「やられたよ…」
昨夜の酒は残らなかった。しかし、悪魔がポートの胃袋の中で分解されることに抵抗していた。
一昨日昇り損ねたエンパイヤステートビルに昇るという案もあったが、かねてからの予定通りにアッパーウエストの有名ブランチ店でブランチをとることにした。キットにはあのショートケーキ以来の食事になる。
バッグを開いて、ポートは驚愕せずにはいられなかった。
そこには、そこには…あるはずもないディナーフォークが入っていたのだ。
それもあきらかにボロネーゼの痕跡が見られる。
確かに食事中フォークがないと思ったことは思ったが、酔いも手伝って深く追求はしなかった。
断じて言うが、ポートはホテルの備品や飲食店の灰皿を持ち帰る類の行為をする人間ではない。百歩譲ってその行為をするとしても、使ってない方のフォークを選んだことだろう。
バッグに汚れがないか確認しながらポートは、足元においていたバッグにフォークが入る経緯を想像して笑いを抑えられなかった。
「ほら、うちの店は人気があるだろ?」
有名ブランチ店(もちろんブランチ以外にも営業はしている)はどこも、列をなした客を舗道に伸ばしてみせびらかしていた。
メニュー的にはアメリカの朝食として、さほど物珍しいものとは思えなかったが、日本の家庭が週末は妻も休日、外食を。を実践するように、こちらでも休日の朝は他人の作ったものを食べるのがトレンドらしい。
並ぶのは苦ではなかったが、のんびりしていると最後のミッションであるところのPIT戦に遅れてしまう。
3人が入ったのはポルトガル料理の店だった。
コーヒーさえ頼めないポートは、キットのイチゴがちりばめられたフレンチトーストをつまみながら、コンスタンチーヌのスクランブルエッグののったブランチプレートを見やった。
「タフだ」
さわやかなマンハッタンのブランチ風景にはまりきっているコンスタンチーヌ。
機会仕掛けのように、歩くのが速いコンスタンチーヌ。
ポートは、東欧で調達した衣類に包まれたコンスタンチーヌの消化器をうらやましいと思い、ため息をついた。

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