近代南米の名馬たち(前編)


南米血統への誘い

 唐突ですが、南米血統ってマイナーマニアックだと思ってる方、いらっしゃいませんか?

 後者は…ハイ、正解です r(^^;;; が、前者はそうでもありません。
 名馬シガー Cigar(1990 牡 鹿 by *パレスミュージック)の祖母もアルゼンチン産(当地のG1ブエノスアイレス市大賞の勝ち馬)だった、というようにラテンアメリカ圏、特にアルゼンチンの血は、直接的輸出先であるアメリカはもちろん、実はヨーロッパや日本にも、確実に流れ込んできています。

 確かに、南米から日本へ直輸入されたのは、かつての*ストロングウインド Strongwind (1957 牝 栗 by Scratch ― 有馬記念馬ストロングエイトの母)*エルセンタウロ El Centauro (1959 牡 黒鹿 by Sideral ― カルロスペレグリーニ大賞など、亜11戦6勝。天皇賞馬ニチドウタローの父)ぐらいです。
 が、近年、*サンデーサイレンス Sunday Silence(1986 牡 黒鹿 by Halo ― 祖母父がアルゼンチン産のモンパルナス Montparnasse)やヨーロッパ経由のヌレイエフ Nureyev(1977 牡 鹿 by Northern Dancer ― 母父がアルゼンチン産のフォルリ Forli)サドラーズウェルズ Sadler's Wells(1981 牡 鹿 by Northern Dancer ― 祖母父が同じく Forli)などを通して、南米血統がさかんに流入していることは見逃せません。
 したがって南米血統は、目下グローバル化の波に乗って拡散中であると言っていいでしょう。
 それを象徴するように、1999年6月、*アルゼンチンスター(1996 牝 栗 by Candy Stripes ― 1戦1勝、引退)という馬が南米産馬としてのJRA初勝利を挙げています。
 実はこれらは、好景気のアメリカ資本が、沈滞するアルゼンチンなどから盛んに良血を吸い上げている、ということの裏返しでもあり、当事者にとっては必ずしも喜ぶべき事態ではないのでしょうけれど。
 アルゼンチン以外でも、戦後台頭したブラジルや、他の周辺国もまた侮れません。
 例えば、*エンペリー Empery(1973 牡 鹿 by Vaguely Noble ― 英ダービー)の母はペルーの四冠牝馬ですし、Pleasant Colony(1978 牡 黒鹿 by His Majesty ― 米二冠 他)の祖母はウルグアイ産、といった具合。

 このように南米の血と言っても、別にマイナーだとは限らないのです。輸入したっきり使い潰し、めったに再輸出しない日本 に比べれば、時々名馬名血を出す南米の方が、世界への血統的な貢献度なんかはずっと高いわけですから。
※ 反例は栄光のハクチカラ、*タイプキャスト、*ハンターコム、*リィフォー、*サンテステフ、*ドクターデヴィアスなど。余力のある時にこそ放出する、関係者の Aidan^H^H^HHH 英断に拍手!
 てなわけで、以下に続く南米名馬の血統表も、できるだけ誤解や偏見なく見ていただければ幸いです。(^^)/


ラテンアメリカの名馬たち

Asidero 1996 牡 栗 / FNo. 8-j / Nureyev 系 ― アルゼンチンの新星
Fadeyev
1991 鹿
Nureyev
1977 鹿
Northern
Dancer
1961 鹿
Nearctic
1954 黒鹿
Nearco Pharos
Lady Angela Hyperion
Natalma
1957 鹿
Native Dancer Polynesian
Almahmoud Mahmoud
Special
1969 鹿
Forli
1963
Aristophanes Hyperion
Trevisa Advocate
Thong
1964 鹿
Nantallah Nasrullah
Rough Shod Gold Bridge
Skating
1985 鹿
Mill Reef
1968 鹿
Never Bend
1960 鹿
Nasrullah Nearco
Lalun Djeddah
Milan Mill
1962 鹿
Princequillo Prince Rose
Virginia Water Count Fleet
Running
Ballerina
1975
Nijinsky
1967 鹿
Northern Dancer Nearctic
Flaming Page Bull Page
Running Blue
1957
Blue Peter Fairway
Run Honey Hyperion
Lady Aspasia
1985
Tunerup
1976 黒鹿
The Pruner
1967
Herbager
1956 鹿
Vandale Plassy
Flagette Escamillo
Punctilious
1954 鹿
Better Self Bimelech
Puccoon Bull Lea
Our Girl
1968
Rocky Royale
1956
Rockefella Hyperion
Narcisse Niccolo Dell'Arca
Nell-Girl
1959
I Appeal Sir Pennant
Nell K. Crowfoot
Aspasia Ivor
1972 鹿
Sir Ivor
1965 鹿
Sir Gaylord
1959 鹿
Turn-to Royal Charger
Somethingroyal Princequillo
Attica
1953
Mr. Trouble Mahmoud
Athenia Pharamond
Aspasia
1965
In the Gloaming
1960
Crepello Donatello
Sun Cap Sunny Boy
Asturias
1952
Birikil Biribi
Amitie Embrujo
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 当馬アシデーロ Asidero は、亜2000ギニージョッキークラブ大賞などを勝ち、さらには1999年暮れ(向こうは夏)のカルロスペレグリーニ大賞世界レコードの2.21.98というタイムで制した、南米の若き英雄。今年からは北米へ殴り込む予定です。
 フランスでマイルG3を2勝した父は Northern Dancer:2x4 の流行血統
検証:ノーザンダンサー・インブリードを参照)ですが、母および Asidero 自身はアルゼンチン産。牝系を辿ると、祖母・曾祖母はアメリカ産になります。
 ところが3代母以降は7代80年に渡ってアルゼンチン産ですから、要は「土着の牝系が里帰りして出した大物」てな感じになるでしょうか。祖父の母方に入った Forli などからも、南北両米大陸間の盛んな交流が伺える血統表ですね。
 ご覧の通り、父と違ってアウトブリードに出しつつ、大切な部分はしっかり抑えた優秀な配合ですから(ランニングゲイルにも通じるかな)、アメリカ移籍後も相応の活躍が期待できそうです。



Paseana 1987 牝 鹿 / FNo. 3-c / Nasrullah 系 ― 南北半球を跨いで母に
Ahmad
1975 鹿
Good Manners
1966 鹿
Nashua
1952 鹿
Nasrullah
1940 鹿
Nearco Pharos
Mumtaz Begum Blenheim
Segula
1942 鹿
Johnstown Jamestown
Sekhmet Sardanapale
Fun House
1958 黒鹿
The Doge
1942 黒鹿
Bull Dog Teddy
My Auntie Busy American
Recess
1949
Count Fleet Reigh Count
Recce Mahmoud
Azyade
1957 鹿
Churrinche
1941
Congreve
1924 鹿
Copyright Tracery
Per Noi Perrier
Urraca
1927
Your Majesty Persimmon
Canora Old Man
Zeilah
1951
Advocate
1940
Fair Trial Fairway
Guiding Star Papyrus
Antinea
1943
Pont l'Eveque Barneveldt
Yamile Congreve
Pasiflin
1977 鹿
Flintham
1969
フォルティノ FR
Fortino
1959
Grey Sovereign
1948
Nasrullah Nearco
Kong Baytown
Ranavalo
1954 鹿
Relic War Relic
Navarra Orsenigo
Pagasai
1962
Alcide
1955 鹿
Alycidon Donatello
Chenille King Salmon
Sailor's Knot
1955
Blue Peter Fairway
Marriage Day Hyperion
Las Pasiones
1972 鹿
Amateur
1964
Charlottesville
1957 鹿
Prince Chevalier Prince Rose
Noorani Nearco
Dilettante
1953
Dante Nearco
Herringbone King Salmon
Pasionaria
1966
Oh Johnny
1953
Johns Joy Bull Dog
Saracen Flirt Pilate
Holly
1958
Xaret Fastnet
Harp Cameronian
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 生まれ故郷アルゼンチンでG1エンリケアセバル大賞を勝ったパセアナ Paseana は、先輩バヤコア Bayakoa(1984 牝 鹿 by Consultant's Bid ― 亜・米で39戦21勝、米G1を12勝で2年連続米古牝馬女王) の後を追うようにアメリカに渡り、1992年はアップルブロッサムH、ヴァニティH、サンタマリアH、サンタマルガリータ招待H、BCディスタフ、ミレイディBCHを総舐めにし、翌年もアップルブロッサムHとミレイディBCHを連覇、スピンスターSを勝つなど大活躍、先達同様2年連続で米古牝馬女王に輝きました(おまけに翌7歳時もサンタマルガリータ招待Hに優勝)。

 しかし母としては Bayakoa 以上に不振で、仔が一頭もとれないという異常事態! そこでオーナーは1999年、彼女をアルゼンチンに帰しました。無作法な鞘次郎などは「これは転地療法なのか、離縁なのか」などと心配したものですが、果たして彼女はロード Lode(1986 牡 鹿 by Mr. Prospector ― *スマコバクリークの全弟、亜産米G1馬 Lazy Lode などを輩出) の仔を無事受胎したそうです。良い仔の誕生が今から待たれますね。(^^)

 …それにしても偉大なフィリーサイアー Nashua を父系の祖として十分使いこなしてしまうとは、南米血統の伝統おそるべし。グッドマナーズ Good Manners の父系からは、他にもポトリデー Potridee(1989 牝 by Porrillazo ― ヴァニティ招待H)マレク Malek(1992 牡 鹿 by Mocito Guapo ― サンタアニタH)ロードグリロ Lord Grillo(1994 牡 鹿 by Engrillado ― マリブS) など、アメリカに遠征して結果を出した馬が多数出ています。



Duplex 1977 牡 鹿 / FNo. 10-a / Tudor Minstrel 系 ― Clackson と同時代の名馬
Breeder's Dream
1968 鹿
Tudor Melody
1956 黒鹿
Tudor Minstrel
1944 黒鹿
Owen Tudor
1938 黒鹿
Hyperion Gainsborough
Mary Tudor Pharos
Sansonnet
1933 鹿
Sansovino Swynford
Lady Juror Son-in-Law
Matelda
1947 黒鹿
Dante
1942 黒鹿
Nearco Pharos
Rosy Legend Dark Legend
Fairly Hot
1939 黒鹿
Solario Gainsborough
Fair Cop Fairway
La Duchesse
1960 鹿
Prince Bio
1941 鹿
Prince Rose
1928 鹿
Rose Prince Prince Palatine
Indolence Gay Crusader
Biologie
1935
Bacteriophage Tetratema
Eponge Cadum
Perbena
1954 鹿
Persian Gulf
1940 鹿
Bahram Blandford
Double Life Bachelor's Double
Benane
1944 鹿
Big Game Bahram
Theresina Diophon
Dulcine
1964
Coaraze
1942 鹿
Tourbillon
1928 鹿
Ksar
1918
Bruleur Chouberski
Kizil Kourgan Omnium
Durban
1918 鹿
Durbar Rabelais
Banshee Irish Lad
Corrida
1932
Coronach
1923
Hurry On Marcovil
Wet Kiss Tredennis
Zariba
1919 鹿
Sardanapale Prestige
St. Lucre St. Serf
Dulce
1954
Royal Forest
1946 鹿
Bois Roussel
1935 黒鹿
Vatout Prince Chimay
Plucky Liege Spearmint
Tudor Maid
1941
Hyperion Gainsborough
Mary Tudor Pharos
Duty
1948
Embrujo
1936
Congreve Copyright
Encore Your Majesty
Dura
1928 鹿
Rico Picacero
Duquesa Ducato
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サヤジラオ Sayajirao 系最後の希望クラクソン Clackson(1876 牡 栗 by I Say ― サンパウロ大賞など33戦15勝) の一つ下の世代に属し、彼を幾度も破って(ま、ペースメーカーで潰したんだけどさ (-_-"))南米JC大賞など12戦9勝の素晴らしい成績を残したのが、このデュプレクス Duplex

 Clackson 同様、母方に仏ダービー馬コアラズ Coaraze 、父方にはダンテ Dante の血を持っています。しかも祖母内にはもう一本、Owen Tudor の全妹 Tudor Maid を構えているとなれば、これら要素間のニックスを利用した、一種の〈相似交配〉的成果であることは明白ですね。
 なお、Duplex 自身の血がどれだけ現地で残っているのかは、寡聞にして存じません。ご存知の方はご一報下されば幸いです。m(_ _)m



後編へつづく


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