相馬岳北稜
ロングジェットコースター
![]() 相馬岳コースから見た相馬岳北稜。北稜はピークの裏側に続く |
過去の記録では北稜の山行に10時間あまり要している。またP12の登りは事前にここに来てルート工作がなされている。それほど悪いということだろう。
前回妙義富士から尾根を登り、北稜の分岐経由、大沢下降をして北稜における大沢下降のエスケイプルートの確認をした。
装備に関しても、万一に備えてジャンピングセットとビバーク用のツェルトと燃焼用具も持っていくことにした。
装備一覧
9mm45m×1本
ヘルメット 安全ベルト ハンマー ハーケン4本 シュリンゲ13本
カラビナ各10個 ジャンピング ボルト二個
ツェルト 登攀用に登攀靴
6月吉日
朝2時半に起床。東京を立ち妙義へ。北稜の登り口は妙義湖手前の一番尾根が出っ張ったところと判断し、路肩に車を停めた。
ヤブ漕ぎも最終的に尾根に集約される。適当な踏み跡を探して登りはじめる。ヤブ気味の登りはすぐにしっかりした道となる。しかし急登だ。樹林から岩稜へと変わり前方にヤジリのような岩峰が見え出す。あれがP1か。
岩稜にかわり稜線伝いに登っていくとP1の頂についた。ヤブ気味の道を稜線上を歩いたり左から歩いたりして進む。岩峰が連続して続いているためどれがP2、P3か分からない。どの峰も頂直下まで山腹を巻き、数十mの登りで頂に立てる。
今日は夏並みに暑くて日向にいるのが辛く感じる。なので頂も数分で降りる。どれも似たような展望だ。P3を通過するとわりと広い尾根となる。
前方の山が迫ってきたころヤブとなり踏み跡を選んで尾根の右側を登っていく。なんだか壁みたいなのが上に見える。しかし山腹を巻いて歩いているが困難さはない。壁を右から迂回して尾根にでた。振り返ると東側に尾根が合流しているのが見える。データだとP4は右が岩壁なので、左から巻いてから尾根に出てルンゼを登って頂に立つらしい。しかし僕らは右の岩壁の弱点を知らぬ間に通過しなんなく稜線に出たようだ。一番無理のないコースだが、うまく説明できない。赤テープは極力使用せずに登る。なんと言ってもルートファインデングが重要だ。
稜線をそのまま登っていくとP5に出た。展望は良くて、反対側はP6の岩峰で間には深いキレットがズバッと切れ落ちている。かなり深い感じで、見ているだけで気持ち悪くなってオエッとなった。
ここは稜線を少しもどって右にある急な枝尾根を慎重におり、山腹を巻いてキレットの下まで行く。チムニーのような、やたらと深くすごくズバッと鋭利な感じだ。P6は茶筒に見えなくはない。キレットから右の10mほどの凹角を登る。3級くらいだがザイルはいらないだろう。この辺の岩峰の異様さに神経が引きつっているような感じだ。休む気にならない。
P6に出ると向こうもキレットになっている。ここは20メートル余りの懸垂で降りる。キレットの真下ではなくやや右寄りに降りた。キレットには大岩がチョックストンのように挟まっていた。真下だとP7の正面のフエースを登ることになるだろう。僕等は少し右におりて7メートルほどのドロの詰まった凹角を登ることにした。
登った枝尾根から下に赤テープがあったので降りていくとルンゼの中に入ってしまった。下のルンゼに懸垂下降するようだ。雰囲気としてルンゼの上部は悪そうな雰囲気がする。逡巡したあと結局無理して戻ることにした。イチイチ赤いテープに振り回されることはない。赤テープを巻いた人にしてからがその道が確実かどうかも分からないだろうから。
さきほど登りきった場所から正面の踏み跡のない急なヤブの斜面をヒイヒイ登ると、P7のに続く稜線に出た。いまの僕等のルート選びはルート的に一番安全なものだと思った。しかしルートファインデングは大変だぞ。P7の頂もヤブが濃い感じなので、パスしてヤブ道を行く。
P8は稜線から右に飛び出している。こちらは必死なにって登っている訳で、P8に登る余裕もない。P8付近もキレットになっていて、ここも右から下降し巻くようにして通過する。稜線から振り返るとP6、7、8がケンザンよろしく林立している。ヒエーッ。
その先は痩せた尾根となる。まあ迷うことはないけど。このあたりは楽に通過した。
P11に立つとP12が間近に迫る。やってきました核心部。P12は三角錐のような岩の峰でどこにも弱点はなさそう。左右は切れ落ち、ルンゼは急峻。
納得しました、要するに中央突破しかないのね。
過去の20年前の記録では事前にP12の岩壁にルート工作して、その後登ったらしい。要するに事前工作をしなければならないほど悪いということだな。だからボルトも持ってきた訳だけど。
潅木が点在する岩場を20mやおら懸垂下降する。見上げると幅1mもないリッジが急角度で上に続いている。潅木があるのでランニングビレーは取れそうだ。自宅で慎重な事前装備チェックをして、登攀靴もボルトも持ってきてて良かった。
登攀靴に履き替え、ジャンピングとボルトを用意し、「落ちたら頼むゾ」と言って登り始める。
出だしは土と岩が混じった小潅木のリッジを10mほど登る。その上が核心部のハング気味の岩だ。古いのと新しいハーケンが一本づつ打たれていた。古いハーケンは風化でボロボロ。掴むと微妙に動く。これはダメ。新しいハーケンにシュリンゲを通し、いろいろやってみる。
結局シュリンゲに乗るしかない。その上は太めの根っこが途中でプッツリと切れている。根っこを掴んで引っ張るとプッと切れてしまった。その上の小潅木まで踏ん切りが付かない。逡巡後、凹みにハーケンを打つことにした。しかしうまく入らず、変な曲がり方をして入ってしまった。しかしまあ人の体重くらいはモツだろう。
シュリンゲに乗り、上のハーケンのシュリンゲを掴んでジワジワと体重を上げ、そおっと上の潅木をつかんで静かに2m登った。もう安心かと思ったら、その上は垂直にちかい土の壁。まだ緊張は解けなくて、セミよろしく固まったまま思案する。最終的にブッシュにランニングビレーを取り、息を吸い込んで1mある上の潅木に飛びつくように登った。思わずヤッター。展望はP11方面が異様な風景に広がる。
友人が登り切って、ここで1時間20分もかかってしまった。
しかし核心部は過ぎた。ドッと力が抜ける。しかし道は長いし、緊張は解けず、先を急ぐ。
P12の下りは左から巻くようにして降り、途中から20mの懸垂をする。そのまま稜線の山腹を巻くように岩稜のコンタクトを進む。ナイフリッジ手前で稜線に出て馬の背を越えて降りると下はトンネルになっていた。これが仙人窟のようだ。
ここが分岐点である。右に下れば妙義湖に至る。反対側に岩小屋のような穴があった。雨露は凌げそうだ。泊りがけで来てみたい気もする。
ここで今日初めての大休止。核心部は終わった。引きつった神経はまだ緊張がとれない。それでも茶も沸かして飲んだ。
この先も岩峰が続くが懸垂とかしないでいいぶん楽だ。鋏岩と呼ばれる巨大なカニの鋏のようなところは左を巻く。その先の幅広い岩峰は右から巻くと、ヤブ尾根となる。そのまま登っていくと数日前に休憩した妙義富士への分岐に到着した。
ここは少し広い感じだ。その先はまた痩せた尾根となる。岩の稜線は左からトラバースしていく。途中、大沢に降りるポイント通過。今回は相馬岳を目指す。岩の稜線を慎重に通過。その先は広い尾根となる。左に大沢の源頭を見る。ここは探せば水が見つかりそうだ。尾根は急な登りとなり相馬岳に到着した。
北稜は岩峰が連綿と続く。しかしヤブが多いためその山の実態像は把握しずらい。すごい壁であってもカメラに映すとヤブが邪魔してその迫力が半減してししまう。実際にその場で見て見ないとその凄さがわからないだろう。
また急峻な岩峰はヤブや潅木が生い茂り、そのお陰で岩場を登ることができることになる。もしヤブとか潅木がなかったら岩が脆い分、登ることは不可能だろう。
すごい岩峰でもよおく探ると割りと楽に登れるルートを見つけることができる。この北稜の登りは当人のルートファインデングにかかっていると言える。それが一番面白いともいえるだろう。
また赤テープはごく僅かにあるが、先人も赤テープを巻くルートが正確かどうか疑問が残る。実際に赤テープどおりに登るよりも楽なルートを選択できた箇所があった。
赤テープはあくまでも参考にして自分の判断で行動するのが一番納得がいくだろう。
タイム6時出発−6:15岩峰−P1峰7:00−P5峰8:15−8:30キレット−P7峰9:35−10:45P12下キレット−P12峰12:10−13:25分岐点14:00−14:30妙義富士分岐−15:15相馬岳15:30−17:20国民宿舎
おわり