他人に迷惑をかけてしまう行為に責任を取る
間違ったコースに赤テープを巻き、後日それを撤去しに行く
2012/6/27
ある沢に2人で行った
ほとんど知られていない沢であり、巻き道も不明確だったがなんとか稜線にたどり着いた。
下山路はいわゆるバリエーション的な道の下降となった。
バリエーション的な山道というのは登りは別れ道があったり不明確な道であっても、だいたい上に向かっていけば頂や稜線にたどりつきやすい。まず枝尾根は上に向かって集約されていくのでよほどのことがないかぎり間違うことはない。
しかしこと下山となると話が違ってくる。
尾根は拡散していく。安易に下ると間違った場合その倍以上の労力と時間を要して元の場所に戻らねばならない。また分岐の確認も最大限に注意を払わないと危険だ。
ちょっとした分岐の通過など数秒というものでありちょっとぼんやりしていたらあっと言う間に通り過ぎてしまう、という激ヤバなものなのだ。
だから人の行き来が少ない山奥の道の下山にあたってはつねに気を抜かないで地図の確認を忘れずにすることが大切だ。
今回は下山にあたってアクシデントを起こしたわけでもないが、自分のした行為で人に迷惑をかけてしまうという事例とその後の話など書いてみたい。
今回の下山路はかなり山奥で、道はやや不明確で急坂という内容だ。なので慎重を期して下山を始めた。万一間違えるとその分時間がかかり帰京がかなり遅くなるからだ。
枝尾根があれば地図で確認しつつという行動を繰り返す。
ある区間では途中からやや不明な箇所に出たので、万一を考えて一旦戻って正規ルートであることを確認をした。
下山路1/3あたり来たころにかなり不明な分岐となった枝尾根が分岐していてどちらもたよりない尾根幅と急斜面。思案していたところ友人が右方向に黄色テープのあるのを発見した。
とりあえず全面信用はしないでそちらに降りて行くとどうやらメインの尾根に間違いないとこが分かった。テープの信頼度をこの時点で信用したようだ。さらに下山するとまたしても細い尾根の分岐。右はややなだらかな尾根に踏み跡みたいな雰囲気をかもしだし、こちらにおいてとさそっているようにも思える。
左はといえば急斜面に潅木が生えていかにも、違うぞ的な様相だ。外見では分からないのでとりあえず急斜面の潅木のある方に下って偵察してみることにした。少し下りて行くと上の方で友人が「赤いテープが右にある」とのこと。偵察を中断してそちらに上がる。みるとやや古ぼけた赤いテープが巻かれていた。
さきほどの黄色テープでの信頼度が増しているためか、ここで完全に単純に信頼してしまった。さらにそこで、その古いテープのさらに上に新しい赤テープをどこから見てもわかるように巻いた。これでだれも見落としはないだろうと思った。
意気揚々とその尾根の下山開始、足取り軽く下りて行くと途中から急降下となり沢音も近づいてきた。尾根の距離とか角度的にこんなものなのかなと思いつつ地図を広げる。
この時点で地図を広げても、この尾根が正規ルートだと疑っていないので、地図の地形を自分の都合のいいように解釈してしまう。間違っているかもと思ったとしても赤テープの存在で相当な間違い地形でないかぎり、強引解釈は曲げることはできないだろう。
また万一間違っている場合の不安を取り除きたいという欲求によってさらに救いがたいような信用度合が増してしまう。これは詐欺にあっているような感覚だな。
そんな訳でズルズルと奈落の底へ引き込まれるように下りていく。間違いの不安度合は正比例してドンドコ大きくなる。
そして最後は沢の滝のある一角に飛び出した。
上の分岐で間違えて赤テープをつけた先人は、ごていねいにも赤テープを巻いていた。この先はガケだぞ。
沢登りをしているので常にザイルはもっているし、巻き道の不明確な所なども探しつつ巻いたりはしている。なのでこの程度のガケなら問題なく下りられる。
友人が先行して沢に降りた。そこから沢の滝などもあり下山方向左にそって滝を迂回しつつ下降。一箇所かなり脆い箇所がありそこは慎重を期して懸垂下降した。
そこからは問題なく沢を下降し無事に林道のある所へ下山。若干は時間がかかったがとりあえず車まで戻り帰京した。
しかし道路を走っている最中、あの赤テープのことを考えていた。
尾根上の僕らか巻いた赤テープは誰でも発見可能だ。もし稜線からあの尾根を下りた場合、僕らの付けた赤テープによって何の疑いも無くあの枝尾根を下りてしまうかもしれない。
沢屋ならいざしらず、普通の登山者が懸垂用のザイルなんぞ常備しているなんてことはない。
もしあの枝尾根を下ってしまうと最後は沢に出てしまう。そこからのルートはかなりヤバイ岩場の巻きと最後は脆いガケを下りることになる。懸垂下降が出来ない分かなり危険な行動になってしまう。このような状態の解決策はなんだろう。
最善の策は再度あの尾根に上がりあの分岐の僕らが間違って巻いた赤テープを取り去ることだろう。
他の解決方法など思案しつつ帰京。寝床に入ってもそのことが頭からはなれずなかなか眠れなかった。
僕らが巻いた所にあった前の赤テープを付けた先人はそのテープを取り去ることもなくほったらかしにしたから僕らが間違えてしまった訳だ。
悪いのは最初にあそこに赤テープを巻き間違ったコースに誘導した先人だろう。
などと他人のセイにしはじめる自分にすごい嫌悪感とか失望感など感じて落ち込む。
しかしそんなことを思ってみても自分らの付けた赤テープはなくなることはない。寝つきの悪い数日を過ごした。
最終的にあの赤いテープは自ら取り去るのが山屋としての自分の責任だと結論を出した。
翌週の日曜日1人であの山のあの尾根に向かうことにした。
主目的は山登りをすることではなく、山に巻いてきた赤テープを取り去ること、という行動形態は今までの山人生の中で始めてのことだ。
山奥なので人など滅多に通らないし遭わない。だからこそ万一道を間違えて迷ってしまったら大変なことになるのだ。
前回の林道の終点に到着し稜線に上がる尾根の作業道を探して登り始める。
下から見ると時々赤ペンキや赤テープなどもあり分かりやすいが、上から下を見るとなんの印もみあたらないし自分が登っている道が何処にあるのかさえもわからないくらいだ。
たまに見かける赤ペンキや赤テープは完全に登る人のためのもので山を下る人のためには完璧に視覚に入ってこない。
今回は山を下る人のために上からでも見やすいところに赤テープを時々巻きながら登った。えらく急な尾根を登り僕らが間違えたと思しき分岐が遠望された。
登ってみると正規コースはほとんどガケのような斜面を登り、潅木帯はかき分けて登る難コースであった。その上に出たときまさに例の分岐の場所だった。大汗をかいて登ってきたので一休みしたあと、僕らがまいた赤いテープと先人が巻いた古いテープを引っぺがした。
正規コースはと見れば潅木の急斜面だ。よくよく見ると古いテープが何箇所が巻いてある。しかしこれでは探すのが大変だ。ということで見やすいところに正規コースのための赤テープを巻いた。これでだれも間違うことなく尾根を下りられるだろう。
今日は稜線に行く気もしない。ぼんやり周囲の景色をみて昼飯を食べた。
そのあと正規コースの尾根をのんびり下りて林道の車に戻った。
なにやら胸のつかえがようやく取れた。
人の巻いた赤テープでえらい目にあった。なお悪いのはそこにまた見やすいように自分で新しい赤テープを巻き加えたことだ。あやうく自分の二の舞を他の人達にさせてしまうところだった。
今回自分のとった行動が、ひとつ間違えれば大問題を誘発させてしまうということを身をもって体験した。そして身をもって責任をとった。