西大星 孤高の星
![]() 赤岩P2から見た西大星 妙義の主線から離れ 孤高にそびえ立つ西大星 |
妙義山の地域には星と言う名の山が二つある。星穴岳とこの西大星だ。
なんでこのような名前になったかは知らない。しかし地元の人がそう言う名前にしたかった理由があるのだろう。
西大星は裏妙義の主線から離れ、赤岩の彼方に輝いていた。
まさに僕が思った場所であり、孤高な星であった。
たどり着けない場所
この山に行くことに決めて、何度この山に通っただろうか。通算すると四度通ったことになる。行けどもなかなか頂きにはたどり着けなかった。
1回目 赤岩へ
最初に計画したコースは
鍵沢〜赤岩〜西大星〜鍵沢というコースだ。過去において打田氏が通ったコースをたどることにした。しかしすでに18年も前の記録だ。木々も18年もたつと随分大きくなっているだろう。過去においては登山道もあったらしいが、その当時すでにほとんど道は無くなっていたと聞く。
地図上でコースをたどり思いを馳せている時も楽しかったが、いざ行くことになるとより一層気分が高揚などしてきた。
関越は空いていて順調に走り、妙義に着いたのは7時ころだった。
丁須の頭に行くための鍵沢コース登山口の手前に車が10台くらい停められる立派な駐車場がある。そこに車を停める。
駐車場から一旦道路に出て川を渡ると鍵沢コースの登山道がある。変な話しだが今回妙義にきて初めて一般登山道に入ることになった。途中には道標が立ち並び全然迷うことなく安心して登れるのが嬉しい。1時間10分で第二不動滝、1時間で丁須ノ頭に着く。
丁須の頭からの展望はかなり良い。その展望を見て妙義の山々がいかに岩峰だらけである、ということを思い切り実感させてくれるだろう。と言うか山々のその異様さに恐れをなしそうだ。
今後登るべきバリエーションルートをしっかりと写真に写し丁須の頭を後にする。途中に20mのチムニーの場所があり、そこに鎖が架かっている。降りるのに腕力はいるし、高度のためかなりな緊張感だ。このような場所があるから経験者向きとなっているのだろう。
チムニーを降り、赤岩の基部まで来ると丁度大きな道標が立っている。ここが赤岩へ登る取り付き点だ。登攀装備を付けて出発する。
尾根から向かって右にトラバースしていく。前方に二つに割れたような岩壁がみえる。急なルンゼを渡ると、その枝尾根の岩壁の基部に到達する。記録によるとこの岩壁を登るらしい。荒井氏が登ってみるが「悪い」と言って戻ってきた。枝尾根に登るためにはあとは隣のルンゼしかない。ルンゼを目指すが、ここも細かすぎてダメ。
僕が交代してルンゼを登るがタメ。そこから3mほどルンゼを降りて反対の斜面までトラバースする。緊張したがなんとか木にたどり着く。ここでピッチを切る。その木からは木々伝いに斜面を登れる。ルンゼのツメを巻くようにして斜面を登ると、先ほどの枝尾根の上に出た。下にはあの二つに割れたような岩壁が見える。
着いたのは岩峰と岩峰のコルのような所だ。ここをAコルとしよう。Aコルから山に向かって右を巻き気味に登る。わりと楽な巻きでBコルに出た。
上は岩峰だ。ここから今度は左を巻き気味に登る。登っていくと急なルンゼに突きあたり、一見しただけで登れないと分かる。枝尾根へ登れそうなルートを探しつつ戻る。途中に抜けられそうなルートがあった。岩壁は5mくらいか。僕がトップで登る。岩の割れ目沿いに登りハーケンを打ったあと左に3mほど登ると潅木に到達。急斜面を木伝いに登りピッチを切る。そこから枝尾根には行かずに急斜面を木につかまりつつヤブ漕ぎしながら登ると赤岩の一角に飛び出した。
出た途端反対側からの強風に煽られた。反対側は絶壁で一気に下の樹木まで何も遮るものはない。稜線は潅木が繁っている。しかし晩秋のため葉が落ちて何とか歩ける。2つ目のピークが赤岩の最高点だ。頂は絶壁に囲まれていていつものごとく眩暈がしそうだ。妙義の山々をあまり見ることのない角度で見ているのだろう。烏帽子岩はさらに細く鋭利なナイフのように突き出ている。
しばし休んだ後、戻ることにする。しかし下降点が分からなくなってしまった。登ってきたときにちゃんと木にシュリンゲでも巻いておけば良かったのに。あとの祭りである。どこも同じような場所で何度か降りたがあまりにも急であわてて戻る始末。このままだと降りられなくなる。
結局比較的急ではない所を下る。しかしすぐに急なルンゼとなる。戻る気にもならない。ここでザイルを出して懸垂下降する。30mで木に到達。ここでピッチを切り2回目の懸垂下降35m下ると右に木が繁っていてそこでピッチを切る。ここから枝尾根に登れそうだ。枝尾根に出てくるとその向こうに見覚えのある枝尾根がみえる。浅いルンゼをトラバースして枝尾根のコルに到達。ここはBコルだ。まずは一安心。しかしまだまだ道は長い。
Bコルから浅いルンゼを大きくトラバースする。赤岩の稜線は絶壁となって落ち込んでおり、その下までトラバースして行くことになる。稜線に出てヤブ漕ぎしていくと前方にP1が見えだす。P1の基部から5mくらい登ると右にバンドがあり、それをトラバースすると反対側に出る。P1の頂はヤブ漕ぎですぐだ。P1から下りになり、今度はP2が見え出す。ここはスッキリとした岩稜となっていて気持良く登れる。P2の次は記録によるとP2’という小さなピートとなる。この下は絶壁だ。左のルンゼを下ってくる。すぐに急なルンゼとなり懸垂下降でしか降りられない。ここで2時を過ぎていた。
このまま登ってもあとどのくらい時間がかかるか不明だ。日没でビバークの可能性も高い。迷った挙句、中止にして戻ることに決定。バリエーションには、得てしてこういうことが起こる。その辺の判断が重要だ。ここからの下山も大変だ。懸垂下降したりヤブ漕ぎ、ルートファインデングなど行い一般道に到着。そこから丁須ノ頭経由鍵沢下山。途中で真っ暗のなかヘッドランプを灯し、慎重に降りて駐車場に着いたのは18時を過ぎていた。
毎度のことながら、妙義は凄い山だ。1000m位の山には迷路のように尾根が入り組んでいる。その尾根には岩峰があってより複雑さと困難さを倍化させている。甘くみている訳ではないが、一歩間違えると数時間のタイムロスとなり、その結果計画の途中変更を余儀なくされてしまう。
毎度毎度痛感してしまう。今回も赤岩の最後の登路の選択と下降路の確認で2時間も時間ロスをしてしまった。結果メインの西大星には行かれなかった。
でも赤岩を登ることができて大変に良かった。
基本的に計画貫徹が主目的ではなく、皆で知恵を絞ってルートかを探す、ということが本当の目的なのだ。だから迷うということ自体真剣なことであり、楽しいことである。今回それを思い切り実践し、実感できたのが一番の感激だった。
2回目
3回目
2003/1月/上旬
前前回P2までで時間切れになり退却した。
前回も天候悪化で登山口で退却
その後いろんな理由でこの山には、遅れに遅れて年末になってしまった。
今年の冬は関東地方は降雪の連続でどこも積雪が多い。
朝三時に起きて一路妙義を目指した。
この時期、朝っぱらの妙義は異常に寒い。登山口の駐車場に6時過ぎに到着。寒いのと寝不足なので少し仮眠を取る。
支度して7時30に出発。妙義付近は風が冷たく、空はブルーアイスのような色で壊れそうな感じだ。
部分的に凍結した道を登る。しかしここは樹木が少ないためか雪はない。雪がないので楽勝ジャン、などと鼻歌まじりに登っていく。沢沿いの道になると下に見える滝が結氷して凄い形相だ。道沿いに入る枝沢には氷瀑が形成されていてクソ寒さを思い知る。
大滝は半分凍っていた。雪のないのはこのあたりまでで、その後続々と雪が現れ始めた。楽勝モードは一転辛勝モードに変更された。沢沿いの道にはだんだん残雪が増えてきて、稜線は真っ白状態。しかし彼方に見える西大星は日が指して暖かそうだった。
沢からルンゼに変わり道も急になってくると雪も深くなる。この辺りまで踏み跡があって楽だったが、いつのまにか雪上の踏み跡はなくなっていた。
鎖場の鎖は雪に埋まっていてルートが分からずB氏は急斜面を登りすぎて降りられなくなった。ステップを切ってようやく戻る始末。埋まった鎖を掘り起こし雪を払いつつ緊張のトラバースする。
だんだん冬山で雪山になってきてこちらも真剣モードになりつつある。
稜線直下の斜面は急なルンゼであり、そこは氷瀑と化していた。ここはどこを登るんだ状態だ。
ここにて登攀具を付ける。
小滝は完璧に凍っていた。「アイスクライミングをやりに来た訳ではない」と呟く。この滝の右端にある鎖をまた掘り起こし、鎖にカラビナを付けたシュリンゲに自己ビレーを取りつつ鎖を掴んでジリジリと登る。
氷結の小滝を越える。
最後の30mあまりのフェースというかスラブとなる。ここはほとんど鎖が氷の下となっている。上には雪が積もり楽の登れそうだ。しかし登っていくと雪が剥げて下のツルツルの氷が現れ、あやうく滑りそうになる。ここまでアイゼンを付けずに登ってきたが、ここで行き詰まる感じだ。ピッケルで細かく氷を刻みステップを切った。左の雪壁の上に鎖が顔を出しているのでそこ目指してトラバースして鎖を掴んだ。下からB氏が同じコースを登ってくるので正規ルートの鎖を掘り起こして登るように叫ぶ。
鎖は冷たく素手で掴んだら吸い付きそうだ。自己ビレーを取りつつジリジリと登りやっとのことで稜線に出た。
丁度丁須岩の稜線コースを登ってくる人がいた。彼らは丁須岩までのようだ。手が冷たくてイタイとかなんとか話している。
我らは稜線からピークの上に出た。風景は妙義を一望できる。北斜面は雪が残っていて冬の凍った壁を連想でき、殆んど真冬の様相だ。真冬だけど。しかし南面は全く雪はなく早春を思わせる。あまりにも風景の落差がありすぎだ。
時間は12時30分。すでに5時間も経過しているではないの。時間かかり過ぎ、というかこのコースがいかに難しかったかということだ。チクショウ。
登山の道すがらあったトレースは途中で消えていて、多分途中で頂を諦め引き返したのだろう。
休憩も5分程で先を急ぐ。ここで先に進むと言うことは時間的にいうと元に戻って来れないということになる。ピークから赤岩から西大星方面を見ると丁度西大星の手前のキレットが深く切れ落ち、そこから沢沿いにはなだらかな傾斜で下っていた。その沢のなだらかさを見て降りるのは楽だろうと判断した。地図上でも等高線はこみいっていない。そんな訳で時間的にキレットまで行くまでで限界だから、キレットから下降して下山する予定にした。しかし沢は未知の領域だ。
稜線には雪の上に踏み跡は一切ない。多分積雪期は登山者はいないのだろう。雪を踏みしめ慎重に進む。丁須のチムニーの鎖場は懸垂下降することにしていたので躊躇なくザイルを出して下降。ここは短時間で通過。吹き溜まりに足を取られつつ赤岩の基部に到着。ここで時間は13時20分だ。どうも赤岩経由だと時間がかかり過ぎだ。日が短い時期は不可能に近いことを悟ったりする。
赤岩の基部から右にトラバースを始める。前方の岩尾根が間近になるルンゼの手前にてザイルを出す。ここから急斜面を登ることにする。潅木にビレーを取りつつ慎重に登る。急斜面で緊張する。この斜面に潅木が生えてなかったら完璧の登るのは無理だろう。積雪の上に潅木の上部が出ていて滑ること滑ること。ジワジワと登る。20m登り潅木の生い茂るところまで来て一安心。この部分はザイルがないと相当厳しい。
そこから右にトラバースして枝尾根に出た。尾根からは西大星にいたる稜線がよく見える。ここから尾根を登って稜線に出るよりトラバースしてP1の基部に進んだ方が得策だ、と判断する。下り気味にトラバース開始。しかし雪が膝の上から腰のあたりまであり時間が刻々と過ぎていく。
P1の基部に出ると反対から吹く風に煽られる。眼下は一気に切れ落ち吸い込まれそうな景色。P1の登りは潅木から岩壁となり5mほど登ってから右のバンドを進むと反対側に出る。次のP2の岩場には雪が付いていて慎重に登る。ほとんど冬山だ。P2から次の小ピークまでは楽に歩ける。
小ピークから先はスッパリと切れ落ちている。ここは少し戻ったルンゼを下るのだが雪がかなりあって降りる気がしない。
それで意を決してキレット目指して下降することにした。ここで2時過ぎ。
1Pの懸垂で30mほど降りる。しかし潅木が多く懸垂したあとザイルが回収できなくなってしまった。北風をまともに受けつつの登り返しは泣きそうだ。ここで時間を大幅に食う。
周囲を眺めるとP2は巨大なタワーのようだ。頂から一気に切れ落ちていて、反対側は垂直となっている。それを見たら眼が眩みそうになった。しかしなんとかザイルを回収。
ここから西大星は目と鼻の先だ。その姿は何か巨大な寺院を思わせる。その壮麗な姿から、ドビッシーの「沈む寺院」の音楽が聞こえてきそうな雰囲気だ。しかし既に三時半。あたりは夕方の光に変わってきている。
次のピッチはすごく急で下が見えない。途中で行き詰まることのないように下に潅木が生えていそうな場所を選んでザイルを下ろし下降開始。何度もザイルが潅木に引っかかり、それを空中停止状態で解いたりしてなかなか降りられない。北風の中であおられつつ空中停止はつらいノダ。上からはB氏の悲鳴のような叫び声。相当に寒そうだ。
やっとのことで急な雪面に到着。すぐにコールする。B氏もやっとのことで下降。上で待っていて寒くて胴振るいまできたそうだ。
やっとキレットに到着した。しかしすでに4時だ。赤く染まる西大星を目前にまたもや退却だ。チキショウ。「ナンデヤネン」と大阪弁で心で叫ぶ。
下降は向かって右の沢を降りることにする。やや深い雪をかき分け滑り落ちるように下降。夕闇との時間競争だ。
大岩チョックストーン滝ではザイルで懸垂。あとは足が勝手に動いてくれる。日没との競争だ。必死に下降し夕闇前になんとか登山道に出ることができた。とりあえずバンザイ。バンザイ。
一息ついたあと星空の下ゆっくりと下降を続けた。横川が一望できる場所からの尾根の下りは一箇所分かりづらいところがあるので注意が必要だ。
もう早く帰って寝たい。
16:00キレット−17:00登山道−19:20駐車場
日の短い秋から冬の場合鍵沢から赤岩、西大星のコースはかなり無理があるようだ。とくに12月を過ぎると北側は氷結する箇所がでてくる。P2から退却する場合午後2時だと下に着くのが午後6時ころになってしまう。
今回キレットまで至り、そこから沢を下降した。下降した沢は悪い滝はほとんどなく8mのCS滝のみの沢であった。そう考えると次回は下降した沢を登りキレットから西大星を目指すのが得策と考えた。やっと西大星の眼星がついてきた。
あくまでも赤岩からの稜線というコースにこだわってみたい。それに冬期の妙義は困難度がより高くすごくヤリ甲斐があって面白い。充実感はすごい。そんな訳で冬の間に西大星に登りたい。
写真は後日アップ
2003/5/27アップ
4回目 頂に吹く風はいつも特別だ
2002/1/上旬
晴れ mike B氏
駐車場7:25--8:50大滝9:15--9:50二俣--13:10稜線峠13:25--14:45西大星主稜14:50--15:45峠--16:25登山道--17:45駐車場
今回で通算四回目となる。こんなに連チャンで山に通ったのはほとんど稀だ。
前回キレットから沢を下降した。そのルートを今回登る予定にした。だから時間的に相当の短縮ができる。その分西大星の縦走も完全に行えると考えた。 冬以外なら楽勝モードだが、積雪と氷結時期は困難であり、かつ感動的だ。
深夜東京を発ち朝7時前に横川駅に集合。駐車場に向かう。山はかなりの雪景色であった。前回はこのあたりではほとんど雪が見えなかったのに。やや驚きだ。というか前途多難な暗雲がたなびいてきた。
支度して出発。登山口からいきなりの積雪だ。しかし足跡が続いていて歩きやすい。急斜面から尾根を回り込むルートに変わり、鍵沢に入っていく。相変わらず対岸の枝沢には氷瀑が掛かっている。登山道を横切る枝沢にも小さな氷瀑が掛かっている。今日も寒いので氷はバリバリだ。B氏はバイルを持ってきたので盛んにバイルで氷瀑に打ち込んでいた。
ゆるい登りを続けると第二不動滝となる。ここも雪が積もっていて冬らしくなっている。全体に雪山になっていてなんとなくウキウキしてくる。
ここからアイゼンを付ける。滝の横の登山道には部分的に凍っていてアイゼンがないと怖い。
滝上はややゆるやかとなる。しかし積雪は沢沿いのためかより多くなる。沢沿いに登っていくとだんだん急になってきて上部の沢が見え始めた。右には西大星の稜線がみえる。
このまま登ると丁須岩に行ってしまい、例の枝沢を過ぎたのではないかと思い始めた。地図を見るとどうも登りすぎのような気がしてくる。前回の踏み跡もその後に降った大量の雪のお陰で完璧に埋まってしまっているだろう。だから登るルートが判断できないのだ。なにせ前回降りて来たのはすでに真っ暗だったのだから場所の特定は殆んど出来ない。
少し戻ると西大星に突き上げる割と深い枝沢が見えてきた。なんとなくここではないかなと思ったりする。地図を見るが、地図自体2万5千分の1地図ではなく一般の登山地図なので地形的な判断がうまくできない。
まあこの枝沢を登っていけば稜線の何処かへ着く、という気持も手伝って、この枝沢を登ることにした。
出合には8mほどの滝が掛かっていてややカブリ気味で登れそうもない。前回懸垂下降を2回行った記憶がある。その滝の一つなのか記憶が曖昧だ。
この滝は急で登れないのでその一つ右隣の枝沢から巻くことにする。しかしこの沢にも3mの滝があり、そこが氷瀑となっている。B氏は久しぶりのアイスを楽しむかのように登っていった。僕のほうは12本歯アイゼンをフルに活用しピッケル一丁を振り回してなんとか上に登った。その上には5mの氷瀑がある。アイスクライミングをしに来た訳ではないので、この滝は登らず左の枝尾根を登って本来の沢に戻る。
傾斜角度的には前回降りたの枝沢とあまり変わらないような気がするが。積雪は思ったより多くてラッセルなどを含め小滝も迂回して登っていく。しかし段々急になってくるし、ヤブも出てくる。やっぱり違うような気がしてくる。
上を見上げると細い岩峰が針のように立っているのが見え始めた。ここは何処だ、という感じだ。その針峰目指してルンゼを登っていく。雪壁をアイゼンの前歯を使って登るが、上部ツメで行き詰まりそうなので左の枝尾根に移る。枝尾根も刃のように痩せている。急な尾根を登っていくと細い岩峰となる。ここは無理せず左から巻く。先ほどの針峰が右に低く見える。次の岩峰は左から巻く。岩峰と岩峰の鞍部に出ると雪の上に踏み跡らしきものが縦横に着いていて歩きやすい。何の動物だかわからないがその跡を辿れば安全に登れそうだ。
尾根の向かって右側は凄い岩が林立していて恐ろしい感じだ。あまり訳のわからない場所に踏み込みたくない。そんな訳で左側を行くことにする。岩と潅木の境目に踏み跡が続いていてそれを辿ることにする。
地図と風景を確認すると丁須岩が正面より右に見える。大体の場所として、僕らが登った沢は北稜とやや平行に突き上げるもので、上部は西大星の末端の北峰付近だったようだ。また踏み跡は熊の足跡のようだ。熊に合わずに済んでよかった。これからも熊に遭いたくない気持で一杯だ。でも足跡のお陰でラッセルも楽だし安全に登れるし大助かりだった。
明瞭な尾根が稜線に続いている所に着いたのでそこを登る。しかし上はかなり急だ。潅木があっても登れないほど急だ。B氏がトップで登ってみるが、その上は相当ヤバいとのこと。なんだか尾根に大きな穴が開いているとのこと。その上部は大きな岩壁で登攀不能で、途中から懸垂下降で降りて来た。
上にあった大きな穴の写真を写したかと聞いたら、写していないとのこと。多分誰も見たことのない穴ではないかと思う。証拠写真を撮らずにもったいないことをした。
ここから岩壁と潅木の境目に沿って延々と左へトラバースすることになってしまった。上は多分主稜の北端からキレットまでの岩であり、その境目をずっと歩いたのではなかろうか。
熊公の踏み跡をドンドコ辿っていくと視界が開けて赤岩が見えてきた。おまけに太陽も輝いている。ヤッタ。上は稜線のキレットの一端だ。キレットに着いたのは13時10分。沢の出合から3時間あまりも掛かってしまった。疲れた。
B氏は昨日スキーに行ってきて眠いし疲れていると話していた。だからコルに着いたので時間も区切りもいいし、僕が、頂に行くのを止めて降りて帰るのではないかと思っていたようだ。僕も疲れていたがすでに今回で四度目だ。1時過ぎだが、西大星ま目前である。10分ほど休んで登ることにした。
「本当に行くんですか〜」とB氏
「……」僕。
無言のままドンドン登る
この付近は太陽が当たって暑いくらいだ。潅木の中を少し登り右にあるルンゼに入り右端にある岩と岩の割れ目のような窓を目指す。チムニー登りで窓に立つ。成るほど左右は岩の深い切れ込みで窓と言う言葉はヒッタリだ。剣の三ノ窓を思い出す。
反対側は北側なので雪がかなり付いている。ここは下まで3mあまりを慎重に懸垂下降で降りる。それから雪の付いた急なルンゼをアイゼンの出歯を利かして南峰と主峰の鞍部まで登る。
鞍部から少しで展望の良い場所に出た。ここから浅間山がキレイに見える。素晴らしく視界が広がっている場所だ。下から風が垂直に吹き上げてくる。
ここから岩稜を登っていくと主峰の下に出た。
振り替えると南峰から赤岩、烏帽子岩のスカイラインが凄い景色で迫ってくる。まるでスイスアルプスの岩稜を彷彿とさせるような眺めだ。こんなところに冬に来るもんじゃないな、と思わず思ってしまった。
テラスから主峰への岩壁はかなりの悪さだ。10mほどのフェースだが出だしの4mで行き詰まる。やっと降りて、交代してB氏に登ってもらう。5m上が特に悪くてホールドはボロボロ崩れるし、ハーケンも打つことが出来ないとのこと。見ているだけでこちらも緊張して、手から汗が出てくる。
上に見える小さな突き出た岩にシュリンゲを掛けランニングを取ったあと、意を決して右に回りこむように登り視界から消えた。しばらくしてビレー解除の声。こちらもホッと胸をなでおろした。
最初は浅くて広いクラックを突き出た岩を頼りに3mほど登る。ここですでにかなり急だ。その上は細かいホールドと壊れそうな大きなホールドがある。細かいデコボコに足を乗せ1m登るとシュリンゲを掛けた突起がある。ここから右へトラバースするのだが、スタンスが細かい上にホールドも細かいので、凄い緊張感だ。クライミングシューズの世界だ〜。その上は傾斜も落ちて潅木に入って終了。
ここはすでに主峰の一部だ。
美しい場所、困難な場所には
常にある種の風が吹いている。
いつもそう思う。
四度目にして辿り付いた場所は
広い広い空と360度の展望が広がっていた。
すでに14時50分である。このまま縦走を続ける時間はない。下に見える北側の峰と岩峰には魅力的ではある。しかしその辺はまだ冷静さが残っていて、このまま戻る判断をした。
後ろ髪を引かれる想いで、頂から懸垂下降する。
この10mあまりの岩場の登攀は登山靴とアイゼンでは困難すぎる。4級以上であり、かつ岩がモロイのだ。登るのであれば、やはりクライミングシューズで登るしかないだろう。
またここから左をルートを探しつつトラバースすれは潅木帯に出て、そこからはわりと楽に登れるかもしれない。多分ルート的にはそうなるだろう。
ルンゼを下り、窓から再度懸垂下降。その先は一挙に安全になりドッと安心感が湧き上がってくる。キレット末端から前回下った沢に合流する枝沢を下降することにする。雪が多いが見た目より楽に降りられるし滝も少なく懸垂下降ぜずに迅速に降りることができる。最後の滝も巻いて下降でき、登山道に合流することができた。この場所は朝僕らが引き返した場所から100mほど先にあった。
あとは登山道を休憩もとらず下降し続け、日没前に下に降り立った。
今回念願の西大星に登ることができた。
通算すると四回目であり、実際に登ったのは三度目となる。
1回目は秋であり、あとは2回とも冬山状態のなか登ったことになる。この山に割りと楽に登るのなら春か秋が一番いいだろう。
なんでこんなに何度も行くことになったかというと、やはり赤岩経由で登りたいというこだわりの気持があったからだ。
1回目のエポックは赤岩
2回目は稜線直下の氷と雪の壁、P2の下降
3回目が西大星
と毎回強烈に刺激的な部分があってどれもかなり楽しめた。
とりあえず西大星の頂に立てた。
一応一区切りつけることができてよかった。
でもこれで終わりではなく、枝尾根にも面白いものがあり、また北峰に続く尾根にも行ってみたい。
最後に一緒に行った夫々の仲間に礼を言いたい。
「感謝」
おわり