It's not whether you get knocked down...
It's whether you get up.
Vince Lombardi



2001/10/12  第5回 「二人の選手と二つのリーグ」
 2001年は日本野球界において華々しい年であった。しかし、その一方で 10年、20年後には「大きな分岐点」という言われ方がされるかもしれない。
 シアトル・マリナーズにメジャー初の日本人野手として渡米したイチロー。 オールスター最多得票。首位打者、盗塁王、さらにはレギュラーシーズンMVP候補と、おそらく取るであろう新人王。しかし、 一方で数々の華々しい成績は皮肉なことに日本球界を破滅に導くかもしれない。 事実、メジャーリーグ各チームは第二のイチローを探しに日本球界にスカウトを送ってきている。
 何をバカな、と思う人のためにあるリーグのある選手を紹介しよう。

 1998年にメジャー全チームの永久欠番となった背番号42。 つけていたのはメジャー初の黒人選手としてドジャーズ入団したジャッキー・ロビンソンである。
 メジャーリーグで首位打者と盗塁王に輝くほどの実力をもってはいたが、 彼の所属していた「ニグロリーグ」のカンザスシティー・モナクスでは控えの2塁手に甘んじていた。 1900年代初頭から存在した黒人リーグ「ニグロ・リーグ」には彼以上の 選手はゴロゴロいたと記録されている。
 メジャー初登板が59歳という2000勝投手サッチェル・ペイジ。 メジャーではプレイしなかったが"数えられるだけで"962本の通算本塁打を放ったジョシュ・ギブソン。 そして755本のメジャー通算本塁打記録を持つハンク・アーロン。これら有名選手以外は歴史の 闇に閉ざされているが記録によればこのリーグはメジャーより数段上の実力を持っていたリーグである。 にもかかわらず、メジャーへの選手流出を食い止められなかった二グロリーグは半世紀ほどで消滅してしまう。

 翻って日本プロ野球界はどうか。ある有名チームのみを追いかけるマスコミ、身近になったメジャー。 そして何より野球人としての純粋な憧れ。こういった気持ちがメジャーに挑戦したい日本人を作り続ける。 一体、来年は何人の日本人メジャーリーガーが活躍するか、リーグは変わっても私の興味は尽きない と言っては無責任だろうか。このリーグの未来は如何に・・・・・・。



2001/10/2  第4回 「補強の盲点」
 今期限りで読売巨人軍の長嶋監督が退団することになった。後任は原ヘッドーコーチ。 この決定に、長嶋の退団こそ驚きであれ、後任については 予想どおりだったのではないだろうか?余談になるかもしれないが、おそらく原の後は江川になるだろう。

 巨人といえば、その人気の高さからドラフトやFA制度の恩恵を一番に受けた球団である。 今年のベストオーダーに外国人選手の名前が入ることはない。優勝を争ったヤクルトやパ・リーグを 制した近鉄を引っ張るのはまぎれもなく"ガイジン"パワーヒッターである。

 話が少しそれた。それたついでに他のジャンルのスポーツの監督を紹介したい。 私の中で、一番の名将は間違いなくフィル・ジャクソンである。名前くらいは聞いたことがあるだろう。 フィル・ジャクソンはNBAのシカゴ・ブルズでマイケル・ジョーダンやスコッティ・ピペンらと共に NBA三連覇を2回達成している。さらにはあの悪童デニス・ロッドマンを"飼い慣らした"監督でもある。 その三人を揃えたシーズンではNBA全82試合で72勝の最多勝率も達成している。 その後、休養をへて、現在はロサンゼルス・レイカーズにて今年の優勝で2連覇。MVPのシャキール・オニールは 授賞式で「真のMVPはジャクソンヘッドコーチ」と語り、報道機関は「最高の補強はフィル・ジャクソン」と報じた。

 それではプロ野球に話を戻そう。この際長嶋がジャクソンのように優れた監督かどうかは抜きにして、 なぜ、長嶋の次は原なのか?予想通りと前述したが、常勝を目指す球団であるならば疑問符はつく。 原は2軍ですらチームを指揮した経験がないのである。なにも監督になるのはは必ず巨人を引退した選手 という取り決めがあるわけではなかろう。 この決定は伝統のなせるわざであり、それが巨人の最大の欠点であるのではないだろうか?

 日本プロ野球界にも名将はいる。阪神の野村、横浜の森がその代表で、彼らは現役時代、監督と共に一つの球団に 縛られたわけではない。ある意味で名将の条件としてどこの球団からもオファーがある。ということが言えるのかもしれない。 この事はフィル・ジャクソンにも共通事項である。

 75勝63敗2分。参考までに今年の記録を憶えておくとしよう。これが絶対的な監督評価になるとは一向に思わないが・・・。



2001/9/24  第3回 プロ野球編「55の数字が意味するもの」
 今日、近鉄バッファローズのタフィ・ローズが王貞治のもつ年間最多ホームラン記録の55本に並んだ。 今期のローズであれば60本台も夢ではない。マジックを1とした近鉄にとって優勝後の焦点はそこに集約されるだろう。 しかし、ローズが歴代の日本人ホームランバッターがそうであったように 衰えを感じながらプレーを続けることは不可能に近い。パワーのある外国人助っ人を常に補強し続けることが強いチームを作る 一つの手段だからである。必ずチームはローズの意に反して解雇を言い渡す時がやってくる。
ローズは"ガイジン"なのである。

 実はローズ以外にも王貞治の記録に並びかけた選手がいる。阪神タイガース優勝の立役者の一人となった ランディ・バースである。結果的にバースは54本でシーズンを終えることになったが、最後は王貞治が監督を務めていた 読売巨人軍に無意味な敬遠をされ勝負することはできなかった。
  それ以外にもタイトルを取らせんが為に 真剣勝負に水をさす行為は球界史上に多い。

 今期のローズはバースの時とは違い、他チームがこの最終盤まで優勝争いをしている。 勝負にこだわる為に戦法上仕方のない敬遠はあっても無意味な敬遠はない。
 それでは仮にパ・リーグの優勝が早々に決まっていたとして、その時にローズは敬遠攻めをされていただろうか? そんなことはない。と、完全に否定できないこのリーグの体質がベースボールの一ファンとして恥ずかしい。
 なにはともあれローズの前人未到の記録更新を願う。



2001/9/3 第2回 F1編「レースの醍醐味」
 ジャン・アレジ 1964年6月11日フランスのアビニョン生まれ。F1デビューは89年のフランスグランプリ。翌90年 フェニックスで行われたアメリカグランプリで故アイルトン・セナとのバトルを機に一気にスターダムにのし上がる。最強チーム、 ウィリアムズのオファーを断り、幼い頃からのヒーロー、ジル・ビルヌーブの所属していたフェラーリチームでキャリアの大半を 過ごす。未来のワールドチャンピオンの器と呼ばれたが、フェラーリにこだわり過ぎたせいか現在までわずか一勝。最近は優勝の 可能性のない中堅チームを渡り歩いていた。前回のハンガリーグランプリからジョーダンに移籍。前チームのプロストでは若い頃 のキレた走りはなりを潜めるが、その分ベテランらしい粘り強い走りでポイントを稼いでいた。

 ベルギーグランプリはサーキットが山にあるため天候の予測が難しい。さらにアップダウンの激しさとチャレンジングなコースレ イアウトは世界一のコースとの呼び声も高い。オー・ルージュというコーナーはまるで壁に向かって走るような錯覚を与えるほど 急な上り坂で、登っている時は天に向かって登っているかのような感覚に陥るという。ドライバーの勇気と腕がものをいうサーキット なのである。

 2001年のベルギーグランプリはスタートでポールポジションのファン・パブロ・モントーヤがエンジンストールで最後尾スタート となったことやミハエル・シューマッハの独走で、レースの興味は優勝よりも下位のポジション争いが注目を浴びていた。レース終 盤、ジョーダンのヤーノ・トゥルーリがリタイヤした後、テレビを見ていた人はジャン・アレジとラルフ・シューマッハの6位争 いを固唾を飲んで見ていたのではないか?抜きどころの多いこのサーキットでスリップに入ろうと思うラルフと必死に逃げるアレジ。 数十センチ、もしかしたら数センチなのかもしれない。この僅かな距離がスリップに入るかどうかを決め、しいては入賞を決めるか どうかの差を作り出していた。ミハエル・シューマッハから遅れることおよそ1分。二人はギリギリの戦いをしたままフィニッシュラインを 通過する。

 レース後のジャン・アレジのインタビュー「ホンダエンジンは最高だね。フェラーリやBMWとも戦えるんだもの」と僅か1ポイント 獲得ながら満面の笑顔で答える。その笑顔は1ポイントよりもタフなレースを戦った満足感によるところが多かったのだろう。 それは視聴者とてなんら変わりはない。



2001/9/2 第1回 プロ野球編「抑えの資質」
 巨人なんかクソ喰らえだ。パ・リーグを見ろ。今パ・リーグが面白い。
 リーグ三連覇を目指すダイエーと久しぶりのリーグ優勝を狙う近鉄。その差は現在わずかに0.5ゲーム差。個人タイトル争いもしかり。 近鉄ローズと西部カブレラのホームラン競争は大台の50本に到達するだろう。もしかすると、王貞治の持つシーズン最多ホームラン 55本を超えるかもしれない。
 そんな"打高投低"の中、今期抑えに転向した西部ライオンズの豊田に注目している。 豊田は現在三連続で救援を失敗しその全てがサヨナラ負けという辛酸を舐めた。三度目の救援失敗の時に慰めようと思った東尾監督の 手を払いのけベンチの奥でその怒りを爆発させた。もちろん自分に対する怒りだ。
 抑えに一番必要なものは何か?技術的なことを言えば三振を取れる能力だが、それ以上に必要なものは自分が打たれて負けることに対して プレッシャーを感じないタフな精神力である。抑えを失敗した後、大きく分けて二種類のタイプに分けられる。そのまま意気消沈してしまうタイプ とふてぶてしく「今日は運が悪かった」としか思っていないかのような態度をとるタイプ。
 豊田はどっちか?答えは後者のタイプに近い。東尾は3連続救援失敗の責任を取らせて抑えから降格させるかもしれない。その時は 優勝することはできないだろう。シーズンを通し抑えとして経験を積んできた豊田は必ず勝負どころで必要になるのだから。



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