「奇跡は二度起きる」 ダイタクリーヴァ


種牡馬フジキセキの壁

 振り返れば、*サンデーサイレンス Sunday Silence の初年度産駒には、実に多くの活躍馬が轡を並べていたものです。
 牡馬にジェニュイン、タヤスツヨシ、マーベラスサンデー、キングオブダイヤ、サマーサスピション、サンデーウェル、サンデーブランチ、牝馬にダンスパートナー、マジックキス、プライムステージ、サイレントハピネス、ブライトサンディー、などなど。
 でも、その中で一番印象の強かった馬を問われれば、答えにフジキセキの名を挙げる人は多いのでしょう。
 それだけ彼のパフォーマンスは抜けたものでしたし(騎手の元値で補正した場合モナー´∀`; )、「旧3歳末」ではなく「弥生賞まで来ておきながら」リタイアしたその去り際は、過剰なほど劇的でした。

 ただ、その引退劇には「大爆発したSS、その後継種牡馬が1年早く手に入る」ことを欲する生産者側の思惑が見え隠れしていたことも、また否定できません。
 現に、フジキセキの初年度種付け頭数は、そのリーズナブルさもあいまって、父や*ジェイドロバリー Jade Robbery の142頭、*トニービン Tony Bin の138頭に次いで4位タイの118頭に上りました(産駒は89頭)が、これでも奪い合い、過当競争の状態にあったと言います。
 そして準備の整った翌年は、前年の勢いもあったか、何と父SSの183頭に比肩する第2位、171頭への種付けをこなしたのです。

 このように、種牡馬フジキセキには、常に「父の七光り」と「自身の幻の栄光」という、二重の幻想的付加価値がついて回っていました。その意味では、オグリキャップやルドルフ親子よりも、はるかにハイセイコーに似たケースだと言えるでしょう。
 そして、目の眩むような付加価値の陰で、フジキセキ自らの血統に対する認識は鈍磨してゆかざるを得ませんでした。
 ハイセイコーの場合は、父*チャイナロック China Rock の Bay Ronald 的方向性を活かし、かつ近交に構え、さらには自身よりも次世代以降で有効になる*カリム Karim(ナスルーラ Nasrullah と3/4同血)を含んでいたことが、繁殖的成功への鍵となりましたが、皮肉なことにフジキセキの血統的特性は、ほとんどそれと正反対だったのです。

フジキセキ 1992 牡 青鹿 / FNo. 22-d / Hail to Reason 系
*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 黒鹿
Halo
1969 黒鹿
Hail to Reason
1958 黒鹿
Turn-to
1951 鹿
Royal Charger Nearco
Source Sucree Admiral Drake
Nothirdchance
1948 鹿
Blue Swords Blue Larkspur
Galla Colors Sir Gallahad
Cosmah
1953 鹿
Cosmic Bomb
1944 黒鹿
Pharamond Phalaris
Banish Fear Blue Larkspur
Almahmoud
1947
Mahmoud Blenheim
Arbitrator Peace Chance
Wishing Well
1975 黒鹿
Understanding
1963
Promised Land
1954
Palestinian Sun Again
Mahmoudess Mahmoud
Pretty Ways
1953 黒鹿
Stymie Equestrian
Pretty Jo Bull Lea
Mountain Flower
1964 鹿
Montparnasse
1956 黒鹿
Gulf Stream Hyperion
Mignon Fox Cub
Edelweiss
1959 鹿
Hillary Khaled
Dowager Free France
*ミルレーサー
Millracer
1983 鹿
Le Fabuleux
1961 鹿
Wild Risk
1940 鹿
Rialto
1923
Rabelais St. Simon
La Grelee Helicon
Wild Violet
1935 鹿
Blandford Swynford
Wood Violet Ksar
Anguar
1950 鹿
Verso
1940 鹿
Pinceau Alcantara
Variete La Farina
La Rochelle
1945 黒鹿
Easton Dark Legend
Sans Tares Sind
Marston's Mill
1975 黒鹿
In Reality
1964 鹿
Intentionally
1956
Intent War Relic
My Recipe Discovery
My Dear Girl
1957
Rough'n Tumble Free for All
Iltis War Relic
Millicent
1969 鹿
Cornish Prince
1962 黒鹿
Bold Ruler Nasrullah
Teleran Eight Thirty
Milan Mill
1962 鹿
Princequillo Prince Rose
Virginia Water Count Fleet
Red Ray
SireLine for Windows Ver1.50 - Build 547

 実際には、画一的な定番配合(※)が目立つ*サンデーサイレンス産駒群の中にあって、非常に珍しい Khaled=Red Ray:6x6 〜 Hyperion 中心の血統構成を持ち、フランス血統の母父ルファビュルー Le Fabuleux を迎えてほとんど6代アウトブリードに構えた姿こそ、フジキセキの正体に他なりません。
※ *サンデーサイレンスの産駒では、一般にアルマームード Almahmoud 〜 マームード Mahmoud を中心として、母方の Nasrullah も取り込み、ハイペリオン Hyperion × サンインロー Son-in-Law (ニホンピロウイナーの項を参照)の援護を得ながら、ブルドッグ Bull Dog=サーギャラハド Sir Gallahad の全兄弟やマンノウォー Man o'War やブルーラークスパー Blue Larkspur といった米血を活かして組み立てるのがセオリーですね。
 例外はタヤスツヨシ、サイレンススズカなど。チョウカイリョウガの項でも少し解説しました。
 フジキセキはこの独特な血統構成によって、多士済々のSS初年度産駒中、頭抜けた力を発揮したわけですが、種牡馬入りした後は、この特異性と完成度が却って足を引っ張りました。産駒は勝ち上がり率こそ悪くないものの、そのほとんどが、勝ち星を積み上げることはできずに苦しんでいます。
 一般に、インブリード配合の競走馬とアウトブリード配合の競走馬を比べると、後者の方が「健全な体質を持ち、長期に渡って安定した成績を残しやすい」ことはよく知られています。しかしこれらが一旦繁殖入りすると、立場はほとんど逆転し、資質を固定しえた前者の方が比較的「遺伝力(heritability)が強い=アテになる」、育種学の基礎的知見でありながら、この考え方は案外共有されていないようです。
 つまり、自身 Mahmoud の近交馬であり、様々なタイプの牝馬に付けてもそれなりの血統構成を確保できる父と違って、フジキセキは極端なアウトブリード馬であるため遺伝力も確実さを欠く上、欧/米血統の鮮やかすぎる対比も次代における配合を一層難しくしているのです。
 彼が健全な配合であるほど、産駒は確たる資質を持ちにくい ―― このパラドクスこそが、フジキセキがなかなか活躍馬を出せなかった理由であると考えられます。

 しかるに、この限界を打ち破って登場したダイタクリーヴァは、こうしたフジキセキの難しさを母系に施された仕掛けの力を借りてアクロバティックに解決した、非常に興味深い血統の持ち主です。
 その意味では、ダイタクリーヴァの配合は入念な準備があったればこその「特殊解」であって、フジキセキ産駒一般(※)と同じ地平では扱えません。しかしその配合に表れている方法論と精神を学ぶことは、血統と馬産を考える上で、決して小さくない意義を持っている、鞘次郎はそう考えます。
※ フジキセキへの各種アプローチについては、附記を参照のこと。

エキセントリック・ファミリー

ダイタクリーヴァ 1997 牡 栗 / FNo. 8-g / Hail to Reason 系
フジキセキ
1992 青鹿
*サンデー
サイレンス
Sunday Silence
1986 黒鹿
Halo
1969 黒鹿
Hail to Reason
1958 黒鹿
Turn-to Royal Charger
Nothirdchance Blue Swords
Cosmah
1953 鹿
Cosmic Bomb Pharamond
Almahmoud Mahmoud
Wishing Well
1975 黒鹿
Understanding
1963
Promised Land Palestinian
Pretty Ways Stymie
Mountain Flower
1964 鹿
Montparnasse Gulf Stream
Edelweiss Hillary
*ミルレーサー
Millracer
1983 鹿
Le Fabuleux
1961 鹿
Wild Risk
1940 鹿
Rialto Rabelais
Wild Violet Blandford
Anguar
1950 鹿
Verso Pinceau
La Rochelle Easton
Marston's Mill
1975 黒鹿
In Reality
1964 鹿
Intentionally Intent
My Dear Girl Rough'n Tumble
Millicent
1969 鹿
Cornish Prince Bold Ruler
Milan Mill Princequillo
スプリング
ネヴァー
1992
サクラユタカオー
1982
*テスコボーイ
Tesco Boy
1963 黒鹿
Princely Gift
1951 鹿
Nasrullah Nearco
Blue Gem Blue Peter
Suncourt
1952 黒鹿
Hyperion Gainsborough
Inquisition Dastur
アンジェリカ
1970 黒鹿
*ネヴァービート
Never Beat
1960 栃栗
Never Say Die Nasrullah
Bride Elect Big Game
スターハイネス
1964 鹿
*ユアハイネス
Your Highness
Chamossaire
スターロッチ *ハロウェー
Harroway
ネヴァーイチバン
1971 黒鹿
*ネヴァービート
Never Beat
1960 栃栗
Never Say Die
1951
Nasrullah Nearco
Singing Grass War Admiral
Bride Elect
1952 鹿
Big Game Bahram
Netherton Maid Nearco
ミスナンバ
イチバン
1959 黒鹿
*ハロウェー
Harroway
1940 黒鹿
Fairway Phalaris
Rosy Legend Dark Legend
*スタイルパッチ
Style Patch
1950 鹿
Dogpatch Bull Dog
Style Leader Cyclops
SireLine for Windows Ver1.50 - Build 547 / 9代クロス血統表はこちら

 ご覧の通り、ダイタクリーヴァは(こう言って許されるなら)自身6代アウトブリード配合。しかしその母スプリングネヴァーには、*エルコンドルパサーやその母*サドラーズギャルも真っ青の大胆不敵なインブリードが施されています。

 その過程を理解するために、ここで少し迂回し、牝系の歴史を手繰ってみましょう。
 ブルリー Bull Lea の全弟ドッグパッチ Dogpatch を父に持ち、1952年に輸入された*スタイルパッチの牝系は、暴走二冠馬
カブラヤオー&エリザベス女王杯勝馬ミスカブラヤの全兄妹や、サルノキング(1979 牡 鹿 by *テュデナム ― 弥生賞、共同通信杯4歳S。ハギノカムイオーとの対戦で逆噴射など、「名馬」というより個性的な「異端児」ばかりを輩出することで知られています。
 そして当馬の祖母、カブラヤオーから1歳上の叔母にあたるネヴァーイチバン(…競走馬らしからぬ名前やね (^^;;)には、*ハロウェーに*ネヴァービートと、さらに母系向きの「良血」種牡馬が重ねられていました。
 さて、血統に理解がある人なら、*ハロウェーと*ネヴァービートの名を聞けば、サクラユタカオー(*テスコボーイ×*ネヴァービート×*ユアハイネス×*ハロウェー牝馬(=スターロッチ))が頭に浮かぶハズ。そういうわけで、ネヴァーイチバンには当然*テスコボーイも交配され、スイートラブ(1982 牝 黒鹿 ― 北九州短距離S 他7勝、セントウルS-3着。産駒に毎日杯-3着のダイタクサージャンなど)を出しています。
 *ハロウェーと*ネヴァービートのニックは、主にRosy Legend と Solario の間の相似性によって根拠付けられます(相加遺伝的にも、伴性遺伝的にも)。それらの中でも、オグリキャップ&ローマンの母ホワイトナルビーは、さらに巧妙な(自身ダブルコピーと思しき)累代構成をとっていました。
 しかしネヴァーイチバンが産んだ最高傑作は、ビゼンニシキとの交配によるダイタクヘリオス(1987 牡 黒鹿 ― マイルCS連覇、高松宮杯、毎日王冠、マイラーズC連覇、クリスタルC。阪神3歳S、安田記念など2着)の方でした。この辺が望田潤氏@競馬通信社をして、「ミスナンバイチバンは一発屋異系サイアー救済牝系」なぁんて書かせたものでしょうか。
 ダイタクヘリオス、この馬もまた、思い起こせば一筋縄では行かぬ曲者でした。マイルCSを連覇し、中距離で度々レコード逃げ切りを演じているように、勝鞍を見る限りは一流に違いないのですが、その10勝はいずれも2番人気以下で記録されています。加えて3コーナーから早くもスパート、4コーナーでセイフティリードを作ってそのまま逃げ込む、という独特のトリッキーな戦法も、高松宮杯でダイイチルビーを破り、華麗なる一族悲願の母娘三代宮杯制覇を妨害した点でも、およそ「憎まれっ子世にはばかる」を地で行く馬だったと言えましょう。

 その後、この牝系&ダイタク軍団としては、ネヴァーイチバンの半妹スタイルリバーからダイタクテイオー(1992 牡 鹿 by ニッポーテイオー ― 毎日杯、アーリントンC-2着)が出ています。この馬も多少スピードのある配合ではありました。が、他ならぬフジキセキのリタイヤを受けて、皐月賞で1番人気に祭り上げられるに至っては、常識で考えて行き過ぎ、配合的にも役不足でした。A(^^;;


狂気の実験

 鞘次郎は、ちょうどダイタクヘリオスのマイルCS優勝の時の『ギャロップ』だったかで、関係者の方が「こいつの下にユタカオーの牝駒(=後のスプリングネヴァー)がいて…」みたいな話をされていたのを読んで、*ネヴァービート:3x2、*ハロウェー:5x3、Nasrullah:4*5x4 と、その余りの高圧配合ぶりに驚き呆れた憶えがあります。
 そのスプリングネヴァーは、案の定、3戦未勝利と競走馬としては芽が出ませんでした。が、しかし繁殖入りしてすぐに、ダイタクリーヴァという大物を(しかも種牡馬として難しいフジキセキとの間に!)出すことになったのです。

 この成功は決して偶然だけが招いたものではありません。なぜなら、最近明らかになった〈伴性遺伝〉の仕組みを考え入れてみると、このような相似相加的+伴性遺伝的インブリードこそクリティカルに有効な方法であることがわかるからです(強度のインブリードの常として、お世辞にもリスクが低いとは言えませんが)。
 ひょっとすると、その「確信犯的犯行」の陰には、X染色体を巡る知識、ないしは、近親である名繁殖カブラヤの分析が踏まえられているのかもしれません。

 てなわけで、本項の要としまして、さらにスプリングネヴァーの血統表を掘り下げてみたいと思います。
 彼女の血統表は上表下半分に見る通りですが、その内、伴性遺伝に関わるX染色体径路(ピンクの部分)上の、牝馬だけを取り出して並べ直したのが下表、名付けて〈5代伴性血縁血統表〉です(詳しくは別項「〈伴性血縁血統表〉で読む名牝たち」を参照)。

スプリングネヴァー 1992 牝 栗 ― ダイタクリーヴァの母
アンジェリカ
1970 黒鹿
Bride Elect
1952 鹿
Myrobella
1930
Scotch Gift Siphonia
Gondolette
Dolabella Merry Gal
Belle Dame
Netherton Maid
1944 鹿
Nogara Hors Concours
Carnip
Phase Resplendent
Lost Soul
スターハイネス
1964 鹿
Lady Grand
1943
Sun Worship Sierra
Doctrine
Begum Blanche
Endowment
スターロッチ
1957 鹿
Rosy Legend Golden Legend
Rosy Cheeks
コロナ 星友
秀節
ネヴァー
イチバン
1971 黒鹿
Bride Elect
1952 鹿
Myrobella
1930
Scotch Gift Siphonia
Maund
Dolabella Merry Gal
Gondolette
Netherton Maid
1944 鹿
Nogara Hors Concours
Carnip
Phase Resplendent
Lost Soul
ミスナンバ
イチバン
1951 黒鹿
Rosy Legend
1931 黒鹿
Golden Legend Suicide
St. Lucre
Rosy Cheeks Justitia
Purity
スタイルパッチ
1950 鹿
Rosy Leaves Cerito
Colonial
Style Leader Daphne
Minuet
SireLine 改メ HeartLine

 ここに明らかなように、スプリングネヴァーは「ただ無闇に Fairway=Pharos 〜 Nearco 〜 Nasrullah を重ねた」だけの血統にあらず、X染色体の径路上で2組の強いクロスを持っています。しかもそれがまた、よりにもよって影響力の強い名牝なのですね、う〜ん。

 奥の方にあるローズィレジェンド Rosy Legend については、彼女自身の項を参照していただくとして、ここではもう一方、ブライドエレクト Bride Elect(1952 牝 鹿 by Big Game ― クイーンメアリーS、チェヴァリーパークS2着)にも注目しましょう。

 偉大なフィリーサイアー、ビッグゲイム Big Game の産駒である彼女は、自身3歳時にすぐれた能力を発揮し、後に繁殖牝馬としても秀でた成績を残しました。産駒はヘザーセット Hethersett(1959 牡 鹿 by Hugh Lupus ― 全欧3歳王者。英セントレジャー、グレイトヴォルティジュールS。英ダービー馬 Blakeney、ヴェルメイユ賞馬 Highest Hopes の父)を筆頭に良く走り、その中の一頭、*ネヴァービート Never Beat(1960 牡 栃栗 by Never Say Die ― 10戦1勝)は日本へ輸入されて、種牡馬として大成功しました。
 もっとも*ネヴァービートの本領は、マーチスやリキエイカン、グランドマーチスにインターグロリアらを出して1970/72/75/77年と4度のリーディングサイアーに輝いたこと以上に、母父としてはるかに巨大な権勢を振るったことにあります。その意味でこの種牡馬は、(父系は残せずとも)日本の馬産へ大いに貢献しているのです。
 先に挙げたサクラユタカオーやダイタクヘリオスの他、キョウエイプロミスやメジロファントム&ジュピター&ハイネ、メジロラモーヌ&アルダン、メジロアイガー&マスキット、サクラシンゲキ、イットーと弟たち、スズカコバン、最近ではマジックキスやユーセイトップランなどのBMSが、*ネヴァービートです。祖母父に入る馬ともなれば、サクラスターオー、オグリキャップ&ローマン、ダイユウサク、ハクタイセイ、ハギノトップレディ&カムイオー、メジロドーベルにウイングアローと、さらに活躍馬が並びます。
 なお、*ネヴァービートの成功を受けて、その半弟*ボールドアンドブレーヴ Bold and Brave(1966 牡 栗 by Ballymoss ― 3勝)も輸入され、公営でゴールドレットら活躍馬を輩出しました。
 またその半妹プルーデントガール Prudent Girl(1968 牝 鹿 by *プリメラ)は、プロヴィデンシャル Providential(1977 牡 by Run the Gantlet ― ワシントンDC国際)、プレイイットセイフ Play It Safe(1979 牝 by *レッドアラート ― マルセルブサック賞 他)という、タイプの異なるG1兄妹を出して名牝と呼ばれています。
 さらに Bride Elect の近親で3/4同血の*マリアドロ Maria d'Oro(1957 牝 黒鹿 by Big Game) は、輸入されてモンテプリンス&ファスト(天皇賞馬全兄弟)の祖母となりました。…この辺り、まさに血統の奥深さをうかがわせる事実です。
 この線だと、*ネヴァービートや*マリアドロの牝系、その他*ヒッタイトグローリー Hittite Glory(母が Netherton Maid のX染色体径路上クロスを持っていた) 、*フィルモン Philemon や*ソディアム Sodium(いずれも母父 Big Game )などをX染色体径路上に配置したパターンはまだまだありそうだ…と思って見ていたら、いましたいました。
 モンテマリア(1981 牝 鹿 by *ネヴァービート ― Bride Elect*マリアドロ:2x2)は4歳牝馬特別-3着のインターピレネーを出していますね(補足:この牝馬は本稿執筆の1年後、アーリントンCに勝ち、皐月賞・ダービー2着のダンツフレームを遺しました)。あるいはレーヌドアミー(1990 牝 鹿 by モンテジャパン ― 船橋で106戦した女丈夫)も、これから*ネヴァービートの導入が楽しみな一頭です。

収穫の時

 スプリングネヴァーのように、重要な牝馬(orその産駒でフィリーサイアー)を伴性遺伝径路に載せ、時に大胆なクロスを施した配合の牝馬は、〈ダブルコピー牝馬 double copy mares〉などと呼ばれ、成功した暁には産駒や孫の代で大きな成果を実らせます(詳しくはこちらを参照のこと)。
 その理由は、ダブルコピーの代で近交に耐え抜いて資質を固定したことで、その子孫はリスク低くその成果を享受できるから(いわゆる「引き絞った弓」と「放たれた矢」の関係)に他なりません。特に牡駒は、100%母から伴性遺伝を受けるため、その影響が大きくなります。人間でも「男の子は母親似」なんて言ったりしますよね。

 ただし、より大きな成功のためには、ビワハヤヒデやナリタブライアン、スペシャルウィークのように、産駒自身も完成度の高い配合であることが必要条件に加わってきます。
 ダイタクリーヴァの場合はどうかと言えば、実はこの点でも十分フジキセキ産駒中、上位に入るものとなっています。アウト寄りの配合ですので、この際ぜひ9代表をご覧下さい。

 この場合、*テスコボーイによって Hyperion:7*8*8x5 的な色合いもとどめつつ、基調色は Nasrullah:7x5*5*6 に塗り変えられています。エッセンスが Nearco +(Blandford + The Tetrarch) だと考えれば、*ネヴァービートやプリンスリーギフト Princely Gift の中には2つ分の(そして祖父内 Mahmoud には1/2の)Nasrullah が含まれている、と言ってもよいくらいです。さらに、*ネヴァービートの父ネヴァーセイダイ Never Say Die 内には、米血マンノウォー Man o'War、仏血ヴァトゥ Vatout(その母は、Le Fabuleux 内ヴァリエテ Variete と3/4同血)も含まれており、その意味では*ネヴァービートは三重四重に機能しているのです。
 *ハロウェーも同様に、主流血脈を含みつつ、仏血ダークレジェンド Dark Legend で Le Fabuleux 内イーストン Easton と呼応してスタミナを醸成しています。
 おまけにタフさを裏付ける Bull Lea=Dogpatch:7x5 なんて全兄弟クロスもあったりして、リーヴァの血統表は5〜9代の間で複雑に縫い合わされているのが見て取れます。

 とは言いながら、やはり血統全体に筋を通す重厚な部品、特に Bay Ronald 的なスタミナ成分(Hyperion、Bull Dog、Dark Legend)は全体に控え目で、明らかに距離の限界を窺わせます。後方でしっかり重ねられた血統、また現状の馬体からも、もう少し身の入る余地はありそうですが、いずれにせよ主戦場はマイルから中距離までに落ち着いてくるでしょう。もちろん展開的には、スローの上がり勝負がベスト。

2000/03/16 ― ( Revised on 2000/03/19,03/30,04/05,06/04,09/30,2001/05/28 )


 当馬は新馬戦でエイシンプレストン(1997 牡 鹿 by Green Dancer ― 朝日杯3歳S、アーリントンC)を4馬身ちぎる大楽勝を演じました。2戦目白菊賞こそハイペースを追走してロスマリヌスに差し切られますが、北九州3歳S、シンザン記念と鋭い末脚のあることをアピールし、現在前走で負かしたフサイチゼノン(1997 牡 黒鹿 by *サンデーサイレンス ― 弥生賞)と並んで、皐月賞へ最短位置にいる馬だと見られています。

 今週のスプリングSはおそらく連に絡んでくると見ています。が、逆に本番で少し厳しいレースになれば鞍上には今までにない試練が課されそうな感じ。ま、さすがにダイタクテイオーの二の舞、みたいなことはないと思いますが…。

2000/03/16


 オッズオンの人気を背負ったリーヴァでしたが、最後何とか逃げ馬を捉えて優勝しました。(^^) 本番も田原Q舎のゼノンを抑えて1番人気かな。さぁ、高橋亮JKはどんな乗り方をするのでしょう。
 ちなみに他の人気所は沈没。カーネギーダイアンはもともとあんなものだとしても、最後方から回ったオースミコンドル、先行して垂れたエリモブライアンには、今後も注意したいですね。

2000/03/19


 いや〜、上位馬はどれも昨年から注目してきた馬なので、皐月賞の直線は手に汗握りました。A(^^;
 それにしても悔しい。高橋亮JKの騎乗も頷けるものだっただけに、それが武兄シャカールのスタンドプレーの前では平凡に映るのもまた…。
 聞く所によると、リーヴァは次走、皐月賞回避のゼノンとともに(?)NHKマイルCへ参戦模様とか。数年前「マチカネフクキタルはマイルC行きゃ必勝やで」と吹きまくった鞘次郎としても、これは大いに期待しちゃいますよ。

2000/04/24


 結局ダービーを睨んでマイルCは回避、でもってダービーは惨敗…。
 しかし、それを「力負け」とアッサリ言うようでは、路線選択の誤りを認めてしまったのと同じですねぇ。君は淡白に過ぎるよ、亮クン…。(A_;)

2000/06/04


附記 フジキセキへのアプローチ考:

 あえて真っ当にフジキセキを料理しようとするならば、Almahmoud にシフトしつつ Hyperion にもこだわりを残し、米&仏血をカヴァーしに行くパターンはありえます。BMSとしては、メジロライアン、*モガミ、*イルドブルボンなどが思い浮かびますね。要素が煩雑になった分、仕上がりにくくなる恐れは多分にありますが。
 母系に*ダンディルートや*ネヴァービート、*ファバージ、*ガーサントなどがあれば、BMSには*ノーザンテーストやタマモクロスでも良さそうです(例:クールスナイパー)。

 あるいはDSMLで日没閉門氏が示唆されたように、Bering らをモデルに、Little Current あたりで Sea Bird を導入する手もあるでしょう(ちょいと捻ってテンシノキセキ)。
 もひとつ捻って、*オジジアンや*ラバージョンで Damascus を持ってくるとか(サンライトキセキ)、*アラジよろしく Blushing Broom を注入する(ベアート)などなど、引き続き無数の手筋が検証されてゆくことになります。

 ちなみに、IK血統研究所の久米裕氏などは「Hail to Reason か Turn-to をクロスし、Nasrullah を母方5代目に置く」方法や「母父に直接 Northern Dancer を配し、Nearco と Hyperion に血を集合させる」方法、特筆すべきものとして「Hyperion を離れて、母父 Irish River で中距離以上の芝を目指す」方法(おそらくモデルは名牝 Hatoof)を提示されています。

 …と、そんなことを書き連ねている間に、フジキセキとスターバレリーナの子、グランパドドゥが忘れな草賞を圧勝。他の産駒もオカルト的に同期な活躍を繰り広げているようです。
 そのグランパドドゥは、Millicent(Mill Reef の半妹)を擬似 Secretariat と見立てての、Bold Ruler たっぷりな配合。そうか、この手があったか…やはり現実は推測を軽く凌駕するなぁ。(^^; でも、径路が Risen Star("Big Red" の最良の産駒、母父 His Majesty!)でなければ、やっぱり「一本お調子者©ねこやなぎ師」になっていたのでしょう。
 その意味で、こういう形よりやはりダイタクリーヴァとは別の意味で母方の仕掛けに助けられたトウショウアンドレの方に分があるかなぁとも感じます。トウショウボーイなら、中途半端なりに米&仏血をカバーできますから。

 いやしかし、案外非 Northern Dancer な配合の方が走る点ひとつとっても、発想を試される種牡馬なのは確かですねぇ…。

2000/03/16 ― ( Revised on 04/14, 12/29 )


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