な登り。剣岳チンネみたい。 |
![]() 2P目途中から見た小ピーク。幅は1mくらい。 周囲の緑がなんとも印象的だ。 |
2P目 次は僕の番。まず一旦5mほど下り、そこから50センチくらいの幅の岩場を通過するのだが、下から風が吹き上がってくるわ、直下の景色がすごいわ、で超緊張する場所だ。刃渡りといったところだろう。それを通過して急な登りとなる。上部に古い鎖も下がっていて、悪場という感じがする。
鎖は古いし信用が置けないので、触らずにその左を登る。ビレーピンは鎖のアンカーに取った。ここも大まかなかんじだが、フリクションが聞くので思い切ったムーブで登り続ける。鎖場を過ぎ、傾斜も落ち、ピークの一端に着いたので、ここでビレーする。下を見ると、下にいる二人のピークは周囲から宙に浮いた感じで、すごい風景だ。
3P目
二人が登り終わり、次はB氏が登る。小さな岩のコブを何個か越えていき、リッジラインを忠実に左へと登っていく。ザイルがあと3mほどになったときB氏から「頂上だ」とコールがあった。
ルートはリッジの数個のコブを越え、狭いところを登り、傾斜の落ちた岩場を登ると、潅木の生えた頂に着く。
今回は45mザイルを持ってきたのだが。1P30m、2P35m、3P40mといった登りで頂についた。
頂の眺めはこれまた絶景で、下を見ると怖いくらいだ。しかし暑いので休憩もソコソコに下ることにする。
懸垂で尾根へ
下りは反対側の垂壁を下降することになる。しかしなかなか下降支持物が見当たらない。残置ハーケンもないので、結局小潅木の根っこにシュリンゲを巻きつけることにした。ここには過去もそうしたらしい、古いシュリンゲが掛かっていた。
用心の為、体重の比較的軽い僕が先行する。潅木が抜けはしないかヒヤヒヤもので5m下降し、潅木と草の生えたテラスに到着。
次は岩場の突端にある潅木を使おうとしたが、半分枯れているので止めて、中央にある太い潅木にシュリンゲを巻きつけ、下降する。この下降は岬からいきなり身体が飛び出す感じで超コワイ。部分的に空中懸垂をして10m下の岩のテラスに着く。
ここには残置ハーケンが二本とボルトが一本あって、この三本にシュリンゲを通して次の下降開始。距離は30m余りあり長い空中懸垂となる。途中で杉林に入ってしまい、ザイルが引っかかったりしたが、なんとか着地した。
パート2 02/5/17アップ
懸垂下降後、尾根沿いの木の茂った道を行くが、頂から見えた岩壁のある岩峰は右から巻いて行くようだ。鎖もある。
日陰にてやっと昼食することにした。持参した水で紅茶を沸かし、しばしの休憩を取った。時々反対側の他にから吹いてくる風はやわらかくて心地よかった。
もっと休みたかったが、大事をとって出発。金鶏山全体の稜線は見た目よりも複雑で険しい。小ピークは展望がよい。振り返ると筆頭岩がリキッと間近に見える。潅木帯を下ると岩峰となりここも右から巻く。
![]() 岩峰を巻く途中の道の崩れ去った場所でのトラバース。 ビレーポイントがなくて緊張する。 |
この付近のトラバースでは露岩が欠落していてトラロープも流されたようだ。反対側には木に赤い丸がペイントされているが、そこまでの間はルートもない。その下はしばらく斜面が続いたあとハングしている。落ちたら大怪我するだろう。
僕らは10mくらい降りて、斜面のゆるそうなところを探した。ここは細く、外傾したかすかなバンドしかないので、ザイルを使用してトラバースした。ルート中にはビレーポイントもないので緊張する。まずザイルがないと通過は不可能に近い。
通過の可能性としてはハングの下まで降りて、通過し改めて登るしかないが、それも出来るか大いに疑問だ。
トラバース後、ザレた沢のツメを登ると稜線に出た。しばらく尾根どうしに歩いていくと今度は左に下りる場所となる。この付近はトラロープが無かったらすごく分かりづらいだろう。古いトラロープは谷に下り、尾根へと延々と続いている。
谷に一端降りてから急な斜面をトラバースし、また急な斜面わ登る。トラロープは古いので信用せずに、フリーで慎重に通過した。ちょっと疲れた。
この通過後、キレットとなる。下に降りるのにトラロープと古いロープをまとめて握って下まで降りた。ここはトラロープに頼るしかない。まあ持参のザイル下降でもよいが。登りには鎖もありここも鎖に頼らず慎重に登る。
しばらく登り下り続けると展望のよい一角に到着した。ここは展望もよく金鶏山かと見まごう場所で、周囲の展望は抜群だ。やっとここまで来たというのが実感だ。
また短いが登り降りを続け木立の中にある三角点を見つける。展望は無く、休まず通過。少し行くと石碑のある金鶏山の頂上に着いた。暑いのと意外に縦走の時間もかかってしまい疲れ気味だ。たぶん水分不足が原因だろう。
休憩もソコソコに下降開始。石碑のある方向の道を行くと、突然ガケになり道が途切れている。ここは下からから登るルートなんだろうか。上部の凹角みたいな感じだが。
ここは一旦もどり石碑の手前の岩場の間に下りているザレた急なルンゼが降りられそうだ。確認をする為僕が先行する。枯葉が詰まっている場所もあるので慎重に降りる。困難性はあまりないので降りていくと、木の枝に赤テープを確認。上にコールして降りてもらう。
急な尾根から左の涸た沢を渡り、さらに左の尾根に出る。このあたりは分かりづらいが、所々にある赤いテープを頼りに降りる方が安全だ。なんせ絶壁にかこまれているので、無理は事故のもとだ。確証がもてないなら、一旦元に戻ることも必要だろう。
尾根を下った後、枯葉の詰まったルンゼを下る。なんとなくアリ地獄状を下っていくみたいだ。あり地獄の真下を出るとコンクリートの階段がありそこを降ると朝見た登山禁止の立て看板の場所だった。
看板から林道を10分ほど下ると見晴らし駐車場に到着した。
帰りは、妙義温泉に立ち寄る。本物の温泉のようで、三時間で600円。露天風呂もある。休憩室は広くて二時間ほどゴロゴロした。帰りに汗を流し、休憩するにはうってつけのところだ。
感想として。
登山禁止になっても、入山する人はかすかにいるようだ。その証拠に時々赤テープが現れる。また、要所にはトラロープや針金なども設置されている。しかしトラロープはだいぶ古くなっていて、使用をためらう場所もある。
禁止であるからして、日常的な整備はほとんどしていない訳なので、部分的な崩壊箇所はどんどん増えていくことだろう。そのための対処は登山者が自分で切り開いていかないと通過できないことになる。
どんな場所でも、乗り切れる体力と、技術がないと、アクシデントにあう可能性が高く、結果として町に迷惑わかけてしまうので、ここを登る場合はその点は充分な考慮が必要だ。
また、筆頭岩は3Pの楽しい岩峰だが、下降方法に充分な注意を要する。反対側の垂直の岩場の下降は、古い残置ハーケン、ボルトの使用の場合、ハーケン等の利きのチェックは必要だ。また、潅木の使用は露岩に生えている木な訳なので、しっかり根付いているとはいえない。その点も他者のフォローが必要だ。
一番安全なのは、登攀ルートを戻るのが、残置ハーケン等の利きを考えると最良ではないかと考えます。
タイム
見晴し駐車場8:30−9:15一本杉9:30−9:55基部−10:30大テラス−11:40筆頭岩12:10−13:15コルにて休憩13:40−14:10鎖場 14:15−14:45岩峰−15:50キレット−16:20金鶏山−17:08登山口