●第41回 宝塚記念
阪神競馬場 2200メートル
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| 枠 番 |
馬 番 |
馬 名 | 重量 | 騎 手 | ヨシタカ | ヒカル |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | テイエムオペラオー | 58 | 和 田 | ◎ | ◎ |
| 2 | 2 | サイレントハンター | 58 | 吉 田 | ||
| 3 | 3 | ステイゴールド | 58 | 安藤勝 | × | ▲ |
| 4 | 4 | メイショウドトウ | 58 | 河 内 | × | |
| 5 | 5 | マチカネフクキタル | 58 | 幸 | ||
| 6 | 6 | マチカネキンノホシ | 58 | 岡 部 | △ | ○ |
| 7 | メイショウオウドウ | 58 | 飯 田 | |||
| 7 | 8 | ラスカルスズカ | 58 | 武 豊 | ▲ | |
| 9 | オースミブライト | 58 | 武 幸 | |||
| 8 | 10 | ジョービッグバン | 58 | 山田和 | ||
| 11 | グラスワンダー | 58 | 蛯 名 | ○ | △ |
◎由紀夫馬券。
益田競馬場。島根県と山口県の県境に近い益田という市にある日本一小さな競馬場だ。
そこでは若者たちが都市部に労働の場を求めて県外へどんどん出ていった結果
市の人口は五万人ほどとなってしまっていた。
益田競馬場は数少ない娯楽施設として、機能し,
また年をとって就職の当てのない人々への貴重な働き口の供給源となっている。
結局、勝ち馬投票券を売る窓口では券を手渡すのも老人、受け取るのも老人、という光景が繰り広げられているという。
老人たちの少ない年金が循環する事によって競馬場の経営が成り立つわけはなく
当然競走馬を走らせれば走らせるほど赤字経営になってしまっている。
しかも益田競馬場のレースの優勝賞金は日本一安いという。
走っている馬の大半は中央競馬ではすでに廃止されているアラブ種の馬で
生産地である北海道でもいつまで需要があるか解らないアラブ種の繁用は止めようかという声が多いらしい。
益田競馬場を閉鎖しようとする動きが年々強くなっている。
市の予算で運営しているわけで、福祉や教育へのしわ寄せもかなり来ているらしい。
娯楽施設の立場はやはりないと言う事なのだろう。
閉鎖を押し留めているのはそれで生活している人たちの存在だった。
毎日早朝から付きっきりで馬の面倒を見ている厩務員や調教師、
もちろん競馬場の清掃員や販売員たちも路頭に迷う事になる。
そういうことを知っていながら馬が好きだという理由で若者たちは
明るい表情で毎日馬の世話をしている。
ある日突然閉鎖されてしまうかもしれない場所でさえ明るさを失わずに生きている。
深夜にそんなドキュメンタリー番組を見て由紀夫はなにか思わずにはいられなかった。
また、益田という場所にも行って見たくなった。
JRAが圧倒的な資金力で競馬のイメージアップ、近代化、効率化を図った結果
末端神経である地方競馬のうち中央化できなかった益田のような競馬場がどんどん廃止に追い込まれてしまっている。
これも時代の流れと言ってしまえばそうなのかもしれないが由紀夫は違う,と思った。
一義的なやり方だけで採算や近代化を唱える人間が地方の立場に立っていたとは思えないからだ。
『自分たちの代表を選ぶ代議士制というのはこれからの情報化社会ではかえって非効率な方法と言う事になっていくのかもしれないな』
ムラ単位、町単位の総意を集めるやり方がこれからどんどん整備されて行くからだ。
自分たちの住んでいる場所の事は自分たちで決めるといった当たり前の事がうまく循環するようになればたとえば町の埋め立てやダム建設や飛行場建設に反対するという運動が市民から起こるという地方開発がそこに住む人間から反対されるという愚かな事態は避けられるんじゃないかと思う。
今日は衆議院総選挙の投票日なので由紀夫はそろそろ近所の投票所に行く準備をしている。
投票権は有効に使わなければいけないと思うのだが,どうすることも有効だとは思えずに
今日まで結論は先延ばしにされてきたのだが結局今もってはっきりとは決まってないのだった。
それに比べて上半期の中央競馬の集大成である宝塚記念の投票はとっくに決まっていた。
どうする事が自分自身に対して有効なのかはよく解っているからだった。
それは思い描く結末が自分にとっていちばん気持ちいいものに賭ければいいからだった。
昨日の土砂降りで今日の天候が気にはなっていたが明けて見れば結構悪くない天気で
まあ、じめじめしているのは時期が時期だから仕方がないのだろう。
まあ、こんなときに飲むビールは格別なので、それはそれで世の中帳尻は合うようになっているのかもしれないと思うと少しおかしくなってきて薄手のジャケットを羽織ながら苦笑した。
『さて、行きますか。』
この場合の行き先として由紀夫の頭の中にイメージされた場所が選挙の投票場なのか場外馬券売り場なのか、いつものマスターが出迎えてくれるバーなのか、
由紀夫のその表情からは窺い知れることはなく梅雨の一瞬の晴れ間に対してサングラスの奥から眩しそうに一瞬顔をしかめただけだった。
今回の選挙に対して何の期待も抱いていない由紀夫の宝塚記念予想。
優勝 テイエムオペラオー
2着 グラスワンダー
3着 ラスカルスズカ
4着 マチカネキンノホシ
5着 ステイゴールド
(了)
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