ポートとキットは翌朝、例の中華デリのパンを食べていた。夜の怪しげな印象とは違い、朝は明るく繁盛し、感じのいい女性が焼きたてのパンを売っているのを確認していたからだ。値段も味も良心的だった。
かねてからNYに潜伏していたコンスタンチーヌが現れた。
コンスタンチーヌ、たとえどの街にいようとも都会の匂いのする謎の女…。

当初、悪魔の隠れ家、別の名を サウスマウンテンアリーナはタクシーでいくべき地理にあるとされていたが、ポートは通勤用らしきバスがポートオーソリティから出ていることをつきとめた。問題はその通勤用バスが運行しているかどうかだった。その日は土曜日だった…。

コンスタンチーヌの見つけたバスはススキ野原の中を走っていた。一時間に一本。
窓外にたまに現れる近代的なビルを通り過ぎて、古い教会や寂れた商店街を抜けると、サウスマウンテンアリーナが現れた。

「しょぼい」
ポートは口走ったが、3人の思いは同じだったはずだ。アリーナ…ここは、市民のスケートリンクといった建造物で、道の反対側には、シコラが99年1月に食中毒で2試合欠場した原因と思しきダンキンドーナツや例のイタリアンレストランが連なった建物、そして、マクドナルドがあった。

「遠路はるばる来て食べるような味ではありません」
多くのNJ情報を提供してくれたY氏のきっぱりした言葉がアタマをよぎった。
悪魔が出没したというレストランCucci’sは閉まっていた。
巨大なペイズリー柄の壁紙、ビニール製のテーブルクロス、安っぽい椅子。
「値段だけは一人前ね」
メニューを見ていたコンスタンチーヌが救い難いといった表情で言った。

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