優れた選手を有無を言わさずに獲得すること。
これを企業努力とか、こういうやり方もありだという人がいるようです。
本当にそうでしょうか。
1978年11月22日、巨人がドラフト会議を「やってられん」とボイコットしました。
この原因は江川を無理矢理獲得しようとしたことにあります。
そして思惑通りに進まず困った巨人は「新リーグ」をつくると脅しました。
巨人がリーグを脱退すれば、収益が落ち込み運営に支障が出るため
コミッショナーはこれに屈してしまいます。
道理がぶち壊れ、プロ野球界が屈辱にまみれた瞬間です。
さて、改めて調べてみると、やはりこれはプロ野球史最大級の事件であったと思います。
さすがにこの事件は、ネット上でもそこそこの情報量があります。
しかし、江川本人が読売テレビでスポーツ番組を持つなど
本当にあの江川事件の重大さをわかっていないようです。
本人よりもテレビ局にモラルの低さを感じます。
江川や巨人を養護する評論家には「洗脳」の怖さを感じます。
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江川は怪物と呼ばれていました。数字を見れば誰もがそう思うでしょう。
1971年から73年の高校時代、栃木県の作新学院での3年間の公式戦通算成績は次の通りです。
44試合33勝6敗、31完投、20完封、防御率0.41、531奪三振
ノーヒットノーラン12回、完全試合2回、145イニング連続無失点記録
法政大学時代の、1974年からの4年間の成績は
71試合47勝12敗、51完投、17完封、防御率1.16、443奪三振
「17完封、443奪三振」は六大学リーグ記録
完投数が並外れて多いのがわかると思います。凄いとしか言えないような記録です。
どの球団も獲得したい選手です。
1978年のドラフトは前年の下位球団から指名するウエーバー制でした。
希望する球団に入団するのは、江川に限らず誰でも難しかったわけです。
その分、力のある選手が弱いチームに入ることになり
力関係が拮抗し、試合を見る側から言えば面白くなったと思うのです。
と、ここで見解の相違というものが出てくると思います。
見解というほどのものではないかも知れませんが
ひとつは
巨人ファンの考えの中に「優れた選手は巨人に入団するべきである」
という考えがあるような気がするのです。(自分勝手過ぎ)
それは優れた選手がテレビにいつも出てほしいという思いもあるでしょう。
(テレビ中継のあり方に問題があるのに気がつかない)
パ・リーグになど行かれてしまったら「がっかり」するわけです。
そう思う巨人ファンは多いでしょう。
これが大間違いだと思います。
中にはパ・リーグなど潰れてしまえという巨人大好きタレントもいて
洗脳の怖さを垣間見ることもできます。
他球団のファンだって、いい選手を獲得して活躍してほしいのです。
そんなことのかけらも頭の片隅にもないのがナベツネですが
巨人ファンには、このナベツネのエキスが電波に乗って振りかけられているのでしょう、
他球団のことや野球界全体のことをあまり考えない人が多いと思います。
「自分たちが良ければいい」この傾向が非常に強い。
そしてこれが微妙に社会への悪影響となっていると私は確信しています。
こういう考えを持っている人は江川が他球団に入ることが面白くないと思っているだけで、
事件をまともに見て考えることはできないでしょう。
もうひとつは
「希望する球団に入れないのはおかしい」という考え。
これは賛否両論あると思います。
ただ、現状ではどうしても「マスコミの影響」で巨人、阪神、中日など
主にセ・リーグに入りたがる選手が多いだろうと思うのです。
これでは戦力がセの人気球団に片寄り過ぎてしまいます。
マスコミへの露出度が球団によって天と地くらいの差があるので
この考えは戦力の不均衡を招くだけです。
また、強いチームがどうしても目立ってしまうので、
強いチームに入りたがる傾向が出るはずで、
やはり考え方としてはウエーバー制がベストと考えます。
野球選手になれること自体、希望の職業に就けたことになるわけですし
FAの取得で、希望の球団への移籍も可能です。
阪神ファンの松井は「くじ引き」で巨人へ行きました。
巨人もドラフトで12分の1の確率ながら、おいしいところを獲得できたわけです。
逆指名だ自由競争枠だと、巨人主導で制度変更してしまいましたが
いい選手を全部(ほぼカネで)頂こうという改定で、制度としては後退したと思います。
(ナベツネの傲慢さがモロに出ていますね)
結局、希望選手を毎年とれてしまう巨人が有利に決まっています。
ヤクルト大好きの高橋由伸は、数10億円の買収と周囲への工作によって
泣きながら巨人へ入団しています。誰も言いませんが、これは悲劇です。
現状で逆指名・自由競争を導入しても
希望球団には必ずしも入れないということの証明です。
(入りたかった球団への入団を妨害に近い買収で獲得)
ウラ交渉の規制をしっかりとやる「機構」や「監視機関」が必要です。
しかしナベツネの圧力でなかなかできそうもない。
だから、やっぱり完全ウエーバー制がバランスのとれたやり方だと思うのです。
ところが江川事件の時、ドラフト制度そのものに対して
世界一の発行部数を誇る読売新聞紙上で
「ドラフトが職業選択の自由に反している、とか、人権問題だ」として取り上げ、
公共の「新聞」あるいは「電波」を利用するやり方を読売はするわけです。
ヘタをすると法律違反じゃないのかと思ったりもします。
単に欲しい選手が思うように獲得できないからこじつけた、というのが見え見えで
本当に情けない組織だと思います。
やはりこんな精神的に稚拙な企業が巨大メディアを持ってることが恐ろしい。
人間を狂わせるほどの大金で犯罪まがいの人買いをしてるところが
人権問題を語ることもちゃんちゃらおかしいでしょう。
はやくあの独裁者を排除しないと、ろくなことにならないと思うのです。
その後ドラフトは「逆指名」で骨抜きになり、大巨人の悪魔ぶりが強調された格好です。
この逆指名も、もとはと言えばこの江川事件の時にとった「恐喝」が
成功したことによる影響が大きいのです。
「認めてくれなければ、新リーグを作るぞ。
巨人が抜ければ、おまえら潰れるぞ。どうするんだ」
この脅しは、ずっと有効な環境です。
そういう環境を読売が作り、変えようとしないのですから。
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1973年のドラフトで、阪急が江川の指名権を獲得します。江川18歳。巨人V9の年。
「巨人以外には入らない」と、進学を決め、慶応を落ち法政へ。
そして4年後の1977年のドラフトで、江川の交渉権を獲得したのは
クラウンライター(現西武)でした。
やはり「巨人以外はイヤ」とアメリカへ野球留学という形をとりました。
(巨人から数千万円の資金援助があったことは有名です)
結果論ですが、江川の「旬」は高校時代とよく言われます。
ノーヒットノーラン12回、完全試合2回という記録はまさに怪物です。
最初のドラフトでプロになっていたらどんなに凄い記録をつくっていたか。
弱いチーム、強くても人気のないチーム、こういうところを
優勝に導いたり、人気を高めてこそカッコいいと思うんですが…。
さて、問題の年です。
1978年11月22日、巨人がドラフト会議を「やってられん」とボイコットしました。
この原因は江川を無理矢理獲得しようとしたことにあります。
まずはログから。
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●2000/01/17
昔からGの横暴は別所問題ほか結構ありました。
しかし、なんと言っても江川問題が日本の野球史上最高の不祥事で、
12球団で取り決めたドラフト制度を読売が一方的に破るという、
当時私自身、鳥肌が立つほどの憤りを覚えるものでした。
●1999/09/12
振り返れば、南海に入ろうとしていた長島を金で読売に引き込んだことから始まり、
江川・桑田等の入団問題。
「新リーグ構想」などと自分勝手なことを言ってみたり、
「逆指名制度」「FA制度」など都合のいい制度ばかり作っている。
●1999/09/12
私は昔は熱狂的巨人ファンでしたが、純真な野球少年だった私にとって
江川事件は裏切られた気分で一杯になりました。
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「エガワる」という流行語にもなった、この江川事件ですが、
これをきっかけに巨人が嫌いになった人は多いようです。私もその一人です。
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●2000/04/07
以前の野球協約では、空白の一日は無かった。
しかし、ドラフト会議を間違いなく実行させるため、
関係者のドラフト前日の移動日を確保する事が必要になり、
前年権利者の交渉権はドラフト前々日までとした。
この協約変更の趣旨は、巨人を含め12球団が納得し了解して出来たものだ。
巨人は自ら納得し了解して作った協約の趣旨を踏みにじり、この移動日に江川と契約した。
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「ドラフトじゃ欲しい選手がとれないから、
ドラフト以外の方法で江川は巨人がいただく。
政治家も法的に正当性があると言ってるし
本人も巨人を希望してるんだからいいだろう」
(いわゆる「空白の1日」。これを画策したのは自民党議員・船田 中)
一番問題なのは読売首脳陣の脳みそであることは誰の目にも明らかでした。
とんでもないことに自民党議員まで引っぱりだしてきて、
ドラフト制度というルールを無視すると言ったのです。
そして、これはものの見事に野球機構の金子コミッショナーにも、
セ・リーグの鈴木会長にも認められませんでした。当り前です。
そして肝心の江川はこの年のドラフト会議で、
南海、近鉄、ロッテ、阪神の4球団が重複指名し、
くじ引きにより阪神が交渉権を獲得しました。
ところがここで読売が言ったことがまたスゴいです。
「巨人が欠席したドラフト会議は無効だ」
これに対して
「アホかおまえは」(意訳)と機構に一蹴されたため
ぷっつんと切れた読売は「それならやめてやる」と脅しをかけたのです。
(この新リーグ結成を画策したのが、船田議員の秘書である蓮実 進)
何かに似てませんか。
「子ども」ですね。子どもに申し訳ないんですが。
まるっきり幼児の「だだこね」です。
何とも恥ずかしい事件を起こしたものです。
無茶苦茶になったこの状態は、前代未聞の結末へと向かいます。
この時とっとと脱退してくれていた方がよかったかも知れません。
読売は、脱退をちらつかせながらまたスゴい提案をします。
ドラフト会議でつかんだ阪神の交渉権は動かないため
江川が阪神入団直後に、読売のエースであった小林繁とのトレードを要求してきたのです。
もちろんこれもルール違反です。
阪神も「何を寝ぼけたこと言っとるんや、しばくぞコラ」
くらいのことを言って欲しかったのですが、
巨人との友好関係を壊したくないと、
これを断ることもなくトレードが成立してしまいます。
コミッショナーも容認しました。
プロ野球が巨人のルール破りを公式に認めた瞬間です。
阪神の責任も重大ですし、コミッショナーも腰抜けです。
プロ野球界が骨抜きにされた、歴史的な瞬間でした。
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●2001/02/28
「江川事件」の際、江川投手のジャイアンツ入りに最後まで反対したのは、
日本ハムファイターズだけでした。当時の三原脩社長が反対を貫いたからです。
金子氏(コミッショナー)がこの様なジャイアンツの横車を許したのは、
彼がジャイアンツファンであったという事と、
もう一つはジャイアンツの出した「新リーグ結成」の脅しに乗ったからだといわれています。
これについて、何とも屈辱的な話が残っています。
『アンチ巨人!快楽読本2』によれば、これより少し前、ジャイアンツは
スワローズの松園尚巳オーナーに「ライオンズを誘って新リーグを作ろう」と誘い掛け、
さすがに松園氏もライオンズの堤義明オーナーも拒否したものの、
松園氏はドラゴンズやホエールズ(現:ベイスターズ)のオーナーと共に、
ジャイアンツに「脱退しないでくれ」と讀賣新聞本社まで頼みに出かけたとあります。
或いは『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』(立石泰則著、文藝春秋)
によれば、タイガースの田中隆造オーナーはやはり
「阪神は四十年にわたって巨人とは親密な関係を保ってきたが、
江川問題で、この友好関係をそこねるという考えはない」と、
ジャイアンツに遠慮しています。
悪いのはジャイアンツなのに、他球団はその威を恐れて
まるで自分達が悪いかのように振る舞ったのです。
「巨人が正義」という、ふざけた現実を勝手に作ってしまったのです。
金子氏はファンの抗議を受けて「悪いのは巨人なんだ…」と溜息を吐いたそうですが、
それほどまでにジャイアンツの威圧というのは恐ろしい物だったのでしょうか。
結局金子氏はコミッショナーを辞任、1982[昭和57]年2月24日、憂悶のうちに死去。
享年81歳。
余談ですが、セ・リーグホームページの年表によれば、
「江川事件」は無かった事にされているようです。やれやれ。
ジャイアンツが「新リーグ結成」を言い出したなら、「やれる物ならやってみろ」と
他の一一球団が突き放せば球界は正常化するでしょう。
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興行的に、読売が主導権を握る野球界で
読売に脱退されたら経営が行き詰まるということがやはり最大のポイントでした。
当然ながら、巨人の要求には正当性がなく、
ペナルティとして「江川の開幕2ヶ月間出場停止」となったのですが、
(そもそも何でペナルティが先付けなのか?)
これは「特例」であり、今後は認めないという念の入れようで
江川はまんまと巨人入りしたのです。
(別所引き抜き事件の時も、「きわめて軽い罰則」とともに、
ルール違反が認められています。)
で、この脅しがどういうものを生んだか。
ほしいものは、ルールを無視してでも取る。ダメなら脅す。
これを「巨人」がやってしまったことが特に大きな問題で
電波に乗って、「筋肉」が強ければ不正もOKという
道理の通らない社会をつくってしまったのです。
日本中を腐らせてしまった。
スポーツというフェアな精神が最も重要視されるところで
また、娯楽だからいいじゃないかと思われがちなところなだけに
最悪の行為であったと思います。
巨人ファンにはそういう意識はないでしょうが
潜在的にわがままを認めている事実があり、必ず社会現象化しています。
この時アンチになった人は多かったようですが、ボイコットまではいかなかった。
特にマスコミ関係者や文化人がもっともっと声をあげるべきだったのです。
だいたいこんな読売にファンがつくこと自体、おかしな話だと思っていますが
その後もマスコミ(読売と読売に逆らえない他のマスコミ)によって、
臭いものにフタをされ、美化された巨人物語を延々垂れ流され続けています。
だから民放だけ見ていると、どうしても巨人のファンになってしまうようです。
そして、江川が司会をするような番組を見て喜んでいるのです。
江川をスポーツ選手、スポーツ解説者として見る前に、
大事なことを忘れないでもらいたい。
例えばドーピングが発覚すると、記録は取り消しになります。
選手としての価値がなくなるわけです。どんなに優れた選手でも。
確かに高校時代に凄い記録を作ってきた江川ですが
それを美化してはいけないと思うのです。
大リーグにいい例があります。
ピートローズという選手が野球賭博にかかわったとして
1989年に永久追放になっています。
通算安打数歴代1位で、その数4256安打。
野球殿堂入りすらさせてもらえません。
選手である前に人間として稚拙として認めないのです。
大リーグで4000本安打、日本に匹敵する選手はいません。
(最高は張本の3085安打)
日本では野球賭博の桑田投手もまだ現役です。
江川事件は、野球賭博以上の重みがあると思うのですが
読売にはそういう意識もないようです。
無理矢理、強奪するような形でチームの補強をすることは
決して許されるやり方ではありません。
読売にはスポーツ界から手を引いてもらいたい。
これが私の願いです。