「おっさん!肉くれ肉!あとみかんジュース!!!」
「俺には酒をくれ。」
グランドラインの島オランジェ。
島のほとんどが広大なオレンジ畑であるこの島は、グランドライン一のオレンジの名産地である。
そのメインタウン、ピールの店に一行は腰を落ち着けた。
「むぁんだ、ナミたちも来れば良かったのになァ」
骨付き肉をほおばりながらルフィが言う。
サンジとチョッパーは船の番に残り、
ナミは一人オレンジ畑を見に行くのだと出て行った。
ちょっとだけ…一人で考え事したいのよ…
結局ナミはこの女と話していないままか…
緑の短髪をひと掻きして、丘の向こうのオレンジ色に目をやる。
まあ女同士のイザコザは知ったこっちゃねえが…
ロビンが何を隠しているのか、それが気になるところだな。
店の中に視線を戻すと、屈託無く笑う張本人。
あの笑顔の下で……何を考えてやがる。
用心に越したことはねぇな、とつぶやいてゾロはジョッキを飲み干した。
「フフ…そんなことするとまた航海士さんに怒られるわよ。」
「なァロビン、それ・・・」
ウソップが怒ったような声で言う。
「前にも言ったけど・・・何でお前は名前で呼ばないんだ?」
「ン?オレのことは名前で呼ぶぞ?」
「あァ、確かにルフィのことは名前で呼んでたな。空島ん時。」
「いい加減、ほかの奴のことも名前で呼べよ。」
ちょっと困ったような顔をしてロビンは頷く。
「ええ・・・そうね。何だかまだ慣れなくて…」
「だいたい何でルフィだけ名前なんだよ。」
「そうね・・クロコダイルが・・・ルフィと呼んでいたからかしら。」
何だその理由は。
予想もしない名前を聞いて、ゾロは何故か苛立った。
「どうでもいいだろ、そんなこと。何でウソップはそれにこだわるんだよ。」
思わず荒っぽい声が出てしまった。
「俺はこれ以上『長鼻さん』て呼ばれんのが嫌なんだよ!!」
「おい親父聞いたか?また砂の町が現れたってよ。」
ひとしきり彼らが笑い終えたところで、新たな客が店のカウンターに座った。
「いらっしゃい。砂の町っつーのは…例の砂漠化現象のことですかい?」
「ああ。もうこれで5つの町や村がやられてる。一体…誰の仕業なんだか。」
ガタン!と音を立てて椅子が倒れる。
ロビンだ。
「おい、ロビンどうし…」
「砂漠化現象って何が起こっているの?」
「お客さん知らないのかい?最近グランドラインで起こってる事件さ。一晩の間に町が砂漠に飲まれちまうんだ。
原因は分かってねえ。恐ろしい事件さ…」
真っ青な顔で立ちつくすロビン。
「ロビンどうしたんだよ!?」
これか。
この女が隠していた不安。
その名前をさっき言い淀んだ訳。
でも何故クルーに話すのをためらう?
もうアラバスタの戦いは終わりを告げた。
いくら奴が生きていてルフィや俺たちを恨んだとしても、
このグランドラインを追い続けて来るほど因縁深い男とは思えねぇ。
追ってきたとしても俺たちにそれを話すことに、この女のデメリットは無い。
それとも…
俺たちに奴が生きていることを知られるのは
クロコダイルの立場的にマズイということなのか?
「何を考えてやがる、ニコ・ロビン。」
あの男と同じ呼び方にビクっとして振り向くロビン。
「それは…」
「話せねぇなら出て行け。俺ァそう言ったはずだぞ。」
「おいゾロ、な〜に怒ってんだァ?」
ゾロの右手は、剣の柄に。
ロビンの顔は、いつもの冷静さがかき消えてまるで病人のようだった。
「クロコダイルはおそらく…生きているわ。」
「何ィ!?」
ルフィとウソップが驚いて席を立つ。
「ワニ男は俺がぶっ飛ばしたはずだぞ!」
「おいロビン、何でお前はそれを知ってんだ?」
「知らないわ…ただ、感じるの。」
「感じる?」
「クロコダイルの目的は…アラバスタに眠るプルトン。兵器だった。
もしまだ彼が生きていて…そしてプルトンを探しているのだとしたら…。」
「その在処が記された遺跡はルフィとの戦いで潰れたんじゃねェのか?」
「私は読んでしまったの…プルトンの場所の書かれたポーネグリフを…。」
「じゃあ、クロコダイルはお前を…俺たちを捜してるってことか!?」
「わからないけれど…おそらく…」
「お前、何でそれを早く言わねェ!!」
「大変だぁ〜!!!」
「ミカン畑が、砂嵐にやられてる!!」
突然の叫び声が店内の緊張を切り裂いた。
「ナミ!!」
手に持ったカップを投げ捨て、ルフィは店を飛び出した。
「ミカン畑!?ナミが危ねぇ!」
残りの3人もルフィの後を追った。
「てめェが早く話していれば…!!」
前を走るゾロの怒りとルフィの不安が伝わってロビンの胸に痛いほどの後悔が走った。
「航海士さん…ナミ…、無事でいて…!!」